株式会社TIMEWELLの濱本です。
TIMEWELLの濱本です。2025年3月、米オースティンで開催されたSXSW 2025にて、Bluesky社CEOのジェイ・グレーバー氏が「未来のソーシャルメディア」について語りました。本記事では、そのセッション内容を踏まえ、ビジネス経営者や起業家、社内起業家の皆様に向けて、Blueskyとは何か、そして分散型SNSがもたらす新たなビジネスチャンスについて分かりやすく解説いたします。
- Blueskyの概要: 分散型ソーシャルメディアとは何か
Bluesky(ブルースカイ)は、新しい形のソーシャルメディアプラットフォームです。Twitterに似た短文投稿型のSNSですが、その最大の特徴は分散型である点です。従来のSNSが一社によって運営・管理されるのに対し、Blueskyは特定の企業に支配されないオープンなネットワーク上に構築されています。もともとTwitter共同創業者のジャック・ドーシー氏の支援を受け、2019年にプロジェクトとして発足しました。その後数年の開発を経て、2023年2月に招待制サービスを開始し、2024年には一般公開されました。公開から短期間で約2400万ユーザーを獲得し、急成長を遂げています。これは、まだX(旧Twitter)やInstagramなどの巨大プラットフォームには及ばないものの、新興SNSとして非常に注目すべき勢いを示しています。
Blueskyが他のSNSと大きく異なる点は、ユーザー自身が自分のデータや閲覧アルゴリズムにより強いコントロールを持てるところにあります。例えば、FacebookやInstagramでは投稿の表示順序がプラットフォーム側のアルゴリズムに依存し、広告や企業の方針に沿ったコンテンツが優先されることが多いですが、Blueskyでは中央集権的なアルゴリズムによる押し付けがなく、ユーザー自身が見たい情報を選び取ることが可能です。実際、Blueskyでは独自のプロトコルを用いることで、ユーザーが自分専用のカスタムフィード(タイムライン)を作成・選択できる仕組みが導入されています。これは、見たくない投稿に時間を奪われず、自分に合った情報だけを効率的に得ることができる仕組みと言えるでしょう。
さらに、Blueskyは現時点で広告が存在しないため、煩わしい広告表示や過度なプロモーションがなく、ユーザーエクスペリエンスはシンプルで快適です。その代わり、ユーザーの自主性やコミュニティの健全性を重視し、「アルゴリズム選択」や「自由に組み合わせ可能なモデレーション」といった新機能に取り組んでいます。専門的な表現ですが、要するにタイムラインに表示される内容や不適切な投稿のフィルタリング方法を、ユーザーやコミュニティ自身が選択できるという仕組みなのです。これにより、一社のルールやAI任せではなく、利用者自身が心地よいソーシャル空間を設計できるようになります。
グレーバーCEOは、ユーザーに主導権を取り戻してもらうことの重要性を強調しており、既存のプライベートSNSがユーザーを囲い込み、イノベーションや健全な競争を阻害している現状に対して問題意識を持っています。私たちは、新しいプラットフォームにアカウントを作り直し、フォロワーや友人を一から集めるといった煩わしさに悩まされがちですが、Blueskyはそうした「SNS引っ越し」の繰り返しを解消し、ユーザーに選択肢と自由を返すことを目指しています。
- ソーシャルメディアの歴史とSXSW: イノベーションの舞台として
BlueskyがSXSWで取り上げられた背景には、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)というイベントとソーシャルメディアの深い関わりがあります。SXSWは、音楽、映画、そしてインタラクティブ(技術)分野の祭典として、新興テクノロジーやサービスがブレイクする登竜門として長年注目されてきました。
特に有名なのは、2007年のSXSWにおけるTwitterの躍進です。当時まだ小規模なサービスであったTwitterは、SXSW会場にリアルタイムの投稿を映し出すスクリーンを設置するなどの工夫により、イベント期間中の投稿数が大幅に増加しました。この成功がきっかけでTwitterは業界内外で大きな注目を集め、「次のビッグウェーブ」として躍り出ました。
その後、2009年には位置情報SNSのFoursquareがSXSWで公式デビューし、大きな話題となりました。ユーザーが実際の店舗や会場で「チェックイン」できる仕組みは、SXSWの社交的な雰囲気と見事にマッチし、急速に利用が広がりました。さらに、2015年にはライブ配信アプリのMeerkatがSXSWで話題となり、以降SXSWは新興ソーシャルメディアの発表・実験の場として確固たる地位を築いています。
このように、SXSWはソーシャルメディアの歴史的な転換点を数多く生み出してきた舞台です。今回のSXSW 2025でBlueskyがフィーチャーされたことは、次のソーシャルメディアの潮流が「分散型」であるとの強い示唆とも受け取れます。過去にTwitterやFoursquareがSXSWを通じて世界へと飛躍したように、Blueskyもまたこの舞台からさらなる成長を遂げる可能性を秘めています。ビジネスパーソンにとってSXSWは、単なる祭典以上にテクノロジーの未来を占うバロメーターとも言えるでしょう。
- 分散型プロトコル「AT Protocol」の意義とビジネスへの影響
Blueskyの革新性を支える基盤技術として、*ATプロトコル(Authenticated Transfer Protocol)*が挙げられます。これは、分散型ソーシャルメディアのための通信規格で、異なるSNSサービス間でデータやユーザー情報をやり取りできるようにする共通ルールです。ATプロトコル上では、ユーザーID、フォロー関係、投稿データの形式が標準化されており、Blueskyのような各種アプリ間での相互運用が可能になります。つまり、一つのアカウントで複数のSNSサービスをまたいで利用できる仕組みなのです。
この概念を理解するには、メールやブログの世界を例に挙げると分かりやすいでしょう。メールアドレスはGmail、Yahoo!メール、会社ドメインなど異なるサービス間でも相互に送受信が可能です。また、ブログもRSSフィードを利用することで、複数サイトの更新情報を一括してチェックすることができます。かつてのインターネットは、このような共通の通信規約(プロトコル)により、異なるサービス同士がオープンに連携していました。ATプロトコルは、まさにソーシャルメディア版の「共通言語」として、現代のSNSにもオープン性を取り戻そうとしているのです。
さらに、ATプロトコルの特徴として*「アカウントの持ち運び(ポータビリティ)」*があります。通常、あるSNSを辞めて別のSNSに移行すると、これまで築いたフォロワーや投稿は失われがちですが、ATプロトコルならユーザー自身のデータを保持しながら別サービスに移ることが可能です。これは、都市を引っ越しても電話番号や住所帳がそのまま利用できるのと同じような感覚で、SNS業界において革新的な発想といえるでしょう。この仕組みは、特定企業のサーバーだけでなく、世界中の独立したサーバーがネットワークを構成する分散型の特性によって実現されています。
ビジネスへの影響としては、まずユーザーのロイヤリティが大きく変わる点が挙げられます。従来、企業はユーザーを自社プラットフォーム内に囲い込むことで価値を高めてきましたが、Blueskyのような分散型ネットワークでは、ユーザーが気に入らなければ容易に他のサービスに移ることが可能です。結果として、各サービス提供者は常に高品質なユーザー体験を提供する努力が求められ、プラットフォーム間の競争が激化することにより、ユーザーエクスペリエンスのイノベーションが促進されると考えられます。
また、ATプロトコルは開発者や企業にとって新たなビジネス機会を創出します。オープンソースであるため、誰でもサードパーティのアプリやサービスを開発でき、企業が自社ブランドのSNSアプリを構築することも技術的には可能です。さらには、分析ツールやカスタムアルゴリズムなど、Bluesky上で動作する便利なツールを提供して収益化するスタートアップも現れるかもしれません。こうしたエコシステム型のビジネスモデルは、従来の閉鎖的なSNSでは実現しづらかった新たな価値を生み出す可能性を秘めています。
もちろん、分散型SNSではセキュリティや不適切なコンテンツのモデレーションの統一・調整が課題となる側面もあります。しかし、Blueskyはブロックリストやユーザーコミュニティ主導のモデレーション機能を取り入れるなど、健全な環境を維持するための取り組みも進めています。企業にとっては、自社ブランドがこうした環境でどのように受け入れられるかを注視し、ユーザーとの信頼関係を築く姿勢が求められるでしょう。
- Blueskyが提供するビジネスチャンス: マーケティング戦略と活用法
新たなプラットフォームであるBlueskyは、企業やクリエイターにとってさまざまなビジネスチャンスを提供します。ここでは、その活用法と具体的なマーケティング戦略のポイントをご紹介します。
4-1. まず「居場所」を確保する – 公式アカウントとブランド保護
Blueskyが一般公開されユーザーが急増する中、最初に検討すべきは公式アカウントの確保です。大手ブランドでは、Red BullやXboxなどすでに公式ハンドルネームを登録し、なりすまし対策を進めています。自社名やサービス名のアカウントを早期に押さえておくことで、将来的な活動の土台を固め、ブランドの信頼性を高めることができます。
4-2. 押し付けないマーケティング – オーガニックな発信とコミュニティ参加
Blueskyには広告枠がなく、アルゴリズムもユーザー主体でカスタマイズされるため、従来型の「広告出稿で大量露出」という手法は使えません。しかし、これにより本当にユーザーに響くコンテンツで勝負できる場となります。具体的な戦略としては、以下が挙げられます。
価値あるコンテンツ提供: 単なる商品宣伝に留まらず、業界のトレンドや専門知識、顧客の課題解決に役立つ情報を発信することで、ユーザーとの対話を促します。
コミュニティとの対話: 一方的な発信だけでなく、ユーザーの投稿に返信したりフィードバックを募るなど、双方向のコミュニケーションを積極的に行います。
ユーザー参加型キャンペーン: 独自のハッシュタグやカスタムフィードを活用し、ユーザーが自発的に盛り上がる場を提供することで、口コミ効果を狙います。
インフルエンサーやクリエイターとの協働: 既に影響力を持つ個人とのコラボレーションを通じて、自然な形で自社メッセージを届ける戦略が有効です。
顧客コミュニティの醸成: 将来的には、自社専用のBlueskyサーバーを立ち上げ、ファン同士が交流できるコミュニティを形成することで、ブランド支持基盤の強化を図ることも可能です。
このように、Blueskyでは質の高いコンテンツとコミュニティ運営がマーケティングの鍵となり、従来の広告予算に依存しない戦略が求められます。ユーザーと真摯に向き合うことで、確かなファンを着実に増やす好機と捉えることができます。
4-3. クリエイターにとっての魅力 – ダイレクトなファンとのつながり
Blueskyは企業だけでなく、クリエイターやインフルエンサーにとっても非常に魅力的なプラットフォームです。従来のSNSでは、アルゴリズムの影響で投稿が必ずしもフォロワー全員に届かないという悩みがありましたが、Blueskyでは時系列で表示されるフィードも選択でき、コアファンとの強固なつながりを維持しやすい仕組みとなっています。これにより、クリエイターはプラットフォームの方針変更に左右されることなく、自身のコミュニティを築き上げ、ダイレクトに情報発信することが可能です。
4-4. 注意点 – 動向のウォッチと柔軟な対応
Blueskyは急成長中のプラットフォームでありながら、まだ発展途上です。現状では広告が存在せず、収益モデルやコンテンツモデレーションの体制が完全に整っていない点もあります。そのため、企業としてBlueskyに注力する際は、プラットフォームの機能追加やガイドライン整備の動向を定期的にウォッチし、柔軟に戦略を微調整することが重要です。また、他のSNSとの連携や使い分けも考慮し、リスク管理を徹底する姿勢が求められます。
- 未来のソーシャルメディア展望: Bluesky CEOのビジョンと業界の行方
SXSW 2025でグレーバーCEOが語ったメッセージの核心は、「未来のソーシャルメディアはユーザーが主役」というビジョンです。将来的には、プラットフォーム企業がすべてを支配する現状から、ユーザー一人ひとりが自分のオンライン体験を自由にカスタマイズできる世界へとシフトしていくと予想されます。Blueskyはその一端を担うプロジェクトとして、「オープンで分散型のネットワークにより、ユーザーに選択肢を取り戻す」という理念を掲げています。
このビジョンの背景には、巨大プラットフォームによるデータ独占やアルゴリズムの不透明性、過激なコンテンツ拡散、頻繁なサービス改変など、近年のSNSを取り巻くさまざまな課題があります。こうした現状に対し、より開かれたユーザー共同管理型のソーシャルメディアを目指す動きが広がっています。Blueskyに限らず、分散型SNSとしてMastodonなども注目され、業界全体でオープン性を意識する潮流が見受けられます。
Blueskyの今後の成長戦略としては、まずネットワーク効果の最大化が鍵となります。2024年に一般公開され急成長を遂げた現状をさらに拡大し、多様なユーザーに分散型ネットワークの利点を実感してもらうため、使い勝手の向上、他サービスとの連携、安全で安心な利用環境の整備に注力することが求められます。特に、コンテンツモデレーションに関しては、AIと人手、コミュニティツールを組み合わせた柔軟な対応策の構築が進められており、企業にとってもブランド毀損リスクの低減に寄与するでしょう。
長期的には、ソーシャルメディアは単なる企業サービスではなく、インターネットそのものの一部として「インフラ化」していく可能性があります。ユーザーは意識せずとも、ATプロトコルなどの標準技術を通じて自由に情報発信し、他のサービスと連携する未来が訪れるかもしれません。そうなれば、企業のコミュニケーション戦略も「どのプラットフォームに注力するか」ではなく、「どのような価値とコンテンツを提供するか」がより重要な要素となるでしょう。
グレーバーCEOがSXSW 2025で示したように、ユーザー主体のソーシャルメディアへの期待は今後も高まると考えられます。経営者や起業家にとって、Blueskyは単なる新しいSNSではなく、デジタル時代のパラダイムシフトを象徴する存在です。その潮流に乗り遅れないよう、そして自社のブランドやビジネスモデルに活かせるよう、分散型SNSの動向に注目していくことが重要です。新たな青い空(Bluesky)の下、ビジネスパーソンにもこれまでにない飛躍のチャンスが広がっていることでしょう。
まとめ
SXSW 2025でのセッションは、Blueskyの革新的な分散型SNSが従来の中央集権的なプラットフォームとは一線を画し、ユーザー主体の自由で柔軟なコミュニケーション環境を提供する可能性を示しました。企業やクリエイターは、公式アカウントの確保やオーガニックな発信、コミュニティ形成といった新たなマーケティング戦略を検討することで、次世代のソーシャルメディアをビジネスに取り入れるチャンスを得ることができるでしょう。今後もBlueskyをはじめとする分散型SNSの動向に注目し、未来のデジタル戦略に役立てていただければ幸いです。
