導入事例に学ぶ:製造業・商社のAI活用による輸出管理改革
こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。今日は、X-Checkを実際に導入いただいた2社の事例を通じて、AI活用による輸出管理改革の実際をお伝えします。
「ツールの機能はわかったけど、実際に効果はあるの?」 「うちのような業種でも使えるの?」 「導入のハードルは高くないの?」
こうした疑問をお持ちの方も多いでしょう。本記事では、5000文字を超えるボリュームで、製造業と商社という異なる業種の導入事例を詳しくご紹介します。
事例1:精密機器メーカーA社
企業概要と導入前の課題
A社は、計測機器や検査装置を製造・販売する従業員約600名の精密機器メーカーです。国内市場での高い評価を背景に、近年は海外展開を加速させ、アジア、欧州、北米と販路を広げてきました。
導入前の状況:
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 取引先数 | 約3,000社 |
| 月間新規取引先 | 20〜30社 |
| スクリーニング工数 | 月80時間以上 |
| 担当者数 | 2名(兼務) |
表1:A社の導入前状況
「海外売上比率が30%を超えた頃から、輸出管理体制の不十分さが目立つようになった」と、同社の輸出管理責任者は振り返ります。
3つの課題
課題1:膨大な取引先管理
世界40カ国以上に製品を輸出しており、取引先は大手メーカーから中小の代理店まで多岐にわたります。これらすべてを制裁リストと照合し、懸念の有無を確認する作業に、担当者2名がフルタイムで携わっていましたが、それでも十分とは言えない状況でした。
課題2:精度への不安
「本当にすべての懸念先を検出できているのか、正直自信がなかった」——エクセルベースの手作業では、名前の表記ゆれや略称への対応に限界があり、見落としのリスクを常に抱えていました。
課題3:該非判定の属人化
リスト規制の境界に位置する製品の該非判定は、長年の経験を持つベテラン担当者が行っていました。しかし、その担当者が定年退職を控えており、知識継承が進まないまま退職されると、判定精度が大きく低下するリスクがありました。
導入の経緯
業界セミナーでX-Checkを知り、詳細を聞くために問い合わせをいただきました。3カ月間のパイロット導入として、特定地域の取引先約500社を対象にスクリーニングを実施。
パイロットの結果、手作業では検出できていなかった類似名のケースを3件発見しました。いずれも制裁対象者との同一性は否定されましたが、「見落としていたケースがあった」という事実は、導入の決め手となりました。
導入効果
数値で見る効果:
| 指標 | 導入前 | 導入後 | 改善率 |
|---|---|---|---|
| スクリーニング工数 | 月80時間 | 月24時間 | 70%削減 |
| スクリーニング頻度 | 四半期 | 週次 | 大幅向上 |
| 新規検出懸念案件 | - | 年間15件 | - |
| 該非判定時間/件 | 60分 | 20分 | 67%削減 |
| 監査指摘事項 | 2件 | 0件 | - |
表2:A社の導入効果
担当者の声: 「単純作業から解放されて、やりがいのある仕事に集中できるようになりました。AIの判断を参考にできるので、不安なく判断できます」
若手担当者にとっては、AIの判断過程を見ることが学習の機会にもなっています。「なぜこの名前が懸念と判断されたのか」を確認することで、輸出管理の知識が身についていくと好評です。
事例2:商社B社
企業概要と導入前の課題
B社は、世界100カ国以上と取引を行う大手商社です。取引先の数は約20,000社に上り、毎日のように新規取引先が発生していました。
商社特有の課題:
- 自社で製品を製造していないため、取り扱う製品の技術仕様を把握しにくい
- 取引先の数が膨大で、スクリーニングの負荷が極めて大きい
- 多様な国・地域との取引があり、各国の規制に対応する必要がある
導入前の状況
「毎日のように新規取引先が発生します。1日に10社、多いときは20社以上。それぞれを複数の制裁リストと照合するだけで、相当な時間がかかっていました」と、輸出管理部門の山田氏(仮名)は当時を振り返ります。
長年にわたりエクセルベースで取引先管理を行っていましたが、名前の完全一致でしか検索できず、表記ゆれには対応できていませんでした。
制裁リストの更新にも追いついていませんでした。「本当は毎週、すべての取引先を再チェックしたかった。でも、物理的に無理でした。四半期に一度、主要取引先だけを対象にするのが精一杯でした」
導入のきっかけ
外部監査での指摘がきっかけでした。「スクリーニングの頻度が不十分」「類似名への対応が不足している」という指摘を受け、体制の見直しを迫られました。
2週間の無料トライアルを実施。取引先の一部(約2,000社)を対象に、X-Checkによるスクリーニングを試行しました。
結果に驚いたと山田氏は語ります。「従来の方法では検出できていなかった、類似名のケースが10件以上見つかりました。いずれも制裁対象者ではありませんでしたが、『今まで見落としていた可能性があった』という事実は衝撃でした」
導入効果
数値で見る効果:
| 指標 | 導入前 | 導入後 | 改善率 |
|---|---|---|---|
| スクリーニング時間 | 月160時間 | 月30時間 | 約80%削減 |
| スクリーニング頻度 | 年次 | 週次 | 大幅向上 |
| 新規検出懸念案件 | - | 2年で約120件 | - |
| 監査指摘事項 | 2件 | 0件 | - |
表3:B社の導入効果
20,000社のフルスクリーニングが、以前は数日かかっていたものが、数時間で完了するようになりました。継続モニタリングにより、制裁リストの更新をほぼリアルタイムで把握できるようになり、監査でも体制の改善を評価されました。
山田氏の声: 「X-Checkの導入は、我々にとって転換点でした。輸出管理部門の役割が、『作業をこなす』から『リスクを管理する』に変わりました。この変化は非常に大きいと感じています」
成功の共通点
両社に共通する成功要因
1. 明確な課題認識
両社とも、「現状では不十分」という課題認識が経営層を含めて共有されていました。単なる「業務効率化」ではなく、「コンプライアンスリスクの低減」という観点から導入が進められました。
2. パイロット導入の活用
いきなり全社展開するのではなく、限定された範囲でパイロット導入を行い、効果を確認した上で展開を進めました。これにより、リスクを抑えながら導入を進めることができました。
3. 運用ルールの整備
ツール導入だけでなく、「AIの判定結果をどう扱うか」「どのランクの案件をどう処理するか」といった運用ルールを整備しました。ツールと運用の両輪が、効果を最大化しました。
4. 継続的な改善
導入後も、定期的に効果を検証し、改善を続けています。「誤検出が多いカテゴリ」「見落としがあったケース」などを分析し、運用の改善に活かしています。
よくある質問
Q:導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A:初期設定は数日で完了します。取引先データの整備状況によりますが、トライアル開始から本番運用開始まで、通常1〜3ヶ月程度です。
Q:既存のシステムとの連携は可能ですか?
A:主要なERPやCRMとの連携に対応しています。詳細はお問い合わせください。
Q:導入にはどのような体制が必要ですか?
A:IT部門の関与は最小限で済みます。輸出管理担当者がメインとなり、TIMEWELLのサポートチームがバックアップする形で進めることができます。
結論:テクノロジーが変える輸出管理
A社とB社の事例は、AIテクノロジーが輸出管理業務を変革し得ることを示しています。工数削減と精度向上の両立。これは従来のアプローチでは困難でしたが、X-Checkの導入により実現しました。
もちろん、ツール導入だけで全てが解決するわけではありません。両社の成功の背景には、経営層のコミットメント、現場担当者の積極的な活用、継続的な改善への取り組みがありました。ツールと人の協働が、成果を生み出したのです。
輸出管理体制の強化にご興味のある方は、ぜひ私たちTIMEWELLにご相談ください。御社の課題に応じた解決策をご提案いたします。
参考文献 [1] 経済産業省, 「輸出管理内部規程の参考例」, 2025 [2] JETRO, 「輸出管理の実務ガイド」, 2025