株式会社TIMEWELLの濱本です。
ビットコインが金融市場で確固たる地位を築きつつある現在、投資家の関心はその最適なエクスポージャー獲得方法へと移っています。MicroStrategyのような企業による積極的なビットコイン購入戦略が注目を集める一方、スポットBitcoin ETFの承認は、より手軽な投資手段として市場に歓迎されました。しかし、こうした既存の選択肢に満足せず、全く新しいアプローチを提唱する動きが現れました。それが、StrikeのCEOとしても知られるJack Mallers氏が共同設立した新会社「Twenty-One」です。同氏は、Tetherグループとの長年の協力関係を基盤に、単にビットコインを保有するだけでなく、ビットコイン関連の事業を構築し、そのキャッシュフローを通じてバランスシート上のビットコインを増やしていく「純粋なビットコイン企業」を目指すと宣言しています。これは、既存事業からピボットしたり、他業種の収益でビットコインを購入したりする企業とは一線を画す試みです。
本記事では、Jack Mallers氏へのインタビューに基づき、「Twenty-One」の設立背景、独自のビジネスモデル、そして既存のビットコイン投資手段、特にETFと比較した場合の優位性について、詳細に掘り下げていきます。ビジネスパーソンにとって、ビットコイン投資の新たな地平を切り開く可能性を秘めたこの動きは見逃せません。
Twenty-One設立の背景とビジョン – なぜ「純粋な」ビットコイン企業なのか? 新指標BPI/BRRとCEOの役割 – 「ビットコイン建て」で株主価値を最大化する戦略 Strikeとの両立、資金調達、そしてETFとの差別化 – Twenty-Oneが提供する独自の価値 まとめ:ビットコイン投資の新たな選択肢 – Twenty-Oneの可能性 Twenty-One設立の背景とビジョン – なぜ「純粋な」ビットコイン企業なのか?
Jack Mallers氏が新たに立ち上げた「Twenty-One」は、単なるビットコイン保有企業ではありません。その設立の背景には、ビットコイン黎明期からの深い関与と、既存市場に対する明確な問題意識、そして未来への強いビジョンが存在します。「なぜ今、純粋なビットコイン企業なのか?」その答えを探るために、設立の経緯から紐解いていきましょう。
Mallers氏は、共同創業者であるTetherグループとは10年以上の付き合いがあると語ります。ビットコインがまだ一部の熱狂的な支持者しかいなかった時代から、彼らは共に活動してきました。特にエルサルバドルでの取り組みなどを通じて、協力関係を深めてきた経緯があります。この長年の信頼関係が、Twenty-One設立の礎となりました。
設立の直接的なきっかけの一つは、Michael Saylor氏率いるMicroStrategyをはじめとする上場企業による積極的なビットコイン購入戦略でした。これらの企業の動きは、ビットコインが企業資産として有効である可能性を示すものであり、Mallers氏らに大きなインスピレーションを与えました。しかし、数年にわたる観察の中で、そのインスピレーションは単なる感銘から、市場における具体的な「機会」と「空白」の認識へと変化していきます。
Mallers氏が指摘する市場の「空白」とは、既存のビットコイン関連上場企業に対するある種の物足りなさです。多くの企業は、元々別の事業(例えばビデオゲーム販売や医療機器販売など)を行っており、そこからビットコイン購入へと「ピボット」したり、社名を変更したりしています。これらは、ビットコイン戦略を後付けで導入したケースと言えます。Mallers氏は、これらとは対照的に、「ビットコイン専業企業」、つまり最初からビットコインのために設立され、ビットコインに特化した企業が必要だと考えました。
Twenty-Oneが目指すのは、「大企業の信頼性とスタートアップの成長性」の両立です。十分な資本を集め、市場で勝つための規模を持ちながらも、成長の余地が大きい存在であること。そして最も重要なのが、純粋なビットコインビジネスであることです。Twenty-Oneは、ビットコイン製品を開発し、ビットコインによるキャッシュフローを生み出し、その結果として株主に対して「1株あたりのビットコイン」の成長を提供することを使命としています。
これは、単に市場のトレンドに乗るのではなく、ビットコインを中心とした新しい経済圏、新しい市場を自ら構築していくという強い意志の表れです。既存の金融システムの中でビットコインエクスポージャーを提供するだけでなく、ビットコインそのものの価値と普及を信じ、それを企業活動の中核に据える。Mallers氏は、Twenty-Oneが、投資家が公開市場でビットコインエクスポージャーを得るための「最良の手段」となることを目指していると力強く語ります。この「純粋性」こそが、既存のピボット型企業や、後述するETFなどとは異なる、Twenty-One独自の価値提案の根幹をなしているのです。それは、ビットコインの将来性を信じる投資家にとって、単なる価格連動以上の価値、すなわちビットコイン経済圏の成長と共に企業価値も成長していくという期待を提供するものと言えるでしょう。
新指標BPI/BRRとCEOの役割 – 「ビットコイン建て」で株主価値を最大化する戦略
Twenty-Oneは、単にビットコインを保有するだけでなく、「オペレーティングカンパニー」として積極的に企業価値、特に「ビットコイン建て」での価値向上を目指します。この独自の戦略を市場に理解させ、株主へのコミットメントを明確にするために、同社は二つの新しい指標を導入しました。それが「BPI(Bitcoin per Share)」と「BRR(Bitcoin Return Rate)」です。これらは、従来の株式市場におけるEPS(Earnings per Share: 1株あたり利益)とは異なる、ビットコインを中心とした評価軸を提示するものです。
インタビューの中で、Jack Mallers氏は「CEOとしての日々の業務は何か?」という問いに対し、明確に答えています。それは「我々の1株あたりのビットコインを成長させること」です。これは、Twenty-Oneの株主(同社は顧客と同様に捉えていると述べています)に対するCEOとしての最大の責務であると位置づけられています。
このコミットメントを具体的に理解するために、BPIの概念を考えてみましょう。仮に、ある時点でTwenty-Oneの1株が0.005 BTCの価値(バランスシート上のビットコイン保有量を発行済株式数で割ったもの)を表しているとします。Mallers氏の目標は、企業活動を通じてこの数値を0.006 BTC、0.007 BTCへと継続的に引き上げていくことです。つまり、株主はTwenty-Oneの株を保有し続けるだけで、自身が間接的に保有するビットコインの量を増やしていくことができる、という構想です。これは、法定通貨(フィアット)建てでの株価上昇を目指すだけでなく、株主が「ビットコイン建てでより豊かになる」ことを目指すという、極めてビットコイン中心的な思想に基づいています。
このBPI成長を実現するために、Twenty-Oneはオペレーティングカンパニーとして多角的な活動を行います。
ビットコイン製品の開発:ビットコインに関連する新たなサービスやプロダクトを開発・提供し、収益源を確立します。
ビットコインキャッシュフローの創出:これらの製品・サービスから得られる収益(キャッシュフロー)をビットコインで生み出すことを目指します。
資本市場の活用:公開市場での資金調達などを通じて得た資本を、創造的な方法で活用し、バランスシート上のビットコインをさらに積み増します。
Mallers氏は、これらの活動を通じてBPIを着実に成長させることが自身の仕事であり、市場に対しても、Twenty-Oneを従来の法定通貨ベースの評価ではなく、このビットコインベースの指標で評価するよう促したいと考えています。「我々は必ずしも市場(既存の株式市場)を打ち負かすためにここにいるのではない。我々は新しい市場を構築し、世界がまだ我々が信じる形ではビットコインを採用していない現状を変え、その採用を促すためにここにいる」という言葉は、同社の野心的な目標を示しています。
Twenty-Oneが株主に対して約束する核心的な価値は以下の点に集約されます。
BPI (Bitcoin per Share) の成長:企業の事業活動や資本戦略を通じて、1株あたりが示すビットコイン保有量を継続的に増加させることを目指します。
BRR (Bitcoin Return Rate):BPIの成長率を示す指標であり、投資家がビットコイン建てでのリターンを測るための基準となります。
ビットコイン建てでの資産増加:株主がTwenty-One株を保有することで、法定通貨建ての評価だけでなく、ビットコインそのものの保有量が増加する体験を提供します。
もう一つの指標であるBRR(Bitcoin Return Rate)は、このBPIがどれだけのペースで成長しているかを示すものと考えられます。これにより、投資家はTwenty-Oneがどれだけ効率的にビットコイン建ての価値を株主に還元できているかを評価できるようになります。
これらの新しい指標とCEOの明確なコミットメントは、Twenty-Oneが単なるビットコインの保管庫ではなく、ビットコイン経済圏の中で価値を生み出し、それを株主に還元していくダイナミックな存在であることを示しています。投資家は、法定通貨の価格変動だけでなく、BPIの成長という新たな尺度でこの企業を評価することになるでしょう。
Strikeとの両立、資金調達、そしてETFとの差別化 – Twenty-Oneが提供する独自の価値
Jack Mallers氏がTwenty-OneのCEOとして新たな挑戦を開始する一方で、彼が元々率いてきた決済アプリ「Strike」の動向も注目されます。インタビューでは、この点についても明確な言及がありました。Mallers氏は、StrikeとTwenty-Oneの両社のCEOを兼任すると明言しています。これは、彼のエネルギーとコミットメントが、ビットコインエコシステムの発展という大きな目標に向けて、複数の事業体に注がれることを意味します。
Strike自体も非常に好調なビジネスを展開しています。Mallers氏は、Strikeが「極めて収益性が高い」状態にあることを明らかにしました。具体的には、EBITDAマージンは20%を超え、粗利益率は85%に達しています。さらに驚くべきは、その高い収益性をわずか75名の従業員で達成している点です。従業員一人当たりの粗利益や純利益ベースで見れば、ビットコイン業界でもトップクラスの効率性を誇る企業であると自負しています。この成功は、Strikeのビジネスモデルの強さと、従業員、投資家、そして顧客への感謝と共に語られました。Mallers氏は、自身の人生の目的は「ビットコインが世界を良い方向に変えるチャンスを得る手助けをすること」であり、StrikeとTwenty-Oneは、それぞれ独立した形でその目的に貢献する存在だと考えています。つまり、Strikeの成功がTwenty-Oneの基盤を揺るがすことはなく、むしろ両輪としてビットコイン普及を推進していく構えです。
次に、Twenty-Oneの成長戦略の核となる資金調達についてです。Mallers氏は、可能な限り多くの資本を調達し、それをビットコインの取得に充てる意向を明確に示しています。ただし、そこには絶対的なルールが存在します。それは、「それは常に付加価値を生むものでなければならない」という原則です。具体的には、いかなる資金調達も、結果としてBPI(1株あたりビットコイン)を増加させるものでなければならず、BPIが希薄化する(減少する)ような調達は行わない、というのが基本的な方針です。「株主がTwenty-Oneの株を持つことで、ビットコイン建てでより豊かになる」という約束を果たすことが、CEOとしての最優先事項であると繰り返し強調されています。このため、同社は様々なセクターや市場から資金を調達し、ビットコインを伝統的な金融システムに組み込むような革新的な手法を模索しながら、強力な株式を公開市場に提供していく計画です。
現在、同社の株式はCantor FitzgeraldとのSPAC(特別買収目的会社)を通じて「CEP」というティッカーシンボルで取引されていますが、合併が成功裏に完了すれば、ティッカーシンボルは「XXI」に変更される予定です。個人投資家がどのように参加できるかについては具体的な言及は避けられましたが、株式が公開市場に上場されることを目指しているため、上場後は一般の投資家も取引可能になることが期待されます。
そして、最も重要な論点の一つが、近年登場したスポットBitcoin ETFとの比較です。ETFは投資家にとってビットコインへのアクセスを容易にしましたが、Twenty-Oneはそれとは異なる価値を提供するとMallers氏は主張します。ETF(例えばIBITなど)は、その証券を通じてビットコインへの「静的なエクスポージャー」を提供します。つまり、ETFの1口が表すビットコインの量は、基本的には(経費控除などを除き)変動しません。投資家はビットコイン価格の変動に応じて損益を得ますが、ETF自体がビットコイン保有量を積極的に増やしていくわけではありません。
対照的に、Twenty-Oneは「オペレーティングカンパニー」です。CEOであるMallers氏をはじめとするチームは、日々、企業活動(製品開発、キャッシュフロー創出、戦略的な資本調達とビットコイン購入)を通じて、バランスシート上のビットコインを増やし、結果としてBPIを引き上げることを目指します。株主は、単にビットコイン価格への連動を期待するだけでなく、企業自身の成長によって、保有株が表すビットコインの量そのものが増えていく可能性に投資することになります。「Twenty-OneのBPIが0.005から0.006に成長した」というプレスリリースを受け取った時、株主は「自分のビットコインエクスポージャーが増えた」「ビットコイン建てで資産が増えた」と実感できる、そのような未来を描いています。これは、ETFでは得られない、オペレーティングカンパニーならではのダイナミックな価値提案と言えるでしょう。もちろん、これは現時点での「意図」であり、将来を保証するものではないと断りつつも、Mallers氏はこのモデルこそが公開市場におけるビットコイン投資の新たな地平を切り開くと確信している様子がうかがえます。
まとめ:ビットコイン投資の新たな選択肢 – Twenty-Oneの可能性
Jack Mallers氏が率いる新会社「Twenty-One」は、従来のビットコイン関連企業やETFとは一線を画す、野心的なビジョンを掲げています。単にビットコインを保有するだけでなく、「純粋なビットコイン企業」として製品開発やキャッシュフロー創出に取り組み、その成果を「BPI(1株あたりビットコイン)」の成長という形で株主に還元することを目指しています。これは、投資家が法定通貨建ての評価だけでなく、「ビットコイン建てで豊かになる」ことを追求する新しい投資パラダイムの提案と言えるでしょう。
新指標BPIとBRRの導入、CEO自身のBPI成長への強いコミットメント、そしてStrikeとの兼任によるシナジー効果への期待、さらにBPIを希薄化させないという原則に基づいた資金調達戦略は、Twenty-Oneが単なる投機対象ではなく、長期的な価値創造を目指すオペレーティングカンパニーであることを示唆しています。
特に、スポットBitcoin ETFとの比較において、その違いは明確です。ETFが提供する「静的なエクスポージャー」に対し、Twenty-Oneは企業活動を通じてビットコイン保有量を能動的に増やしていく「成長するエクスポージャー」を提供しようとしています。これは、ビットコインの将来性と、それを活用する企業の実行能力の両方に投資したいと考える投資家にとって、魅力的な選択肢となり得ます。
もちろん、これはまだ構想段階であり、実際の事業展開や市場の評価はこれからです。しかし、ビットコインエコシステムの黎明期から深く関与してきたJack Mallers氏の情熱と、Tetherグループとの連携、そして明確な戦略は、ビットコイン投資の新たな可能性を感じさせます。ティッカーシンボル「XXI」として公開市場に登場する日が来れば、Twenty-Oneが投資家からどのような評価を受けるのか、そしてビットコイン市場全体にどのような影響を与えるのか、注目していく必要があるでしょう。ビジネスパーソンにとっても、資産運用戦略や業界動向を考える上で、Twenty-Oneの動きは重要な示唆を与えてくれるはずです。
