株式会社TIMEWELLの濱本です。
「中国のGoogle」とも言われている百度(Baidu)は、3月16日(日)に新たな人工知能(AI)モデル「ERNIE 4.5」と「ERNIE X1」の2種類を発表しました。これらのモデルは高度な理解力と推論能力を備えており、特に注目すべきは主要AIモデル(OpenAiなど)と同等以上の性能を、圧倒的に低いコストで提供する点です。この動きは、世界的なAI開発競争に新たな局面をもたらし、AIの民主化を加速させる可能性を秘めています。この記事では、新しいモデル2種について解説します。
百度(Baidu)とは?
百度(Baidu)とは、検索エンジンを提供する企業で、2000年1月に創業されました。創業者のロビン・リー(李彦宏)氏が率いるこの企業は、中国のインターネット産業において重要な役割を果たしています。検索エンジンのBaiduの特徴は以下の通りです。
・中国検索シェア率:No.1
・月間アクティブユーザー:6億人以上
・1日の平均検索回数:100億回以上
・中国人ユーザーの約90%が利用
このようにBaiduは中国で圧倒的な人気を誇ります。その理由の一つとして、中国政府のインターネット規制があります。中国はGoogleやFacebookなど、海外の大手IT企業のサービスが利用できない環境であるため、Baiduが発展を遂げてきました。
Baiduの検索エンジンが中国で利用されているのは、単なる検索エンジンを超え複合的なサービスを提供し、しかも中国のインターネット利用者が必要とする情報を的確に提供しているからです。検索結果からそのままWebやニュース、画像、動画だけではなく、音楽、文書データベース、百科事典、文書共有サービス、そして知恵袋的なものまで「知りたい」と思えるあらゆることが検索できます。日本でいうと、レイアウトはGoogle、機能はYahooを組み合わせたようなサービスをBaiduは提供しているイメージです。
また百度(Baidu)は、ソーシャルメディア事業以外にも、Webマーケティング事業、自動運転車事業、自動運転車事業など様々な事業を展開しています。
次世代マルチモーダルモデル「ERNIE 4.5」の革新性
百度(Baidu)が発表した「ERNIE 4.5」は、テキスト、画像、音声、動画などを統合的に理解できるネイティブマルチモーダル基盤モデルとして開発されました。
百度によれば、このモデルはOpenAIのGPT-4.5と比較して複数のベンチマークで優れたパフォーマンスを示しながら、価格はGPT-4.5のわずか1%に抑えられています。具体的な価格設定では、価格はトークンの入力で、1000トークンあたり0.004人民元(0.08円、1人民元20円換算)から、出力で1000トークンあたり0.016人民元(0.32円、同)から。GPT-4.5のAPI利用料(入力で1000トークンあたり11.25円、出力で1000トークンあたり22.5円、1ドル150円換算)と比較すると破格の安さです。
また強力な知能と文脈認識力も備えており、インターネットミームや風刺漫画といった文化的コンテキストを必要とする複雑なコンテンツを容易に理解できる点も特徴的です。これはAIの文化的理解力の向上を示す重要な進展と言えるでしょう。「ERNIE 4.5」は、企業ユーザーと開発者向けには、ERNIE 4.5は現在、Baidu AI CloudのMaaSプラットフォームQianfanのAPI経由でアクセス可能です。
深思考推論モデル「ERNIE X1」の先進性
ERNIE X1は、百度の新しい深思考推論モデルとして、理解、計画、反省、進化の強化に焦点を当てています。中国のAIであるDeepSeekの「DeepSeek R1」モデルと同等の性能を提供すると主張しており、知識Q&A、文学創作、複雑な計算などの分野で優れた能力を発揮します。
特筆すべきは、自律的にツールを使用する百度初のマルチモーダル深思考推論モデルである点です。これにより、AIが単なる情報処理から、より複雑な問題解決へと進化していることを示しています。高度な検索、ドキュメントQ&A、画像理解など、実用的なタスクをより効率的にこなすことが可能になります。
ERNIE X1もチャットAIサービス「ERNIE Bot」上にて近日中に公開予定となっています。入力価格は1000トークンあたり0.002人民元(0.04円、1人民元20円換算)から、出力価格は1000トークンあたり0.008人民元(0.16円、同)となります。
ERNIE 4.5とERNIE X1の追加により、ERNIE Botは予定より早く一般向けに無料提供されることになります。同社はERNIE Botを4月1日から個人ユーザーに完全に無料化する計画も発表しました。
まとめ
百度による革新的なAIモデルの発表は、技術面と価格面の両方で業界に大きな衝撃を与えています。特に、欧米企業が主導してきたAI開発競争に中国企業が本格的に挑戦する姿勢が鮮明になりました。ERNIE 4.5とERNIE X1が実現した高性能と低価格は、AIの民主化を加速させる可能性がある一方、極端な低価格化の持続可能性やデータプライバシー、検閲に関する懸念も存在します。
今後、AIモデルの低価格化とオープン化が進む中で、品質、セキュリティ、倫理的配慮のバランスをどう取っていくかが、AI業界全体の重要な課題となるでしょう。百度の今回の取り組みは、グローバルAI競争の新たな局面の始まりを告げるものかもしれません。
