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富士通×NVIDIAの戦略的協業が描く“日本発フルスタックAI基盤”――自律進化プラットフォームとシリコン最適化が産業DXを加速

2026-01-21濱本

2025年10月3日、富士通の時田隆仁社長は会見で、NVIDIAとのAI領域における戦略的協業を拡大すると発表した。発表の核は、AIエージェントや大規模モデルといった上位レイヤーから、CPU・GPUの結合やネットワーク、セキュリティ、運用までを一気通貫で最適化する“フルスタックAIインフラ”の共同構築である。富士通のAIプラットフォーム「小槌(Kozuchi)」と省電力・高性能CPU「MONAKA」シリーズ、NVIDIAのGPU群とAIソフトウェアスタックが結びつくことで、モデルとエージェントが自律的に改良され続けるプラットフォームを実現し、ベタスケールの演算性能とエネルギー効率を両立させる構想だ。 第一の社会実装先としてロボティクスが示され、医療、製造、通信、行政や金融へと応用領域を広げる計画が語られた。さらに、富岳NEXTに連なるHPCの系譜と、将来的な量子計算とのハイブリッド接続までを視野に入れることで、AIを電気やインターネットと同様の基盤インフラとして「日本と共に設計する」というメッセージが強調された。

富士通×NVIDIAの戦略的協業が描く“日本発フルスタックAI基盤”――自律進化プラットフォームとシリコン最適化が産業DXを加速
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

2025年10月3日、富士通の時田隆仁社長は会見で、NVIDIAとのAI領域における戦略的協業を拡大すると発表した。発表の核は、AIエージェントや大規模モデルといった上位レイヤーから、CPU・GPUの結合やネットワーク、セキュリティ、運用までを一気通貫で最適化する“フルスタックAIインフラ”の共同構築である。富士通のAIプラットフォーム「小槌(Kozuchi)」と省電力・高性能CPU「MONAKA」シリーズ、NVIDIAのGPU群とAIソフトウェアスタックが結びつくことで、モデルとエージェントが自律的に改良され続けるプラットフォームを実現し、ベタスケールの演算性能とエネルギー効率を両立させる構想だ。

第一の社会実装先としてロボティクスが示され、医療、製造、通信、行政や金融へと応用領域を広げる計画が語られた。さらに、富岳NEXTに連なるHPCの系譜と、将来的な量子計算とのハイブリッド接続までを視野に入れることで、AIを電気やインターネットと同様の基盤インフラとして「日本と共に設計する」というメッセージが強調された。

協業の背骨は“自律進化するAIプラットフォーム”と“シリコン最適化” 現場実装の主戦場――ロボティクスから医療・製造・通信へ 富岳NEXTと量子の地平――“AI×HPC×量子”のハイブリッドで長期競争力を設計する まとめ 協業の背骨は“自律進化するAIプラットフォーム”と“シリコン最適化”

今回の協業は、プラットフォームとコンピューティングの二層で性格がはっきりしている。

上位層では、富士通の小槌にNVIDIAのNeMoをはじめとするAIスタックやCUDAを組み合わせ、エージェントやモデルが運用の現場から学習し続ける自律型の仕組みを据える。企業の本番要件に不可欠なセキュリティや監査性、マルチテナンシー、ワークロード・オーケストレーションは富士通の強みであり、短期間で産業別のエージェントを立ち上げ、現場のKPIに直結する成果を積み上げる道筋がつく。

下位層では、Arm系のMONAKAシリーズとNVIDIAのGPUをNVLinkなどで緊密に結合し、CPUとGPUを含む演算資源をソフトウェアまで含めて最適化する。単なるハードの足し算ではなく、AIソフトウェア基盤を含めた設計が前提となるため、学習と推論、数値計算のワークロードが同一の方針で調達・運用できるようになる。

こうした総合設計は、研究開発と商用の両方で重要な意味を持つ。研究側はアルゴリズムからアーキテクチャまでの探索を加速でき、商用側はTCOと電力制約の中で性能を安定的に引き出す目処が立つ。時田社長が語った「AIで駆動する社会」を支えるには、データ、処理能力、計算能力が連鎖しながら増殖していく土壌が要る。フルスタック方針はまさにそのための“土壌づくり”と言える。

現場実装の主戦場――ロボティクスから医療・製造・通信へ

自律移動や協調制御が必要なロボットには、知覚と文脈理解、計画と実行、そして安全性の統合が欠かせない。富士通はコンピューティングとネットワークを束ね、NVIDIAのAIスタックと接続することで、現場のデータを磨き上げながらエージェントを循環的に改善する設計を採る。

説明では、国内ロボット大手との連携像が示され、産業用ロボットの高度化だけではなく、医療や金融など非製造分野でのサービス化にも踏み出す姿が描かれた。医療分野では、臨床判断や院内運営を支援するエージェントが想定され、センシティブなデータを扱いながらも高い可用性を維持するためのソブリン性とセキュリティの推論基盤が前提条件となる。

製造分野では、設計BOMから設備センサー、品質記録、供給網の情報までを横断し、生成AIとシミュレーションで設計探索を広げ、予兆保全や異常検知を自動化する方向が示された。

通信分野では、5G/6Gのネットワーク内でAIが動作し、トラフィック最適化や障害予兆、消費電力の削減を同時に追求する。エッジやプライベート領域での運用が欠かせない業界にとって、場所と主権を保ったままAIを回すことは不可避の要件であり、富士通の“ソブリン・コンピューティング・インフラ”の考え方が活きてくる。

重要なのは、これらの導入が個別の実証にとどまらず、エージェントが業務の標準作業として組み込まれる段階に到達することだ。プラットフォーム、計算資源、運用設計を同時に整える今回の枠組みは、まさにその「標準化」に向けた仕掛けである。

富岳NEXTと量子の地平――“AI×HPC×量子”のハイブリッドで長期競争力を設計する

協業は現在の商用AIだけに留まらない。HPCの旗艦構想である富岳NEXTと連続し、科学計算とAIを融合させる大きな流れに位置づけられる。

数値シミュレーションが不可欠な防災や気象、創薬、材料、エネルギーの領域では、正確さと速度が同時に問われる。CPUとGPUの協調最適化をAIソフトウェアの層まで貫くことで、研究の速度を落とさず意思決定に直結する出力を増やすことができる。

さらに、富士通は2026年の1000量子ビット級の開発を目指すとし、量子とHPCを統合するハイブリッド計算センターの構想や量子機械学習への取り組みに言及した。量子を実験的な付加物として扱うのではなく、古典計算やAIと自然に接続された実用的なワークロードの一部として運用する発想は、将来のアップデートを前提とする“拡張可能な設計”そのものだ。

新しいGPUや新アーキテクチャのCPU、あるいは量子の世代交代が起きても、フルスタックの連結性を保ったまま漸進的にアップグレードできるなら、産業側はユースケースの抽象度を維持しつつ下層の刷新を繰り返せる。これは長期のTCOやエネルギー制約、コンプライアンスの観点からも大きな利点となる。

まとめ

黄仁勲氏は、AIは電気やインターネットと同様に不可欠な基盤インフラになると語り、日本のために日本と共に設計するという表現で今回の協業の意味を示した。富士通は創業以来、技術を人の幸福のために使うというヒューマン・セントリックな姿勢を変えていない。

フルスタックAIインフラの共同構築は、この姿勢を現在の要請に合致させた実装計画にほかならない。自律進化プラットフォームとシリコン最適化を背骨に、ロボティクス、医療、製造、通信から実装を進め、富岳NEXTでHPCと結び、量子をハイブリッドに繋ぐ。

個別の技術要素を有機的に束ねることで、AIが社会の深部で安定して動く状態をつくり、主権と柔軟性、セキュリティを両立させる。日本の産業が直面する人手不足やエネルギー制約、レイテンシ要件やデータ主権といった現実に対し、設計起点のアプローチで答えるための骨格が、今回の発表によって明確になった。

エージェントが現場の当たり前になる日常と、研究最前線が産業価値に直結する循環。その両輪を駆動する基盤を、日本発の設計で積み上げていくことこそ、この協業が示す未来像である。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=EbpcHwr7vzM

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