株式会社TIMEWELLの濱本です。
2026年、NVIDIAのMellanox買収(70億ドル)がAI時代のデータセンターネットワーキングを支配しています。
NVIDIAのネットワーキング売上は82億ドル(前年比162%増)に達し、NVLink、InfiniBand、Spectrum-Xがその成長を牽引しています。NVLink第5世代は1.8TB/sの双方向帯域で72GPUを単一システムとして接続。InfiniBandはAI高性能計算の標準となり、Spectrum-Xは100億ドルの年間売上ペースを達成。Blackwell NVL72はラックスケールAIを実現し、競合を大きく引き離しています。
本記事では、NVIDIAとMellanoxの融合がもたらす技術革新を解説します。
NVIDIA Mellanox 2026年最新情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 買収規模 | 70億ドル(2019年) |
| ネットワーキング売上 | 82億ドル(前年比162%増) |
| NVLink第5世代 | 1.8TB/s双方向帯域、72GPU接続 |
| InfiniBand | RDMA、適応型ルーティング、輻輳制御 |
| Spectrum-X | 100億ドル年間売上ペース |
| Blackwell NVL72 | 72 Blackwellチップ完全相互接続 |
| ロードマップ | 2026年:800Gbps/1.6Tbps、2030年:3.2Tbps |
| CTO見解 | 「スケールアップネットワークのリードは数年続く」 |
NVIDIAとMellanoxの融合——70億ドル買収の意義
買収の背景
NVIDIAは2019年、Mellanoxを70億ドルで買収しました。
Mellanoxとは:
- イスラエル発のネットワーキング企業
- InfiniBand技術のパイオニア
- データセンター間高速通信の専門家
- 共同創業者Michael KaganがNVIDIA CTOに就任
買収の戦略的意義:
- GPU性能だけでなくネットワーク性能が重要に
- AI時代は複数GPUのシームレス連携が必須
- 「データセンター全体を単一システムとして設計」
化学反応——GPU性能を10倍にしたネットワーク技術
従来の限界:
- シリコン微細化とアーキテクチャ改良だけでは不十分
- 計算ノード間の通信効率がボトルネック
- 単一GPUの性能向上には限界
Mellanox技術の貢献:
- シングルノード内でGPU連携
- 複数ノードをまたがる大規模システム統合
- 低遅延・高帯域のネットワーク環境
NVIDIAのネットワーキング技術スタック
NVLink第5世代
NVLinkはGPU間の超高速接続技術です。
技術仕様:
- PCIe Gen 5の14倍の帯域
- 1.8TB/sの双方向帯域(GPU 1基あたり)
- 最大18本のNVLink 100GB/s接続
- 72GPUをラック内で完全相互接続
役割:
- 複数GPUを単一プロセッサのように動作
- 計算とメモリリソースの共有
- ラックスケールBlackwellシステムの基盤
InfiniBand
InfiniBandはデータセンター全体を巨大なAIコンピュータとして接続します。
特徴:
- 「同期的な高性能計算のためにゼロから設計」
- RDMA(Remote Direct Memory Access)でCPUジッターをバイパス
- 適応型ルーティング
- 輻輳制御
競争優位:
「InfiniBandはNVIDIAの主力接続製品。競合AIチップメーカー(AMD等)やクラウド大手の自社チップには、NVIDIAが提供する低遅延・高速接続ソリューションがない」
Spectrum-X(イーサネット)
NVIDIAは2024年にSpectrum-Xファブリックを本格展開しました。
成長:
- 100億ドルの年間売上ペース達成
- Spectrum-XGS発表:複数のギガスケールAIファクトリーを相互接続
背景:
- 2019年Mellanox買収後、InfiniBandに大きく依存
- Spectrum-Xでイーサネット市場にも本格参入
Blackwell NVL72——ラックスケールAIの実現
アーキテクチャ
Blackwell NVL72は、NVIDIAの最新ラックスケールAIシステムです。
構成:
- 18 Compute Tray + 9 Switch Tray
- 72 Blackwellチップが完全相互接続
- 単一キャビネットアーキテクチャ
- NVLink、NVLink Switch、ラックスケールネットワークファブリック
性能:
- SemiAnalysisのAI推論ベンチマークで首位
- AMD等の競合システムを大幅に上回る
ネットワーキングの重要性
Jensen Huang CEO:
「我々が達成したスケールアップネットワーク…誰かがこれに追いつくには長い時間がかかる。このリードは確実に数年続く」
2026年ロードマップと将来展望
ネットワーキングロードマップ
現在〜2026年:
- InfiniBand/Spectrum-X:800Gbps → 1.6Tbps
2030年まで:
- 3.2Tbps達成予定
100万GPU時代の課題
通信遅延の重要性:
- 1GPUで1秒のタスク → 1000GPUで1ミリ秒
- 各GPU間の高速通信と狭い遅延分布が不可欠
スケールアウトの課題:
- 数十万〜百万単位のコンポーネント
- 99.999%の稼働率でも一部は必ず故障
- ソフトウェアによる障害検知・対応が必須
DPU(Data Processing Unit)
役割:
- CPUが担っていたOS処理・インフラ管理を分散
- アプリケーション計算への集中を可能に
- 全体の計算効率を大幅向上
AIが物理法則を発見する日——ギガワット級データセンター
性能成長の必要性
現状の要求:
- 「数十倍」や「オーダーオブマグニチュード」の性能成長
- 生成AIは数十億ユーザーからの同時要求に応答
- テキスト、画像、動画のリアルタイム生成
エネルギーと冷却の課題
規模の拡大:
- 空冷から液体冷却へ移行
- ギガワット級データセンターの構想
- 10ギガワット規模の施設も議論
物理的制約:
- 巨大GPUはフォークリフトが必要なほどの重量
- 電力消費・冷却機構の全体最適化が必須
AIによる科学的発見
可能性:
- AIがビッグデータから法則性を発見
- 人間中心の物理学を超える新理論
- 科学フィクションの現実化
当時と現在:NVIDIA Mellanoxの進化
| 項目 | 当時(2019年買収時) | 現在(2026年) |
|---|---|---|
| 買収規模 | 70億ドル | ネットワーキング売上82億ドル/年 |
| NVLink | 初期世代 | 第5世代、1.8TB/s、72GPU接続 |
| InfiniBand | ニッチ市場 | AI高性能計算の標準 |
| Spectrum-X | 存在しない | 100億ドル年間売上ペース |
| ロードマップ | 不明確 | 800Gbps → 1.6Tbps → 3.2Tbps |
| 競合状況 | 複数の選択肢 | 「数年のリード」(Jensen Huang) |
| データセンター規模 | メガワット級 | ギガワット級へ |
| AIワークロード | 実験段階 | 数十億ユーザーの同時利用 |
競争優位と今後の展望
NVIDIAの優位性
ネットワーキングの壁:
- 競合(AMD、クラウド大手の自社チップ)には同等の接続ソリューションがない
- 低遅延・高速接続は容易に模倣できない
- Mellanox買収が決定的な差別化要因
統合エコシステム:
- GPU + NVLink + InfiniBand + Spectrum-X + DPU
- CUDA API:1GPU → 複数GPUへシームレスにスケール
- ハードウェア・ソフトウェアの垂直統合
課題と機会
課題:
- エネルギー供給の制約
- 冷却技術の限界
- 地理的距離による光速の物理的壁
機会:
- AIトレーニング・推論の専用ハードウェア最適化
- 複数データセンターの分散運用
- 次世代科学的発見の基盤
導入の考慮点
メリット
1. 比類なき性能
- 72GPU完全相互接続
- 1.8TB/s双方向帯域
- 業界最高のAI推論性能
2. エコシステムの成熟
- CUDA開発者コミュニティ
- 豊富なソフトウェアサポート
- 実績ある大規模導入事例
3. 将来性
- 明確なロードマップ(3.2Tbpsまで)
- 継続的な技術革新
- 「数年のリード」
注意点
1. コスト
- ハイエンドシステムの高額投資
- エネルギーコストの増加
- 冷却インフラの整備
2. 依存性
- NVIDIA独自技術への依存
- 代替ソリューションの限定性
- ベンダーロックインのリスク
3. 運用複雑性
- 大規模システムの管理負荷
- 障害検知・対応の高度化
- 専門人材の確保
まとめ
NVIDIAのMellanox買収(70億ドル)は、AI時代のデータセンターネットワーキングを支配する戦略的決断でした。
本記事のポイント:
- 2019年:Mellanoxを70億ドルで買収、CTO Michael Kaganが就任
- 2026年:ネットワーキング売上82億ドル(前年比162%増)
- NVLink第5世代:1.8TB/s双方向帯域、72GPU接続、PCIe Gen 5の14倍
- InfiniBand:RDMA、適応型ルーティング、AI高性能計算の標準
- Spectrum-X:100億ドル年間売上ペース、Spectrum-XGSでギガスケールAIファクトリー接続
- Blackwell NVL72:72チップ完全相互接続、SemiAnalysisベンチマーク首位
- ロードマップ:2026年800Gbps/1.6Tbps、2030年3.2Tbps
- Jensen Huang:「スケールアップネットワークのリードは数年続く」
- 競合に低遅延・高速接続ソリューションなし
2019年の「GPUメーカー」から約7年——NVIDIAは「データセンター全体を単一システムとして設計する企業」へと進化しました。Mellanox買収によるネットワーキング技術の統合は、単なるハードウェアの性能向上ではなく、AI時代の計算基盤そのものを再定義する動きでした。
GPUの演算性能だけでなく、NVLink、InfiniBand、Spectrum-Xによるネットワーク技術の融合が、今後のAI時代における競争力を決定づけています。「数年のリード」を持つNVIDIAの動向は、AI産業全体の方向性を示す重要な指標となるでしょう。
