株式会社TIMEWELLの濱本です。
「なぜ、うちの上司はこんなにも仕事ができないのだろうか?」「どうしてあの人が管理職になれたんだ?」多くのビジネスパーソンが、キャリアのある時点で一度はこのような疑問や不満を抱いた経験があるのではないでしょうか。
もしあなたが今、まさにそう感じている、あるいは過去に強く共感したことがあるなら、この記事はあなたのためのものです。その答えは、単なる個人の資質の問題ではなく、「ピーターの法則」と呼ばれる、組織に潜む普遍的な原理にあるのかもしれません。
この法則は、もともと少し皮肉めいたジョークとして提唱されましたが、今や世界的な現象として認識され、著名なビジネススクールでも研究対象となるほどの影響力を持っています。この記事を読み終える頃には、なぜ優秀だったはずの従業員が、昇進を重ねるうちに「最悪のマネージャー」へと変貌してしまうのか、そのメカニズムを深く理解できるでしょう。あなたの上司が無能に見えるのは、もしかしたら本人の責任だけではないのかもしれません。一見矛盾しているように聞こえますが、非常に興味深い組織のダイナミクスがそこには隠されています。さあ、その謎を解き明かしていきましょう。
ピーターの法則とは何か?昇進がもたらす「無能レベル」への到達メカニズム ピーターの法則は真実か?研究と歴史が示す「昇進の罠」 無能な上司が蔓延する組織の末路と、ピーターの法則を克服するための挑戦 まとめ ピーターの法則とは何か?昇進がもたらす「無能レベル」への到達メカニズム
ピーターの法則(The Peter Principle)は、カナダの階層学者であり教育学者でもあったローレンス・J・ピーター博士によって提唱された理論です。この概念が初めて世に広まったのは、1969年に出版されベストセラーとなった著書『ピーターの法則:創造的無能のすすめ(Why Things Always Go Wrong)』を通じてでした。当初は組織や社会に対する風刺(サタイア)として提示されましたが、その洞察の鋭さから、組織論や経営学において重要な概念として広く認知されるようになりました。
ピーターの法則が示す核心は、「階層組織において、全ての従業員は自身の無能レベルまで昇進する傾向がある」というものです。これは一体どういう意味でしょうか?具体例を挙げて考えてみましょう。
ここに、ジェームズ・ハリソンという架空の人物がいます。彼は大手企業に勤めるシニアソフトウェアエンジニアで、製品のバグ修正に夜遅くまで取り組み、期待以上の成果を出す、いわゆる「仕事ができる」人材です。
彼は最近家を購入し、ローン返済のためにも昇進を目指して懸命に働いています。そんな折、彼の部署のエンジニアリングマネージャーが退職することになりました。経営陣は、外部からの採用はリスクが伴うと考え、社内で目覚ましい活躍を見せていたジェームズに白羽の矢を立てます。「君ならできるはずだ」と期待を込めて、マネージャー職をオファーしました。ジェームズは喜び勇んでそのオファーを受け入れます。努力が報われ、給与も上がり、新しい肩書も手に入れました。
しかし、ここからが問題の始まりです。彼の新しい仕事は、技術的な問題解決ではなく、「人」を管理することでした。ソフトウェア開発チームをマネジメントし、テストプロセスを監督し、発生するプロダクションの問題解決を指揮しなければなりません。
残念ながら、複雑なコードを解き明かす能力と、多様な個性を持つチームメンバーをまとめ、導く能力は全く異なるスキルセットです。ジェームズは、自分が畑違いの場所にいることに気づき、途方に暮れます。かつての技術的な仕事への執着からか、部下の仕事に細かく口を出すマイクロマネジメントに陥り、チームに必要な重要情報を効果的に伝えるコミュニケーション能力も不足しています。その結果、チームの士気は下がり、プロジェクトは停滞気味に。ジェームズは、かつての輝かしいエンジニアとしての評価とは裏腹に、マネージャーとしては「無能」のレッテルを貼られてしまうのです。彼は自身の「無能レベル」に到達してしまった、というわけです。
重要なのは、ピーターの法則によれば、これはジェームズ個人の失敗というよりも、組織の昇進システムそのものに起因する構造的な問題であるという点です。なぜなら、従業員の昇進は、多くの場合「現在」の職務におけるパフォーマンスに基づいて決定されるからです。「将来」の役職で必要とされるであろう潜在能力や適性が十分に考慮されることは稀です。ジェームズは優れたエンジニアでしたが、優れたマネージャーになるための素質やスキルが評価されたわけではありませんでした。
この法則のロジックはシンプルです。従業員は現在の仕事で成果を上げると、より上位の役職、多くの場合、管理的な責任が伴うポジションへと昇進します。しかし、その新しい役職では、昇進の決め手となったスキルとは全く異なる能力(例えば、コミュニケーション、リーダーシップ、戦略的思考、人材育成など)が求められます。
もし従業員が新しい環境に適応し、必要なスキルを習得できなければ、そのレベルでパフォーマンスが頭打ちになり、それ以上の昇進は見込めません。しかし、もしそのレベルでも成功を収めることができれば、さらに上のレベルへと昇進し続けます。このプロセスが繰り返された結果、最終的には、その従業員が自分の能力では対応しきれない、つまり「無能」となるレベルの役職に到達し、そこで昇進がストップしてしまうのです。こうして、組織の中には、それぞれの「無能レベル」に到達した人々が滞留することになります。
さらに、この原理は人間だけでなく、技術やイノベーションの領域にも当てはまると考えられます。例えば、かつて写真フィルム市場を席巻したコダック、ビデオレンタル業界の巨人であったブロックバスター、スマートフォンの先駆者であったブラックベリーなどの企業は、過去の成功体験にとらわれ、新しい市場の機会や技術の変化を認識し、適応することに失敗した結果、イノベーションが停滞し、最終的には市場での地位を失いました。
これも一種の「組織レベルでのピーターの法則」と言えるかもしれません。成功体験が、次の変化への適応を阻害し、「無能レベル」に至らしめたのです。
ピーターの法則は真実か?研究と歴史が示す「昇進の罠」
ピーターの法則は、直感的には納得できるものの、単なる風刺や俗説に過ぎないのでしょうか?それとも、実際の組織運営において、客観的な証拠によって裏付けられる現象なのでしょうか?近年、この疑問に答えるための様々な研究が行われています。
まず注目すべきは、巨大IT企業Googleが2009年に開始した「プロジェクト・オキシジェン(Project Oxygen)」です。このプロジェクトの目的は、社内により良い上司を育成することでした。
Googleは10,000件以上の観察データを分析し、優れたマネージャーに共通する特性を洗い出しました。その結果、驚くべきことに、「技術的な専門知識」は、良い上司であるための要素の中で最も重要度が低い、という結論に至ったのです。これは、まさにピーターの法則が示唆すること、すなわち、プレイヤーとしての優秀さが必ずしもマネージャーとしての優秀さに直結しない、という点を裏付ける強力な証拠と言えるでしょう。
さらに学術的な研究も進んでいます。マサチューセッツ工科大学(MIT)、カールソン経営大学院、イェール大学の研究者グループは、ピーターの法則を実証的に検証するために、214社の販売データを用いて調査を行いました。彼らは、トップクラスの営業成績を上げたセールス担当者が、販売マネージャーに昇進しやすいかどうかを分析しました。
結果は予想通り、成績優秀なセールス担当者ほど昇進する可能性が高いことが確認されました。しかし、研究はそこで終わりませんでした。彼らは昇進後のパフォーマンスも追跡したのです。すると、衝撃的な事実が明らかになりました。最も優秀だったセールス担当者が、昇進後は最もパフォーマンスの低いマネージャーになる傾向があったのです。これは、営業スキルとマネジメントスキルが異なること、そして企業が往々にして営業成績のみを評価して昇進させてしまうという、「ピーターの法則」のメカニズムを明確に示す結果となりました。
歴史を振り返っても、ピーターの法則を彷彿とさせる事例は枚挙にいとまがありません。例えば、マイクロソフトのスティーブ・バルマー氏。彼は卓越したセールスマンとして知られていましたが、CEOに就任してからは、いくつかの製品開発で判断を誤り、市場の変化に対応しきれませんでした。特に、初代iPhoneが登場した際に「高すぎるし、キーボードがないからビジネスには向かない」と一笑に付したエピソードは有名です。後にiPhoneが世界を変えるデバイスとなったことを考えれば、彼の判断は明らかに「無能レベル」に達していたと言えるかもしれません。
また、アップルの事例では、ジョン・スカリー氏が挙げられます。彼はペプシコーラの有名な「ペプシチャレンジ(味覚テスト)」を仕掛けたマーケティングの天才でした。その手腕に感銘を受けたスティーブ・ジョブズは、スカリー氏をアップルに引き抜きます。しかし、結果的にスカリー氏は、高価ながらも未来を見据えたコンピュータ「Macintosh」の開発方針を巡ってジョブズと対立し、創業者であるジョブズを会社から追放するという事態を引き起こしました。スカリー氏自身も後に、自分がアップルに雇われたこと自体が「大きな間違いだった」と認めています。マーケティングの専門家としては一流でも、テクノロジー企業のトップとしての判断力やビジョンには欠けていたのかもしれません。
金融業界に目を向けると、リーマン・ブラザーズの最後のCEO、ディック・ファルドが挙げられます。彼は債券トレーダーとしては非常に優秀で、「ゴリラ」の異名を持つほど攻撃的なスタイルで知られていました。しかし、CEOとしては、サブプライムローン問題のリスクを軽視し、強気な経営姿勢を崩さなかったことが、2008年の史上最大の企業破綻、そして世界的な金融危機の一因となったと広く非難されています。彼は市場が上昇している局面では積極的にリスクを取りましたが、状況が悪化しても自社の危機的な状況を認識することを頑なに拒んだとされています。トレーディングにおける大胆さが、経営者としての危機管理能力や冷静な判断力を曇らせたのかもしれません。
興味深いことに、このような「昇進による無能化」の懸念は、現代特有の問題ではなく、数百年も前から認識されていた可能性があります。1763年にドイツの劇作家ゴットホルト・エフライム・レッシングが書いた戯曲『ミンナ・フォン・バルンヘルム』には、陸軍の軍曹が登場します。その劇中、昇進の機会を断る場面で、主人公は次のようなセリフを口にします。「私は良い軍曹だ。しかし、たやすく悪い大尉になり、さらに悪い将軍になるだろう。それは経験からわかることだ。」これはまさに、ピーターの法則の核心を突く言葉と言えるでしょう。
さらに、心理学者のノーマン・F・ディクソンは、著書『軍事的無能の心理学 (On the Psychology of Military Incompetence)』の中で、歴史上の多くの軍事的な大失敗の原因を、下位の階級での成功に基づいて将校が昇進するシステムにあると論じています。
彼の主張の要点は、下位の将校は権威主義的で、規律正しく、上官に忠実であることが求められ、それによって評価されるということです。しかし、これらの特性は、リーダーとしてより高い階級に昇進した際には、逆に傲慢さ、集団思考への傾倒、変化への抵抗といった欠点につながる可能性があるというのです。つまり、「良い従属者」が必ずしも「良い指導者」になるわけではない、という指摘であり、これもピーターの法則と軌を一にする考え方です。
これらの研究や事例は、ピーターの法則が決して単なる仮説ではなく、組織における人材登用とパフォーマンスに関して、深く考察すべき現実的な課題であることを示しています。一方で、ピーターの法則に対しては反論も存在します。アメリカの経済学者エドワード・ラジアーは、この現象を異なる角度から説明しようとしました。
彼は、企業の人事システムに問題があるのではなく、従業員自身のパフォーマンスが「平均への回帰(Regression to the mean)」という統計的な現象の影響を受けていると主張します。つまり、従業員は昇進を目指している期間、通常以上の努力をして高いパフォーマンスを発揮しますが、その高いレベルの努力や生産性を永続的に維持することは困難です。そのため、昇進を果たした後は、自然と通常(平均的)のパフォーマンスレベルに戻っていきます。外部から見ると、あたかも昇進後に能力が低下したかのように見えてしまう、というわけです。これもまた、考慮すべき一つの視点と言えるでしょう。
無能な上司が蔓延する組織の末路と、ピーターの法則を克服するための挑戦
ピーターの法則によって「無能レベル」に達した上司が増えることは、組織にとって具体的にどのような悪影響をもたらすのでしょうか?そして、この普遍的とも思える法則に、私たちはどのように立ち向かうことができるのでしょうか?
まず、冒頭で紹介したソフトウェアエンジニアからマネージャーになったジェームズのケースを思い出してみましょう。彼がマネージャーとして機能不全に陥った結果、会社は有能なソフトウェアエンジニアを一人失い、代わりに無能なマネージャーを一人得たことになります。これは、単なる個人の問題ではなく、組織全体にとって大きな損失です。なぜ優秀な従業員が、昇進後にパフォーマンスを発揮できなくなるのか。
研究によれば、新しい役割に対する不安や経験不足から、かつて自分が得意としていた業務に対して過剰に干渉する「マイクロマネジメント」に陥りやすいことが指摘されています。リチャード・D・ホワイト・ジュニア教授は学術論文で、「多くの人々は、作業者から監督者への移行をうまく行うことができない。そして、新しい仕事に対応できない場合、かつて自分が行っていた仕事をしている部下をマイクロマネジメントするようになる」と説明しています。これは、部下の自律性を奪い、モチベーションを低下させる大きな要因となります。
では、こうした「悪い上司」の存在は、部下の働きぶりにどれほどの影響を与えるのでしょうか?事態は深刻です。
研究によれば、無能な上司は従業員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)を直接的に低下させ、職場における他の何よりも大きなストレス要因となることが分かっています。さらに衝撃的なのは、上司の質が悪いほど、部下が狭心症や心臓発作といった深刻な健康問題を発症するリスクが高まるという研究結果もあることです。
有名な格言「人は会社を辞めるのではなく、上司を辞めるのだ(People don't quit companies, they quit bosses)」は、この現実を的確に表しています。実際に、この「悪い上司」問題に起因する離職コストは、過去5年間で2230億ドル(約30兆円以上)にも上ると推計されています。
57の研究を対象としたメタアナリシス(複数の研究結果を統合して分析する手法)では、悪い上司が引き起こす損害は、有能な上司がもたらす良い影響を上回る可能性がある、という結論が導き出されました。
ギャラップ社の会長であるジム・クリフトン氏は、「どんなに素晴らしい報酬、よく考えられたキャリアパス、刺激的な職場環境、従業員支援プログラム(EAP)、健康保険、その他の福利厚生があったとしても、悪い上司の下で働く人々にとっては、ほとんど意味をなさないだろう」と断言しています。組織がいかに制度を整えても、直属の上司が無能であれば、その効果は帳消しになってしまうのです。
マネージャーとしての適性を持つ人材は、実際には10人に1人程度しかいないと言われ、さらに、そもそも管理職になりたいと考えている人も全体の38%に過ぎないという調査結果もあります。もしそうだとすれば、私たちは皆、いずれかの時点で無能な上司の下で働くか、あるいは自分自身が無能な上司になってしまう運命にあるのでしょうか?
しかし、諦めるのはまだ早計です。ピーターの法則を克服し、より健全で生産的な組織を築くための試みも行われています。もしこの法則を乗り越える方法を見つけることができれば、企業は顧客満足度を高め、従業員はより健康で生産的になり、組織全体の安全性も向上するはずです。
ピーターの法則は、能力主義(メリットクラシー)に基づいて人材を登用するシステムの潜在的な欠陥を露呈しています。しかし、だからといって、能力や実績に基づく昇進を完全にやめてしまうことが解決策になるわけではありません。では、どうすれば良いのでしょうか?
イェール大学ロースクールのダニエル・マルコヴィッツ教授は、著書『The Meritocracy Trap』の中で、過労、不平等、ストレスといった現代社会の問題に対する解決策として、「圧縮されたメリットクラシー」を提唱しています。これは、トップ層だけでなく、中間層のスキルを持つ従業員に対しても、より多くの評価と機会を与えるべきだという考え方です。
具体的な方策として、「上方」への昇進だけでなく、「水平」への異動(Lateral Moves)を活用することが挙げられます。コーネル大学のサミュエル・C・ジョンソン経営大学院の研究によると、昇進の前に異なる部門や職種を経験する水平異動を取り入れることが、有能なリーダーを育成する上で有効である可能性が示されています。多様な経験を通じて、従業員はより広い視野と、新しい役割に必要なスキルセットを獲得する機会を得られるのです。
さらに、より斬新で、常識破りとも言えるアプローチも提案されています。イタリアの研究者グループがピーターの法則を検証するために行った研究では、最も成功率の高い昇進戦略は、通常、企業が決して試そうとはしないであろう方法であることが判明しました。
彼らは、典型的な企業の階層構造をコンピューター上でシミュレーションし、数学的モデルを用いて、一般的な「最も優秀な従業員を昇進させる」方法と、いくつかの新しいアイデアを比較テストしました。その結果、ピーターの法則を克服するためには、以下のいずれかの戦略が最も効果的であると結論付けられました。
従業員をランダムに昇進させる
最も優秀な従業員と、最もパフォーマンスの低い従業員の両方を昇進させる
これは非常に型破りなアイデアですが、「パロンドのパラドックス」として知られるゲーム理論の概念に基づいています。
パロンドのパラドックスとは、個々に見れば負ける戦略(損をする選択肢)であっても、それらを適切に組み合わせることで、全体としては勝つ戦略(得をする結果)になり得る、というものです。つまり、「二つの間違いが、一つの正しい結果を生む」可能性があるというのです。驚くべきことに、2001年にテキサス大学ダラス校の研究者たちも、同様の結論に達していました。彼らの研究でも、ランダムな昇進は、一般的な昇進戦略よりも優れた結果をもたらすことが示されたのです。これは、現行のパフォーマンスが将来の異なる役割での成功を保証しない、というピーターの法則の前提を逆手に取った戦略と言えるかもしれません。
もう一つの注目すべきシステムは、「アップ・オア・アウト(Up-or-Out)」と呼ばれるものです。これは1世紀以上前にポール・クラヴァスによって開拓され、マッキンゼー、BCG、ベインといったトップコンサルティングファームや大手法律事務所などで採用されています。
このシステムでは、新入社員は特定の期間内にパートナー(共同経営者)などの上位職に昇進することが期待され、それができなければ解雇される、という厳しいものです。常に組織の新陳代謝を促し、無能レベルに達した人材が組織内に滞留することを防ぐ効果があると考えられています。
最後に、ピーター博士自身が提示した、個人レベルでの対処法にも触れておきましょう。
彼は、従業員が自身の無能レベルに達するのを避けるためには、「解雇されない程度には有能だが、昇進するには十分ではない程度に無能」であるかのように振る舞うこと、つまり「創造的無能」を演じることを提案しています。これは、近年注目されている「静かな退職(Quiet Quitting)」(必要最低限の仕事しかしないという働き方)の考え方に通じるものがあるかもしれません。昇進だけが報酬ではなく、自分にとって本当に価値のある働き方や生き方を見つけるという視点です。
私たちは、人生を通じて、常に次の報酬(昇進)を受け入れ続け、檻の中のリスのように走り続け、目の前にぶら下げられたニンジンを追い求め続けるように条件付けられているのでしょうか?それとも、私たち自身の理性を使って、「自分はどこへ向かっているのか?」「自分の人生の目的は何なのか?」と自問し、昇進による報酬だけが唯一の価値ではなく、人生の他の側面にも豊かさや満足感を見出すべきなのでしょうか?
この問いは、現代のキャリア観を考える上で非常に重要です。今日の多くの企業が、必ずしもその職に最適とは言えないリーダーによって率いられているように見える現状を踏まえ、その背景にある理由を探ることは、組織にとっても個人にとっても有益なはずです。
まとめ
この記事では、「なぜ優秀な従業員が無能な上司になってしまうのか」という普遍的な疑問に対し、「ピーターの法則」というレンズを通してそのメカニズムと影響、そして可能な対策を探ってきました。
ピーターの法則は、組織内の昇進システムが、しばしば現在のパフォーマンスのみに基づいて行われるため、従業員が自身の能力を超えた「無能レベル」に到達し、そこで停滞してしまう傾向があることを示唆しています。これは単なる風刺ではなく、Googleの研究や複数の学術調査、さらには歴史的な事例によっても裏付けられる現象です。
無能な上司の存在は、個人のストレスや健康問題、エンゲージメントの低下、そして高額な離職コストといった形で、組織に深刻なダメージを与えます。どんなに優れた福利厚生や制度を用意しても、直属の上司との関係が悪ければ、従業員の満足度や生産性を維持することは困難です。
しかし、私たちはこの法則にただ翻弄されるだけではありません。ピーターの法則を克服するための挑戦として、能力主義の限界を認識し、中間層の評価を高めること、昇進前の水平異動によって多様なスキルと視野を育むこと、さらにはランダム昇進や最良・最悪昇進、アップ・オア・アウトといった従来の発想にとらわれない昇進システムを検討することなどが提案されています。また、個人レベルでも、昇進だけがキャリアの成功ではないという価値観を持ち、自身の人生の目的や幸福について深く考えることが重要になります。
ピーターの法則は、組織における人材育成や評価、昇進のあり方について、根本的な問いを投げかけています。この法則を理解し、その罠を回避するための戦略を組織と個人の両方が模索していくことが、より健全で生産的、そして持続可能な未来を築くための鍵となるでしょう。本記事が、皆様の職場環境やご自身のキャリアについて、改めて考えるきっかけとなれば幸いです。
参考:https://www.youtube.com/watch?v=m7-UdDg5uIw
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