株式会社TIMEWELLの濱本です。
カジノと聞けば、多くのビジネスマンは華やかでエキサイティングなエンターテイメントの世界を思い浮かべるかもしれません。ラスベガスやマカオといった世界的なカジノ都市では、巨額の資金が動く非日常的な空間が広がっています。しかし、その煌びやかな世界の裏側には、常に「不正」という影がつきまといます。カジノ側は数学的な優位性(ハウスエッジ)によって長期的に利益を確保するビジネスモデルを確立していますが、それでもなお、より大きな利益を不正に得ようとする者、あるいはハウスエッジを覆そうとするプレイヤーによる巧妙な試みが後を絶ちません。
本記事では、かつてカジノの不正摘発に携わった専門家、Sal Piacente氏の解説に基づき、カジノで行われる様々な不正行為の手口から、それに対抗するカジノ側のセキュリティ対策、さらにはプレイヤーが駆使する高度な技術に至るまで、その深層を徹底的に掘り下げます。単なるエンターテイメントとしてだけでなく、リスク管理や人間心理、テクノロジーの進化といったビジネスの観点からも興味深いカジノの裏側を、具体的な事例を交えながら詳細に解説していきます。この記事を通じて、カジノという特殊な環境における「攻防」の最前線をご理解いただければ幸いです。
古典的手法から最新技術まで:巧妙化するカジノの不正行為の実態 カジノセキュリティの最前線:不正を見抜く監視技術と人間の目 プレイヤー側の「技術」とカジノの攻防:カードカウンティングとエッジソーティングの深層 まとめ 古典的手法から最新技術まで:巧妙化するカジノの不正行為の実態
カジノにおける不正行為の歴史は古く、その手口は時代とともに巧妙化、多様化してきました。Sal Piacente氏が指摘するように、かつてマフィアがカジノを牛耳っていた時代には、カジノ側が組織的に不正を行うこともありました。その代表的な例がブラックジャックにおける「クーラー」と呼ばれる手口です。これは、事前に特定の順番に並べられたカードの束(デック)をゲームに紛れ込ませるもので、例えば10の価値を持つカード(10、ジャック、クイーン、キング)を偏らせて仕込み、プレイヤーがどれだけ大きな賭けをしてもカジノ側が必ず勝つように操作するのです。具体的には、「10、10、8、10、10、9、4、A、5、2、3、6、7」といった特定のカード配列を4回繰り返しセットしたデックを使用すると、どのようにカードを配ってもプレイヤーはディーラーに勝てない状況を作り出せます。
しかし現代のカジノは、ハウスエッジという数学的な優位性があるため、このようなリスクを冒してまで不正を行う必要性は低いとされています。カジノゲームはすべて、統計的にカジノが勝つように設計されているのです。それでも、短期的な幸運によってプレイヤーが勝ち続けることはあり得ますが、それが長期にわたって続く場合、何らかの異常が疑われ、専門家の出番となります。
ディーラーがプレイヤーと共謀して行う不正も後を絶ちません。最も単純な手口は、配当をごまかすことです。例えば、プレイヤーが75ドルの勝ち金を得た場合、正規の配当は75ドルですが、監視の目が緩い状況で共謀しているプレイヤーに対して、こっそり100ドルを支払うといった行為です。より巧妙な手口としては、「トロイの木馬チップ」とも呼ばれる不正なチップカップを使用する方法があります。これは、見た目は5枚のチップの束に見えますが、実際には中が空洞になっており、その内部に高額なチップを隠し持つことができる仕掛けです。ディーラーは、25ドルの勝ち金を支払うように見せかけながら、実際にはこの不正チップカップを使って400ドルもの大金を共犯者に渡すことができるのです。
さらに、「セカンドディール」という高度なカード捌きの技術を使った不正も存在します。これは、デックの一番上のカードを配るふりをして、実際には二番目のカードをプレイヤーに配る技です。もしディーラーが一番上のカードが自分に有利なカード(例えば9)だと知っていて、それを温存したい場合、巧みに二番目のカードを滑り込ませるのです。この技術は非常に高度で、熟練したディーラーでなければ見破ることは困難です。「トップカードが埃をかぶるほどセカンドディールが上手いディーラーがいた」という古いジョークがあるほど、古くから存在する手口です。
サイコロゲーム、特にクラップスにおける不正も多様です。「ローデッドダイス」と呼ばれる、特定の面が出やすくなるように重りを仕込んだサイコロがその一例です。カジノで使用されるサイコロは完璧な精度で作られていますが、不正なサイコロは特定のスポットを深く掘り、そこに重金属の合金を埋め込むことで、特定の面が重くなるように作られています。
これを見抜くためには、「バランサー」という器具が用いられます。正規のサイコロをバランサーに乗せて回転させると均等に回転しますが、ローデッドダイスはバランスが悪く、特定の面が下になりやすい傾向があります。例えば、「デッドエース」と呼ばれるサイコロは、1の目が出やすくなっています。
しかし、これだけでは確実性に欠けるため、より確実な不正として「セブンアウトできないサイコロ」が使われることがあります。これは、通常のサイコロであれば反対側にあるはずの数字(例えば4の裏は3、5の裏は2)が、別の数字(例えば4の裏も4、5の裏も5)になっているサイコロです。これにより、特定の組み合わせしか出なくなり、絶対に7が出ないように操作できるため、プレイヤーは確実に勝ち続けることができます。
クラップステーブルの周りに鏡が設置されているのは、ディーラーやピットボスがサイコロの反対側の面を鏡越しに確認し、このような不正なサイコロが使われていないかをチェックするためです。これらの不正なサイコロをゲームに持ち込む手口としては、「パームスイッチ」と呼ばれる、手のひらで巧みにサイコロをすり替える方法があります。これは非常に高度な技術を要するものです。
プライベートゲームでは、「マグネティックダイス(磁石付きサイコロ)」が使われることもあります。サイコロの特定の面に金属を仕込み、テーブルの下や側面に隠した磁石を操作することで、出目をコントロールするのです。タイでは、手に磁石を埋め込んでサイコロカップを使ったゲームで40年間も不正を働いていた男がいたという事例や、車椅子のバッテリーを利用して磁石を操作し、大金を騙し取ったという事件も報告されています。
映画「オーシャンズ11」のような大規模なカジノ強盗は現実的に可能なのでしょうか。Sal Piacente氏は、マカオで実際に起きた驚くべき詐欺事件を例に挙げています。
あるカジノで、詐欺師グループがVIPプレイヤーをターゲットに、ホテルのスイートルームを偽のカジノに改造し、2500万ドルもの大金を騙し取ったというのです。偽の監視カメラ、偽のスーパーバイザー、偽のカクテルウェイトレスまで用意周到に準備し、ターゲットを完全に欺きました。カジノ側は、そのフロアにVIPスイートが存在しないと主張しましたが、詐欺師たちは部屋の家具を全て寝室に押し込み、カジノフロアを完璧に再現していたのです。監視カメラの映像も、プレイヤーが部屋に入る場面しか残っておらず、実際のプレイの証拠は何もなかったといいます。これはまさに映画のような大胆不敵な手口です。
カード自体に仕掛けを施す「マークドカード」も古典的かつ効果的な不正手口です。指に塗る特殊なペーストを使い、プレイ中に特定のカードに目印をつける方法があります。このペーストはチップの中に隠され、ディーラーや他のプレイヤーに気づかれずに使用されます。例えば、4と6のカードに印をつけた場合、カードがシャッフルされた後でも、その印を見れば瞬時にカードを特定できるのです。
また、目の細かいエメリーボード(やすり)を使ってカードの裏面の一部をわずかに削り、特定のカード(例えばエース)だけが砂時計のような形になるように加工する「イン・ストリッパー」という手口もあります。こうすることで、シャッフル後にデックを中央で掴むと、加工されたエース以外のカードに触れることになり、エースだけを抜き出すことが可能になります。さらに進んだ技術として、特殊なインクでマークされたカードと、そのマークを読み取るための特殊なコンタクトレンズを使用する方法もあります。肉眼では見えないマークも、このコンタクトレンズを装着すれば、テーブルの反対側からでもはっきりとカードを識別できるのです。
スポーツベッティングにおける不正は、カジノ内のゲームとは異なり、主にアスリートの買収によって行われます。有名な例としては、1919年のMLBワールドシリーズでホワイトソックスの選手が八百長を行った「ブラックソックス事件」が挙げられます。
ポーカーにおいては、「チップダンピング」という不正行為が存在します。これは、共謀するプレイヤー間で意図的にチップを一方のプレイヤーに集め、そのプレイヤーをチップリーダーに仕立て上げる手口です。例えば、3人の共犯者が同じテーブルにいた場合、2人が自分のチップを3人目のプレイヤーにわざと負けることで譲渡し、そのプレイヤーがトーナメントで有利になるように操作します。
これらの不正行為は、カジノの収益に深刻な打撃を与える可能性があり、カジノ側は常に警戒を怠りません。
カジノセキュリティの最前線:不正を見抜く監視技術と人間の目
カジノは、その巨額の資金が動く特性上、常に不正行為のリスクに晒されています。そのため、カジノセキュリティは非常に高度な監視体制と専門知識を駆使して、不正の芽を摘み取ろうと日夜努力を続けています。Sal Piacente氏が語るように、カジノセキュリティの仕事は「日常からの逸脱」を見つけ出すことにあります。
まず、ディーラーの不審な行動は厳しくチェックされます。ディーラーがゲームを中断して特定の人物(例えば監視スタッフ)に視線を送る行為は、何か不正を働こうとしている、あるいは監視の目を気にしているサインと捉えられます。ディーラーはプレイヤーの不正にも目を光らせており、プレイヤーが注意を逸らそうとする行為(ディストラクション)、ベットに不自然に手を近づける行為(ベットの追加や引き抜きを狙っている可能性)、あるいはテーブルから手を離す行為(カードのすり替えやマーキングの可能性)などは、不正の兆候として警戒されます。カードは常にプレイヤーの視界に入る場所に置かれなければなりません。
偽造チップ対策もカジノセキュリティの重要な任務です。カジノチップは現金同様の価値を持つため、偽造されれば大きな損害につながります。そのため、現代のカジノチップにはRFID(Radio Frequency Identification)タグが埋め込まれており、特殊なリーダーで読み取ることで真贋判定やチップの追跡が可能になっています。また、カジノは保有するチップの総数を正確に把握しており、定期的な在庫調査(インベントリー)によって、もしチップの数が増えていれば偽造チップの混入を疑います。かつて中国本土で、どんなカジノチップでも複製できると豪語する業者がいたそうですが、RFIDのような技術は偽造を困難にしています。
カジノは、不正行為を行ったプレイヤーや要注意人物の情報をデータベース化して共有しています。かつては「グリフィン」と呼ばれるバインダー形式のブラックリストが存在し、各カジノが購読して情報を共有していましたが、現在では「Biometrica」のようなデジタルデータベースが主流です。このシステムに登録されると、顔認証技術などを用いて、他のカジノに入店しようとした際に即座に特定され、入場を拒否されたり、退去を求められたりします。つまり、一度不正行為者としてリストに載ると、多くのカジノでプレイすることが困難になるのです。
カジノ内の監視カメラの数は膨大です。小規模なカジノでも数百台、マカオのような大規模カジノでは数千台ものカメラが設置されています。これらのカメラは高解像度で、ズーム機能も備えており、事件発生後に映像を詳細に分析することが可能です。かつてのVHSテープの時代は録画期間が1週間程度で上書きされていましたが、現在はデジタル録画により長期間の映像保存が可能になっています。また、複数のカジノを所有する企業では、監視室を一元化し、一つの監視室で複数の施設の状況をモニタリングするケースも増えています。たとえ異なる企業が運営するカジノであっても、監視部門同士は情報を共有し連携しているため、あるカジノで問題を起こしたプレイヤーが別のカジノに移っても、すぐに情報が伝達される可能性があります。
近年のカジノ監視における最大の脅威の一つは、小型カメラを使用した情報送信です。シンガポールのカジノでは、プレイヤーが小型カメラでカード情報を記録し、外部の協力者に送信、協力者はその情報をExcelスプレッドシートに入力して分析し、プレイヤーにベットのタイミングや金額を指示するという手口で、摘発されるまでに50万ドルもの被害が出た事例があります。しかし、テクノロジーに頼らない古典的な不正として、ディーラーが共犯者と結託し、負けたベットに対しても配当を支払う「ダンピング」も依然として横行しています。数千台のカメラがあっても、監視スタッフが不足していれば見逃される可能性も否定できません。
さらに、AI(人工知能)を活用した監視システムも導入が進んでいます。AIはカードカウンティングを行っているプレイヤーを自動的に検知したり、不審な行動パターンを分析したりすることができます。ラスベガスのあるカジノでは、プレイヤーの運転免許証をスキャンし、顔認証と組み合わせることで、プレイヤーの入退場時間、滞在時間、行動範囲などを完全に把握しているといいます。このように、カジノセキュリティは、人間の目と最新技術を融合させ、不正行為との終わりなき戦いを続けているのです。
プレイヤー側の「技術」とカジノの攻防:カードカウンティングとエッジソーティングの深層
カジノにおけるプレイヤーとハウス(カジノ側)の攻防は、単なる運任せのゲームを超えた知的な駆け引きの様相を呈することがあります。特にブラックジャックにおいては、「カードカウンティング」という技術が古くから知られています。これは、既に出たカードを記憶・計算することで、シュー(カードの束)に残っているカードの構成を予測し、プレイヤーに有利な状況で賭け金を増やす戦略です。
カードカウンティング自体は、デバイスを使用しない限り、頭脳を使う行為であり違法ではありません。しかし、カジノ側にとっては大きな脅威となるため、様々な方法で対策しています。基本的なカードカウンティングでは、2から6のカードに+1、7から9のカードに0、10とエースに-1の値を割り当て、カードが配られるたびにその値を合計していきます(ランニングカウント)。そして、残りのデック数でランニングカウントを割ることで「トゥルーカウント」を算出します。トゥルーカウントが+2以上になるとプレイヤーに有利と判断し、賭け金を増やします。
重要なのは、カードカウンティングは脳を使って行う限り、多くの国で違法行為ではないという点です。しかし、カジノ側はハウスエッジを維持したいため、カードカウンターを歓迎しません。カジノによっては、カードカウンティングを理由にプレイヤーを退場させることは禁じられていても、「あなたのスキルは我々にとって高すぎる」として、ブラックジャックのプレイを禁止し、他のゲームならプレイ可能とする「バックオフ」という措置を取ることがあります。
カードカウンティングを組織的に行い、カジノから巨額の利益を上げた例として有名なのが「MITブラックジャックチーム」です。彼らは1990年代初頭に活動し、映画「ラスベガスをぶっつぶせ(原題:21)」や書籍「Bringing Down the House」でその名を知られるようになりました。
彼らの成功の秘訣は、わずか1%程度の優位性であっても、大きな資金力と多数のプレイヤーを動員し、長時間にわたってプレイを続けることで、確実に利益を積み重ねた点にあります。チームは、各ブラックジャックテーブルに「カウンター」と呼ばれる少額でプレイするメンバーを配置し、状況が有利になると「BP(ビッグプレイヤー)」と呼ばれる大口の賭けをするメンバーを呼び寄せます。カジノ側にチームであることを悟られないよう、巧妙に連携していました。
カードカウンティングとは別に、近年注目を集めたのがフィル・アイビーという世界的に有名なポーカープレイヤーがバカラで用いた「エッジソーティング」という技術です。これは、トランプカードの製造過程で生じる裏面の模様のわずかな非対称性を利用するものです。
カジノで一般的に使用される「ダイヤモンドバック」と呼ばれるカードは、裁断の都合上、カードの長辺の端に来るダイヤモンド模様が、片方は完全な形、もう片方は半分の形になっていることがあります。もしカジノ側に特定のカード(例えばバカラで重要な8や9)だけを特定の向きに揃えさせることができれば、シャッフルされた後でも、カードの裏面の端の模様を見るだけで、そのカードが高価値カードか低価値カードかを識別できるのです。
フィル・アイビーと彼のパートナーであるケリー・サンは、このエッジソーティングを駆使し、カジノから数百万ドルもの大金を手にしましたが、この行為が不正か否かについては、カジノ業界でも意見が分かれており、大きな議論を呼びました。
その他にも、プレイヤー同士が不正に情報を伝達する手段として「サンパー」と呼ばれる電子装置が使われることがあります。これは、太ももなどに装着し、ポケットに入れた送信機を操作することで、振動(サンプ)によるモールス信号のような形で仲間に情報を伝えるものです。ポーカーで相手の手札の情報を伝えたり、特定のタイミングでレイズやフォールドを指示したりするのに使われます。映画「カジノ」でも、あるプレイヤーが別のテーブルにいる仲間に情報を送る場面が描かれています。
さらに高度な不正装置として、「パーフェクトストラテジーコンピューター」が存在します。これは、配られた全てのカードを記憶・分析し、最適なブラックジャックのプレイ戦略を算出するコンピューターです。通常、靴の中に仕込まれ、つま先で操作するスイッチでカード情報を入力し、かかとに仕込まれた小型バイブレーターでプレイの指示(ヒット、スタンド、ダブルダウンなど)を受け取ります。これらの装置の使用は多くの地域で違法とされており、発覚すれば逮捕・訴追される可能性があります。
カジノ側もこれらの不正行為に対抗するため、フォルスシャッフル(偽のシャッフル)を見抜く訓練を積んだり、ルーレットの出目を予測しようとするコンピューターへの対策として、ホイールの構造を改良したり(ボールの軌道を不規則にするディフレクターの追加など)、ディーラーにボールが落ちる直前までベットを許可しないよう指導したりしています。スロットマシンに関しては、カジノ側がペイアウト率を調整することは技術的に可能ですが、全く当たらないように操作することは違法です。一般的に、入り口に近いスロットマシンは比較的当たりやすく設定し、客寄せに利用し、高額ジャックポットのあるマシンは当たりにくく設定されていると言われています。
このように、カジノにおけるプレイヤーとハウスの攻防は、単純な運試しを超えた、知識、技術、心理戦、そして時には不正行為が絡み合う複雑な世界なのです。
まとめ
本記事では、元カジノ不正調査専門家Sal Piacente氏の解説を基に、カジノの華やかな世界の裏に潜む多様な不正行為の手口と、それに対抗するカジノ側の高度なセキュリティ対策、そしてプレイヤーが駆使する驚くべき技術について詳述してきました。
古典的な「クーラー」や「セカンドディール」から、巧妙な「トロイの木馬チップ」、ハイテクな「マークドカードと特殊コンタクトレンズ」、さらには組織的な「エッジソーティング」や「サンパー」の使用に至るまで、不正の手口は常に進化を続けています。
これに対し、カジノ側もRFIDチップや高度な監視カメラシステム、AIを用いた不正検知、そして「グリフィン」や「Biometrica」といった情報共有データベースを駆使し、鉄壁のセキュリティ体制を築こうと努めています。しかし、人間の創意工夫は尽きることがなく、新たな不正の手口が生まれれば、それに対応する新たな対策が講じられるという、まさに「いたちごっこ」が繰り返されているのが現状です。
カードカウンティングのように、合法的ながらもカジノ側が警戒するプレイヤーの技術も存在し、カジノとプレイヤーの間には常に緊張感のある駆け引きが展開されています。フィル・アイビーのエッジソーティング事件は、その境界線がいかに曖昧で、解釈によって「不正」と「高度な技術」の間を揺れ動くかを示す象徴的な例と言えるでしょう。
ビジネスの観点から見れば、カジノは巨額の利益を生み出す一方で、常に不正というリスクに晒されている業界です。そこでは、最新テクノロジーの導入、厳格なリスク管理、そして何よりも人間の観察眼と判断力が、ビジネスの成否を左右する重要な要素となります。今後もテクノロジーの進化と共に、不正の手口とそれに対するセキュリティ対策はますます高度化していくことが予想されます。カジノという特殊な環境における「知恵」と「技術」の攻防は、私たちに多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。
