株式会社TIMEWELLの濱本です。
TIMEWELLの濱本です。今日はディズニーのSXSWでのスペシャルセッションの内容を記事化していきたいと思います。Disneyはテクノロジーと創造性の交差点であるSXSW 2025において、大規模な発表を行いました。テキサス州オースティンで開催されたこのイベントで、ディズニーパークス担当会長のジョシュ・ダマロ氏とディズニーエンターテインメント共同会長のアラン・バーグマン氏が登壇し、同社の「未来の世界構築」について語りました。今回は、ディズニーのSXSWにおける歴史的な取り組みから最新の技術活用事例、そしてマーケティングやビジネスの観点で参考になるポイントまで、網羅的にまとめていきます。
ディズニーとSXSWの関わり:イノベーションの歴史と過去の主な発表
SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)は音楽・映画・インタラクティブの祭典として世界的に有名ですが、近年ディズニーもこの場を活用してきました。ディズニーは100年以上にわたり、芸術性と革新的技術を組み合わせて未来を切り拓いてきた企業であり、SXSWのテクノロジーフォーカスと親和性が高いのです。
特に昨年のSXSWでは、ディズニーパークス部門のトップであるジョシュ・ダマロ氏がステージ上で実物大のライトセーバーを起動し、観客を驚かせました。さらに、映画『ズートピア』のウサギ警官ジュディ・ホップスを思わせる自律型ロボットも初公開され、このロボットは転倒しても自力で起き上がり、前転までこなす高度な機動を披露。こうした「魔法のような技術」は、キャラクターを現実世界に生き生きと登場させるディズニーの取り組みを象徴しています。
また、ディズニーはSXSWで毎回ユニークな発表を行っており、その歴史的関わりは年々強まっています。例えば、過去にはルーカスフィルム傘下のILMxLABがVR作品『Star Wars: Tales from the Galaxy’s Edge』を発表し、テーマパーク「スター・ウォーズ: ギャラクシーズエッジ」の世界観を仮想現実で拡張する試みも行われました。こうした取り組みは、ディズニーが物語とテクノロジーの融合に常に挑戦し続けている証と言えるでしょう。
ディズニーが大切にする価値観とストーリーテリング哲学
ディズニーのイノベーションの根底にあるのは、何より「優れたストーリー」へのこだわりです。SXSWのセッション冒頭でも、バーグマン氏は「ディズニーでは全ては素晴らしいストーリーテリングから始まる」と強調し、心に残る物語こそがDisneyブランドの核であると述べました。年齢や背景を問わず、誰もが楽しめる何かを提供することで、ディズニーならではの強い共感と絆が育まれているのです。
この物語重視の哲学は、創業者ウォルト・ディズニーの時代から受け継がれてきました。ウォルト自身、物語を現実に飛び出させるために当時最先端の技術を積極的に取り入れ、「イマジニア(Imagineer)」と呼ばれるクリエイター集団を誕生させたことは有名です。映画の魔法を現実世界に再現するこのコラボレーション文化は、今なおディズニー社内で大切にされています。
また、ディズニーは「物語は映画のスタッフロールが終わった後やテーマパークの出口を出た後も終わらない」と考えています。映画で描かれた世界観がパークで続き、新たなキャラクター体験へと進化していく―このように、一つのIP(知的財産)の物語を多層的に展開し続ける姿勢も、ディズニーならではのストーリーテリング哲学です。ピクサーの最高創造責任者(CCO)であるピート・ドクター氏も「細部まで作り込むことが、ストーリーへの没入感を支える鍵だ」と語っており、映像表現だけでなく体験設計にもディテールへのこだわりが反映されています。
要するに、ディズニーの価値観は「物語ファースト」。ただし最新技術の導入にも積極的で、それらをあくまで物語を強化する“魔法の道具”として位置付けている点が特徴です。ストーリーとテクノロジーのシームレスな融合こそ、創業時から現在までディズニーが一貫して追求してきた独自のアプローチなのです。
SXSW 2025で発表された最新テクノロジー活用事例
今回のSXSW 2025のセッション「The Future of World-Building at Disney」では、ディズニーが手掛けるさまざまなブランド(スター・ウォーズ、ピクサー、マーベル)の枠を超え、物語世界を拡張する最先端技術の数々が紹介されました。ここでは、主な発表内容をいくつか取り上げます。
スター・ウォーズ:ロボティクスと物語世界の拡張
スター・ウォーズ関連では、ジョン・ファブロー監督も登壇し、大勢の観客の前で新型ロボット「BDXドロイド」が披露されました。ディズニーは、60年前にオーディオアニマトロニクスでキャラクターを動かした技術から進化し、今回のドロイドは強化学習(Reinforcement Learning)により自ら行動パターンを学習できる点が画期的です。イマジニアが無数の仮想環境でドロイドを訓練させ、互いに教え合いながら移動スキルやバランス感覚を磨いているのです。
このBDXドロイドは、来年公開予定の映画『マンダロリアンとグローグー』でもスクリーンデビューする予定で、既にカリフォルニアのディズニーランドでテスト運用が始まっています。さらに、年内にはフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド、東京ディズニーランド、ディズニーランド・パリなどにも導入され、映画とテーマパーク双方で活躍する計画です。映画とパークを横断したクロスメディア戦略は、ファンに映画を観た翌日にパークで物語の続きを体験させるなど、物語と現実の境界をさらに薄める試みとなっています。
ピクサー:細部へのこだわりが生む新次元の没入体験
ピクサー関連のセッションでは、ピート・ドクター氏とウォルト・ディズニー・イマジニアリングのマイケル・ハンドゲン氏が登壇し、現在開発中の2つの新アトラクションを紹介しました。まず、フロリダのディズニー・ハリウッド・スタジオに新設される予定の「モンスターズ・インク」エリア「モンストロポリス」。ここには、映画でお馴染みの扉の保管庫(ドアボールト)をテーマにした吊り下げ式ローラーコースターが登場します。ディズニーパーク史上初のサスペンデッド(吊り下げ式)コースターであり、さらに垂直リフトを採用するという画期的な試みです。ゲストはライドに乗った瞬間、まるで映画の一場面に飛び込んだかのようなスリリングな体験を味わえます。
二つ目は、フロリダのマジック・キングダムに導入される「カーズ」シリーズをテーマにしたオフロード型ライドです。こちらは、ライトニング・マックイーンやメーターといった人気キャラクターが、故郷ラジエーター・スプリングスを離れ未知のフロンティアでオフロード・レースに挑むという新ストーリーに基づいています。従来の乗り物では実現できない感覚を追求するため、全く新しいライド車両の開発に取り組んでおり、実際にアリゾナの砂漠で収集したデータを元に、現実さながらのダートコースが造成される予定です。映画の感動をそのまま体験に落とし込むための技術とアイデアが詰まった取り組みは、ディテールへの徹底したこだわりの賜物と言えるでしょう。
マーベル:ヒーロー体験の拡大と異分野コラボレーション
マーベルのセッションでは、観客へのサプライズとしてアイアンマン役のロバート・ダウニーJr.氏が登場し、会場は大いに盛り上がりました。さらに、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギ氏やウォルト・ディズニー・イマジニアリング社長のブルース・ヴォーン氏も参加し、ディズニーにおけるマーベルの新展開が語られました。
まずは、ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー内「アベンジャーズ・キャンパス」の大規模拡張計画が発表され、現在の面積の2倍に拡張し、2つの大型アトラクションを新設することが明かされました。1つ目は、マルチバースの世界を舞台に、ゲストがアベンジャーズとともにヴィランのキング・サノスに立ち向かう壮大な体験ができる「アベンジャーズ:インフィニティ・ディフェンス」です。2つ目は、アイアンマンことトニー・スタークのテクノロジーラボをテーマにした「スターク・フライト・ラボ」。このアトラクションでは、ロバート・ダウニーJr.氏が映画同様トニー役を演じ、巨大なロボットアームがライドポッドを操作するという、現実離れした体験が用意されています。両プロジェクトとも、映画とパークの連動によって、ストーリーと体験がシームレスに融合することを狙いとしています。
その他の最新技術活用例:映画制作やオンライン体験への広がり
SXSWでは、テーマパーク関連だけでなく、映画やゲーム、オンライン体験分野でもディズニーの最先端技術が披露されました。たとえば、ルーカスフィルムが開発したバーチャルプロダクション技術「ステージクラフト」は、巨大なLED壁に映し出されたCG背景の中で俳優が演技できるシステムで、従来のグリーンスクリーン撮影を革新。これにより、現場で即座に高品質なVFX背景が合成され、監督やカメラマンもその場で理想のショットを追求することが可能となりました。
また、ILMxLABのVR作品『Tales from the Galaxy’s Edge』のように、テーマパークの体験をデジタルコンテンツとして提供する試みも進んでいます。さらに、パークのモバイルアプリ「Disney Genie」は、ゲスト一人ひとりに合わせたプランをリアルタイムで提案し、機械学習を活用したパーソナライズ体験を実現しているなど、複数のプラットフォームにおいて、物語への没入感を高める技術が採用されています。
マーケティング&ビジネスに学ぶべきポイント
ディズニーがSXSW 2025で示した取り組みや哲学には、マーケティングやスタートアップ業界にも通じる多くの示唆があります。ここでは、ビジネス視点で特に注目すべきポイントをまとめます。
- ストーリー主導のブランド戦略
ディズニーは、製品やサービスそのものよりも「体験」や「物語」を売る発想を貫いています。自社の提供価値をひとつのストーリーとして構築し、映画、テレビ、テーマパーク、ゲームといった多様なチャネルで統一感のある世界観を展開することで、顧客との深いエンゲージメントを生み出しています。
- テクノロジーは体験価値向上のための手段
最新技術の導入自体が目的ではなく、あくまで顧客体験を魔法のように高めるための手段として活用されています。ディズニーはロボットやAI、VRなどを採用する際も、常に「物語への没入」や「感動の共有」を増幅する方向に技術を組み込むことで、顧客が体感できる価値を追求しています。
- オムニチャネルで一貫した世界観提供
映画を観た翌日にテーマパークでキャラクターに出会える、というようなディズニーのクロスメディア展開は、現代のオムニチャネル戦略の好例です。オンラインとオフラインの接点すべてで一貫したブランド体験を提供することで、顧客の信頼感や愛着が高まり、結果として強固なファン基盤を形成しています。
- コラボレーションと組織横断のイノベーション
ディズニーは、映画制作部門とテーマパーク部門、さらにはマーベル、ピクサー、ルーカスフィルムといった各IPの担当者が初期段階から連携し、アイデアを出し合うことで新たな体験価値を生み出しています。部門間のサイロを取り払い、オープンなイノベーションを実現する体制は、企業全体での創造性向上に大きく貢献していると言えるでしょう。
- 細部へのこだわりと品質
ディズニーが徹底して追求する「細部へのこだわり」は、ユーザーがブランドから受け取る信頼感や品質の高さに直結しています。ピクサーの開発現場では、映画のディテールをテーマパークに再現するため、些細な部分まで綿密に作り込む姿勢が徹底されています。この考え方は、どのようなプロダクトやサービスにおいても、顧客満足度の向上に欠かせない要素です。
- サプライズと話題性の演出
ロバート・ダウニーJr.氏のサプライズ登場や、映画公開と連動したパーク施策など、ディズニーは常に驚きと話題性を演出しています。これにより、口コミやメディアでの拡散効果が高まり、ブランド全体への注目度が一層向上します。マーケティング戦略においても、顧客を驚かせるサプライズ要素を取り入れることは、ブランドロイヤルティを高める上で非常に有効です。
- 継続的な進化とファンとの関係構築
ディズニーは一度きりのイベントではなく、常にアップデートし続けることで、ファンとの長期的な関係性を築いています。新しいアトラクションの開発や、既存のコンテンツのリニューアルを通じて、顧客の期待に応え続ける姿勢は、どの企業にも参考になるポイントです。
おわりに
SXSW 2025でのディズニーの発表は、エンターテインメント業界に留まらず、マーケティングやスタートアップ、さらにはあらゆるビジネス分野に示唆を与えるものでした。物語への情熱と最新技術への探求心を両立させ、複数のプラットフォームにまたがる統一感ある体験を提供するディズニーの姿勢は、老舗企業でありながらもスタートアップのような柔軟性と革新性を併せ持っています。
物語とテクノロジーの融合で生まれる感動体験は、観客の心を捉え、ブランドへの深い信頼と愛着を育む源泉となります。ディズニーが示した「未来の世界構築」のビジョンは、これからのビジネスにおいても、「顧客との物語をどう紡ぎ、いかにイノベーションで彩っていくか」という普遍的な問いへのヒントになることでしょう。SXSWで目撃した数々の魔法は、近い将来、現実の体験として世界中の人々を魅了し、新たな学びとインスピレーションをもたらすに違いありません。
【参考資料】 ・Disney公式発表、SXSWセッションの概要 ・ディズニーパークスブログおよび過去の主要発表内容 ・過去のSXSW関連報道、ILMxLABやStageCraftの技術紹介など ・各IP(スター・ウォーズ、ピクサー、マーベル)の取り組みの詳細
このブログ記事が、ディズニーの革新的な取り組みやストーリーテリングの哲学に触れ、マーケティングやスタートアップ業界の皆様にとって、今後のビジネス戦略の参考となることを願っています。
