株式会社TIMEWELLの濱本です。
2025年7月3日、京都で「IVS2025 LAUNCHPAD」が開催されました。日本の未来を変える可能性を秘めたスタートアップ15社が登壇し、持ち時間6分間で自社のプロダクトやビジョンを熱くプレゼンしました。本記事【前編】では、前半に登壇した8社のプレゼン内容を紹介します。
素材、宇宙、環境、ロボット、見積AI、スナックDX、そしてギャル式ブレストまで、ジャンルを超えて挑戦する企業たちの姿をぜひご覧ください。
日本発“素材革命”がエネルギーと宇宙の未来を変える
- 株式会社アドバンスコンポジット
- 株式会社カーボンフライ 廃棄物・製造現場の限界に挑むAI×環境ソリューション
- 株式会社JOYCLE
- 株式会社CoLab
- 匠技研工業株式会社 地方のスナックから世界の会議室まで──カルチャーと対話をアップデート
- スナックテクノロジーズ株式会社
- 株式会社CGOドットコム 誰でもAIを活用できる時代へ──BOCEKが目指す新たな仕事のカタチ
- 株式会社BOCEK 日本発“素材革命”がエネルギーと宇宙の未来を変える
IVS2025 LAUNCHPADの幕開けを飾ったのは、新素材開発に挑む企業群だった。
- 株式会社アドバンスコンポジット
トップバッターとして登場したアドバンスコンポジットのAKIYOSHI氏は、まるで芸人のような派手な登場で会場を沸かせた。同氏は「夏になるとニュースで電力会社がヤバいからエアコンの設定温度上げてってよく言ってるじゃないですか。あれ日本の夏の消費電力の30〜40%がエアコンだからです」と切り出し、エアコンの消費電力の約8割を占める圧縮機の問題を指摘。従来の鉄製部品4.6kgを手に持ち上げ、「これ結構重くて4.6kg。これ鉄なんですけど、この部品に必要な条件満たしてるのが鉄しかない。だからどんな重くても鉄使うしかなかった。これまでは」と説明した後、新素材による1.6kgの部品を披露。「どっちが省エネか分かりますよね」と会場に問いかけた。
同社の独自技術「溶湯鍛造法」は、めっちゃ細かい穴を開けた素材Aに溶けた素材Bを高圧で押し込むことで、いろんな素材を高精度かつ他ではできない割合で組み合わせ、未知なる新素材を次々と生み出すという。素材設計、温度、圧力、金型など細かい技術が詰まっており、設備を揃えるだけで数十億円、開発に10年を要したという。特許も今後数年で100件以上取得予定で、参入障壁は極めて高い。
AKIYOSHI氏は「世界における一年間消費電力の3%。これは日本の年間消費電力の8割以上に相当します。日本が年間300日電気使わないと同じ効果があります」と環境へのインパクトを強調。市場規模は3200億円で、今後の環境規制強化に伴いさらなる成長が見込まれる。同社は既に日本の自動車メーカーほぼ全てとやり取りしており、AIプロセッサーやデータセンター関連でも海外の大手企業との取引が進んでいるという。「先ほどから社名を出してないのはやってないからじゃないです。もうやってるから言えないんです」と秘密保持の必要性を示唆した。
- 株式会社カーボンフライ
続いて登壇したカーボンフライの木村氏は、日本で発見された「夢の素材」カーボンナノチューブの実用化に挑戦。「カーボンナノチューブって日本で発見された素材でして、その優れた特徴から夢の素材と言われているそんな素材なんです」と紹介。鉄の100倍ほど強く、鋼鉄の5分の1ほど軽く、大量の電気を流せるという他に類を見ない特徴を持つ。同社はこの素材を使って宇宙産業への参入を目指しており、特に地球と宇宙を一本のロープで繋ぐ「宇宙エレベーター」の実現を本気で目指している。
「宇宙エレベーターとカーボンナノチューブ非常に強い密な関係があるんです」と木村氏。宇宙エレベーターのケーブルには強さ、軽さ、電気を通すという性質が必要だが、鋼鉄では45キロメートル伸ばしたところで自分の重さに耐えきれなくなって壊れてしまう。これを実現できるのが唯一カーボンナノチューブだという。同社は20年以上研究してきた代表の研究成果を元に、精密にコントロールしたナノチューブの量産に成功。既に2000メートルのファイバーを作成し、とある案件での納品を完了。量産設備も自社で設計開発し、複数特許で押さえているため、他社の参入は困難だという。
廃棄物・製造現場の限界に挑むAI×環境ソリューション 3. 株式会社JOYCLE
そして、日本が直面する深刻な社会インフラ問題に挑む企業が登場した。JOYCLEの小柳氏は、「ゴミを運ばず燃やさず資源化できる新しいインフラ」の必要性を訴えた。人口減少により焼却炉の数が減り、遠くの焼却炉まで運べないと燃やせない状況が発生。輸送コストの高騰、ドライバー不足も深刻で、「運ばず燃やさず」という選択をした財政破綻の夕張市では全部ゴミを埋めているという現状を紹介。
同社が開発したJOYCLE BOXは、小型で車で運ぶことができ、環境・経済・安全のデータ全てをJOYCLEボードで可視化。灯油・ガスに一切依存せず電熱でゴミを資源化し、再生可能エネルギーを使ってカーボンフリーでゴミを資源化できる。液体・金属以外の燃えるゴミ全般を1/100から1/105に減容しながらセラミック材に資源化することが可能。出てきた資源はエコタイルの建材、水を綺麗にするセラミックボール、アートなどにアップサイクルできる。
同社の装置は、燃えるゴミを酸素濃度の非常に低い炉の中で火を発生させないで熱分解というプロセスを使って資源化。通常のバーナーではなく電熱を使っているため、廃棄物のデータに応じて柔軟に炉内温度をコントロール可能。AIを使ってゴミを最も省エネに熱分解・資源化できる知財や、有害ガスを予測して効率的に分解するソフトウェアも開発している。
既に3000万円の装置4期分が売上内定し、1.2億円分の売上を確保。100床以上の病院では年間1000万円以上の産業廃棄物コストがかかるが、同社のサービスを使えば3割から5割以上従来の処理コストより安く利用できる。病院だけでも1600億円以上のマーケットがあり、海外では離島が多く大きい焼却炉を置けない東南アジアを中心に、8兆円のマーケットの1%を取って800億円の売上を目指す。
- 株式会社CoLab
製造業界に革新をもたらすCoLabの川畑氏は、「AIロボットで工場の完全自動化を実現する」というビジョンを掲げて登壇。「世の中にはこんなにたくさんの自動化ロボットがあるのに何故工場は安い労働力を求めて海外移転して行くのでしょうか」と問いかけ、組み立て作業という自動化最後のボトルネックに挑戦。同社はキーエンスや大学研究室出身のメンバーが集まり、AIに人の能力の一部を組み込むことに成功。部品を見ながら組み付け位置を探せる「AIビジュアルサーボ」と、力加減しながら精密な動作を学習できる「AIセンシングサーボ」を開発した。
デモンストレーションでは、動いている鉄板の上に金属を差し込む工程を披露。求められる精度は0.4ミリで、人間でも一発では難しい作業だが、AIは組み立ての前後左右の位置を確認しながら無理な力がかからないようにセンサーでコントロール。曲がりやすい板金部品、キャップコネクター、電解コンデンサーや小さなイヤホンジャックまで、ロボットハンドを途中で交換することなく作業を実現している。画面操作だけでAIの設定ができるソフトも開発し、現場での使いやすさも追求している。
- 匠技研工業株式会社
匠技研工業の前田氏は、製造業の見積もり業務という地味だが重要な領域でDXを推進。「ベテラン職人しかできない見積業務が月に100時間以上かかることもあります。値決めを誤り赤字になってしまえば、現場の努力は報われることなく、日本中の工場の存在自体が危ぶまれてしまいます」と課題を提起。同社のシステムは、図面をアップロードするとAIが解析を行い、過去の類似案件があれば瞬時にレコメンド、類似品との差分もマーキング。各社固有の原価計算式をカスタマイズして搭載でき、これまでベテラン職人に依存していた見積ロジックを標準化することができる。
導入企業では見積時間が50%減少し、70代から30代への技術承継に成功。月額費用は10万円からと中小企業向けSaaSの中では高価格帯だが、高い費用対効果から契約更新時のアップセル率は驚異の60%を超え、ARPAはCAGR140%で推移。現在、上場企業から町工場まで幅広い業種業態に利用されており、2030年には中小製造業22万社のうち4000社、市場のたった2%を獲得するだけでARR120億円を見込んでいる。
地方のスナックから世界の会議室まで──カルチャーと対話をアップデート
IVS2025 LAUNCHPADの中盤では、日本独自の文化とテクノロジーを融合させた革新的なスタートアップが続々と登場した。
- スナックテクノロジーズ株式会社
特に注目を集めたのが、スナックテクノロジーズの関谷氏だ。「全国のスナックを巡った、自称:日本一のスナック好きの僕が今日はスナックの未来を熱く語らせていただきます」と切り出した関谷氏は、映画『君の名は。』のワンシーンを引用。「コンビニは9時で閉まるし、おしゃれなカフェもないけれど、スナックは2軒ある」と、スナックが地方の重要な社会インフラであることを強調した。
スナックの店舗数は12万軒とコンビニの倍以上、市場規模は2兆円を超える。しかし、スナックに行きたいが一度も行ったことがない人は73%に上る。その理由は「失礼ですが、開けにくい扉です」と関谷氏。さらに未だに不明瞭な会計、どんぶり勘定で経営ギリギリ、脱税の温床とも言われている現状を指摘。「孤独を癒すはずの彼女たちが実は一番孤独なんです」とママたちの苦境にも言及した。
関谷氏自身、社員3人の廃墟寸前の水道屋を20億円で売却、「春水堂」を全国展開し、スーツに見える作業着が業界大ヒットを記録した「令和のヒットメーカー」としての実績を持つ。実際に自らスナックを経営してPoCを積み重ね、開発したスナテクのシステムは、店内雰囲気、ママの自己紹介、料金表など「あの開けられない扉の向こうが見える化」を実現。スナテク加盟店共通の会員証でチェックイン、自動精算、料金明細の即時送信など、透明性の高いシステムを構築した。
実証店舗では新規顧客8%UP、リピート率12%UP、売上15%UPを達成。ビジネスモデルは決済の1%の手数料で、クレジットカード手数料を業界平均4%から2.98%に削減することで実質無料化を実現。第一興商との資本業務提携も進めており、行政連携による地方創生、観光・ふるさと納税との連携、ライブ配信による収益拡大、スポットバイトでの人材不足解消、ロールアップでの後継者問題解決など、スナック経済圏の構築を目指している。5カ年計画では、スナック導入1万店、ロールアップ300店、売上合計100億円、営業利益40億円を目標に掲げる。
- 株式会社CGOドットコム
次に登場したCGOドットコムのバブリー氏は、ギャル姿で登場し「ヤッホー!イエーイ!」と会場を沸かせた。「実は私、こんな感じなんですが、小さい頃、親や先生の目が気になってなかなか物が言えない子供でした」と自身の過去を告白。高校入学初日に「お前ら東大に行け!」と言われて不登校になり、高校中退後に大阪に家出。そこで出会ったギャルたちが「自分の軸を持っていて、直感に従う勇気があった。で、めちゃくちゃポジティブだった」と振り返り、「これって起業家精神じゃないですか?」と問いかけた。
ギャル式ブレストのルールは明確だ:
肩書き役職関係なし、タメ語で話そう!
あだ名で呼び合おう!
リアクション多め!
5分以上沈黙禁止、自分が持ってる中で一番好きな服で参加
実際のセッションでは、参加者にアダ名を設定。旅行好きと言った参加者は「じゃあアドベンチャータムケンね」とギャルにアダ名をつけられた。最初は戸惑っていた社員たちも、ギャルの「超いいじゃん!」「めっちゃ上げ」というポジティブなリアクションによって次第に本音が出始め、普段の会議では出てこないようなぶっちゃけたアイデアが次々と生まれたという。
口コミで広がり100社が導入、年2.5倍の成長を記録。リピート率も30%と上昇中で、富士通やJR貨物などの大企業から自治体まで広がっている。札幌市役所副市長は「職員の心が聞こえた」、スズキ株式会社常務役員の熊瀧氏は「大企業の変革に必要なマインドセットを圧倒的速さでぶっ壊して再構築できる」と評価。ギャルマインドコミュニティも2000名以上に拡大し、3年後には1000人のギャルマインド人材の発掘を目指す。年間4800もの変革プロジェクトの推進が可能になり、年間売上40億円を見込んでいる。
誰でもAIを活用できる時代へ──BOCEKが目指す新たな仕事のカタチ 8. 株式会社BOCEK
BOCEKの沖村氏は、生成AI業界に革命をもたらすプラットフォームを発表。「皆さん普段仕事だるいですよね」という共感を呼ぶ問いかけから始め、スライド作成エージェントと情報検索エージェントの2つを紹介。スライド作成エージェントは、AIに「今日のニュースについてまとめて」と指示するだけで、テンプレートに合わせて画像・図式を含めたスライドを全自動生成。情報検索エージェントは、「明日の商談企業なんだっけ」という質問に対し、個人のGoogleカレンダーから予定を自動取得し、関連情報をGoogle検索して回答する。
同社の最大の特徴は、これらのエージェントを作る仕組みそのものを提供していること。日本企業の7割以上が生成AIを導入しているが活用が進んでいない理由を、「アプリというUIがみんなが使っている形だと気づいた」という。ワークフローエディターを使えば、業務フローを紐でつなげるだけで簡単にノーコードでAIアプリを作成可能。2000種類以上の外部連携に対応し、Google、Anthropic、OpenAIなどほとんどのAIモデルにも対応している。
前編は以上になります。続きは後編を確認ください。
