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Intelの積極的なセキュリティ保証への取り組み:ハードウェア脆弱性に立ち向かう

2026-01-21濱本

近年、ハードウェアの脆弱性がIT業界において大きな懸念となっています。特に2018年に発見されたSpectre(スペクター)とMeltdown(メルトダウン)は、CPUの設計上の欠陥を突いた深刻な脆弱性として、IT業界に大きな衝撃を与えました。こうしたハードウェアの脆弱性は、ソフトウェアの修正だけでは対処が難しく、根本的な解決にはハードウェアの設計段階からセキュリティ対策を講じる必要があります。  そこで重要になるのが、積極的なセキュリティ保証の取り組みです。世界最大の半導体メーカーであるIntelは、この分野で先進的な取り組みを行っています。Intelのセキュリティ研究チームを率いるAnders Fogh氏に、同社の取り組みについて伺いました。

Intelの積極的なセキュリティ保証への取り組み:ハードウェア脆弱性に立ち向かう
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

近年、ハードウェアの脆弱性がIT業界において大きな懸念となっています。特に2018年に発見されたSpectre(スペクター)とMeltdown(メルトダウン)は、CPUの設計上の欠陥を突いた深刻な脆弱性として、IT業界に大きな衝撃を与えました。こうしたハードウェアの脆弱性は、ソフトウェアの修正だけでは対処が難しく、根本的な解決にはハードウェアの設計段階からセキュリティ対策を講じる必要があります。

そこで重要になるのが、積極的なセキュリティ保証の取り組みです。世界最大の半導体メーカーであるIntelは、この分野で先進的な取り組みを行っています。Intelのセキュリティ研究チームを率いるAnders Fogh氏に、同社の取り組みについて伺いました。

ハードウェア脆弱性の現状とIntelの取り組み 3つの手法:フォーマルメソッド、テイントトラッキング、インターフェースの強化 手動調査の重要性 変化するハードウェア脆弱性の傾向 まとめ ハードウェア脆弱性の現状とIntelの取り組み

 Fogh氏によると、ハードウェア脆弱性の発見と対策は、攻撃者の能力に大きく左右されるといいます。攻撃者の能力が高まれば、新たな脆弱性が発見される可能性が高くなります。そのため、Intelでは攻撃者の視点に立って脆弱性を探索する「オフェンシブセキュリティリサーチ」に力を入れています。

オフェンシブセキュリティリサーチでは、製品の開発段階から潜在的な脆弱性を見つけ出し、対策を講じることを目指します。Fogh氏のチームは、製品のライフサイクル全体を通してセキュリティ品質の向上に取り組んでいます。2024年のIntel製品セキュリティレポートでは、同社が発見した21件のハードウェア脆弱性が、すべて社内の積極的なセキュリティ保証の取り組みによって発見されたことが明らかになりました。

3つの手法:フォーマルメソッド、テイントトラッキング、インターフェースの強化

 Intelでは、ハードウェア脆弱性の発見と防止のために、さまざまな手法を用いています。その中でも特に重要なのが、フォーマルメソッド、テイントトラッキング、インターフェースの強化です。

フォーマルメソッドは、数学的な手法を用いてハードウェアの設計を検証する手法です。設計をシステムの方程式に変換し、セキュリティプロパティを定義することで、脆弱性の有無を数学的に証明できます。Intelでは、フォーマルメソッドを用いて、開発中の製品だけでなく、既存の製品のセキュリティ検証にも活用しています。ただし、セキュリティプロパティの定義が難しいことや、方程式が複雑になりすぎると解が得られないことなど、課題も存在します。

テイントトラッキングは、CPUのシミュレーション上でデータの流れを追跡する手法です。機密データが本来アクセスできないはずの場所に流出していないかを確認することで、ステルスデータ問題と呼ばれる脆弱性を発見できます。Intelでは、テイントトラッキングを用いて、過去2年間にステルスデータ問題の脆弱性の発生を防いでいます。

インターフェースの強化は、CPU内部のインターフェースを精査し、データの伝播ルールを厳格に定義する取り組みです。適切なインターフェース定義とその厳格な実装により、ハードウェアのセキュリティを強固なものにしています。

手動調査の重要性

 フォーマルメソッドやテイントトラッキングといった自動化された手法が重要である一方で、手動での調査も欠かせません。Fogh氏によれば、Intelでは製品の開発段階からアーキテクチャレビューを行い、潜在的な脆弱性を早期に発見することに努めているそうです。また、実際のCPUに対してハッキングを試みることで、新たな脆弱性の発見にもつなげています。

手動調査には時間がかかりますが、Intelでは社内の専門家が協力して効率的に行っています。Fogh氏のチームは、必要に応じてCPUの設計者に直接問い合わせることで、理解を深めながら調査を進めています。一般的に、アカデミックな研究者がハードウェア脆弱性を発見するには1年以上かかるのに対し、Intelの社内チームはそれよりも短期間で発見できているそうです。

変化するハードウェア脆弱性の傾向

 Fogh氏は、過去5年間でハードウェア脆弱性の傾向が大きく変化したと指摘します。2018年頃のSpectre、Meltdown発覚当時は、サイドチャネル攻撃を利用した脆弱性が主でしたが、現在ではロジックの不具合に起因する脆弱性が増えています。

サイドチャネル攻撃を利用した脆弱性は、CPUの機能的な不具合ではなくセキュリティ上の問題でしたが、ロジックの不具合はセキュリティだけでなく機能的な問題にもつながります。Intelでは、こうした変化に対応するため、機能検証のための手法をセキュリティ検証にも活用しています。実際、2024年に同社が発見した21件の脆弱性のうち、サイドチャネル攻撃を利用したものはわずか3件だったそうです。

まとめ

 ハードウェアの脆弱性は、根本的な解決が難しい問題です。しかし、Intelのような半導体メーカーが積極的にセキュリティ保証に取り組むことで、脆弱性の発見と防止が着実に進んでいます。フォーマルメソッド、テイントトラッキング、インターフェースの強化、そして手動調査など、さまざまな手法を組み合わせることで、ハードウェアのセキュリティは着実に向上しているのです。

ハードウェアセキュリティの重要性が高まる中、業界を挙げた取り組みが求められています。Intelのセキュリティ研究チームの取り組みは、他の半導体メーカーにも大きな影響を与えるでしょう。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=hnyKOJiqqsw

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