株式会社TIMEWELLの濱本です。
あなたは今のキャリアや人生に満足していますか? もっと大胆に行動したい、影響力を持ちたい、リーダーとして成長したいと願いながらも、一歩を踏み出せずにいるのではないでしょうか。失敗への恐れ、不確実な未来への不安、他者からの評価への懸念…。これらは、私たちが持つ無限の可能性を縛る「見えない檻」です。しかし、もしその檻を壊し、望むものを手に入れる「勇気」があるとしたら? Googleで18年間、エントリーレベルから役員へと駆け上がり、数々の成功を収めてきたジェニー・ウッド氏。彼女は自身の経験と研究に基づき、常識を覆す9つの「大胆な特性」=『Wild Courage(ワイルド・カレッジ)』を提唱します。
本記事では、ジェニー氏がGoogleで行った講演内容を基に、停滞感を打破し、目標達成とリーダーシップを加速させるための具体的な思考法と実践術を深く掘り下げます。この記事を読み終える頃には、あなたの中に眠る「野生の勇気」が目覚め、行動を起こすための確かなヒントを得ているはずです。
常識破りのリーダーシップ:「Bossy」を再定義し、傾聴から影響力を生む方法 「Brutal」な決断力:時間とエネルギーを守り抜く優先順位付けの極意 圧倒的成果を生む「Obsessed」:元Googleエースの4つのコミュニケーション術 Monday Manifesto(月曜日のマニフェスト) Pulit and Bullet(削って、箇条書きに) Tame the Octopus(タコを飼いならす) Woo with You(あなたと共に) まとめ 常識破りのリーダーシップ:「Bossy」を再定義し、傾聴から影響力を生む方法
多くの人がキャリアや人生で停滞感を感じる根底には、「恐れ」が存在します。ジェニー・ウッド氏がニューヨークの地下鉄で運命的な出会いを果たした際にも、彼女を躊躇させたのは「もし彼が前科者だったら?」「もし結婚していたら?」「もし満員電車で笑いものになったら?」という3つの恐れでした。これらは、私たちが行動をためらう際の典型的な心理、すなわち「失敗への恐れ」「不確実性への恐れ」「他者の評価への恐れ」を象徴しています。特に組織においては、「他者の評価への恐れ」は非常に厄介です。それは、「こんなことをしたら、〇〇だと思われるのではないか」「△△というレッテルを貼られるのではないか」という内なる声を生み出し、私たちの行動を制限します。
ジェニー氏はこの「恐れ」が生み出すネガティブなレッテルこそ、私たちが大胆なリーダーになるために再定義し、取り戻すべきものだと主張します。彼女が挙げる9つの特性――Weird(変わっている)、Selfish(利己的)、Shameless(恥知らず)、Obsessed(執着心が強い)、Nosy(詮索好き)、Manipulative(操作的)、Brutal(冷酷)、Reckless(無謀)、そしてBossy(威張っている)――は、一見するとリーダーが持つべき資質とは対極にあるように思えるかもしれません。しかし、これらの言葉に対する恐れこそが、私たちを小さく、静かに、そして追随者に留まらせる「見えない檻」の格子なのです。ジェニー氏は、これらの特性を「正気で賢明な方法で」活用すれば、成功を飛躍的に加速させることができると説きます。例えば、「Bossy」は「傾聴とリーダーシップの勇気」、「Brutal」は「時間、エネルギー、優先事項を守る勇気」、「Obsessed」は「自分自身の基準を設定する勇気」へと昇華させることができるのです。
本セクションでは、特に「Bossy」という特性に焦点を当て、その再定義と実践について掘り下げます。一般的に「Bossy」と聞くと、一方的に命令を下したり、他者をコントロールしようとしたりする人物を想像するでしょう。しかしジェニー氏は、それは「恐れを抱いたリーダー」の行動だと指摘します。彼女自身の失敗談が、そのことを雄弁に物語っています。シニアリーダーとして初めてマネージャーを管理する立場になった際、彼女は深刻なインポスター症候群(自分が詐欺師であるかのように感じる心理状態)に悩まされていました。ある事業部門の閉鎖と再構築という大きなプロジェクトを前に、彼女は不安を打ち消そうと、翌日のオフサイトミーティングのために30ページものプレゼンテーション資料を独力で作成しました。ミッションステートメント、移行計画の柱、各柱のリーダー…全てを完璧に準備したつもりでした。しかし、意気揚々とプレゼンを始めた途端、部屋の空気は凍りつきました。彼女の計画は、経験豊富なマネージャーたちへの侮辱と受け取られたのです。「なぜ我々の専門知識を先に求めなかったのか?」「我々はこのビジネスについて、あなたよりはるかに詳しい」など、彼らのフィードバックは手厳しいものでした。
この経験からジェニー氏が学んだのは、「Bossy」の本質は命令することではなく、「他者を成功へと導くこと」、そして「傾聴を通じてリードする勇気」であるということでした。真のリーダーシップは、一方的な指示ではなく、コラボレーションを通じた協力関係の構築から生まれます。彼女が知っておくべきだった重要な教訓の一つに、「人は参加してこそ納得する」という原則があります。これは、「IKEA効果」として知られる心理現象によって裏付けられています。デューク大学の研究者たちが行った実験では、被験者を2つのグループに分け、一方には組み立て済みのIKEAの箱を、もう一方には自分で組み立てるためのキット(六角レンチや説明書、部品一式)を与えました。その後、両グループに、自分が持っている箱を研究者に言い値で買い取らせる機会を与えたところ、自分で組み立てたグループの方が、組み立て済みの箱を与えられたグループよりも平均で63%も高い価格を提示したのです。これは、人は自ら労力を費やして創り上げたものに対して、より高い価値を感じ、愛着を持つことを示しています。ジェニー氏のオフサイトでの失敗は、まさにこのIKEA効果を無視した結果でした。彼女は、リーダーシップチームを最初から計画策定プロセスに巻き込むべきだったのです。真の「Bossy」とは、自分の考えを押し付けることではなく、チームの知見を引き出し、共に目標に向かう道筋を描く協調的なリーダーシップなのです。この経験は、リーダーがいかにしてチームの力を最大限に引き出し、共通の目標達成へと導くべきか、そして「傾聴」こそがその鍵であることを教えてくれます。
「Brutal」な決断力:時間とエネルギーを守り抜く優先順位付けの極意
次に深掘りするのは「Brutal(冷酷)」という特性です。これは、自分の時間、エネルギー、そして最も重要な優先事項を守るための「勇気」を意味します。一見ネガティブに響くこの言葉ですが、ジェニー氏はこれを「やって良いことと悪いこと、自分が引き受けることと引き受けないことの境界線を引く力」、すなわち「冷徹な優先順位付け」と再定義します。しかし、この境界線を引くことは、時に想像以上に困難です。ジェニー氏が共有してくれた、彼女自身の痛恨の経験は、その難しさと重要性を浮き彫りにします。
数年前、ジェニー氏はGoogleの出張でコロラド州ボルダーからニューヨークへ飛んでいました。ニューヨークには義父母が住んでいたため、当時5歳だった娘のノアを初めて一人で祖父母宅に預けることにしました。娘を空港で義父母に託した後、彼女は数日間にわたる対面ミーティングのためマンハッタンへ向かいました。直属の部下、チームメンバー、ニューヨークにいる上司など、重要な会議が詰まっていました。部下との朝食ミーティング中、エッグ&チーズサンドイッチを一口食べた瞬間、義母からの「電話してください」というテキストメッセージが目に留まりました。電話に出ると、義母は「ノアは大丈夫よ」と前置きしつつも、事故があったことを告げました。午前中のクッキー作りの最中、ノアの髪がミキサーに巻き込まれ、一部が頭皮から引きちぎられてしまったというのです。FaceTimeで確認すると、確かに髪の一部が失われていました。幸い出血はなく、小児科医である親戚のボブ医師によるビデオ診断でも軽傷と判断されました。髪はまた生えてくると。しかし、ノアの精神的なショックは計り知れませんでした。「マミー、お願い、来て。学校に戻れない。みんなに髪がないって笑われちゃう。お願い、マミー、来て」と涙ながらに訴える娘。
当然、ジェニー氏の一部は全てを投げ出して娘の元へ駆けつけたいと願っていました。しかし、義母から「マンハッタンまで車で連れて行くのに、どれくらいで来られる?」と尋ねられた時、彼女はためらってしまいます。自分のカレンダーを確認すると、空いているのは昼の30分と午後の短い休憩時間だけ。そして、合理化が始まります。「ノアはすぐ落ち着くだろう」「車で2時間も退屈してしまう」「可哀そうな義父母はすでにヒステリー寸前だ。退屈した5歳児を連れてマンハッタンまで来る必要はない」「もしノアが祖父母の家に戻りたがらなかったら、会議のスケジュールを全て変更しなければならない」。様々な考えが頭をよぎり、彼女は決断を下します。「ノアは大丈夫。わざわざ街まで連れてくる必要はない。数日後に会いに行くから」。FaceTimeを終え、冷めかけたエッグ&チーズサンドイッチに戻る彼女に、部下は「娘さんのところへ行ってください。会議は全て再調整できますよ」と言ってくれましたが、彼女は「いや、重要すぎる」と断りました。インドから16時間かけてきたチームメイトとの会議をキャンセルするわけにはいかない。ニューヨークにいる上司との貴重な対面での1対1を逃すわけにはいかない。そう自分に言い聞かせ続けました。その後、義父母に連絡すると、ノアは新しいピンクのスパンコールの帽子を気に入って元気にしている、いとこたちとダンスを考えたり、ベビーシッターごっこをしたりして、予想通り大丈夫だとのことでした。
しかし、2日後、ジェニー氏がノアと直接会った時、現実は彼女が信じ込もうとしていたものよりも遥かに深刻でした。ノアが恐る恐る帽子を脱ぐと、そこには想像以上に広範囲にわたって髪が失われた痛々しい姿がありました。「私は何を考えていたんだろう?」激しい後悔が彼女を襲います。仕事の予定に「ノー」と言い、娘に「イエス」と言うだけでよかったのに。代わりに彼女は会議に出席したのです。ただ冷徹に優先順位をつけ、自分のカレンダーに対して「Brutal」であるだけでよかったのです。
このエピソードは、仕事と家庭のどちらか一方を選ぶべきだという単純な話ではありません。両方とも重要です。しかしジェニー氏は、この時、自分は「楽な道を選んだ」と正直に語ります。それは真実の瞬間であり、彼女はそれを見誤ったのです。境界線を守るための「Wild Courage」を奮い起こすことに失敗しました。ノアの髪が生え揃うまでには2年かかりましたが、幸い元通りになりました。しかし、その2年間、少しずつ伸びてくる髪を見るたびに、彼女は胸が締め付けられる思いを感じ続けたと言います。
これは極端な例かもしれませんが、私たちの日常生活においても、カレンダーは常に「何に投票するか」を問いかけています。ある時間、ある週、ある月において、あなたは何を優先しますか? 時には、「ノー」というシンプルな一言を口にするために、「Wild Courage」が必要となるのです。それこそが「Brutal」の本質です。自分の時間とエネルギーを守る勇気。あなたにとって今この瞬間の「大きなイエス」のために、「小さなノー」を言う力なのです。それは、自分自身にとって本当に価値あるものを見極め、それ以外のものに対して断固たる境界線を引く勇気と言えるでしょう。
圧倒的成果を生む「Obsessed」:元Googleエースの4つのコミュニケーション術
最後に探求するのは「Obsessed(執着心が強い)」という特性です。これは、平均点を良しとせず、自ら高い基準を設定し、それに向かって突き進む「勇気」を意味します。ジェニー氏のチームにいたトップパフォーマー、アナベル氏の例が、この特性の力を示しています。アナベル氏がGoogleで目覚ましい昇進を遂げた理由は、彼女が健全な意味で「Obsessed」だったからです。彼女の辞書に「平均」という言葉はありませんでした。このバージョンの「Obsessed」は、情熱を持って物事に取り組み、努力を惜しまず、粘り強く目標を追求する姿勢を指します。その熱意が、彼女のパフォーマンスとキャリアを力強く後押ししたのです。
ここでは、アナベル氏が実践していた、成果とキャリアを飛躍させる4つの具体的なコミュニケーション術を紹介します。これらは、あなたが日々の業務に取り入れ、健全な「Obsessed」を発揮するための実践的なツールとなるでしょう。ぜひ、読み進めながら、ご自身が試してみたいと思うものを選んでみてください。
Monday Manifesto(月曜日のマニフェスト)
これは単なる進捗報告ではありません。自身の価値を示し、自分が誇りに思うことを効果的にアピールする機会です。毎週月曜日に15分以内で、先週誇りに思ったこと2つと、今週楽しみにしていること2つを簡潔にまとめたメールを作成し、上司に送ります。たとえ定期的に1on1ミーティングを行っていたとしても、このメールを作成することで、あなたの成果が記録として残り、上司がさらにその上司へ転送・共有しやすくなります。ジェニー氏の経験上、これを実践していたチームメンバーは常にトップパフォーマーとして際立っていたそうです。彼らは、自分が真に価値を生み出していること、そして誇りを持って仕事に取り組んでいることを明確に示していました。それは、健全な「Obsessed」の表れです。リーダーであったアナベル氏は、このマニフェストをチームメンバー宛に書き、ジェニー氏をCCに入れることで、チーム全体の優先順位の共有にも役立てていました。
さらに効果を高めるポイントは、「数字を倍増させる」ことです。アナベル氏のマニフェストには多くの数字が含まれていました。「サインアッププロセスを3ステップから2ステップに改善」「完了率70%」「6人のステークホルダーとミーティング」など、具体的な数字は、漠然とした報告よりもはるかに説得力を持ちます。「ステークホルダーと会った」と言うよりも、「6人のステークホルダーと会った」と言う方が、行動の具体性とインパクトが伝わります。
そして、最も重要な点は、アナベル氏が「I'm proud(私は誇りに思う)」という言葉を使ったことです。自分が成し遂げたことに対するポジティブな感情を表現することは、自己肯定感を高めるだけでなく、周囲にも良い影響を与えます。聴衆への問いかけで挙がった「ウベクッキーを作った」「自分と両親のためにガラパゴス旅行を予約した」「面接準備で助けを求めた」「期待値を1時間未満で設定できた」といった例のように、大小関わらず、自分が誇りに思うことを認識し、それを共有することは非常にパワフルです。
Pulit and Bullet(削って、箇条書きに)
これは、特にメールなど書面でのコミュニケーションを簡潔かつ効果的にするためのテクニックです。重要なステークホルダーや上司の上司へのメールが、長文のテキストや段落で埋め尽くされている場合、そのテキストの50%を削り、代わりに箇条書きで記述します。「Pulit and Bullet(削って、箇条書きに)」することで、受け手はあなたの意図を素早く正確に理解しやすくなり、あなたの影響力も高まります。アナベル氏がジェニー氏のチームへの参加を希望して最初に送ってきたメールは、このテクニックの見事な実践例でした。3つの箇条書きで自身の強みを述べ、各箇条書きの冒頭数語を太字にして注意を引き、そしてどの箇条書きも1行を超えないように意図的に構成されていました。これは、彼女がクライアントに影響を与えたり、パートナーとコミュニケーションしたりする際に、いかに明瞭かつ効果的に振る舞うかを示す強力なシグナルとなりました。対照的に、ジェニー氏自身が過去に送った、相手にミーティングを依頼するためのメールは、情報が詰め込まれすぎて意図が不明瞭な「ゴミ箱行きの火事」のような状態でした。重要なメールほど、時間をかけてでも「Pulit and Bullet」を実践する価値は十分にあります。
Tame the Octopus(タコを飼いならす)
「Pulit and Bullet」が書面コミュニケーション術なら、「Tame the Octopus」は口頭コミュニケーションを簡潔にするためのテクニックです。これはアナベル氏が最初から得意だったわけではなく、努力によって習得したスキルでした。この事実は、これらのスキルや特性は、生まれつきのものではなく、誰でも学び、成長させることができるという重要なメッセージを伝えています。
「タコ」の足が四方八方に伸びているように、話があちこちに飛んで要点が掴みにくい話し方を想像してください。これでは効率的に意図は伝わりません。「タコを飼いならす」とは、より効率的にポイントを伝える話し方をすることです。ジェニー氏がデモンストレーションで見せたように、質問された際にまず「間」を取ることが重要です。「間」を取ることで、自信がないように見えるどころか、むしろ落ち着きと自信、そして思慮深さを示すことができます。会議中ならミュートを解除する前に、インタビューや重要な1on1なら「少し考えさせてください」と一言断ってから思考を整理する時間を取りましょう。そして、頭の中で考えを整理し(あるいはメモを取り)、伝えるべきポイントを3つ程度に絞り込みます。話す際は、まずそのキーワードだけを提示し(例:「優先順位、ツール、グローバルな連携」)、次にそれぞれのキーワードについて簡潔な説明を加え、最後に再びキーワードを繰り返して締めくくります(例:「要約すると、最大の課題は優先順位、ツール、そしてグローバルな連携です」)。この「Tame the Octopus」は、リーダーとしての信頼性を高め、他者からの信頼を得る上で最も重要なスキルの一つと言えるでしょう。
Woo with You(あなたと共に)
これは、相手への敬意を示し、相手のニーズを理解することに焦点を当てたコミュニケーション術です。「Manipulative(操作的)」のポジティブな側面、すなわち「共感を通じて影響力を築き、永続的な関係を築く勇気」にも通じます。製品、アイデア、あるいは自分自身を売り込む際、成功の鍵は常に「相互利益」にあります。相手が何を望んでいるかを見つけ出し、それを提供すること、つまり焦点を自分から相手に移すことが重要です。
アナベル氏は、文章を書く際に「私(I)」で始まる文を減らし、「あなた(You)」で始まる文を増やすことを意識していました。例えば、製品トレーニング後にチームに送るフォローアップメールの初稿では「私」で始まる文が多く見られましたが、アナベル氏のアドバイスを受けて修正した最終稿では、全ての文が「あなた」で始まるように書き換えられていました。これにより、メールは格段に相手中心となり、受け手に対する配慮と敬意が伝わるものになりました。「Woo with You」は、相手の視点に立ち、相手の利益を考えることで、より強固な信頼関係と影響力を築くための強力なツールです。
これらの4つのツール(Monday Manifesto, Pulit and Bullet, Tame the Octopus, Woo with You)は、あなたが日々の業務において健全な「Obsessed」を発揮し、ビジネスと自身のキャリアの両方を加速させるための具体的な武器となります。どれか一つでも、ぜひ明日から試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
ジェニー・ウッド氏の祖母、ラヤおばあちゃんは、並外れた人物でした。88歳でジェニー氏の結婚式でブライズメイドを務め、92歳まで自身の金融サービス会社のCEOを務め上げた彼女は、「ノーは単なる交渉の始まりよ(No is just an opening offer)」というのが口癖でした。ジェニー氏が新婚当初、夫のジョンが大規模なリストラで解雇されたという知らせを受けた夜、打ちひしがれる二人に対し、ラヤおばあちゃんはいつものように言いました。「ノーは単なる交渉の始まりよ」。ジョンは「解雇は一方的なものだ」と反論しますが、ラヤおばあちゃんは諭します。「もちろん、ノーを受け入れる方が楽でしょう。でも、その居心地の悪さはいずれ消えるわ。エゴを捨てて、妥協点を見つけなさい。あなたたちはお互いに何かを望んでいる。会社は仕事を片付けたい、でもあなたに給料を払う余裕はない。あなたは仕事が欲しい、だって仕事がある方が次の仕事を見つけやすいから」。最終的にジョンは折れ、翌日、上司に「仕事を探す間、10%の時間と給料で働き続けさせてほしい」と提案し、驚くべきことに会社はそれを受け入れたのです。
この話は、単なる交渉術を伝えたいわけではありません。ラヤおばあちゃんの教えの本質は、「恐れにあなたの決断を委ねてはいけない」ということです。私たちはどれほど頻繁に、恐れから行動をためらっているでしょうか?パートナーに必要なことを頼めない、顧客に助けを求められない、地下鉄で気になった人に声をかけられない…。行動を起こさない時、その根底にはほぼ間違いなく「恐れ」があります。失敗への恐れ、不確実性への恐れ、他者の評価への恐れ、あるいは「利己的」「恥知らず」「威張っている」「執着心が強い」「冷酷」といったレッテルを貼られることへの恐れ。
しかし、ジェニー氏は強調します。「恐れが根源にあるのなら、それは素晴らしいニュースだ」と。なぜなら、恐れは対処可能なものだからです。恐れに対して、私たちは主体性を持って働きかけることができます。「Wild Courage(ワイルド・カレッジ)」、すなわち「野生の勇気」を奮い起こし、人生で望むものを追い求める時、私たちは不可欠な真実を発見します。たとえ個々の試みで成功しようと失敗しようと、恐れを乗り越え、その向こう側にある喜びと成功へと突き進んでいる時ほど、自分が目的意識に満ち、力強く、生き生きとしていると感じる瞬間はないでしょう。
