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AI創薬の最前線:Isomorphic Labsが描くAlphaFold 3と「科学エージェント」による革命

2026-01-21濱本

人工知能(AI)が様々な産業に変革をもたらす中、ヘルスケア、特に創薬分野におけるその可能性に大きな注目が集まっています。かつてはSFの世界の話だった「AIによる新薬開発」が、今、現実のものとなろうとしています。その最前線を走る一社が、Google DeepMindからスピンアウトしたIsomorphic Labsです。同社は、特定の疾患やターゲットに限定されない、汎用的なAI創薬エンジンの構築という壮大なビジョンを掲げ、創業初日からその実現に向けて邁進しています。 昨年夏、彼らが発表した「AlphaFold 3」は、科学界に衝撃を与えました。従来のAlphaFoldがタンパク質の構造予測に革命を起こしたのに対し、AlphaFold 3はタンパク質だけでなく、DNA、RNA、低分子といった生命を構成するほぼ全ての分子種とその複雑な相互作用を高精度でモデル化することを可能にしたのです。この功績は、DeepMindのCEOでありIsomorphic Labsの創設者でもあるデミス・ハサビス氏のノーベル化学賞受賞にも繋がりました。 本記事では、Isomorphic Labsの最高AI責任者(C

AI創薬の最前線:Isomorphic Labsが描くAlphaFold 3と「科学エージェント」による革命
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

人工知能(AI)が様々な産業に変革をもたらす中、ヘルスケア、特に創薬分野におけるその可能性に大きな注目が集まっています。かつてはSFの世界の話だった「AIによる新薬開発」が、今、現実のものとなろうとしています。その最前線を走る一社が、Google DeepMindからスピンアウトしたIsomorphic Labsです。同社は、特定の疾患やターゲットに限定されない、汎用的なAI創薬エンジンの構築という壮大なビジョンを掲げ、創業初日からその実現に向けて邁進しています。

昨年夏、彼らが発表した「AlphaFold 3」は、科学界に衝撃を与えました。従来のAlphaFoldがタンパク質の構造予測に革命を起こしたのに対し、AlphaFold 3はタンパク質だけでなく、DNA、RNA、低分子といった生命を構成するほぼ全ての分子種とその複雑な相互作用を高精度でモデル化することを可能にしたのです。この功績は、DeepMindのCEOでありIsomorphic Labsの創設者でもあるデミス・ハサビス氏のノーベル化学賞受賞にも繋がりました。

本記事では、Isomorphic Labsの最高AI責任者(CAIO)であるMax Jaderberg氏へのインタビューに基づき、同社が目指すAI創薬の未来像、AlphaFold 3の真価、そして「科学のためのエージェント」という新たな概念まで、その野心的な取り組みの全貌に迫ります。これは単なる技術解説に留まらず、AIが科学研究、ひいては人類の健康にどのような変革をもたらそうとしているのかを探る旅となるでしょう。

ゲームAIから創薬へ:Max Jaderberg氏が歩んだ道と強化学習の可能性 AlphaFold 3の衝撃と「汎用創薬エンジン」への道 データ、チーム、そして「Move 37」の先にある未来 まとめ ゲームAIから創薬へ:Max Jaderberg氏が歩んだ道と強化学習の可能性

Isomorphic LabsでAI戦略の舵取りを担うMax Jaderberg氏のキャリアは、深層学習、特に強化学習(Reinforcement Learning、 RL)の研究と共にありました。DeepMindの初期メンバーとして、コンピュータービジョンや深層生成モデルの研究からキャリアをスタートさせたJaderberg氏ですが、最終的に彼を魅了したのは強化学習の世界でした。当時のDeepMindは、まさに強化学習研究の世界的なハブであり、その中心で彼は「AIにあらゆるタスクを実行させる」という究極の目標を追求していました。

Jaderberg氏が強化学習に惹かれた理由は、その学習パラダイムの根源的な違いにあります。当時主流だった教師あり学習では、モデルに「問い」と「正解」のペアを与え、正解を予測できるように訓練します。しかし、現実世界の多くの問題、特に創薬のような未知の領域を探求する分野では、そもそも「正解」が何であるか分かっていません。ここに強化学習の強みがあります。強化学習では、エージェント(AI)が取った行動に対して「良いか悪いか」「どれくらい良いか」というフィードバック(報酬)を与えるだけで、エージェントは試行錯誤を通じて最適な戦略を自ら学習していきます。正解を教える必要がないため、人間がまだ解き方を知らない問題や、人間の能力を凌駕するような複雑な問題への応用に大きな可能性を秘めているのです。

DeepMindが初期にAtariゲームの攻略で世界を驚かせたように、Jaderberg氏もまた、ゲームという環境をAI研究のテストベッドとして活用しました。彼は、ビデオゲームを「研究者が自由に操作し、様々なアルゴリズムを試し、異なる状況を設定できる、完璧にカプセル化されたマリアブルな世界」と捉えています。Pongやスペースインベーダーといった比較的単純なゲームから、より複雑な現実世界の問題に近いゲームへと、強化学習アルゴリズムのスケーリングを進めていきました。

特にJaderberg氏が情熱を注いだのは、「ゼロショット汎化」、つまり特定のタスクで訓練されたエージェントが、追加の訓練なしに未知の新しいタスクにも対応できる能力の獲得でした。従来の強化学習では、ゲームごとにエージェントを一から訓練するのが一般的でしたが、彼は「一度訓練したエージェントを持ち上げて、どんな新しいタスクにも置けるようにしたい」と考えました。これを実現するには、エージェントが「タスク空間」全体で汎化する能力、すなわち多種多様なタスクを経験する必要があります。画像やテキストではなく、「タスク」そのものが訓練データとなるのです。

人間が手作業で多数のミニゲームを作成したり、手続き的にタスクを生成したりする試みも行われましたが、その複雑性には限界がありました。そこでJaderberg氏が着目したのが、マルチプレイヤーゲームです。シングルプレイヤーゲームと異なり、マルチプレイヤーゲームでは他のプレイヤーが存在します。そのプレイヤーの戦略や行動パターンが変わるたびに、ゲームの様相は根本的に変化し、エージェントが対峙する「タスク」も無限に多様化します。チェスは何世紀もプレイされ続けていますが、対戦相手が変わることで常に新しい挑戦が生まれるのと同じ原理です。マルチプレイヤーゲームは、人間が設計するよりも遥かに豊かで複雑なタスク生成器となり得るのです。

この洞察に基づき開発されたのが、「Capture the Flag」や「AlphaStar (StarCraft II)」といった画期的なAIです。Capture the Flagは、マルチプレイヤーのファーストパーソン・シューティングゲームで人間レベルのパフォーマンスを達成し、強化学習の汎化能力とマルチエージェント環境への対応力を飛躍的に向上させました。続くStarCraft IIは、リアルタイムストラテジーゲーム特有の膨大な状態空間、不完全情報、長期的な戦略といった更なる複雑性をAIに突きつけ、Jaderberg氏らは見事にこれを乗り越えました。

これらのゲームAI研究で培われた経験と、深層学習の核となるコンセプト(トランスフォーマーアーキテクチャなど)が、異なる応用分野間でも驚くほど転移可能であるという確信が、Jaderberg氏を次のステージへと導きました。彼は、「素晴らしい人材、アルゴリズム、計算能力を、本当に困難な問題に向ければ、今や多くの問題を解決するレシピを見つけられる」と語ります。そして、その応用先として彼が見据えたのが、人類の健康に直接貢献できる創薬という壮大なフロンティアだったのです。デミス・ハサビス氏という稀代のビジョナリーとの10年来にわたる協力関係も、この挑戦を後押ししました。ハサビス氏の持つ「ロールアウト思考」(チェスプレイヤーのように未来の展開を読み、現在の手を打つ能力)と、科学の限界を押し広げることへの飽くなき野心は、Isomorphic Labsの原動力となっています。

AlphaFold 3の衝撃と「汎用創薬エンジン」への道

Isomorphic Labsが掲げる目標は、単一の医薬品開発に留まりません。「全ての病気を解決する」という、極めて野心的なビジョンを創業当初から追求しています。彼らが開発するAI技術は、生物学の根本的な理解を深め、その知見に基づいて化学(分子設計)を精密に操作し、病気の原因となる生物学的プロセスを調節する能力を飛躍的に向上させることを目指しています。これは、特定の適応症や特定のターゲットタンパク質に特化した従来の創薬アプローチとは一線を画します。彼らが目指すのは、「汎用的な創薬エンジン」、すなわち、特定のターゲットやモダリティ(低分子、抗体など)に縛られず、あらゆる疾患領域に繰り返し適用できるAIプラットフォームの構築です。

この壮大なビジョンを実現する上で、金字塔となったのがAlphaFold 3です。AlphaFold 2がタンパク質の3次元構造予測に革命をもたらし、その後のMultimerバージョンがタンパク質複合体の構造予測を可能にしたのに対し、AlphaFold 3はさらにその先へと進みました。タンパク質だけでなく、遺伝情報を担うDNAやRNA、そして医薬品として重要な低分子化合物(リガンド)など、生命を構成する主要な分子がどのように相互作用し、複雑な分子機械を形成するのかを、原子レベルの精度で予測することを可能にしたのです。

例えば、多くの低分子医薬品は、体内の特定のタンパク質に結合することでその機能を調節し、薬効を発揮します。創薬化学者は、ターゲットタンパク質に精密に結合し、望ましい効果を発揮しつつ、副作用(他のタンパク質への意図しない結合など)は最小限に抑える分子を設計する必要があります。従来、この「分子がタンパク質にどのように結合するか」を正確に知ることは非常に困難でした。実験的に構造を決定するには、X線結晶構造解析などの手法がありますが、これには数ヶ月から数年単位の時間と多大なコストがかかり、場合によっては構造決定自体が不可能なこともありました。

AlphaFold 3は、このボトルネックを劇的に解消します。化学者は、設計した分子の情報をコンピューターに入力するだけで、それがターゲットタンパク質や、DNA/RNAを含む生体分子システム全体とどのように相互作用するのかを、数分から数時間で、実験に匹敵する、あるいはそれを超える精度で3D構造として可視化し、理解することができます。設計に変更を加えれば、その影響も即座にシミュレーションできます。これにより、設計サイクルの大幅な短縮と、より合理的な分子設計が可能になります。転写因子(DNAに結合して遺伝子の読み取りを制御するタンパク質)のような、これまで創薬ターゲットとして扱いが難しかった分子種に対するアプローチも開かれます。

しかし、Jaderberg氏は「AlphaFold 3は物語の一部に過ぎない」と強調します。創薬というプロセスは、ターゲット分子との結合構造を理解するだけでは完結しません。真に効果的な創薬エンジンを構築するためには、「あと半ダースほどのAlphaFold級のブレイクスルーが必要だ」と彼は語ります。これは、構造予測以外にも、生物学や化学における他の根源的な問題を、実験レベルの精度で予測・理解する能力を獲得する必要があることを意味します。例えば、分子がターゲットにどれだけ強く結合するのか(結合親和性)、結合によってタンパク質の機能がどのように変化するのか、設計した分子が体内でどのように吸収・分布・代謝・排泄されるのか(ADME特性)、そして毒性を示さないか、といった多岐にわたる要因を考慮しなければなりません。

Isomorphic Labsは、これらの課題に対しても、AlphaFoldと同様のアプローチ、すなわち特定のターゲットや化学クラスに依存しない「汎用的な」予測モデルの開発を進めています。彼らの内部研究プロジェクトでは、構造予測以外にも、これらの重要な特性を高精度で予測するモデルが既に開発され、実際の創薬プログラムで活用され始めています。

さらに重要なのは、予測モデルだけでは創薬の究極的な課題は解決できないという認識です。Jaderberg氏は、創薬可能な低分子化合物の候補空間の大きさを「10の60乗」という天文学的な数字で表現します。これは、既知の宇宙に存在する原子の数よりも遥かに大きい数です。たとえ、1秒間に10億個(10の9乗)の分子を評価できる完璧な予測モデルがあったとしても、この広大な化学空間のごく一部しか探索できません。

ここで、「科学のためのエージェント(Agents for Science)」という概念が登場します。これは、単に予測を行うだけでなく、自ら学習し、広大な化学空間を効率的に探索し、有望な分子設計を発見できるAIエージェントを指します。

創薬における核心的課題

予測 (Prediction):分子の構造、特性(結合親和性、ADME、毒性など)、ターゲットとの相互作用、生体内での挙動などを高精度で予測すること。AlphaFold 3やそれに類するモデルが担う役割。

探索 (Exploration/Search):10の60乗とも言われる広大な化学空間の中から、望ましい特性を持つ分子を効率的に見つけ出すこと。全探索は不可能。

AIによる解決アプローチ

予測モデルの活用:高精度な予測モデルを評価関数として利用する。

生成モデル (Generative Models):望ましい特性を持つ可能性のある新しい分子構造を生成する。

探索アルゴリズム/エージェント:予測モデルと生成モデルを組み合わせ、強化学習などの手法を用いて、有望な領域を自律的に探索し、設計を最適化していく。これは、AlphaGoが膨大な囲碁の可能な手を全て調べるのではなく、有望な手を探索して学習したプロセスに似ている。

つまり、Isomorphic Labsは、生化学的な世界の高精度な「地図」(予測モデル)を作成すると同時に、その地図を頼りに未知の領域を効率的に踏破し、宝(新薬候補)を見つけ出す「探検家」(生成モデルと探索エージェント)を育成しているのです。この予測と探索の両輪によって、従来の創薬の限界を超えることを目指しています。

データ、チーム、そして「Move 37」の先にある未来

Isomorphic Labsの野心的な挑戦を支えるのは、最先端のアルゴリズムだけではありません。データ、計算能力、そしてそれを駆使するチームもまた、成功に不可欠な要素です。興味深いことに、デミス・ハサビス氏は「生物学分野はデータに制約されていない」と述べています。これは、データが不要という意味ではなく、既存の公開データや実験的に生成可能なデータだけでも、AIモデルによって大きな進歩を遂げる余地が十分にある、という意味合いです。Max Jaderberg氏も、特定のモデリング空間では、長年存在しているデータを使って、これまでにないレベルの進歩が可能であると指摘します。

しかし、これはデータ収集や生成が不要ということでは全くありません。むしろ、将来のブレイクスルーのためには、AIモデルの訓練に最適化された新しいデータの生成が鍵となると考えられています。「機械学習のための生物学データは、まだ真の意味では作られていない」とJaderberg氏は語ります。従来の生物学実験データは、必ずしもAIモデルの学習効率を最大化するようには設計されていませんでした。今後は、物理シミュレーションや量子化学計算、分子動力学(MD)シミュレーションといった計算手法による「合成データ」の活用や、モデル自身が有望なデータを提案し、それを実験的に検証してフィードバックを得るアクティブラーニングのようなアプローチが重要になります。さらに、オルガノイド(ミニ臓器)・オン・チップのような新しい実験技術によって、これまで取得が難しかった高品質なin vitro(試験管内)データや、動物実験を代替・補完するようなデータが得られることへの期待も高まっています。Isomorphic Labsは自社でウェットラボ(実験室)を持たないものの、パートナー企業との連携や外部委託を通じて、独自のデータ生成にも積極的に取り組んでいます。

このような複雑で学際的な挑戦に取り組むためには、多様な専門性を持つ人材を結集し、効果的に協働させるチーム作りが不可欠です。AI創薬という分野自体が新しいため、「創薬の世界的専門家」かつ「機械学習の世界的専門家」という人材は、現状ではほぼ存在しません。そこでIsomorphic Labsが採用したのは、それぞれの分野のトップクラスの専門家を文字通り「隣り合わせに座らせる」アプローチです。単に別々のチームとして存在するのではなく、日常的に交流し、互いの専門用語を学び、問題意識を共有することで、化学反応のようなイノベーションを促します。Jaderberg氏は、「多くの機械学習チームメンバーは、生物学や化学の事前知識がない状態で参加するが、それがむしろ強みになることもある」と言います。素朴な疑問や第一原理からの思考が、従来のドグマにとらわれない新しいアプローチを生み出すきっかけとなるのです。「少しナイーブで、好奇心が強く、主体性があること」が、この分野で活躍する人材の鍵となる資質だと彼は考えています。

Isomorphic Labsは、社内での研究開発と並行して、その成果を科学コミュニティに還元することにも力を入れています。AlphaFold 3の発表と同時に、非商用のアカデミックな研究目的に限り、モデルのコードや重みの一部を「AlphaFold Server」として無償公開しました。これは、AlphaFoldシリーズのオープンな精神を受け継ぐものであり、創薬以外の基礎生物学研究など、幅広い分野での活用を促進し、科学全体の発展に貢献することを意図しています。

今後の展望として、Jaderberg氏はAlphaFoldシリーズのさらなる進化を示唆しています。現在のAlphaFold 3は主に静的な構造を予測しますが、生体内では分子は常に動いています。将来的には、これらの分子の「ダイナミクス(動き)」を捉えることが、より深い理解と精密な設計に繋がる可能性があります。

そして、AI創薬における「GPT-3モーメント」、すなわちAIが生み出すものが人間レベル、あるいはそれを超える質に達する瞬間はいつ訪れるのでしょうか。Jaderberg氏は、テキスト生成におけるGPT-3とは少し異なり、生物学・化学分野ではAlphaGoが囲碁のトップ棋士を破った際の「37手目」のような形で現れるだろうと予測します。Move 37は、当時の人間のトップ棋士には理解不能で、一見すると悪手にさえ見えましたが、結果的にAlphaGoの勝利を決定づける独創的な一手でした。同様に、AI創薬においても、人間の化学者の直感や既存の知識体系からは突飛に見えるかもしれないが、物理的・化学的に正しく、かつ優れた特性を持つ分子設計がAIによって提案されるようになる可能性があります。実際、Isomorphic Labsの内部では、AIが提案した設計が人間の専門家の判断よりも優れていることが実験で証明されるケースが既に出始めていると言います。これは、AIが単なるツールを超え、未知の科学的発見をもたらす「創造的なパートナー」となり得ることを示唆しています。

AIによって設計された医薬品が実際に臨床試験に進み、承認されるまでにはまだ時間がかかりますが、Isomorphic Labsの社内プログラムやパートナーシップは着実に進展しています。Jaderberg氏は、AIによる設計候補が増えるにつれて、臨床開発プロセス自体の効率化・迅速化も重要になると指摘します。AIによる毒性予測などの精度が向上すれば、規制当局との連携のもと、より安全かつ迅速に新薬を患者に届けるための新しい臨床試験デザインが可能になるかもしれません。

最終的に、Isomorphic Labsのような企業が成功を収めた場合、伝統的な製薬業界はどうなるのでしょうか。Jaderberg氏は、対立ではなく融合が進むと見ています。「5年後には、AIなしで創薬を行うことは考えられなくなるだろう」と彼は断言します。AIは、数学が科学の基礎言語となったように、生物学と化学における基本的なツールとなり、業界全体がそれを活用するように適応していく、というのが彼の見解です。

まとめ

Isomorphic Labsが追求するAI創薬は、単なる効率化やコスト削減に留まらず、創薬のあり方そのものを根底から変えようとしています。Max Jaderberg氏が語るように、特定の疾患やターゲットに特化するのではなく、あらゆる病気に立ち向かうための「汎用的な創薬エンジン」の構築は、まさにパラダイムシフトと言えるでしょう。AlphaFold 3はその重要なマイルストーンであり、分子レベルでの生命現象の理解を飛躍的に深めましたが、これはまだ序章に過ぎません。

構造予測に加え、分子の機能、体内動態、毒性といった多面的な特性を予測する「半ダースのAlphaFold級ブレイクスルー」と、10の60乗という広大な化学空間を探索する「科学のためのエージェント」。この二つを組み合わせることで、これまで想像もできなかったような新薬候補の発見が加速される可能性があります。それは、AlphaGoの「Move 37」のように、人間の直感や既成概念を超える発見をAIがもたらす未来を示唆しています。

データ戦略、学際的なチーム構築、そして科学コミュニティへの貢献といった取り組みも、この壮大なビジョンを実現するための重要な要素です。AIが生物学・化学の基本的なツールとして浸透するにつれ、製薬業界全体の変革も加速するでしょう。Isomorphic Labsの挑戦は、AIが人類の健康と福祉に貢献する無限の可能性を秘めており、その進展から目が離せません。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=LrMKsBtx5Bc

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