株式会社TIMEWELLの濱本です。
「未来を切り拓く挑戦」始動アルムナイとして、革新的なマイクロバイオーム事業を推進する田村洋人氏に迫る。大手企業からスタートアップの世界へ飛び込み、腸内細菌叢の可能性に賭ける田村氏の思いとは?新規事業担当者や起業家必見のインサイト満載のインタビュー記事をお届けする。
健康と挑戦:メタジェンセラピューティクスへの転職を選んだ理由 未来への架け橋:始動プログラムとシリコンバレーでの学び 今後の展望とCHANGERコミュニティへの感謝
田村洋人(たむら ひろと)
メタジェンセラピューティクス株式会社(MGTx)Chief Operationg Officer
腸内細菌叢バンクの構築、腸内細菌叢移植(FMT)の社会実装、マイクロバイオーム創薬の推進 ※マイクロバイオーム:人間の体内や体表に存在する細菌叢
東京大学大学院 修士(情報理工)、東京工業大学 技術経営修士(専門職)大手精密機器メーカーでの研究開発、企画管理、事業開発を経験、2022年1月MGTx入社
健康と挑戦:メタジェンセラピューティクスへの転職を選んだ理由 ーーーーー大手企業からスタートアップへの転職を決めた理由は何ですか?
私がニコンからメタジェンセラピューティクスに転職した理由は、自分自身の健康問題と、それを解決する過程で腸内細菌の重要性を知ったことにあります。実は、数年前に体調を崩し、その治療過程で腸内細菌の研究に大きく関心を持つようになりました。特に、自分の体調不良の原因が腸内細菌叢が乱れたことなのではないかとの考えに至り、この分野で何かできないかと強く思うようになりました。
▼腸内細菌叢移植の図
その過程で、私は腸内細菌叢移植(FMT)やマイクロバイオーム創薬の可能性に目を向けるようになり、この新しい分野でのキャリアを追求することを決意しました。メタジェンセラピューティクスは、まさにこのような先端的な研究開発を行っている企業であり、私の興味と完全に一致していました。
また、CHANGEのプログラムの経験を通じて、スタートアップのダイナミックな環境と、そこで働く人々の情熱に触れる機会がありました。これらの経験が、大企業を離れてスタートアップで働くという私の決断を後押ししました。ニコンでの経験は非常に価値があったものの、私が本当に追求したいのは、マイクロバイオーム研究を通じて直接的に人々の健康に貢献することでした。
要するに、メタジェンセラピューティクスに転職したことは、私にとって新しい挑戦です。腸内細菌叢の研究と応用は、まだ発展途上の分野であり、多くの未知数があります。しかし、この分野が持つ膨大な可能性を信じていますし、この挑戦を通じて、医療の未来に貢献できることを強く願っています。
ーーーーー現在の仕事に対して情熱や楽しさを感じていますか?
はい、今は非常に楽しいです。この楽しさは、私が追求している分野に対する情熱から来ています。マイクロバイオーム研究という未知なる領域で仕事をしていること、そしてその研究が将来的に人々の健康に大きな影響を与える可能性があると考えると、毎日が非常に楽しいです。
また、スタートアップで働くことのダイナミズムも、私にとって大きな魅力です。大企業での経験も価値があったものの、スタートアップの柔軟性、速度、そして何よりも直接的に事業の成果を感じられる点が私にとって新鮮で、刺激的です。チームで一丸となって一つの目標に向かう過程で、多くの挑戦がありますが、それを乗り越えた時の達成感は計り知れません。
具体的には、腸内細菌叢の研究とその応用によって、医療の新しい可能性を切り開いていくことに、深いやりがいを感じています。特に、腸内細菌叢移植(FMT)やマイクロバイオーム創薬の分野では、まだ解明されていない多くのことがあります。これらの研究が将来的にどのような治療法や新薬につながるのかを考えると、強い使命感を感じます。
さらに、私自身がマイクロバイオーム研究の重要性を自身の体験を通じて感じているため、この分野での進歩がいかに人々の生活を改善できるかを身をもって知っています。そのため、この分野で仕事ができることに、大きな意義を感じています。
結局のところ、私にとっての楽しさは、未知の領域を探求し、新しい発見を通じて社会に貢献できる可能性にあります。そして、その過程で学び、成長し、チームと共に目標を達成していくこと自体が、私にとって最高の楽しみです。
▼メタジェンセラピューティクス社の事業コンセプト
ーーーーーこれまでに最も感動的な経験は何でしたか?
事業をやる上で最も感動した瞬間は、医療の現場で難病の患者さんが直面している現実を目の当たりにした時です。医師や研究者が、患者さん一人一人に合わせて、手を尽くして治療を施している姿を見て、医療の力の素晴らしさと、同時に私たちがまだ乗り越えなければならない課題の大きさを痛感しました。
この経験から、私たちの研究や事業が、どれほど多くの人々に希望を与え、実際に彼らの生活の質を改善できるかを改めて実感しました。特に、自分自身が体調不良に苦しんだ経験があり、その時に感じた無力感や憤りといった感情を思い出しました。しかし、その経験があったからこそ、患者さんの立場を深く理解し、彼らにとって本当に意味のある治療法を提供することの重要性をより強く感じることができるのです。
医療の現場で目の当たりにした患者さんたちの苦悩と、それに立ち向かう医療従事者の姿は、私が事業を進める上での大きな動機付けとなっています。私たちの事業が成功し、マイクロバイオーム研究が新しい治療法の開発につながることで、多くの患者さんが苦しみから解放され、健康で幸せな生活を送ることができるようになることを強く願っています。これらの経験は、私にとって事業をやる上で最も感動的な瞬間であり、今後もこの目標に向かって邁進していく大きな原動力となっています。
未来への架け橋:始動プログラムとシリコンバレーでの学び ーーーーー2023年度の始動プログラムと起業家シリコンバレー派遣プログラム「始動 Next Innovator 2023」はいかがでしたか?
今年度は始動プログラムに参加し、さらにシリコンバレーにも行く機会を得ることができました。この経験は私にとって非常に価値があるものでした。特に、始動プログラムに参加したことで、自分が追求しているテーマに対する理解を深め、新たな視点を得ることができました。また、シリコンバレーでは、世界の最先端を行く企業や研究者たちと交流し、腸内細菌叢研究の最新の動向や、マイクロバイオーム創薬の可能性について学ぶことができました。
シリコンバレー訪問では、特に腸内細菌叢やマイクロバイオームに焦点を当てた企業を訪れ、現地の研究者や起業家たちと直接話をすることができました。これらの交流を通じて、マイクロバイオーム研究の進展がいかに迅速に行われているか、また、この分野が直面している課題や、今後の発展の可能性について深い洞察を得ることができました。
シリコンバレーでの経験から、特に印象に残っているのは、マイクロバイオーム研究が抱える複雑さと、それを克服しようとする研究者たちの情熱です。この分野は非常に多くの未知が研究の進行には膨大な時間と資源が必要ですが、それにも関わらず、世界中の研究者たちが人類の健康を改善するために挑戦を続けていることに、大きな希望を感じました。
また、シリコンバレー訪問は、私がメタジェンセラピューティクスで目指すべき方向性についても多くの示唆を与えてくれました。世界のトレンドを肌で感じ、それを自社の事業や研究にどのように活かしていくかを考える良い機会となりました。
全体的に見て、始動プログラムへの参加とシリコンバレーでの経験は、私のキャリアにおいて非常に重要なステップとなり、今後の研究活動や事業展開に大きな影響を与えるものと確信しています。
▼メタジェンセラピューティクス社のパーパス
ーーーーーマイクロバイオーム研究において、日本が発展すると思われる理由は何ですか?
日本のドナーには、非常にユニークな特徴があり、これが私たちの研究や事業にとって大きな強みとなっています。特に、アメリカなど他の国々と比較した場合、日本にはいくつかの優れた点があります。
一つ目の大きな違いは、日本における食生活の違いです。日本食には昔から食物繊維を含む食材が多く含まれており、欧米人とは異なる珍しい腸内細菌叢をしています。この腸内細菌叢が仮に高い効果を発揮する場合、日本人の腸内細菌叢が世界にとって価値を持つ可能性があります。。
また、日本は腸内細菌叢の培養技術において、世界トップレベルの能力を持っています。これは、長い歴史を通じて培われた技術であり、特に生きた腸内細菌が医薬品として承認されている点は、世界的に見ても非常に珍しい状況です。実際、日本以外では、このような生きた腸内細菌を用いた医薬品の承認はほとんどありません。これは、日本が長年にわたって腸内細菌に関する研究とその応用においてリードしてきたことの証です。
これらの点は、日本が持つユニークな強みであり、私たちの研究や事業にとって非常に価値のある資源です。日本の特徴を活かし、世界に先駆けた腸内細菌叢関連の治療法や製品の開発を目指しています。これらの独自の強みを活用することで、私たちは腸内細菌叢の研究とその応用において、新たな価値を創出し、人々の健康に貢献していくことができると信じています。
今後の展望とCHANGERコミュニティへの感謝 ーーーーー今後の3年間と5年間で、どのような目標や展望を持っていますか?
今後について考えると、3年後、5年後のビジョンは非常に明確です。まず3年後には、私たちの主要な取り組みである腸内細菌叢の研究とその応用技術を社会に広く実装し、具体的な治療法や製品として提供できる段階にまで持っていきたいと考えています。これには、腸内細菌叢移植(FMT)の安全性と有効性を確立し、マイクロバイオーム創薬においても具体的な進展を遂げることが含まれます。特に、日本独自の規制や制度を活用し、保険適用を含めた社会実装の加速を目指します。そのためにも、ドナー募集の仕組みを今年の4月に開始しました: https://www.j-kinso-bank.com/
5年後には、これらの技術や治療法が一般に広く認知され、実際に多くの患者さんに利用されている状態を目指しています。具体的には、私たちの研究や開発した治療法が、腸内細菌叢に関連する様々な疾患に対して実際に適用され、患者さんの生活の質の向上に貢献していることを願っています。また、マイクロバイオーム創薬に関しても、新しい薬剤が開発され、実用化されていることを期待しています。
さらに、私個人としては、10年後には、腸内細菌叢の研究がさらに進み、個別化医療において重要な役割を果たしていることを目標としています。腸内細菌叢の個別のプロファイルを基にした治療法の開発や、よりパーソナライズされた健康管理の実現を目指しています。また、この分野での研究がさらに進むことで、未知の疾患に対する新たな治療法の開発にもつながることを強く希望しています。
このように、短期的にも長期的にも、私たちの研究と事業の目標は、腸内細菌叢に基づく新しい医療のパラダイムを創出し、それを通じて人々の健康と幸福に貢献することにあります。これらの目標を達成するために、日々の研究開発に邁進していきます。
ーーーーーCHANGERの皆さんに一言お願いします
CHANGERの皆さんへ、まずはお礼を申し上げます。今、私が感じているのは、CHANGERが私の成長に大きな影響を与えてくれたということです。同期の皆さん、そして後に続いて参加された方々に心から感謝しています。
CHANGEに参加し、指導を受ける中で、皆さんがどんどん成長していく様子を見て、非常に感動しています。特に、患者さんのコミュニティーや様々な分野で活躍している皆さんの活動は、多様で刺激的です。
私が選んだ道は、大企業からスタートアップへの転職という、いわば一般的な道ではありますが、これが非常に魅力的な選択肢であることを皆さんに伝えたいです。私自身、メタジェンセラピューティクスへの入社前には、自分の興味と情熱をじっくりと温めながら、その方向性を探求してきました。その結果、スムーズに追走できました。
CHANGERの皆さんも、自分自身の内面で育ててきた興味や情熱を持っていると思います。大企業で働くことも一つの選択ですが、自分のミッションを実現できるスタートアップに飛び込むことは、非常に価値のある経験になるでしょう。特にバイオテックのような人材がまだ少ない分野では、CHANGERから来た人材は非常に貴重です。
そうした意味で、これからもCHANGERの皆さんが、それぞれの分野で大きな影響を与えていくことを心から応援しています。また、将来的には、我々の事業と大企業とのコラボレーションも視野に入れています。皆さんと一緒に新しい価値を生み出していけることを楽しみにしています。
改めて、CHANGERの皆さん、これまでのご支援と今後のご協力に感謝いたします。これからも一緒に刺激し合い、成長し続けましょう。ありがとうございました。
担当ライター:臼井杏奈/本間由美子
