株式会社TIMEWELLの濱本です。
新規ビジネスの開発において、デザインコンセプトは、ユーザーの第一印象を左右し、サービスの成否を分ける戦略的要素です。今回の記事では、デザインコンセプトの考え方と設計ステップについて、体系的に解説した講義を紹介します。
普段から感じているのは、多くの方がアプリケーションやサービスを作る際に、デザインという部分を軽視してしまいがちだということです。しかし、デザインはユーザーの第一印象を決める重要な要素であり、サービスの成功を左右する大きな要因の一つです。デザインに馴染みのない方でも体系的にデザインコンセプトを考えられるよう、いくつかのステップに分けて解説していきます。
講義者
名前:濱本 隆太
所属:株式会社TIMEWELL 共同創業者 兼 代表取締役CEO
信州大学特任准教授
一般社団法人ONE X 共同代表理事
ONE JAPAN 大企業挑戦者支援プログラムCHANGEリード
塩尻市 特任CIO
プロフィール:岡山県出身。2020年4月から一般社団法人ONE Xを創業し、共同代表理事に就任。その後は塩尻市や大田区等の地域支援を推進し、2年連続Work Story Award W受賞、フリーランスパートナーシップアワード2023大賞受賞。
2022年11月に株式会社TIMEWELLを創業。テックとコミュニティの力を通じて、世界NO.1の挑戦インフラを創るというビジョンを掲げ、新規事業の伴走支援、自律型AIエージェント「ZEROCK」の開発を推進。生成AIについて累計100回以上講演し、AI駆動開発の推進にも従事。弊社講座の「SHIFT」は経済産業省認定講座となり、弊社講座の「WARP」は東京都SUTEAMプログラムに採択。横浜ビジネスグランプリ2024優秀賞受賞。経済産業省J-StarX、中小機構FASTAR、神奈川県KSAP選出。
講義者 ビジョンスケッチで理想の未来を描く 価値観とこだわりを言語化する5つの質問 デザインコンセプトの3つの要素を決める 最新トレンドとツールの活用法 ユーザーとの対話を忘れてはいけない理由 まとめ ビジョンスケッチで理想の未来を描く
最初のステップでは、「ビジョンスケッチ」と呼ばれるワークに取り組みます。これは皆さんが作りたいサービスを、お客さんが使った後にどんな嬉しい姿になっているのかを絵で描いてもらうワークです。
絵心は全く必要ありません。私も丸と三角で人を描くような絵しか描けませんが、それで十分です。重要なのは、どんな空間で、どんな人がいて、何が置いてあって、お客さんが何を言っているのか、何を思っているのかを具体的にイメージすることです。
例えば、インバウンド向けの観光サービスであれば、観光で使った先で美味しいご飯を料亭のおじさんと食べることができて、良い会話ができている最高の状態を描く。農業系のマッチングサービスであれば、つながって嬉しいという状況を描く。このように、アプリを使っている様子ではなく、使った先の姿を描くことが重要です。
このビジョンスケッチができると、サービスの解像度が急激に上がります。アプリを作る時に「ここはちょっとコンセプトと違うな」ということを自分自身で判断できるようになるのです。
価値観とこだわりを言語化する5つの質問
次のステップでは、価値観やこだわりを明確にするための質問に取り組みます。「その世界ではどんなことが起こっているのか」「どんな会話がされて、どんな感情が生まれているのか」「その世界にあってはならないものは何か」といった質問に答えていきます。
私が特に大事だと思っているのは「この世界にあっちゃダメなものって何だろう?」という問いです。皆さんのサービスの中で、これは譲れない、これは嫌だというポイントを明確にすることで、サービスの軸がぶれなくなります。
続いて、「なぜユーザーはあなたのサービスを選ぶべきなのか」という根本的な問いに向き合います。他のサービスでは全然満足できなかったけれど、このサービスだったらいけるという差別化要因を明確にすることが重要です。特に今は生成AIが登場したことで、今まで解決不可能だったことが解決できるようになってきています。
実は私の前職はパナソニックでしたが、以前、写真を撮ったら食事のカロリーを計算するサービスを作ろうとしたことがありました。ところが最近、アメリカで生成AIを使って同じようなサービスが作られ、45億円で売却されたという話があります。このように、生成AIの登場により、従来は不可能だったアプローチが可能になっているのです。
次に「ユーザーがプロダクトを使うとき何を感じるべきか」について考えていきます。あったかい感じなのか、かっこいい感じなのか、スワイプしたくなるような気になる感じなのか。ユーザーがプロダクトに触れた時の感情を言語化することで、より具体的なデザイン方針が見えてきます。
競合他社との差別化についても重要なポイントです。特に大手企業は生成AI系のサービスの出し渋りをしているケースが多く、出すだけで差別化できるという状況もあります。今このタイミングで皆さんがサービスを考えているのは、新しいテクノロジーが入ってきている差別化しやすいタイミングだと言えます。
ブランドがどこで目に留まるべきかという点も検討が必要です。ブライダル系のサービスであればブライダルプランナーの人が紹介する場面、ビジネス系であればハーバードビジネスレビューのような経営者向けの媒体など、サービスの性質に応じて適切なタッチポイントを考える必要があります。
デザインコンセプトの3つの要素を決める
ユーザーに感じてもらいたい特徴や性質についても深く掘り下げていきます。かっこいいと思われたいのか、ダサ可愛いと思われたいのか、ローカル味があっていいねと思ってもらいたいのか、サステナブルな感じがしていいなと思ってもらいたいのか。ターゲットユーザーによって適切な方向性は大きく変わります。
ゲーミング系のサービスであれば、ゲーマーに響くようなネオンでピカピカしている方が良いでしょうし、女性向けのサービスであれば色トーンが優しい感じの方が喜ばれるでしょう。子供向けのサービスであれば、ポップなフォントを使った方が良いということになります。
こうした質問を通じて、最終的にデザインコンセプトワードを選定していきます。親しみやすい、上質である、洗練された、温かみのある、革新的な、繊細な、エネルギッシュな、ダイナミックな、優雅な、豊かな、調和のとれた、独創的な、自然体の、ユニークな、人間味のある、落ち着いた、安定した、品質の高いといった様々なワードの中から、皆さんのサービスに合うものを選んでもらいます。
例えば医療系のサービスであれば、エネルギッシュでダイナミックで革新的な医療サービスは少し怖い印象を与えてしまいます。むしろ安定した品質で温かみがあって包み込むようなイメージの方が適切でしょう。
フォント選択についても大切で、フォントだけで全然雰囲気が変わります。幼稚園向けのアプリを作る時にヒラギノ明朝のような大人っぽいフォントを使ってしまうと、ちぐはぐな印象になってしまいます。逆に、高級感のあるサービスでポップすぎるフォントを使うのも適切ではありません。
日本語と英語に対応しているフォントを選ぶか、もしくは英語はこのフォント、日本語はこのフォントと分けて指定することも重要です。最近はCanvaやFigmaなどのツールで様々なフォントが使えるようになっているので、サービスのコンセプトに合うフォントをしっかりと選ぶことが大切です。
コンセプトカラーの選択も同様に重要です。色によってサービスのイメージは大きく変わります。オリーブグリーンやディープフォレスト、ライラック、スモーキーローズなど、それぞれの色が持つ印象を理解して選ぶ必要があります。最近はグラデーション系のカラーを使うサービスも増えており、どういう色を含めたいのかを明確にすることが重要です。
白や黒でも、普通の白なのか、ちょっとクリーム寄りのオフホワイトなのか、真っ黒なのか、ちょっとグレーがかった黒なのかで印象は変わります。私は青がかったグレーが好きですが、そういう色を使うだけで重すぎないけれど高級感のある印象を作ることができます。
最新トレンドとツールの活用法
最新のデザイントレンドについても確認しましょう。グラスモーフィズムと呼ばれるガラスっぽい効果や、グリッドアンドボーダーといったレイアウト手法などが最近のトレンドとして挙げられます。グリッドアンドボーダーが増えている理由の一つは、デザイン的に作りやすいことです。スマホ版とPC版の両方に対応しやすく、あらゆるサービスで使われるようになっています。
こうした最新のトレンドデザインを取り入れることで、洗練されているな、新しそうだなという印象を与えることができます。
実際にアプリケーションを作る際、V0というツールを使えば、チャットで要求を入力するだけで本格的なプロダクトを素早く形にできます。エンハンス機能を使えば、より詳細なプロンプトを自動生成してくれるので、初心者の方でも本格的なアプリケーションを作ることが可能です。
ユーザーとの対話を忘れてはいけない理由
ただし、作ることばかりに集中してお客さんの声を無視したサービスになってしまわないよう注意が必要です。お客さんにインタビューをしたり、アンケートを取ったり、雑談でも良いので会話をすることを積極的に行ってください。お客さんとの対話が不足すると、本当に必要とされる価値を見落とし、誰にも使われないサービスになってしまう危険があるからです。
デザインは決して軽視してはいけない要素です。フォント、カラー、そしてコンセプトワードが決まれば、サービスのイメージはほぼ決まると言っても過言ではありません。今回のワークショップを通じて、皆さんが自分のサービスに最適なデザインコンセプトを見つけ、それを実際のプロダクト開発に活かしていただければと思います。
まとめ
ここまで紹介してきたデザインコンセプトの構築は、成功するプロダクト開発の基盤となります。今回お伝えした手法は、単なる見た目の美しさを追求するものではありません。ユーザーの心に響き、ビジネス目標を達成するための戦略的なアプローチです。
まずビジョンスケッチでサービスの理想的な未来像を描き、そこから逆算してデザインの方向性を決める。この順序を守ることで、一貫性のあるプロダクトが生まれます。価値観やこだわりを言語化し、コンセプトワード、フォント、カラーを体系的に選択していく過程で、あなたのサービスは確実に差別化された存在になるでしょう。
特に現在は生成AIの普及により、従来は不可能だったアイデアが実現可能になっています。しかし、テクノロジーの進歩以上に重要なのは、ユーザーの真のニーズを理解することです。作ることに夢中になりすぎず、定期的にユーザーと対話を重ねてください。
今回紹介したV0やCanvaなどのツールを活用すれば、デザインの専門知識がなくても本格的なプロダクトを作ることができます。ただし、ツールはあくまで手段です。重要なのは、なぜそのデザインを選ぶのか、ユーザーにどんな体験を提供したいのかという戦略的な思考です。
デザインで失敗するプロダクトの多くは、表面的な美しさだけを追求し、ユーザーの感情や行動を考慮していません。今回の手法を実践することで、そうした落とし穴を避け、真にユーザーに愛されるプロダクトを開発していただきたいと思います。
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