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電動航空機と水中翼船の最前線:Heart Aerospace ES-30は2026年ハイブリッド飛行へ

2026-02-07濱本 隆太
電動航空機電気ボート脱炭素

電気自動車の次は空と海の電動化です。Heart AerospaceのES-30は、2026年にHeart X2でハイブリッド電気飛行デモンストレーションを実施し、2028年の商用運用を目指します。すでにBraathens Regional Airlines、SASと地上試験を完了し、FAA から410万ドルの助成金を獲得。オーストラリアのWave Flyerは80%の省エネを実現する電動水中翼船です。本記事では、これら最新技術の詳細を解説します。

電動航空機と水中翼船の最前線:Heart Aerospace ES-30は2026年ハイブリッド飛行へ
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

「2026年にハイブリッド電気飛行デモンストレーションを実施」——スウェーデンのHeart Aerospaceが、30人乗り電気航空機「ES-30」の開発を加速させています。すでにBraathens Regional Airlines、SASなどの航空会社と地上サポート試験を完了し、FAA(米国連邦航空局)から410万ドルの助成金を獲得しました。

この記事では、Heart AerospaceのES-30と、オーストラリアの電動水中翼船「Wave Flyer」の最新動向を解説します。

Heart Aerospace ES-30:2026年から2028年へのロードマップ

ES-30の基本スペック

Heart Aerospace ES-30:

項目 スペック
乗客数 30人
翼幅 32m
完全電気航続距離 200km(ゼロエミッション)
ハイブリッド航続距離 400km(乗客30人フル搭載時)、800km(乗客25人以下)
充電時間 30分

2026年の開発スケジュール

Heart X1(実験機):

  • 2025年Q2:完全電気飛行を実施予定
  • 目的:充電オペレーション、地上走行、ターンアラウンド手順の検証

Heart X2(プリプロダクション試作機):

  • 2026年:ハイブリッド電気飛行デモンストレーションを実施予定
  • 特徴:X1の運用経験に基づく設計改良を反映
  • 推進システム:ハイブリッド推進システムを搭載

ES-30(商用機):

  • 2028年:商用運用開始予定
  • 受注:250機以上の受注を獲得済み

ハイブリッド推進システムの仕組み

ES-30は、独自のハイブリッド方式を採用しています。

推進システムの配置:

  • 主翼外側:ターボプロップエンジン
  • 主翼内側:電気モーター

運用モード:

モード 航続距離 乗客数 エミッション
完全電気 200km 30人 ゼロ
ハイブリッド(最大) 800km 25人以下 低減
ハイブリッド(フル搭載) 400km 30人 低減

FAA助成金とパートナーシップ

FAAからの支援: 2024年8月、Heart AerospaceはFAAの「FAST(Fuelling Aviation's Sustainable Transition)プログラム」から410万ドルの助成金を獲得しました。

用途: ハイブリッド電気推進管理システムの開発

パートナー航空会社: 以下の航空会社と地上サポート試験を完了しています:

  • Braathens Regional Airlines(ノルウェー)
  • SAS(スカンジナビア航空)
  • Swedavia(スウェーデン空港運営会社)
  • Air Asia(マレーシア):業界諮問委員会に参加

ES-30がターゲットとする市場:地方都市間の短距離路線

従来は採算が合わなかった路線

Heart Aerospaceは、大手航空会社が注目してこなかった地方都市間の短距離区間に焦点を当てています。

ターゲット市場の特徴:

  • 約2エーカー(約8,000平方メートル)の土地を有する小規模地方空港
  • アンダーサービスなコミュニティ(航空サービスが不足している地域)
  • 短距離区間(200-400km)

高速道路整備に匹敵する地域発展の可能性

米国では、高速道路の整備が地方都市の成長を促しました。同様に、ES-30が地域間の連携強化や観光振興に貢献する可能性があります。

期待される効果:

  • 地方都市の経済活性化
  • 観光客のアクセス向上
  • ビジネス往来の活発化

メリット:運用コスト削減と環境性能

ES-30の主なメリット:

  1. 運用コスト削減:電気モーターの方が燃料費・メンテナンス費が安い
  2. 短い滑走路からの離陸:電気モーターの瞬時の出力で実現
  3. 騒音低減:地方空港周辺の住民への影響を最小化
  4. ゼロエミッション運用:完全電気モードでの環境負荷ゼロ

完全電気 vs ハイブリッド:専門家の見解

完全電気方式を支持する意見

電気輸送分野の専門家Josh Portlock氏は、完全電気方式の優位性を指摘しています。

「2時間以下のフライトなら、大容量バッテリーを搭載するだけで十分です。エンジンを取り除くことで、コスト、重量、複雑さ、メンテナンス、信頼性の問題を解消できます。」

完全電気方式のメリット:

  • シンプルな構造:エンジン不要で部品点数が減少
  • 低メンテナンスコスト:可動部品が少ない
  • 長寿命バッテリー:過酷な使い方をしないため長持ち

ハイブリッド方式の実用性

一方、Heart Aerospaceは現時点では以下の理由からハイブリッド方式を採用しています:

  1. 航続距離の柔軟性:短距離(完全電気)と中距離(ハイブリッド)の両対応
  2. 受注獲得:250機以上の受注は、市場がハイブリッド方式を評価している証
  3. 段階的移行:バッテリー技術の進化に合わせて完全電気へ移行可能

Wave Flyer:80%省エネを実現する電動水中翼船

水中翼システムの革新性

オーストラリアのElectronautic社が開発した「Wave Flyer」は、水面から浮上して走行する電動ボートです。

水中翼(ハイドロフォイル)システムの仕組み:

  • 船体が水面から浮上
  • 抗力(水の抵抗)を大幅に低減
  • 80%の省エネを達成

Wave Driveシステム

Wave Driveは、Electronautic社が4年をかけて開発した独自の推進システムです。

特徴:

  • ギアボックスやシャフトなしで電気モーターを直結
  • 水没による液体冷却機能内蔵
  • 翼端渦を低減するエンドキャップ(航空機のウィングレットに相当)

負のアンヒードラル設計

Wave Flyerは、水中翼の後部に**負のアンヒードラル(下反角)**を設けています。

通常の設計との違い:

設計 特性 目的
上反角(通常) 自己安定性が高い 安定した飛行・航行
下反角(Wave Flyer) 不安定だがアクティブ制御 高い操縦性

敢えて不安定な状態にしておき、アクティブに安定化させることで、ピッチ、ロール、ヨーの3軸全てで高い操縦性を実現しています。

環境性能と乗り心地

Wave Flyerのメリット:

  • 80%の省エネ:従来のボートと比較
  • 排出ガスゼロ:ディーゼルエンジン不使用
  • 高速・長距離航行:電力消費量が少ないため
  • 静粛性:エンジン騒音なし
  • 快適な乗り心地:水面から浮上するため波の影響を受けにくい

脱炭素社会における電動輸送の未来

バッテリー技術の進化が鍵

電動航空機や電動ボートの実用化には、バッテリー技術のさらなる進歩が不可欠です。

現在の課題:

  • エネルギー密度の向上
  • 充電時間の短縮
  • コストの低減
  • 安全性の確保

今後の展望:

  • 固体電池の実用化
  • より軽量で高容量なバッテリー
  • 急速充電技術の発展

あらゆる交通手段の電動化

電動化の波は、自動車だけでなく、あらゆる交通手段に広がっています。

電動化が進む分野:

  • 航空機:Heart AerospaceのES-30など
  • ボート:Wave Flyerなど
  • 鉄道:一部路線で既に実用化
  • トラック・バス:商用車の電動化

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まとめ:電動輸送の2026年

主要ポイント

  • Heart Aerospace ES-30:2026年にHeart X2でハイブリッド飛行デモ、2028年商用運用開始
  • 250機以上の受注:市場の期待が大きい
  • FAA助成金:410万ドルを獲得、推進システム開発を加速
  • パートナーシップ:SAS、Braathens Regional Airlines、Air Asiaなど主要航空会社と連携
  • Wave Flyer:80%省エネ、水中翼システムで革新的な電動ボート
  • 地方都市活性化:短距離区間で新たな交通手段を提供

今後の展望

電動航空機と電動ボートは、バッテリー技術の進歩とともに、今後さらに実用化が進むでしょう。Heart AerospaceのES-30が2028年に商用運用を開始すれば、地方都市間の航空輸送に大きな変革をもたらします。

脱炭素社会の実現に向けて、あらゆる交通手段の電動化が加速しています。2026年は、その転換点として記憶される年になるかもしれません。

参考文献

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