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足切断ゼロへの挑戦:石田幸広さんが語る、医療ベンチャーの世界戦略と始動プログラムの真価|TIMEWELL

2026-01-21濱本

医療現場で働きながら、もっと大きな社会貢献ができないかと考えている人は多い。医療の知識と経験を活かしてグローバルな事業を立ち上げ、成功させるには何が必要なのだろうか?始動プログラムへの参加が、その一歩を踏み出す契機になるかもしれない。石田幸広さんは、ASEANの人々との出会いをきっかけに糖尿病患者の足切断予防事業を立ち上げ、始動8期生として参加。そこでの経験や人との出会いが、事業の展開や自身の成長にどのように繋がったのかについて迫った。

足切断ゼロへの挑戦:石田幸広さんが語る、医療ベンチャーの世界戦略と始動プログラムの真価|TIMEWELL
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

医療現場で働きながら、もっと大きな社会貢献ができないかと考えている人は多い。医療の知識と経験を活かしてグローバルな事業を立ち上げ、成功させるには何が必要なのだろうか?始動プログラムへの参加が、その一歩を踏み出す契機になるかもしれない。石田幸広さんは、ASEANの人々との出会いをきっかけに糖尿病患者の足切断予防事業を立ち上げ、始動8期生として参加。そこでの経験や人との出会いが、事業の展開や自身の成長にどのように繋がったのかについて迫った。

糖尿病患者の足切断ゼロを目指して:グローバルな課題に挑む医療ベンチャーの挑戦 始動プログラム参加:迷いと挫折を乗り越え、事業への確信を得るまでの軌跡 医療ベンチャーの挑戦:日本発の技術をASEAN・インドへ、そして始動プログラムから得た教訓

石田幸広(いしだ ゆきひろ)

株式会社セカンドハート代表取締役

糖尿病患者の足切断をゼロにする取り組み。足の遠隔管理アプリシステムを開発。糖尿病教育にVRを活用。患者に寄り添う靴下の開発と提供。医療機器としての認可も視野に、患者の生活の質向上と社会参加の実現を追求、ASEANを中心にグローバル展開を目指している。Steplife https://www.steplife-sh.com/

 1981年生まれ。広島国際大学卒業後、臨床工学技士として勤務。人工透析や呼吸管理の経験を積む。2019年に起業。木幡計器製作所の取締役就任。大阪府済生会泉尾病院で非常勤として勤務。2023年に株式会社セカンドハートを設立し、糖尿病足切断予防事業に注力。著書「居酒屋プレゼンしたら夢が叶った」を出版。始動8期生として参加し、事業構想を練る。マレーシアでの起業家ビザ取得を目指し、ASEAN市場への展開を計画中。

糖尿病患者の足切断ゼロを目指して:グローバルな課題に挑む医療ベンチャーの挑戦

ーーーーー事業について教えてください。

現在、株式会社セカンドハートの代表取締役CEOを務めています。弊社の事業は「糖尿病の足切断をゼロにします」という目標を掲げており、それをどのように実現できるかを日々模索しています。

私のバックグラウンドは臨床工学技士で、病院で医療機器を扱う職種です。様々な仕事がありますが、その中で私は人工透析を専門にしていました。人工透析患者さんの約半数は糖尿病の末期の方で、糖尿病患者さんを長年見てきました。

今でも病院に所属していますが、非常勤なので毎週行く予定が忙しさのため月2回程度しか行けていません。それでも、糖尿病患者さんの状態が悪化していく様子を目の当たりにしています。血糖コントロールができなくなると神経障害が起き、足の感覚がなくなってしまいます。そうなると、足に傷ができても気づかず、感染症を引き起こしてしまうこともあります。

最終的には足を切断しなければならない事態に至ることもあり、日本でも年間約1万人が足を切断しているのが現状です。この問題に取り組み、糖尿病患者さんの生活の質を向上させることが私たちの使命だと考えています。

ーーーーー足を切断しなければならないんですね。どういう状況になると足の切断が必要になるのでしょうか。

そうですね、糖尿病が悪化して血糖コントロールができなくなってしまうと、神経障害という症状が現れます。これによって足の神経が悪くなり、感覚がなくなってしまうのです。そうなると、例えば足の裏に傷ができても全く気づかないことがあります。

よくあるエピソードとしては、釘が刺さったまま歩いていたり、振り返ったら自分の血の足跡がついていたりといったことがあります。それくらい感覚がなくなってしまうのです。

気づかないままでいると、傷口から細菌が入って感染症を起こしてしまいます。本来なら血液が流れていれば、新鮮な血液の力で酸素や栄養が供給されて傷が治るのですが、糖尿病患者さんは血管の内側がボロボロになる病気なので、血管が細くなったり、血液が流れなくなったりしてしまいます。

そうなると、血液も来ないし傷も治せないということで、どんどん悪化していきます。気がついたら足が腐ってしまっているような状態になり、そのまま放置すれば命に関わるので、足を切断せざるを得なくなるのです。

このような状況は日本でも深刻で、実は年間約1万人もの方が足を切断している状況なのです。

ーーーーー1万人もいらっしゃるんですね。多いように思いますが、どれぐらいの方が足を切断した後に社会復帰されているのでしょうか。

実は、普段の生活で糖尿病で足を切断した方をあまり見かけないと思います。足を切断してしまうと、かなり早く亡くなってしまうのです。統計上では、足を切断してから5年の死亡率が70%とか言われています。私の経験では、大体の方が1年ほどで亡くなってしまいます。

そういう方々は、なかなか社会に復帰できずに亡くなってしまうという現実があります。私たちはそれを目にすることなく過ごしているのです。

この現状に対して、何とかできないかと思い、事業を始めました。具体的には、神経がやられてしまっているので、患者さん自身で確認することが難しいのです。そこで、見るしかありません。患者さん自身が自分の目で見たり、医療従事者や家族が見てあげたりすることしかできません。

そこで、私たちは足の状態を早期発見できるように、写真を撮ってかかりつけの病院にその写真や状態が送られるようなシステムとアプリを作りました。また、患者さんの自己管理を支援するために、VRを使った糖尿病教育も考えています。

さらに、患者さんに心温まる取り組みとして、糖尿病患者さんが履いても負担にならないような靴下を開発し、プレゼントとして贈る事業も始めました。これらの取り組みを通じて、糖尿病患者さんの生活の質を向上させ、足切断のリスクを減らすことを目指しています。

ーーーーー足を切断することが早くに亡くなってしまう要因にもなっているんですね。そもそも、足を切断することになる要因はどのようなところにあるのでしょうか。

そうですね、実はいくつかの要因があるのです。まず一つは、そもそも体の状態がかなり悪化しているということがあります。足を切断しなければならないほど状態が悪いということは、体全体がかなりボロボロになっているということなのです。

例えば、足に血液が行かなくなっていたり、抵抗力が低下して感染しやすくなっていたりと、そもそもの体の状態が良くないのです。

そして、足を切断してしまうと、外出が難しくなったりして、社会参加が困難になります。最近よく言われる「wellbeing」という概念があるのですが、足を切断すると、それが全て破綻してしまうのです。社会的にも、精神的にも、そして健康面でも良くない状況に陥ってしまいます。

このように、体の状態が悪いうえに、社会参加が難しくなることで、精神的にも追い込まれてしまい、結果として寿命が短くなってしまうのです。これが、足切断後に早く亡くなってしまう一番の要因ではないかと考えています。

そこで、私たちの事業では、単に足切断を防ぐだけでなく、患者さんの生活の質全体を向上させることを目指しています。社会参加を続けられるようにすることで、患者さんの人生をより豊かにし、長く健康に生きられるようサポートしていきたいと考えています。

▼VRを使った患者教育とVR用に作成されたリアルな特殊メイク

ーーーーー事業を始めることになったきっかけについて教えてください。

きっかけは2022年の6月にさかのぼります。その時、ASEANのフィリピン、マレーシア、インドネシアの方々が約20人ほど、私が取締役を務める別の会社に見学に来られたのです。

ちょうどその頃、私たちは呼吸の検査機器をASEANに輸出できないかと考えていました。ASEANは発展途上で、空気が悪くなっているだろうという想像から、呼吸器系の病気が多いのではないかと考えたのです。そこで、見学に来られた方々に「呼吸器系の問題はどうですか?」と聞いてみました。

ところが、彼らの反応は予想外でした。「呼吸のことはどうでもいい。むしろ、足を切断する人が多いから、そっちをなんとかしてくれないか」と言われたのです。これには驚きました。

実は、私は以前から糖尿病患者さんの足のケア(フットケア)を行ったり、足を切断する手術に立ち会ったり、足の血管を広げる手術を見学したりと、この分野での経験がありました。

それまでは目の前の患者さんを救うことや、苦痛を和らげることに注力していましたが、この時初めて世界規模での問題の大きさに気づかされたのです。

自分のこれまでの19年間の経験を生かせるのではないか、そしてこの深刻なニーズに応えられるのではないかと思い、この事業に舵を切ることにしました。単にテクノロジーで解決するだけでなく、患者さんに寄り添える事業を作っていきたいと考えたのです。これが、私がこの事業を始めるきっかけとなりました。

ーーーーーグローバルでは、患者数はどれくらいになるのでしょうか?

正確な数字はあまり出ていないのですが、一応年間100万人が足を切断していると言われています。これを秒数に換算すると、30秒に1本の足が切断されているという計算になります。

ただ、この数字は「大切断」と呼ばれる、足を丸ごと切断するケースだけを数えたものです。実は、この数字は20年ほど前から言われているもので、実際にはもっと多いのではないかと考えています。20秒に1本くらいのペースで切断が行われているのではないかという話も出ています。

さらに、糖尿病患者さん自体の数が世界中で約6億人近くいるのです。これは10年前と比べて2倍くらいに増えています。ですので、足を切断する人の数も2倍になっているのではないかと推測されています。

つまり、100万人どころではなく、200万人くらいの方が毎年足を切断している可能性があるのです。これはかなりえげつない数字だと言えるでしょう。

このような状況を考えると、私たちの事業の意義はますます大きくなっていると感じています。各地域や各エリアでは頑張っている人たちはいると思いますが、世界を相手に戦おうという人があまりいないのが現状です。

特に、糖尿病患者さんの足のケアは手間がかかります。足がボロボロになっている人たちの足をきれいにするよりも、切った方が早いからという理由で切断してしまうケースも多いのです。しかし、切断後の生活の質や、義足を作るお金の問題、特に発展途上国ではそういった課題が山積みです。

みんな頑張っているけれども、患者さんの増えるスピードの方が早いという現状があります。だからこそ、私たちはグローバルな視点で、この問題に取り組んでいく必要があるのです。

始動プログラム参加:迷いと挫折を乗り越え、事業への確信を得るまでの軌跡

ーーーーー始動に応募したきっかけについてもお聞かせください。

そうですね、実は始動の2期か3期の先輩がいまして、臨床工学技士の西垣さんという方です。西垣さんは早くから臨床工学技士として始動に応募されて、シリコンバレーにも行かれたんです。その方から毎年のようにお誘いを受けていたんですよ。

ただ、私自身はそれまで出せるものがなかったんです。自信を持って「これをやっていくんだ」とか「人生をかけてやっていくんだ」というものが見つからなかったんですね。

でも、2022年の6月に先ほどお話したASEANの人たちとの出会いがあって、そこでニーズを聞いて「これは自分で背負おう」と思ったんです。そして事業を作ろうと決心したときに、ちょうど8月に始動の応募があったんです。

タイミングが良かったですね。やっと挑戦していいマインドになったというか、気持ちが整ったような感覚でした。それまでは西垣さんからのお誘いを断り続けていたのですが、このタイミングで「よし、応募しよう」と思えたんです。

始動に参加することで、自分の事業をより具体化し、ブラッシュアップできるのではないかと考えました。また、同じように志を持った人たちと出会えることも魅力でした。

結果的に、始動に参加したことで多くの学びと出会いがあり、事業の方向性も明確になりました。今振り返ると、あの時の決断は本当に良かったと思います。

ーーーーー始動のプログラムを受講してみていかがでしたか?

正直なところ、あまり進歩がなかったような感じがするんです。応募したままの状態で来ているような気がしています。

途中で本当に嫌になったこともありました。事業をちゃんと作ったことがなかったので、メンターの方々や講師の方々、先輩方のお話を聞くと、全部取り入れなければいけないような気がしてしまって。「なぜこの人たちの言っていることが正解なんだろう」と思いながら、全部入れ込もうとしたんです。

そうすると、何が正解かわからなくなってしまって。結局、自分のやりたいことがぶれてしまい、シリコンバレーに行くためのプレゼンのときなんかは、全然納得いかない感じでやってしまいました。

それで「これじゃあダメだ」と思って。皆さんがシリコンバレーに行っているのを見て、「いいな」とか「行きたかったな」という悔しい思いをしました。何が良かったのかも全然わからなかったんです。

でも、最後の最後で国内プログラムが残っていて、ブラッシュアップの期間があったんです。最後のピッチの前の選考会に出すか出さないか、締め切りの1時間前まで迷いました。でも、ダメ元でいいから出してみようと思って出したら、最後DEMO DAY(国内決勝ピッチ)に立たせてもらえたんです。

そこで初めて、この事業をやっていいんだと自信を持てたような気がします。始動を通じて、最初は迷走しましたが、最後には自分の事業に確信が持てるようになりました。それが私にとっての大きな収穫だったと思います。

医療ベンチャーの挑戦:日本発の技術をASEAN・インドへ、そして始動プログラムから得た教訓

ーーーーー今後はどんなことをしていきたいですか。

まず、現在私たちが提供している「ステップライフ」という足の遠隔管理ができるアプリシステムがあるのですが、これは実は医療機器ではないんです。厚生労働省のPMDAという機関に確認して、医療機器ではないということで出すことができました。

しかし、将来的にはこれを医療機器にしたいという思いがあります。日本でやるからには、医療機器としての認可を得たいと考えています。

それと同時に、もう一つ大きな目標があります。そもそもこの事業のきっかけは、マレーシアの人たちからいただいたニーズだったんです。ですので、ASEANの人たちにこのソリューションをお返しするというミッションがあるんです。

具体的には、マレーシアの起業家ビザを取得しようと考えています。このビザは、向こうで働かなくても、会社を立てなくても取得でき、5年間滞在できるんです。新規の起業家だと1年更新なのですが、私たちはこちらで事業をやっているので、既存企業として5年のビザが発行してもらえるプログラムがあるんです。

今、あと1、2個書類を揃えたら申請できる状態です。申請して、向こうの政府の下でピッチをして、承認されたらビザがもらえるという流れです。

早ければ6月中に申請できて、7月中にビザがもらえる可能性があります。そうなれば、8月か9月には現地に行って、家探しをしながら2拠点生活を始める予定です。

マレーシアをASEANのハブにしようと考えています。そこから他の国々、例えばシンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイなど、主要なASEAN諸国にこのソリューションを届けていきたいと思っています。

さらに、インドにも進出したいと考えています。インドは糖尿病患者さんが1億人以上いると言われているので、大きな市場があります。そして、インドがまたハブになって、バングラデシュやパキスタンにも展開できればと思っています。バングラデシュでは人口の3割以上が糖尿病だと言われているので、非常にニーズが高いんです。

既にインドの足の専門医ともつながりができていて、先日は私たちの靴下を50足ほど買っていただきました。このように、少しずつですが、国際展開の準備を進めています。

ーーーーー最後に挑戦してみたい人に向けて一言メッセージをお願いします。

はい、私自身が始動でつらい思いをしたタイプの人間なので、「めちゃめちゃいいよ」という感覚が全然なかったんです。ただ、終わってからの方がすごく価値があったんですよ。

いろんな人と出会ったり、事業に対する考え方とかを学んだりしたことは、全部が終わってから、ようやく吸収でき始めたという感じでした。始動自体が悪いわけではなくて、行ってみないとわからないし、人によって合う合わないはあると思うんです。

ただ、間違いなくそこに集まっている人たちは素晴らしい人たちだったというのが、後でわかりました。私の場合は、1つやりたいことを見つけて、それを実現するために参加したという経緯もあります。

なので、もし本当に成し遂げたいことがあるけど、どうしたらいいかわからないという方がいれば、始動の門を叩くというのは一つの解決手段になると思います。そういう意味では、今だからこそ言えるのですが、始動への参加をおすすめします。

終わった後の繋がりも含めて、価値があると感じています。頑張れるという気持ちになれますし、同期のみんなに負けたくないという思いも生まれます。

しつこく細々とやり続けていたら、ちゃんと形になりました。形になると、やっと認めてくれる人が出てきたりします。そういう経験もしたので、諦めずにやり続けることがすごく大事だと今更ながら感じています。

まず一歩踏み出すところから始めて、そこから続けていくことが大切です。その意味で、始動はぴったりな場所だと思います。

担当ライター:石井恵里/本間由美子

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