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AIエージェントと人間の協業の未来

2026-01-21濱本

最新のセッション『AI Agents and the Future of Human Collaboration』のレポートでは、Adobe社のFirefly創始者ハンナ・エルサカー氏とIBM社CHROニックル・ラモロー氏が、AIエージェントによる業務効率化、クリエイティブ革新、人事改革の実例を交えながら、企業の変革戦略や導入事例、質疑応答での具体的な議論内容を詳細に解説しています。経営層や技術者向けに、AIと人間の協働がもたらす未来の働き方、倫理・ガバナンス、スキルアップ戦略など今後の課題と展望を網羅的に紹介する内容となっています。

AIエージェントと人間の協業の未来
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

TIMEWELLの濱本です。SXSWのAI関連で最も注目していたセッションについて記事化していきたいと思います。

近年、人工知能(AI)の急速な進化に伴い、AIエージェントが企業現場に導入されるケースが増加しています。AIエージェントとは、従来のチャットボットとは異なり、複数のタスクを統合的に処理し、人間に代わって自律的に業務を遂行するシステムです。

今回開催されたパネルセッション「AI Agents and the Future of Human Collaboration」では、Adobe社とIBM社の幹部が登壇し、AIエージェントの具体的な活用事例や、企業における導入戦略、さらには人間とAIの新たな協働モデルについて熱く議論されました。本記事では、そのセッション内容を詳細に振り返るとともに、参加者から寄せられた質疑応答も交えて解説いたします。

  1. セッション概要と目的

本セッションは、AIエージェントがどのように業務プロセスを自動化し、人間のクリエイティビティや判断力を補完するかをテーマとして展開されました。従来の単一タスクを処理するAIチャットボットとは一線を画し、エージェントは複数のシステムやツールを横断的に連携させる「オーケストレーション層」として機能します。これにより、社員は煩雑な手続きや定型業務から解放され、より戦略的な意思決定やクリエイティブな業務に注力できる環境が整います。経営層にとっては、新たな競争優位性の獲得、技術者にとってはシステム構築の新たな挑戦となる、極めて重要なテーマです。

  1. 登壇者のプロフィールと背景 Adobe社:ハンナ・エルサカー氏

ハンナ・エルサカー氏は、Adobe社のグローバル新規事業統括責任者であり、生成AI事業「Adobe Firefly」の創始者として知られています。これまでAdobeの戦略部門でCEO直属のチームを率いた経験を持ち、世界有数の企業での事業開発を担ってきました。エルサカー氏は、Adobeが掲げる「Creativity for All(すべての人に創造性を)」というミッションのもと、クリエイティブ分野におけるAIの普及と活用を推進。Adobe Fireflyは、テキスト指示だけで高品質な画像やデザインを生成するなど、従来の手法では困難であった創造的な作業の効率化に大きく貢献しています。

IBM社:ニックル・ラモロー氏

ニックル・ラモロー氏は、IBM社の最高人事責任者(CHRO)として、全世界約27万5千人の社員を支える人事戦略を統括されています。長年にわたりIBMの各事業部門における人事改革を推進し、社員のスキル開発や組織の効率化に寄与してきました。ラモロー氏は、AIエージェントの導入により、定型業務の自動化と戦略的な意思決定の両立を図るIBM独自のHR戦略を牽引。実際、社員からの問い合わせ対応や昇進プロセスの自動化によって、大幅な業務効率化と従業員満足度の向上を実現しています。

モデレーター:ジェナ・マクレガー氏

ジェナ・マクレガー氏は、エグゼクティブ向けのコンテンツ戦略やイベント企画を手掛けるメディア企業の責任者として、今回のパネルディスカッションを進行しました。彼女は、業界リーダーとの対話を通じて「働き方の未来」を描くことに定評があり、多様な視点からの議論を円滑に引き出しました。

  1. Adobe Fireflyと生成AIによるクリエイティブ革新

Adobe Fireflyは、生成AI技術を活用してテキストから高品質な画像やデザインを自動生成するツールです。従来、手作業で時間を要していたデザイン制作工程を大幅に短縮し、クリエイターがより多くのアイデアを迅速に形にできるよう支援します。

技術的背景とカスタマイズ性

Fireflyは、単なる画像生成にとどまらず、企業が自社のブランドガイドラインに合わせた生成モデルを構築できるカスタマイズ性が特徴です。企業は自社のデザイン資産をFireflyに取り入れることで、独自のスタイルに沿ったコンテンツを自動生成することが可能となります。これにより、マーケティングや商品開発において、従来の制作プロセスを劇的に効率化するとともに、クリエイティブな発想を強力にサポートする仕組みが実現されています。

現場での活用事例

実際、Fireflyを活用したプロジェクトでは、従来数ヶ月を要していたビジュアル制作が短期間で完了するなど、その効果が実証されています。広告制作やデザインコンペなどにおいて、数多くのバリエーションを瞬時に生成できるため、クリエイターは幅広いアイデアから最適なものを選定し、細部の調整に注力できるようになりました。

  1. IBMのAI人事戦略とHR分野でのエージェント活用

IBMは、AI技術を人事領域に積極的に導入することで、業務プロセスの効率化と組織全体のパフォーマンス向上を図っています。ここでは、主に「AskHR」と「HiRo」という2つのAIエージェントが取り上げられます。

AskHR:迅速な問い合わせ対応システム

IBMでは、従業員が人事関連の問い合わせを行う際に、まずはAIエージェント「AskHR」に相談する仕組みを採用しています。AskHRは、チャット形式で迅速かつ的確に情報を提供し、必要に応じた手続きの案内も行います。導入当初は利用が低調でしたが、マネージャー層を対象にした強制運用の施策により、現在では全世界で多数のマネージャーが日常的に活用するまでに浸透しています。

HiRo:昇進・評価プロセスの自動化

「HiRo」は、IBMにおける昇進や給与改定プロセスを支援するデジタル労働者です。各部門から膨大なデータを収集・統合し、昇進候補者のリスト作成や通知を自動化することで、従来の煩雑な手続きにかかっていた時間を大幅に削減。結果として、年間数万時間に及ぶ工数削減が実現され、マネージャーはより戦略的な意思決定や従業員の育成に注力できるようになっています。

社員のスキル向上とデジタルワーカーの進化

IBMでは、AIエージェントの効果を最大限に引き出すため、社員の再教育やリスキリングにも力を入れています。全社員に対して年間80時間以上の学習を推奨するなど、デジタル時代にふさわしいスキルの習得を促進し、社員一人ひとりがデジタルワーカーとして進化するための環境整備を行っています。

  1. 質疑応答セクション:参加者からの具体的な質問と回答

パネルディスカッションの後半では、参加者から実務に直結する具体的な質問が寄せられ、登壇者がそれぞれの視点から丁寧に回答しました。以下に、特に注目すべき質問とその回答内容を詳述いたします。

【質問1】変革の管理とトレーニングの時間について

質問内容: 「デジタルワーカーが配置される中で、従業員が変化に対応できるよう、どのように社内に浸透させ、効果的なトレーニングを実施しているのでしょうか?」

回答内容: エルサカー氏は、まずシニアリーダーが率先して新しいツールの利用を承認し、失敗を恐れずに試行錯誤する文化を築くことが重要だと強調しました。また、変革を促進するためには、再教育や継続学習を評価・報酬制度に組み込む仕組みが必要だと述べています。IBMでは、社員全員に年間80時間以上の学習を奨励し、AIエージェントの活用方法や新たなツールの操作方法について体系的なトレーニングプログラムを実施することで、変革への抵抗感を減少させ、社員のスキルアップを図っています。

【質問2】導入しているAIツールとROIの測定方法について

質問内容: 「実際にどのようなAIツールを社内で利用しており、投資対効果(ROI)はどのように評価されているのでしょうか?」

回答内容: エルサカー氏は、AdobeではAdobe Fireflyを中心に生成AIツールを活用しており、特に大規模なマーケティングキャンペーン(例:Black Friday)において、従来の制作工程を大幅に短縮できた実績があると説明しました。具体的には、15,000以上のクリエイティブアセットを従来の半分の時間で生成できた結果、作業効率が劇的に向上し、マーケティングスピードがアップしたといいます。一方、IBMでは、AskHRやHiRoの導入によって、年間で数万時間分の定型業務が自動化され、これがROIの大きな評価指標となっていると述べられました。

【質問3】AIエージェントの今後の進化について

質問内容: 「現在注目されているMCP(Model Contacts Protocol)やメモリレイヤーのような技術は、今後のAIエージェントの進化にどのように影響を与えると考えられますか?」

回答内容: エルサカー氏は、今後は大規模な一枚岩の言語モデルではなく、特定の業務やタスクに最適化された小規模なモデルの活用が進むと予測しました。これにより、モデルの処理速度が向上し、コスト効率も大幅に改善されると説明されています。また、MCPやメモリレイヤーの技術が、エージェントのタスク遂行能力を向上させ、複雑な業務にも柔軟に対応できるシステムの構築につながると期待されています。

【質問4】個人専用パーソナルAIエージェントの普及について

質問内容: 「将来的に、個人専用のパーソナルAIエージェントが普及し、業務だけでなく生活全般にまで活用されるようになるのでしょうか?」

回答内容: ラモロー氏は、企業内で活用されるAIエージェントは、その組織のシステムやデータ基盤と連動しているため、従業員が退社すると共に引き継がれることはないと指摘しました。一方、各業務に特化したパーソナルAIアシスタントは、将来的に個々のユーザーが自分の業務効率化やクリエイティブな作業支援のために利用する存在として普及する可能性があると述べています。ただし、企業全体で統合されたシステムと、個人向けのエージェントとは役割や運用方法が異なるため、両者は明確に分けて考える必要があるとの見解です。

  1. AIエージェントがもたらす業務改革と未来展望

今回のセッションを通じ、Adobe FireflyやIBMの人事システムといった具体例から、AIエージェントが単なる自動化ツールに留まらず、人間と協働する「パートナー」としての役割を担うことが明らかになりました。定型業務の自動化により、従業員は本来の創造的・戦略的な業務に専念できる環境が整い、企業全体の生産性向上やイノベーションが促進されます。

また、AIエージェントのさらなる進化に伴い、今後はパーソナルAIアシスタントの普及や、業務特化型モデルの高度化が進むと予測されます。企業としては、導入に際して倫理やデータガバナンスの問題に十分留意し、常に人間が最終判断を下す仕組みを維持することが求められます。

  1. まとめ

本セッション「AI Agents and the Future of Human Collaboration」では、Adobe社のエルサカー氏とIBM社のラモロー氏が、AIエージェントの導入事例とその効果、そして今後の進化について実例を交えて議論しました。特に、パネルディスカッション後半に行われた質疑応答では、実務に直結する具体的な質問が投げかけられ、各登壇者が自社の取り組みや将来の展望について丁寧に回答しました。

経営層にとっては、業務効率化や新たなビジネスチャンスの獲得、技術者にとってはシステム構築や倫理面の確立など、今後の戦略のヒントが多く示されるセッションとなりました。人間とAIが協働する未来は、単なる自動化を超えて、企業全体のイノベーションと生産性向上を牽引する大きな可能性を秘めています。今後も、こうした取り組みや議論に注目しながら、企業として新たな時代に対応していくことが求められます。

以上、参加者からの具体的な質疑応答も交えた、AIエージェントと人間の協業の未来に関する詳細なレポートでした。皆さんの今後のAI開発及びAI活用に活かしてもらえると嬉しいです。

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