株式会社TIMEWELLの濱本です。
"シリコンバレー"そこは革新的なアイデアと野心的な起業家が集う、世界最高峰のイノベーションハブです。多くの人々がここで一攫千金を夢見ますが、成功への道は決して平坦ではありません。特に、人生のパートナーである夫婦が、ビジネスのパートナーとしても共に歩むことを選んだ場合、そこには特有の喜びと、避けられない困難が待ち受けています。
この記事では、YouTubeチャンネル「Silicon Valley Girl」を運営するマリナ氏と、彼女の夫であり、かつてLinguaTripを共同で創業した元ビジネスパートナー、ディミトリ(ディマ)氏の対談に基づき、夫婦でスタートアップを立ち上げ、シリコンバレーという競争の激しい環境で奮闘した彼らのリアルな経験を深掘りします。移民としてゼロからスタートし、急成長を遂げた企業の裏にあった葛藤、投資家との駆け引き、そして最終的になぜビジネス上のパートナーシップを解消するに至ったのか。彼らのストーリーを通じて、共同創業における人間関係の力学、目標達成への異なるアプローチ、そして個々の成長と変化について考察します。
シリコンバレーへの挑戦:移民夫婦が見た夢と現実 急成長の光と影:スタートアップ経営における意思決定と課題 パートナーシップの変容:夫婦から個々の道へ まとめ シリコンバレーへの挑戦:移民夫婦が見た夢と現実
マリナ氏とディミトリ氏のシリコンバレーでの物語は、多くの移民起業家が直面するであろう困難な状況から始まりました。2015年、彼らがこの地に足を踏み入れたとき、頼るべき友人やビジネス上のネットワークは皆無でした。文字通り、ゼロからのスタートだったのです。しかし、彼らには互いを補完し合う強みがありました。ディミトリ氏は、常に大きな夢を描き、不可能と思われるような目標にも果敢に挑戦するビジョナリータイプ。「シリコンバレーで資金調達するぞ」「市場を変えるオンラインツールを構築するんだ」と、彼は常に未来を見据え、大胆な発想で周囲を鼓舞しました。一方のマリナ氏は、その壮大なビジョンを現実のオペレーションに落とし込み、プロダクトに関する深い専門知識をもって着実に実行していく実務家タイプでした。ディミトリ氏がエンジンとなり、マリナ氏が舵を取る。この絶妙なバランスがあったからこそ、LinguaTripという船は大海原へと漕ぎ出すことができたのです。マリナ氏自身、「もし私たち二人でなければ、この会社は存在しなかったでしょう」と語るように、彼らの異なるスキルセットは、まさに共同創業者としての理想的な組み合わせでした。
ディミトリ氏の大胆さは、時に周囲を驚かせるほどでした。サンクトペテルブルクの小さな(マリナ氏曰く、まあまあの広さの)部屋で、彼はLinkedInを通じてマーク・ザッカーバーグ氏にダイレクトメッセージを送ったことさえあります。「もし彼をインタビューに呼べたら、あのDMを見せてやるんだ」と彼は笑いますが、当時の彼は本気でした。「僕たちに投資してくれるなら、君たちにチャンスをやろう」という、ある種「勘違い」とも言える強気なマインドセット。しかし、マリナ氏が指摘するように、この少し「非現実的」とも思える自信こそが、前例のない挑戦には不可欠な要素だったのかもしれません。マリナ氏自身は、「これは本当に大きな目標だ。達成できるかわからないけど、ワクワクするから挑戦してみよう。毎日小さな一歩を踏み出そう」という、より現実的で着実なアプローチを取ります。この対照的な二人のアプローチが、互いを刺激し合い、前進する力となりました。
シリコンバレーのエコシステムに飛び込む中で、彼らは数々の「洗礼」を受けました。特に印象的だったのは、著名なベンチャーキャピタル、セコイア・キャピタルのアルフレッド・リン氏とのやり取りです。最高の投資家を探していたディミトリ氏は、リン氏にコンタクトを取り、返信を得ることに成功します。「素晴らしい、クールだ。また連絡してくれ(Keep us posted)」という返信に、当時のディミトリ氏は「これはほぼ決まりだ!彼らは私たちに興味を持っている!」と大興奮し、マリナに報告しました。しかし、シリコンバレーでの経験を積んだ今なら、それが「丁寧な断り文句」に近いニュアンスであることを理解しています。「今は興味がないけれど、今後の進捗次第では考えなくもない」という遠回しな表現だったのです。しかし、その時の彼らはその真意を知らず、この「誤解」が大きな自信となり、次の半年間を突き進むエネルギー源となりました。このエピソードは、時に無知が力となることを示唆しています。もし最初からその言葉の真意を知っていたら、彼らは同じような熱量で前進できなかったかもしれません。
同様の文化的な誤解は、他の投資家とのコミュニケーションでも頻繁に起こりました。「君たちのスタートアップは素晴らしい!」といった賞賛の言葉を真に受けて、「彼らは本気で興味を持っている」と思い込んでしまう。しかし、それは多くの場合、アメリカのビジネス文化における社交辞令に過ぎませんでした。また、ミーティング後にメールを送っても返信がなく、そのまま連絡が途絶えてしまうケースも多々ありました。後になって他のアメリカ人から、それは「オープン・ドア」ポリシー、つまり明確な「ノー」を避けつつ、将来的な可能性を残しておくための戦略だと教えられます。「もし君たちが数年後に注目のスタートアップになったら、『ごめん、メールを見逃していたよ。スパムフォルダに入っていたんだ』と言って戻ってくるかもしれない」というわけです。これらの経験は、異文化の中でビジネスを行うことの難しさと、その環境への適応の重要性を物語っています。
英語の壁も大きな課題でした。2015年に移住した当初、ディミトリ氏の英語力は非常に限られていました。投資家へのメールは、常にマリナ氏にチェックを依頼しなければなりませんでした。しかし、彼は驚異的なスピードで英語力を向上させます。その秘訣は、常に英語のテレビ番組を見ること。「今ではイディオムやクールなフレーズもたくさん知っているよ」と彼は言います。この言語学習への取り組みは、彼の目標達成への執念を象徴しています。夫婦で共にこれらの困難を乗り越えた経験は、彼らの絆をより一層強固なものにしました。共有された挑戦と成功体験は、単なるビジネスパートナー以上の、深い信頼関係を築き上げたのです。彼らがシリコンバレーで見た夢は、数々の現実的な壁にぶつかりながらも、二人の協力によって少しずつ形になっていきました。
急成長の光と影:スタートアップ経営における意思決定と課題
LinguaTripは、シリコンバレーのエコシステムの中で目覚ましい成長を遂げました。特に2017年から2018年にかけては、収益が前年比3倍以上で増加するなど、急成長期を迎えます。従業員数も、わずか半年足らずで5、6人から60人へと急増しました。この急拡大は、喜ばしい反面、新たな経営課題をもたらしました。ディミトリ氏は当時を振り返り、特に採用戦略において「戦略的なミス」を犯したと語ります。具体的には、会社が急成長しているにも関わらず、初期から在籍していたメンバーを、経験やスキルが必ずしも伴わないにも関わらず、管理職や幹部へと昇進させてしまったことです。例えば、ソーシャルメディアマネージャーだった人材をオペレーションディレクターに任命するなど、内部からの登用にこだわりました。「彼らは2、3年働いてくれていて、会社を楽しんでくれている。彼らに信頼を寄せたい」という気持ちは、人間的には理解できます。しかし、スタートアップの急成長フェーズにおいては、その段階を既に経験し、組織をスケールさせるノウハウを持つ外部の専門家を積極的に採用する必要がありました。
彼らは当時、「ホットなスタートアップ」として注目されており、十分な資金を調達し、優秀な人材を採用できる立場にありました。しかし、ディミトリは「文化的な、あるいは個人的な感情」から、既存チームへの配慮を優先してしまったと分析します。起業家としては、時に会社の目標達成を最優先し、非情とも思える決断を下す勇気が必要です。「会社の成長のためには、時に厳しい判断を下さなければならない。その決断ができなかったのは、私のミスだった」と彼は率直に認めます。この経験は、スタートアップ経営における人材マネジメントの難しさ、特に急成長期における適切なチームビルディングの重要性を示唆しています。
資金調達戦略においても、後から見れば改善の余地がありました。彼らは、株式の希薄化(Dilution)を過度に恐れるあまり、自分たちが明確に使い道を計画できるだけの、必要最低限の金額しか調達しませんでした。そして、より高い評価額で次のラウンドの資金調達を行うという、段階的なアプローチを取りました。結果として、創業者たちの持分比率は高く維持されましたが、ディミトリは「シリコンバレーの流儀に従えば、もっと早い段階で有力な投資家を株主として迎え入れ、彼らの経験やネットワークを活用すべきだったかもしれない」と考えています。有力な投資家を取締役会に招き入れ、戦略的な議論を交わすことで、採用や買収提案への対応など、重要な局面でより適切な判断ができた可能性があるからです。
実際、彼らは会社が成長している初期段階で、買収の打診を受けました。しかし、ディミトリは「まだ始まったばかりだ。もっと成長できる」と考え、具体的な条件を聞くことさえせずに断ってしまいました。これも大きな後悔の一つです。「どんな提案であれ、まずは条件を提示してもらい、それから判断する。これが最初のルールだ」と彼は今なら言えます。また、早期に会社を売却することには、単に金銭的なリターンを得るだけでなく、起業家としての「実績」を作るという大きなメリットがあります。成功したエグジット経験は、次の会社を立ち上げる際に、投資家からの信頼を得やすくし、より大きな挑戦を可能にするのです。「最初の会社で実績を作り、それから本当に大きなことに挑戦する。そのためにシリコンバレーに来たはずなのに、戦略的な判断がその大きな目標と一致していなかった」と、ディミトリ氏は当時の判断を振り返ります。
こうした経営上の重要な意思決定において、マリナ氏とディミトリ氏の間で深刻な対立が起こらなかったのは、非常に興味深い点です。その最大の理由は、創業当初に確立された明確な意思決定ルールにありました。それは、「ディミトリ氏がマリナ氏よりも1%多く株式を保有し(51%対49%)、最終的な意思決定権を持つ」というものでした。
明確な意思決定者の設定:共同創業者間で最終的な意思決定権を持つ人物を事前に決めておくことで、意見が対立した場合の膠着状態を防ぎます。51%対49%という比率は、どちらか一方が明確な最終決定権を持つことを示します。
対立の回避:意見が分かれたとしても、最終的に誰が判断を下すかが明確であるため、感情的な対立やビジネスの停滞を最小限に抑えることができます。
責任の明確化:重要な決定に対する責任の所在がはっきりし、説明責任を果たしやすくなります。
迅速な意思決定:長引く議論を避け、変化の激しい市場環境においてスピーディーな経営判断を可能にします。
マリナ氏は、「多くの起業家が50対50で始めるけれど、51対49を提案する人を聞いたことがなかった。でも、これは天才的だと思う。最初から誰がキーとなる意思決定者なのかが明確だから」と語ります。彼女自身の性格にとっても、最終的な大きな決断を下す責任者がいる方がやりやすかったと言います。このルールがあったからこそ、彼らはビジネス上の意見の相違があっても、それを乗り越え、協力関係を維持することができたのです。「私たちは一度も(深刻な)口論をしたことがない」という彼らの言葉は、この仕組みの効果を物語っています。
一方で、投資家の中には、夫婦が共同創業者であることを「レッドフラッグ(危険信号)」と見なす人々もいました。「もし夫婦喧嘩でもしたらどうするんだ?」といった懸念が示されたこともあります。マリナ氏はあるミーティングの後、「そんなこと言われるなんて!」と非常に腹を立てたことを覚えています。しかし、彼らは自分たちのやり方でその懸念を払拭し、ビジネスを成長させました。「もし(夫婦で起業)したいなら、周りの否定的な声に耳を貸す必要はない。うまくいく例はたくさんあるし、楽しい経験になるはずだ」とディミトリ氏は断言します。急成長の光と同時に、経営上の様々な課題や外部からの疑念という影も経験した彼らですが、明確なルールと互いへの信頼によって、それらを乗り越えていったのです。
パートナーシップの変容:夫婦から個々の道へ
順調に成長を続けていたかに見えたLinguaTripですが、マリナ氏とディミトリ氏は2019年頃、ビジネス上のパートナーシップを解消するという決断を下します。それは、ビジネスの失敗や夫婦関係の破綻によるものではなく、むしろ個々の成長と変化、そしてワークライフバランスに対する考え方の進化の結果でした。
マリナ氏にとって、夫婦で同じ会社を経営し、収入源を一つに依存することへの不安は、常に心のどこかにありました。彼女は元来、プランB、プランCを常に考える慎重な性格です。その不安は、特に新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、LinguaTripの主要事業であった留学(トラベル)部門が大打撃を受け、オンライン英語学習へと事業転換を余儀なくされた時期に顕著になりました。さらに、その時期はマリナが妊娠・出産を経験した時期とも重なります。「私たちの主な収入源がLinguaTripだけだったあの時は、本当に大変だった」と彼女は振り返ります。幸い、当時すでに彼女のYouTubeチャンネル(Vlog)が成長し始めており、それが家計を支える助けとなりました。この経験は、彼女が後に「19の異なる収入源を持つ」に至る分散化戦略へと繋がっていきます。同じ収入源に依存するリスクを、身をもって体験したのです。
ディミトリ氏は、また別の視点からパートナーシップの変化を捉えています。彼にとって、夫婦で同じビジネスをすることは、プライベートな関係性における「サプライズ」の要素を奪うものでした。「男性として、女性(妻)を驚かせたい、喜ばせたいという気持ちがある。でも、同じ会社で、同じ目標に向かって、同等に貢献していたら、どうやってサプライズができる?すべてが『私たちのもの』になってしまうから」と彼は語ります。成功も困難も共有する中で、新鮮さやロマンスといった側面が薄れてしまうことを懸念したのです。彼は、夫婦がそれぞれの分野で活躍し、互いに良い影響を与え合いながらも、個々の達成によって相手を「驚かせる」ことができる関係性を理想としています。「私たちが一緒に成し遂げたことは素晴らしい経験だった。でも、今は次のフェーズだ。それぞれが異なる領域で活動し、互いを驚かせることができる方が、より良いエネルギーを生むと思う」というのが彼の考えです。
ワークライフバランスの維持も、夫婦共同経営においては大きな課題でした。ビジネスの話は、しばしば深夜のプライベートな時間にまで及び、公私の境界線が曖昧になりがちでした。「ある段階から、私は『もうその話はやめよう』と言うようになった。少し飽き飽きしていたのかもしれない」とマリナ氏は言います。常にビジネスのことを考えてしまう状況は、精神的な休息を妨げる可能性もあります。
ネットワーク構築の面でも、変化がありました。シリコンバレーでは人脈が非常に重要ですが、夫婦で常に一緒に行動していると、参加するパーティーやイベントが同じになり、出会う人々も重なりがちです。結果として、ネットワークの広がりが限定されてしまう可能性があります。パートナーシップを解消し、マリナ氏がメディア業界、ディミトリ氏が自身の新しい事業と、それぞれ異なる分野で活動するようになってから、彼らのネットワークは格段に広がりました。「今は、それぞれのネットワークが全く違う。より多くの人と出会い、その人たちを家に招いて互いのネットワークを紹介し合える。家族全体として見れば、専門知識や人脈のカバー範囲が格段に広がった」とマリナ氏はメリットを語ります。個々の道を歩みながらも、そこで得たものを家庭に持ち帰り、家族として共有する。それは、より豊かで多様な関係性を築くことに繋がっています。
現在、マリナ氏は自身のメディアカンパニーを経営するCEOとして、日々意思決定を行っています。COOはいますが、かつてのディミトリのような、常に相談できる対等なパートナーはいません。「投資家は素晴らしいけれど、毎日電話するわけにはいかない。あの頃のように、いつでも相談できる相手がいたことが懐かしい」と彼女は言います。特に、ディミトリ氏の持つ「大きな夢を描く力」「10億ドル企業を作るぞ!」といった大胆なビジョンは、慎重派の彼女にとって貴重な刺激でした。「時々、彼が私の会社で働いてくれたらどんなにクールだろう、と思うことがある」と本音を漏らすこともあります。しかし、同時に、彼の目標や志向性を考えれば、それは現実的ではないことも理解しています。最終的には、それぞれの道を歩むことが、現時点での最善の選択であると結論付けています。
過去を振り返り、「もしあの時こうしていれば…」と考える点(ディミトリ氏は採用戦略や資金調達、買収提案への対応を挙げています)はあるものの、彼らは共に歩んだ道のりを後悔してはいません。「それは素晴らしい旅だった。たくさんの良い思い出があり、共に多くのことを乗り越え、成長できた」とマリナ氏は語ります。ディミトリ氏も、「一緒に夢を追いかけ、達成していく過程は、仕事というより楽しい冒険だった」と同意します。
これから共同創業を考えているカップルや友人に対して、彼らはいくつかのアドバイスを送ります。まず、ディミトリ氏が強調するのは、誰が最終的な意思決定者となるかを明確にすること。「誰が最終コールをするのか、はっきりさせておくべきだ」。そして、マリナ氏は、互いの期待値を事前にしっかりと話し合い、目標と達成への道筋を共有することの重要性を説きます。「何を達成したいのか、どうやってそれを実現したいのか、明確にしておくこと」。そして二人共通のアドバイスは、「そのプロセスを楽しむこと」。困難はつきものですが、それを乗り越える過程自体が貴重な経験となるからです。彼らの物語は、ビジネスパートナーシップの解消が必ずしも失敗や断絶を意味するのではなく、関係性の自然な進化であり、個々の成長を促す新たなスタートとなり得ることを示しています。
まとめ
マリナ氏とディミトリ氏がシリコンバレーで夫婦としてLinguaTripを共同創業し、そしてビジネスパートナーとしての関係を解消するに至った物語は、多くの示唆に富んでいます。移民としてゼロからスタートし、互いの強みを活かして急成長を遂げた成功譚であると同時に、スタートアップ経営の厳しさ、ワークライフバランスの難しさ、そして人間関係の複雑さをリアルに描き出しています。
彼らの経験から得られる重要な教訓の一つは、共同創業者間の補完的なスキルセットと、明確な目標設定、そしてそれを実現するための強い意志の重要性です。ディミトリ氏の大胆なビジョンとマリナ氏の着実な実行力が組み合わさったからこそ、LinguaTripは困難を乗り越え、成長することができました。また、最終的な意思決定権の所在を明確にするルール(51%対49%)を設定したことは、夫婦という近しい関係性においてもビジネス上の対立を避け、迅速な意思決定を可能にする上で極めて有効な戦略でした。
しかし、彼らのストーリーは成功の側面だけではありません。急成長に伴う採用戦略のミス、資金調達や買収提案における判断の難しさ、そして何よりも、夫婦で同じ事業に携わることによるワークライフバランスの葛藤や、個人の成長に伴う関係性の変化といった課題も浮き彫りにしました。ビジネスパートナーシップの解消という決断は、失敗ではなく、それぞれの成長段階と価値観の変化に合わせた、関係性の再構築であったと言えます。
現在、彼らはそれぞれの分野で活躍し、異なるネットワークを築きながらも、家族として互いを支え合い、より豊かな関係性を育んでいます。彼らの経験は、共同創業を考える人々、特に夫婦や友人といった親しい間柄でビジネスを始める人々にとって、関係性のダイナミクスを理解し、期待値を調整し、変化に柔軟に対応することの重要性を強く示唆しています。ビジネス上のパートナーシップの形が変わっても、互いへの尊重と信頼を失わず、それぞれの道を応援し合う。マリナ氏とディミトリ氏の物語は、変化の時代における新しい協力関係のあり方を示しているのかもしれません。