株式会社TIMEWELLの濱本です。
スタートアップの世界は、常に新しいアイデアと挑戦で溢れています。しかし、その多くは最初は「馬鹿げている」「非現実的だ」と一蹴されるものです。巨大なロケットを打ち上げ、再利用する。見知らぬ人の車に乗り、見知らぬ人の家に泊まる。これらは今でこそ当たり前のサービスとして受け入れられていますが、登場当時はまさに「常識破り」のアイデアでした。こうした、後に世界を変える可能性を秘めた「狂気」とも思えるビジョンを、誰よりも早く見抜き、信じ抜く存在がいます。それが、本記事で紹介するベンチャーキャピタル(VC)の哲学、「Second Believer(二人目の信奉者)」です。創業者自身が持つ強烈な自己信念に次ぐ、二人目の熱烈な支持者として、まだ形にならないアイデア段階から伴走し、未来の実現を後押しする。この記事では、Founders Fund出身の投資家たちが語る、非コンセンサスなアイデアへの投資哲学、未来を見抜く眼力、そしてグローバルな視点に立った次世代テクノロジーへの期待について、彼らの言葉を元に深く掘り下げていきます。常識に疑問を投げかけ、未来を形作る起業家と、それを支える投資家の思考に迫ります。
「Second Believer」とは何か? - 創業者の信念を信じ抜く伴走者 未来を見抜く眼力:非コンセンサス投資の核心 グローバルな視点と未来予測:次なる破壊的イノベーションを求めて 未来への信念をカタチにする力 「Second Believer」とは何か? - 創業者の信念を信じ抜く伴走者
ベンチャーキャピタル(VC)の世界において、「Second Believer(二人目の信奉者)」という概念は、特に初期段階のスタートアップ投資において極めて重要な意味を持ちます。これは単なる資金提供者ではなく、創業者自身の強烈な信念に共鳴し、そのビジョンの実現を誰よりも強く信じる第二の人物としての役割を指します。対談の中で語られているように、革新的な事業を立ち上げる創業者は、まず自分自身と自らのアイデアに対する揺るぎない信念、すなわち「一人目の信奉者(First Believer)」でなければなりません。
「Second Believer」であるVCの役割は、その創業者特有の信念を見抜き、まさにその隣に立ち、支援することにあります。特に、彼らが対象とするのは、まだ具体的な製品やサービスが存在しない、場合によっては創業者二人が部屋にいるだけ、といった極めて初期の段階です。この段階では、事業計画や市場分析よりも、創業者自身が持つ熱量、ビジョン、そしてそれを実現しようとする強い意志が、投資判断の最も重要な要素となります。「我々の役割は、彼らのためにそこにいて、我々が持つ全てで信じ、彼らが想像する未来を築いてもらうことだ」という言葉は、この哲学を端的に表しています。資金提供はもちろんのこと、精神的な支えとなり、ネットワークを提供し、時には厳しい問いを投げかけることで、創業者が直面するであろう数々の困難を乗り越える手助けをする。それが「Second Believer」に求められる真の価値なのです。
Founders Fundでの経験は、この「Second Believer」としての哲学を形作る上で大きな影響を与えています。Founders Fundは、既成概念を打ち破るような野心的なテクノロジー企業への投資で知られており、まさに「馬鹿げた」あるいは「型破りな」と評されるアイデアを持つ起業家を積極的に支援してきました。対談者は、この初期段階投資に「中毒(addicted)」になったと語っており、それは単なる金銭的リターンを超えた、未来創造への貢献に対する強い情熱を示唆しています。
しかし、全ての「馬鹿げたアイデア」が成功するわけではありません。投資には当然リスクが伴い、一部のアイデアは「馬鹿げたまま」終わることもあります。タイミングが早すぎたり、市場が想定通りに反応しなかったりする場合です。重要なのは、失敗のリスクを認識しつつも、将来的にコンセンサスとなり、世界を変える可能性を秘めたアイデアを早期に見抜くことです。当初は奇抜に聞こえたアイデアが、やがて業界標準となり、ブルームバーグのターミナルに表示されるような「当たり前」の存在になる。その変曲点のずっと手前、まだ誰もその分野に名前すら付けていない段階で投資を行うことに、彼らは価値を見出しています。
具体的な事例として、SpaceX、Uber、Andurilなどが挙げられています。これらの企業は、設立当初、多くの人々からそのアイデアの実現性を疑われていました。巨大なロケットを再利用し、ブースターを着陸させるというSpaceXの構想は、まさにSFの世界の話のように聞こえました。見知らぬ人の車に乗るUberのサービスは、安全性への懸念から否定的な意見が多く聞かれました。しかし、「Second Believer」たちは、これらのアイデアが持つ潜在的なインパクトと、それを実現しようとする創業者の並外れた能力と信念を見抜きました。彼らは、初期の資金提供(early checks)を通じて、これらの企業が黎明期を乗り越え、今日の成功を築くための重要な支援を行ったのです。これらの成功事例は、「馬鹿げたアイデア」がいかにして「常識」へと変わっていくか、そしてそのプロセスにおいて初期段階の投資家がいかに重要な役割を果たすかを明確に示しています。非コンセンサスな段階でリスクを取り、創業者のビジョンを信じ抜くこと。それこそが、「Second Believer」としてのVCが持つべき核心的な姿勢であり、未来を形作る原動力となるのです。
未来を見抜く眼力:非コンセンサス投資の核心
成功する非コンセンサス投資、すなわち、多くの人がまだ価値を認めていない「馬鹿げた」アイデアへの投資には、共通する特徴があります。それは、投資先のアイデアが「独立して導き出された」ものである、という点です。対談の中でLee氏は、彼らが支援する創業者は、他者の意見や流行に流されることなく、自身の深い好奇心に従って、他の誰も気づいていない何かを発見していると強調します。「彼らは自分たちだけの部屋にいるようなものだ。そしてそれは本当に良い兆候だ」という言葉は、この独自性と孤高の探求心を象徴しています。市場調査や競合分析から生まれるアイデアではなく、創業者自身の内なる声、純粋な知的好奇心、あるいは個人的な体験から生まれたユニークな洞察こそが、真の破壊的イノベーションの源泉となり得るのです。
このような創業者は、既存の枠組みにとらわれず、全く新しい視点から問題解決や価値創造に取り組みます。「Second Believer」としてのVCの役割は、その「一人部屋」に共に入り、創業者が描く未来のビジョンを理解し、共有することです。彼らが何を見て、何を感じ、なぜその未来が実現可能だと信じているのか。それを深く理解しようと努めるプロセスこそが、投資判断の核心となります。SpaceX、Uber、Andurilといった過去の成功事例も、当初は「狂っている」と評されましたが、創業者たちの独立した探求心と揺るぎない信念によって現実のものとなり、今や主流となっています。VCは、その未来への道のりを伴走し、彼らが未来を語るのを支援する存在なのです。
この「独立した好奇心」というテーマは、具体的な投資事例であるCrusoe Energy Systemsへの投資判断においても明確に表れています。Crusoeは、データセンターのインフラ構築を、気候変動への配慮と両立させるというユニークなアプローチを取る企業です。特に、AIの発展に伴い、データセンターのエネルギー消費と設置場所の問題が深刻化する中で、Crusoeの取り組みは注目を集めています。興味深いのは、このCrusoeへの最初の投資(first check)を行ったのがLee氏であり、彼がそのポテンシャルを誰よりも早く見抜いていたという点です。彼は後にこの案件をFounders Fundの同僚であったCyan氏に紹介し、二人の協力関係が深まるきっかけにもなりました。
Lee氏がCrusoeに惹かれた理由は、創業者のChase LochmillerとCully Cavnessが、初期段階から「エネルギー」の重要性に着目していた点にあります。多くのデータセンター企業が計算能力の向上に注力する中で、Crusoeはエネルギー供給という根本的な課題、特に未利用エネルギー資源の活用や、エネルギー効率の高いデータセンターの構築に早くから取り組んでいました。AIインフラの需要が爆発的に増加する現在、エネルギー供給がボトルネックであることは明白であり、Crusoeの先見性が証明されつつあります。CoreWeaveのような同業他社も市場で評価されていますが、Crusoeはエネルギー供給という根源的な問題に焦点を当てた独自のビジネスモデルと機会を持っていると、彼らは考えています。これはまさに、創業者が自身の洞察に基づき、他社とは異なる独自のアプローチを追求した結果であり、「独立して導き出された」アイデアの典型例と言えるでしょう。
非コンセンサス投資において未来を見抜く眼力とは、単にトレンドを追うことではありません。むしろ、大多数が見過ごしている、あるいは理解できない領域にこそ、大きなチャンスが眠っていると考える視点です。創業者の「独立した好奇心」に共感し、彼らがなぜその「一人部屋」にいるのかを理解しようと努めること。そして、エネルギー問題のような、将来必ず重要になるであろう根源的な課題に対する独自の解決策を見出すこと。Crusoeの事例は、こうした非コンセンサス投資の核心的な要素、すなわち、深い洞察力と長期的な視点に基づいた判断の重要性を示しています。当初は「馬鹿げている」ように見えたとしても、社会や技術の進化とともに、その価値が広く認識されるようになる。その変曲点を予測し、まだ誰も見向きもしない段階でリスクを取ることこそが、卓越したリターンを生み出す鍵となるのです。
グローバルな視点と未来予測:次なる破壊的イノベーションを求めて
優れた「Second Believer」であるためには、国内市場や特定の地域にとらわれないグローバルな視点と、数年先を見据えた未来予測能力が不可欠です。Cyan氏が率いるファンドは、約1億8100万ドル超という規模でありながら、その投資活動はシリコンバレーを中心とする西海岸に限定されません。「私たちはロケーションにとらわれない」と明言するように、世界中にベンチャーパートナーを配置し、才能ある起業家を発掘しています。フランスに拠点を置くPascal Gauthierや、テキサス州オースティンにいるJustin Maresなど、多様なバックグラウンドを持つパートナーがチームに加わり、ファンドの規模を超えた影響力を発揮しています。このグローバルなネットワークは、「魔法のような」創業者、すなわち人類の未来を根本的に変えようとする大きなビジョンを持つ人材が、世界のどこにでも存在するという信念に基づいています。彼らが求めるのは、単なる既存ビジネスの改善ではなく、社会や産業構造そのものを変革するような、スケールの大きなアイデアです。
そして、その投資判断の根幹にあるのが、未来予測です。彼らは常に「6年から7年先」を見据えて投資を行っています。「Crusoeの事例で言えば、我々はAIがこれほど注目される以前から、暗号資産とAIの両方にとってエネルギーが必要になることを見抜いていた」とCyan氏は語ります。現在、多くの投資家がAIのアプリケーションレイヤーにおける「カンブリア爆発」とも言える状況に注目し、投資を行っていますが、彼らはそのさらに先、AIが可能にするであろう次世代の技術革新に目を向けています。
具体的には、バイオテクノロジーやナノテクノロジーといった分野です。これらの技術が社会に実装され、大きなインパクトを与えるまでには長い時間が必要です。だからこそ、アイデアがまだ「ナプキンに書かれたスケッチ」や「数人が家に集まっている」段階であっても、その可能性を見抜き、最初の資金を提供し、信じ続ける長期的な視点が求められるのです。NASDAQに上場するような成熟企業になるまでには、長く険しい道のりがあることを理解した上で、その旅の始まりを支援することに価値を見出しています。
このようなユニークな投資哲学と未来志向のアプローチは、リミテッドパートナー(LP)、すなわちファンドへの出資者を引き付ける上でも強力な武器となります。現在のベンチャーキャピタル市場は競争が激しく、資金調達が厳しい環境にありますが、彼らのファンドは明確な差別化を実現しています。LPが他のファンドマネージャーと比較検討する際、彼らのポートフォリオには重複が少ないことが明らかになります。なぜなら、彼らは常に未来を見据え、他の誰もが「馬鹿げている」と見過ごすような非コンセンサスなアイデアを持つ起業家を発掘しているからです。
過去の事例を振り返れば、Uberに対しては「誰も見知らぬ人の車には乗らない」、Airbnbには「誰も見知らぬ人のソファには泊まらない」、Niantic(ポケモンGOの開発元)には「誰も見えないポケモンを捕まえたりしない」、SpaceXには「民間企業が宇宙にロケットを打ち上げるべきではない」といった否定的な意見が支配的でした。これらは、Cyan氏のかつての同僚であるGeoff Lewis氏が言うところの「物語違反」、すなわち既存の常識や物語に反するアイデアです。Cyan氏が探し求めているのは、まさにこのような、自分だけがその未来を確信でき、他の誰もが理解できないような投資機会です。
このアプローチがもたらす利点は、単にユニークであることだけではありません。非コンセンサスな段階で投資することで、「価格優位性」を得られる可能性が高まります。多くの投資家がまだ価値を認めていないため、比較的有利な条件で投資を実行できるのです。そして、その後の成長によって、平均を上回るリターンを継続的に生み出すことを目指します。
【LPを引きつける差別化戦略の要点】
未来志向:常に6〜7年先を見据え、次世代の破壊的イノベーション(バイオ、ナノテク等)に焦点を当てる。
非コンセンサス投資:他のVCが見過ごす「馬鹿げた」「物語違反」のアイデアを積極的に発掘・支援する。
ポートフォリオの独自性:他ファンドとの重複が少なく、LPにとって分散効果の高い投資機会を提供する。
価格優位性:非コンセンサス段階での投資により、有利なバリュエーションでの参入を目指す。
実績とストーリー:過去の成功事例(Uber, SpaceX等)を提示し、「物語違反」がいかに大きな価値を生むかを具体的に示す。
これらの要素が組み合わさることで、厳しい市場環境下においてもLPからの強い支持と興奮を得ることができているとCyan氏は語ります。グローバルな視点で才能を発掘し、長期的な未来予測に基づいて非コンセンサスな賭けを行い、その独自性をLPに明確に伝えること。これが、次なる破壊的イノベーションを捉え、持続的な成功を収めるための鍵となる戦略なのです。
未来への信念をカタチにする力
本記事では、「Second Believer」という独自の投資哲学を持つベンチャーキャピタリストたちの言葉を通して、初期段階のスタートアップ投資の本質に迫りました。彼らのアプローチは、単なる資金提供を超え、創業者自身の強烈な信念に次ぐ第二の信奉者として、まだ形にならない、時には「馬鹿げている」と評されるアイデアの実現を初期段階から支えることにあります。Founders Fundでの経験に裏打ちされた彼らの投資戦略は、SpaceXやUberのような、かつては非現実的とされたアイデアが、いかにして世界の常識となり得るかを示しています。
その核心にあるのは、「独立した好奇心」を持つ創業者を見抜く眼力と、エネルギー問題のような将来の重要課題を予見する長期的な視点です。Crusoeへの投資事例は、非コンセンサスな段階でリスクを取り、独自の技術やビジネスモデルを持つ企業を支援することの重要性を物語っています。さらに、彼らはシリコンバレーという地域にとらわれず、グローバルな視点で才能を発掘し、AIの次の波、バイオテクノロジーやナノテクノロジーといった6〜7年先の未来を見据えて投資を行っています。この未来志向と非コンセンサスへの賭けこそが、競争の激しいVC市場において明確な差別化を生み出し、LPからの信頼を獲得する源泉となっています。
「Second Believer」の哲学は、不確実性が高く、常識が通用しない未来を切り拓こうとする起業家にとって、強力な推進力となります。それは同時に、私たち自身が新しいアイデアや未知の可能性に対して、いかに向き合うべきかという問いを投げかけています。未来は、既存の枠組みを疑い、信念を持って挑戦する人々と、その挑戦を信じ、支える人々の手によって創られていくのです。
参考:https://www.youtube.com/watch?v=aj3EDgO3jQA
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