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芸術が生み出す地方創生の可能性 ~美術家の卵・北林瑛子氏が見た震災復興の軌跡~

2026-01-21濱本

震災で大切なものを失った経験のある方も、そうでない方も、人生において「当たり前」と思えることがいつ失われるかわかりません。美術家の卵、北林瑛子さんはTIMEWELL社の能登事業の一環で、震災から1年後にあたる能登を訪れました。そこで目の当たりにしたのは、無惨に破壊された街の姿でした。北林さんはその光景に言葉を失いながらも、復興に向けて前を向く人々の姿に心打たれます。北林さんはそれを「花」という作品に昇華させました。本記事では、北林さんの能登訪問や作品制作を通して、日常の尊さと芸術の可能性について探ります。

芸術が生み出す地方創生の可能性 ~美術家の卵・北林瑛子氏が見た震災復興の軌跡~
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

震災で大切なものを失った経験のある方も、そうでない方も、人生において「当たり前」と思えることがいつ失われるかわかりません。美術家の卵、北林瑛子さんはTIMEWELL社の能登事業の一環で、震災から1年後にあたる能登を訪れました。そこで目の当たりにしたのは、無惨に破壊された街の姿でした。北林さんはその光景に言葉を失いながらも、復興に向けて前を向く人々の姿に心打たれます。北林さんはそれを「花」という作品に昇華させました。本記事では、北林さんの能登訪問や作品制作を通して、日常の尊さと芸術の可能性について探ります。

名前:北林 瑛子(きたばやし えいこ)

2019年に積水化学工業株式会社住宅カンパニーへ技術職として入社。設計担当としてまちづくりの企画から住宅事業に携わる。現在は新規事業推進部イノベーション推進グループにて、従事する傍ら、武蔵野美術大学 通信課程デザイン情報学科でデザインやアートを学ぶ。国立新美術館「躍動する現代作家展」では作品『幻影』を展示し、空間や環境をテーマにインスタレーションやグラフィックの制作活動を行っている。

きっかけは、建築士の母と震災ボランティア

------まずは、北林さんが美術を学ぼうと思ったきっかけも踏まえて、自己紹介いただけたらと思います。

北林さん:北林瑛子と申します。母が建築士だった影響もあり、住宅事業を展開する積水化学工業株式会社で働いております。以前は戸建住宅の設計を担当しておりましたが、現在は新規事業推進部にて、イノベーションに関わる業務に携わっています。元々モノづくりへの関心が強く、現在は仕事と並行して美術大学に通い、デザインについて学んでいます。

------現在は新規事業開発のお仕事をされているとのことですが、今回「能登」をテーマにされた理由を教えてください。

北林さん:今回の作品では「能登」をテーマにしていますが、能登を訪れるきっかけとなったのは、本業である新規事業のため、つまり仕事として足を運んだのがきっかけでした。

もうひとつの背景には、東日本大震災の時の経験があります。当時、父から「一緒にボランティアに行こう」と誘われたのですが、高校生だった私は、人の死と向き合うことや、これまでの日常とは異なる現実に飛び込むことへの恐怖から、その一歩を踏み出せませんでした。でも、そのときに行けなかったことが、心のどこかにずっと引っかかっていたのだと思います。

能登の地で見た、復興へ向かう人々の姿

------北林さんがTIMEWELL社の能登復興事業を知ったきっかけを教えてください。

北林さん:もともと地方創生には興味があり、三重県出身の私は東京との格差をすごく感じていました。そんな中、TIMEWELL社の友人の林さんと田家さんからお誘いを頂いたんです。実際に現地に赴いたのは震災から1年後でしたが、そこではまだ復興の途上にありました。がれきが残る風景も多く、目の当たりにしたときには思わず涙がこぼれる場面もありました。

------TIMEWELL社主催のツアーでは、具体的にどんな体験をされましたか?

北林さん:現地の方々のお話を伺ったり、みんなで食事をしながら交流しました。驚いたのは、私が想像していたよりもみなさん前向きで、元気だったことです。自分が抱えている悩みは一体何だったのかと思うぐらい、逆に勇気づけられる思いでした。

------被災地でそのような感覚を持たれたというのは興味深いですね。

北林さん:そうなんです。彼らは震災をチャンスに変えて、と言ったら語弊があるかもしれませんが、とにかく前を向いている。だからこそ、人が集まり、新しいコミュニティが生まれているのかもしれません。もちろん、悲しみや苦しみもあるはずです。ですので、私もそこに真摯に向き合いたいと感じました。

震災の記憶を花として昇華させる

------今回の作品「花」について、具体的な形状と表現意図を教えてください。

北林さん:能登半島を訪れた時、壊れた町並みや津波の爪痕を目の当たりにして、言葉にならない喪失感を感じました。ついこの間まで当たり前にあったであろう日常の風景が、今目の前にあるがれきに変わっている。でも、だからこそ前を向いて生きる人々の姿に心打たれたんです。それを「花」として表現しました。

花は太陽の光を浴びて芽吹き、やがて美しく咲き誇ります。でも、いずれ枯れ、そして散っていく。それでも、種を残して新たな命につながっていく。その儚くも力強い姿が、復興を目指す人々の姿と重なったんです。

------作品の素材やサイズ感など、細部にもこだわりがあるんでしょうね。

北林さん:素材は、主にコピー用紙を使用しました。誰もが日常的に使用するものだと思ったからです。もちろん様々な素材を試しましたが、結局日常を表現するのに、一番近くにあるものがいいと思いました。ありふれた紙が、「花」の形に変化することで新しい命を宿す。そこに震災からの再生のメッセージを込めています。一輪一輪の花を丁寧に制作し、組み合わせることで、1つの大きな造形を生み出しました。花の形状に関しては、曲線で地続きになって脈打つ形状にしてあります。ここも表現としてこだわった部分です。

------能登訪問を作品という形で表現したことで、新たに見えてきたものはありますか?

北林さん:制作を通して、自分の無力さや、何かを「表現すること」の難しさを改めて痛感しました。

そもそもこの花で震災のことが伝えられるのか、また、能登に縁もゆかりもない私がその出来事を表現してもよいのか。そんな葛藤もありました。

ですが、表現者として大切なのは、見る人の心に何かを残すこと。

記憶に残り、新たな対話や考えを生むような作品を目指し続けたい、という気持ちが強まりました。実際に作品を見てくださった方からさまざまなご意見やアイデアをいただけたことも、大きな収穫です。今回の制作は、作品を「完成させること」では終わらず、むしろ「ここからどう変えていくか」という、新たな制作へのスタートにもなったと感じています。

アートの可能性は無限大、日常に目を向けることから始まる

------今後の展開や、芸術と地方創生の可能性について、どのようにお考えですか?

北林さん:まずは、自分自身が「表現し続けること」が何よりも大切だと感じています。そのためにも感性を磨き、新しい気づきを得るために、これからも能登のような場所に足を運び続けたいと思っています。さまざまな作家との出会いや交流も大切にしながら、お互いに刺激し合えるような環境をつくっていきたいですね。

芸術と地方創生の可能性としては、本当に無限大だと感じています。絵画や彫刻、音楽や映像など、表現のかたちは人それぞれですが、地域に根ざした創作が生まれることで、その土地ならではの新しい価値が生み出せると信じています。

------最後に、この記事を読んでいる方々へのメッセージをお願いします。

北林さん:日常の中に転がっている何気ない風景や出来事の中に、実は大切なメッセージが隠れているんじゃないでしょうか。ある日突然、自分の大切なものを失うかもしれない。そんな気づきを私は能登で得ました。日頃の忙しさに紛れて見過ごしていることにこそ、人生の本当の意味があるのかもしれません。

イヤホンを外して、スマホから目を上げて、今目の前にあるものをしっかりと見つめる。そこから見えてくる色や形、感情を大切にする。そんな小さな一歩の積み重ねが、やがて大きなうねりとなって、世界を変えていくのだと信じています。

まとめ

 北林瑛子氏の飾らない物腰と、言葉の端々から感じられる強い意志。ある意味、日本の日常にもなりえる地震が日常を奪うという震災。失った日常を美術を通じてどう感じて乗り越えていくのか。その答えの一端を、北林氏の作品と体験から学ばせていただいた気がします。

人生の意味や価値観を根底から覆すような出来事に直面した時、私たちは一体何を拠り所にすればいいのか。北林氏はその問いに、芸術という形でひとつの解を提示してくれたのではないでしょうか。「日常」という当たり前の尊さを再認識すること。その小さな気づきの積み重ねが、やがて大きな希望へとつながっていくのかなと感じました。

能登で出会った人々の逞しさと、北林氏の真摯な表現から、そんな未来への確かな手応えを感じずにはいられませんでした。

TIMEWELLの能登事業はこちら

北林瑛子氏のInstagramがこちら

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