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ロボットスーツが走りを変える?AI搭載ウェアラブルロボットの実力と未来

2026-01-21濱本

「もっと速く走りたい」「楽に長距離を走りたい」―――多くの人が一度は抱くであろう願望です。近年、その願いをテクノロジーの力で実現しようとする試みが加速しています。その最前線にあるのが、AIを搭載したロボット外骨格スーツ、通称「Exo suit(エクソスーツ)」です。まるでSF映画のようなこのデバイスは、私たちの身体能力を拡張し、ランニング体験を根本から変える可能性を秘めています。下り坂を駆け下りる時のような、自分の意志とは少し違うけれど、どこまでも走れそうな感覚。そんな不思議な体験をもたらすウェアラブルロボットが登場しました。 この記事では、英国Wired誌のライターであるAmit Katwala氏が実際にこの革新的なロボットスーツを体験し、その仕組み、効果、そして未来について探求した記録を元に、ビジネスパーソンの知的好奇心を満たすべく、詳細な分析と考察をお届けします。果たしてこのロボットスーツは、人間のパフォーマンスをどこまで引き上げることができるのでしょうか?そして、その技術は私たちの社会にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか?専門家の分析やモーションキャプチャーによる客

ロボットスーツが走りを変える?AI搭載ウェアラブルロボットの実力と未来
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

「もっと速く走りたい」「楽に長距離を走りたい」―――多くの人が一度は抱くであろう願望です。近年、その願いをテクノロジーの力で実現しようとする試みが加速しています。その最前線にあるのが、AIを搭載したロボット外骨格スーツ、通称「Exo suit(エクソスーツ)」です。まるでSF映画のようなこのデバイスは、私たちの身体能力を拡張し、ランニング体験を根本から変える可能性を秘めています。下り坂を駆け下りる時のような、自分の意志とは少し違うけれど、どこまでも走れそうな感覚。そんな不思議な体験をもたらすウェアラブルロボットが登場しました。

この記事では、英国Wired誌のライターであるAmit Katwala氏が実際にこの革新的なロボットスーツを体験し、その仕組み、効果、そして未来について探求した記録を元に、ビジネスパーソンの知的好奇心を満たすべく、詳細な分析と考察をお届けします。果たしてこのロボットスーツは、人間のパフォーマンスをどこまで引き上げることができるのでしょうか?そして、その技術は私たちの社会にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか?専門家の分析やモーションキャプチャーによる客観的なデータも交えながら、ウェアラブルロボットが切り開く未来を紐解いていきましょう。

現状の実力診断:専門家が指摘する改善点と潜在能力 ロボットスーツの内部構造と科学的分析:AIとセンサーが走りを最適化する仕組み 実走テスト:悪条件下でのタイム短縮と専門家による再評価 まとめ 現状の実力診断:専門家が指摘する改善点と潜在能力

革新的なロボットスーツの効果を検証する前に、まずはスーツなしでの現状のパフォーマンスを正確に把握することが不可欠です。Amit氏は、自身のランニング能力を客観的に評価するため、オリンピックスプリントコーチであり、英国代表オリンピアンでもあるAdam Gemili氏に協力を依頼しました。経験豊富な専門家の目から見たAmit氏の走りには、改善すべき点が明確に存在しました。

Gemili氏がまず指摘したのは、「股関節屈筋(こかんせつくっきん)の硬さ」です。これは太ももを前に引き上げる筋肉群の柔軟性が低いことを意味します。動画を確認すると、Amit氏の膝はほとんど上がっておらず、効率的な推進力を生み出す上で大きな妨げとなっていることが見て取れます。力強いストライドのためには、膝を高く引き上げ、地面をしっかりと蹴り出す動作が重要ですが、股関節屈筋が硬いとこの一連の動きが制限されてしまいます。これはデスクワークが多い現代人によく見られる傾向であり、ランニングパフォーマンスだけでなく、腰痛などの原因にもなり得る要素です。

さらにGemili氏は、「腕の振り」にも改善の余地があると指摘しました。Amit氏の腕の振りは小さく、力強さに欠けており、推進力をロスしている状態でした。ランニングにおいて腕の振りは、下半身との連動性を高め、バランスを取り、前進する勢いを生み出すための重要な役割を担っています。理想的な腕の振りは、肘を約90度に曲げ、肩を支点にしてリズミカルに前後に振ることです。腕を力強く後ろに引くことで、反対側の脚が自然と前に引き出され、より大きなストライドとスピードにつながります。Amit氏は、スプリンターの動きを漠然と真似しようとしていただけで、その動きが持つ意味や正しいフォームを理解していなかったことを認めました。具体的には、腕を後ろに引いた際に手が腰の横あたりで止まってしまい、本来あるべき「腰よりも後ろまで、肘を90度に保ったまま引く」動きができていませんでした。この正しい腕の振りができていないことが、下半身の動きにも影響を与え、全体のパフォーマンスを低下させていたのです。コーチは、腕を目の高さまで振り上げ、後ろへは腰を通過するまでしっかりと引くことで、より多くのパワーを生み出し、空中での滞空時間を延ばし、結果としてより速く、より効率的に移動できるとアドバイスしました。

しかし、Gemili氏は厳しい指摘だけでなく、ポジティブな評価も与えています。彼はAmit氏の走りを「悪くないベースライン」「非常に良いランニングテクニックであり、走り方だ」と評し、「これまでスプリント経験がないかもしれないが、かなり自然な運動能力を持っている」と述べました。これは、基本的な身体の使い方は悪くなく、フォームを修正し、適切なトレーニングを行えば、パフォーマンスが向上する可能性を秘めていることを示唆しています。特に、専門的なトレーニングを受けていない人物に対して「自然な運動能力がある」と評価することは、今後の成長への期待感を示すものです。

この初期評価は、ロボットスーツの効果を測定する上での重要な基準点となります。スーツがこれらの弱点をどの程度補い、改善できるのか、そしてAmit氏自身が持つ潜在能力をどこまで引き出せるのかが、検証の焦点となります。また、専門家による具体的なフィードバックは、スーツの有無に関わらず、ランニングパフォーマンス向上を目指すすべての人にとって有益な示唆を与えてくれます。股関節の柔軟性、正しい腕の振りといった基本的な要素がいかに重要であるかを再認識させられます。ロボットスーツの体験を通して、Amit氏は自身の身体と向き合い、改善点を知る貴重な機会を得たのです。

ロボットスーツの内部構造と科学的分析:AIとセンサーが走りを最適化する仕組み

専門家による現状分析を経て、いよいよロボットスーツ「HFIT Exo suit」の核心に迫ります。このスーツは単なる補助具ではなく、着用者の動きを学習し、最適化するインテリジェントなシステムを備えています。ソウルにある開発元Herotechのラボで、Amit氏はその仕組みを学び、モーションキャプチャーを用いた詳細な分析を受けました。

まず、スーツの装着感ですが、太もも周りや腰回りがかなりタイトに設計されており、「荷造りされたような感覚」とAmit氏は表現しています。バックパックのストラップをきつく締めた時のような、身体に密着し、一体化するような感覚が特徴的です。これは、スーツが発生させる力を効率的に身体に伝え、意図した動作を正確に補助するために必要な設計と言えるでしょう。

このロボットスーツの心臓部と言えるのが、腰の後ろに取り付けられたユニットに内蔵された「モーター」と「AIモデル」です。開発者はこれを「人間の筋肉」と「人間の脳」に例えています。AIモデルは、スーツ各部に搭載されたセンサーから送られてくるデータをリアルタイムで分析し、着用者の現在の走り方を学習します。そして、そのデータに基づいてモーターを制御し、ケーブルを通じて脚の動きをアシストします。具体的には、太もも前面に取り付けられたケーブルがモーターによって引っ張られることで、膝をより高く、より速く引き上げる動作を補助します。このケーブルには張力を測定するセンサーも内蔵されており、どの程度の力で引っ張っているかを常に監視し、フィードバック制御に役立てています。さらに、モーションセンサーが走行中の姿勢やバランスに関するデータを収集し、AIが総合的に判断して最適なアシストを提供します。

ラボでの最初のテストは、モーションキャプチャーシステムを用いて行われました。Amit氏の身体の各関節にマーカーとなる「ドット」が取り付けられ、部屋中に設置された複数のカメラがその動きを精密に捉えます。これは、スポーツゲームのキャラクターの動きを作成する際などにも用いられる高度な技術です。このシステムにより、コンピューター上でAmit氏の骨格モデルが再現され、スーツなしとスーツ着用時の走りを詳細に比較分析することが可能になります。

スーツなしでのランニングデータが収集された後、いよいよスーツを着用しての走行です。最初はスーツが着用者の動きに同期しておらず、モーター音が聞こえるものの、アシストは感じられません。しかし、走り始めるとすぐにAIがAmit氏の歩調やリズムを学習し、同期を開始します。同期が完了すると、Amit氏は「脚が少し前に押し出されるような感覚」を覚えました。ビデオ映像でも、スーツ着用時の方が明らかに膝が高く上がっているのが確認できます。AIは動的に、つまり走りながらリアルタイムでAmit氏の動きに適応していきます。当初懸念していたような「制御不能になる感覚」はなく、むしろ安定感があったとAmit氏は述べています。

走り終えた後の感想として、Amit氏は「下り坂を走っているような感覚」を再び口にしました。自分のスピードを完全にコントロールしているわけではないけれど、少し助けられている感覚。脚が体よりも速く動いているような、不思議な浮遊感にも似た体験だったようです。それでいて、スーツなしで走った時よりも息切れは少なく、疲労感が軽減されていることも実感しました。

次に、トレッドミルの速度を20%上げて、時速約18km(5m/s)で走行テストが行われました。速度が上がると、スーツのアシストも一段と強力になります。「スーツが本領を発揮し始めた」「さらに速く、タイトになり、本当に助けてくれている」とAmit氏はその変化を表現しています。スーツが完全に走り方と同期し、より積極的に脚の動きをサポートしているのが感じられました。コーチのアドバイスを思い出し、腕の振りを意識することで、高速走行にも対応できたようです。そして驚くべきことに、高速で走ったにも関わらず、スーツなしの低速走行時よりも疲労感が少なかったのです。

これらの体感的な変化を裏付けるのが、モーションキャプチャーによる客観的なデータ分析です。開発チームは、収集したデータから様々な数値を解析しました。

股関節屈曲角度 :太ももを前に引き上げる角度です。スーツ着用時(青線)は、非着用時(赤線)と比較して、角度が大幅に増加していることがグラフで明確に示されました。その差は約10度にも及び、これは非常に大きな改善だと開発者は説明します。膝が高く上がるようになったという体感と一致する結果です。

骨盤の傾き :スーツなしの走行では、骨盤が前傾している(前に傾いている)様子が骨格モデルで確認されました。これは腰への負担増や、効率的な力の伝達を妨げる可能性があります。一方、スーツを着用すると、骨盤がより直立した状態に矯正されていることが分かりました。姿勢が改善され、より真っ直ぐな体幹を保てるようになったのです。

接地と蹴り出し:骨盤が直立することで、足が地面に着地する際の力が、より真下に効率よく伝わるようになります。前傾姿勢だと力が後方に逃げがちですが、直立姿勢では地面からの反発力を最大限に活かし、次のストライドへの力強い推進力を生み出すことができます。

歩行周期時間 :歩行周期とは、片足が地面に着いてから、次に同じ足が地面に着くまでの時間と動作のことです。スーツを着用することで、この歩行周期時間が約40%も改善されたという驚異的な結果が出ました。これは、一歩あたりのストライド(歩幅)が大幅に伸び、より少ない歩数で同じ距離を進めるようになったことを意味します。ランニング効率が劇的に向上した証拠です。

これらのデータは、ロボットスーツが単に力を加えるだけでなく、ランニングフォームそのものを改善し、より効率的でパワフルな走り方を着用者に「教え込んでいる」ことを示唆しています。AIがリアルタイムで動きを分析し、モーターとケーブルを通じて物理的なアシストを加えることで、理想的なフォームへと導いているのです。ラボでのテストは、このロボットスーツが持つ驚くべきポテンシャルを科学的に証明するものとなりました。

実走テスト:悪条件下でのタイム短縮と専門家による再評価

ラボでの詳細な分析を経て、いよいよ実際の陸上トラックでのテストです。ロボットスーツ「HFIT Exo suit」が、管理された環境下だけでなく、現実のフィールドでどれほどの効果を発揮するのか。Amit氏はソウル大学の陸上トラックで、100メートル走のタイム計測に臨みました。このテストには、韓国代表のスプリンターであるKungu氏と、スーツ開発チームの一員でありスポーツ工学を専門とするJun教授も立ち会い、評価を行いました。

まず、基準となるタイムを計測するため、スーツなしで100メートルを全力疾走しました。スタート地点にはタイミングパッドが設置され、トラック沿いにはスプリットタイマーが配置されており、正確なタイムと区間ごとの速度変化を計測できる体制が整えられています。Amit氏のスーツなしでのタイムは、後ほどの比較のために記録されました。

走り終えたAmit氏に対し、専門家からのフィードバックがありました。韓国代表スプリンターのKungu氏は、Amit氏の走りを「驚くほど良い」と前置きしつつも、改善点を指摘しました。やはり股関節の屈曲、つまり膝の引き上げがまだ不十分であり、足首の動きに頼りすぎている傾向が見られるとのことでした。これは、最初のコーチングでAdam Gemili氏が指摘した点と共通しており、Amit氏の走りの根本的な課題であることが改めて浮き彫りになりました。効率的なランニングでは、股関節を起点としたダイナミックな脚の動きが重要ですが、Amit氏は末端である足首の力に依存してしまっている、という分析です。

腕の振りについても、改善の余地が指摘されました。Kungu氏は、Amit氏の手の動きが硬く、力みすぎているように見えると述べました。Jun教授はこれを補足し、もっとリラックスして腕を振るべきだとアドバイスしました。最初のコーチングで指摘された「腕を90度に曲げて前後に大きく振る」という点に加え、今回は「リラックス」という要素が加わりました。力みはスムーズな動きを妨げ、無駄なエネルギー消費につながるため、リラックスした状態でリズミカルに腕を振ることが重要です。Amit氏は、指を固く握りしめるような動きではなく、手を軽く開いてリラックスさせるべきだと理解しました。

これらのフィードバックを踏まえ、いよいよロボットスーツを装着しての100メートル走です。しかし、テスト当日はあいにくの悪天候に見舞われました。気温は氷点下10度、そして雪が舞い散るブリザードのような状況。「まるでクリスマスカードのよう」とAmit氏は表現しましたが、ランニングには極めて厳しいコンディションです。低温は筋肉の動きを鈍らせ、パフォーマンスを低下させる要因となります。さらに、防寒のために通常よりも多くのウェアを重ね着する必要があり、これも動きにくさや重量増につながります。加えて、ラボでのテストや移動で一日中活動した後であり、疲労も蓄積している状態でした。このような悪条件下では、スーツなしの自己ベストタイムに匹敵するだけでも十分な成果と言える状況です。

厳しいコンディションの中、スタートの合図とともにAmit氏は走り出しました。スーツのアシストを感じながら、100メートルを駆け抜けます。走り終えたAmit氏の第一声は「すごく良い感じだった!かなり速く感じた」というポジティブなものでした。「タイムをかなり縮められたと思う。特に中間部分でスーツが自分と一緒に力強く動いてくれるのを感じた。時々、同期が少しずれることもあったけれど、全体としては本当に助けになった」と、スーツの効果を実感している様子がうかがえました。

そして、計測結果が発表されました。スーツ着用時のタイムは「15.7秒」。これは、スーツなしで記録したタイムから、実に0.5秒も短縮されたことを意味します。Amit氏は「素晴らしい!本当にすごい!」と喜びを隠せません。

一般的に、0.5秒という時間は些細なものに聞こえるかもしれません。しかし、陸上競技、特に短距離走の世界では、0.1秒、0.01秒を争う熾烈な競争が繰り広げられています。エリートレベルのアスリートにとって、0.1秒の短縮は勝敗を分けるほどの大きな差です。アマチュアレベルであっても、0.5秒の短縮は非常に大きな進歩と言えます。

さらに重要なのは、このタイム短縮が、氷点下の気温、雪、重ね着による動きにくさ、そして疲労困憊という、パフォーマンスにとって極めて不利な条件下で達成されたという点です。通常であればタイムが落ちても不思議ではない状況で、自己ベストを更新したのです。これは、ロボットスーツが単なる補助にとどまらず、悪条件を克服し、着用者のパフォーマンスを明確に向上させる力を持っていることを示しています。

Adam Gemiliコーチが最初に述べた「君は思ったよりも自然な運動能力を持っているのかもしれない」という言葉が、Amit氏の脳裏をよぎります。あるいは、この驚くべき結果は、純粋にロボットスーツの力によるものなのかもしれません。おそらく、その両方が組み合わさった結果なのでしょう。スーツがAmit氏の潜在能力を引き出し、正しいフォームへと導き、物理的なアシストを加えることで、不利な状況下でも自己ベストを更新するという成果につながったと考えられます。この実走テストは、ロボットスーツ技術が持つ実用性と、人間の能力拡張における大きな可能性を証明する、印象的なデモンストレーションとなりました。

まとめ

今回取り上げたAI搭載ロボット外骨格スーツ「HFIT Exo suit」の検証は、テクノロジーが人間の身体能力、特にランニングパフォーマンスをいかに向上させ得るかを示す、説得力のある事例となりました。Wired誌のライターAmit Katwala氏の体験を通して、私たちはその仕組み、効果、そして未来への可能性を垣間見ることができました。

当初、股関節屈筋の硬さや非効率的な腕の振りといった課題を抱えていたAmit氏の走りは、ロボットスーツの着用によって劇的な変化を遂げました。ラボでのモーションキャプチャー分析では、股関節の屈曲角度が約10度増加し、骨盤の傾きが補正され、より直立した効率的なフォームへと改善されました。特に驚くべきは、歩行周期時間が約40%も改善された点です。これは、ストライドが大幅に伸び、より少ないエネルギーで速く走れるようになったことを科学的に裏付けています。AIが着用者の動きをリアルタイムで学習・分析し、モーターとケーブルを通じて最適な物理的アシストを加えることで、単に力を補うだけでなく、理想的なランニングフォームそのものを実現させているのです。

そして、氷点下で雪が降るという悪条件下で行われた100メートル走の実走テストでは、スーツなしのタイムを0.5秒も短縮するという目覚ましい結果を残しました。不利な状況を考慮すれば、これはロボットスーツが持つパフォーマンス向上効果がいかに大きいかを物語っています。専門家が指摘したフォームの改善点が、スーツのアシストによって補われ、Amit氏自身が持つ「自然な運動能力」が引き出された結果と言えるでしょう。

このロボットスーツは、単にトップアスリートの記録更新のためだけのものではありません。Amit氏のように、特別なトレーニング経験がない一般の人々にとっても、より速く、より楽に、そしてより正しいフォームで走ることを可能にします。これは、ランニングを始めたばかりの初心者や、怪我からのリハビリテーション、あるいは加齢による体力低下を感じている人々にとっても、大きな福音となる可能性があります。正しいフォームを維持し、関節への負担を軽減しながら運動能力を高めることができるため、健康増進やアクティブエイジングの分野での活用も期待されます。

さらに視野を広げれば、この技術はスポーツ分野にとどまらず、様々な領域への応用が考えられます。例えば、重い荷物を運ぶ物流現場や、長時間の立ち仕事が求められる工場、あるいは歩行困難な方の日常生活支援など、人間の身体的な負担を軽減し、能力を拡張するツールとしての可能性を秘めています。AIとセンサー、アクチュエーター(モーターなど)を組み合わせたウェアラブルロボット技術は、今後さらに進化し、私たちの働き方や暮らし方を大きく変えていくかもしれません。

もちろん、課題も存在します。現状ではまだデバイスが大きく、重く、高価である可能性があり、一般への普及には時間が必要です。また、AIによる身体制御がどこまで許容されるのか、競技における公平性や、人間の能力そのものに対する考え方など、倫理的な側面からの議論も深めていく必要があるでしょう。

しかし、今回の検証が示したように、AI搭載ロボットスーツは、人間のパフォーマンスを新たな次元へと引き上げる可能性を秘めた、極めて有望なテクノロジーです。それは、私たちが自身の身体能力の限界を超え、これまで不可能だと思っていたことを実現するための、強力なパートナーとなり得るのです。ビジネスパーソンとしても、このような先端技術の動向を注視し、自社の事業や個人のスキルアップにどのように活かせるかを考えることは、未来への備えとして重要と言えるでしょう。ロボットスーツがもたらす「下り坂を走るような感覚」は、テクノロジーによって加速する未来社会の到来を予感させる、象徴的な体験なのかもしれません。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=OSBYlyDcRgI

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