情報検索時間80%削減の実現方法:製造業における導入事例
こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。今日は、私たちがZEROCKを導入支援した製造業A社の事例をお話しします。
「本当にそんなに変わるのですか?」
この質問を、私は何度も受けてきました。検索時間が80%削減される、30分かかっていた作業が10秒で終わるようになる。こうした数字を聞いても、にわかには信じがたいという反応は自然なことでしょう。
しかし、これは誇張ではありません。A社での導入プロジェクトを通じて、私たちは繰り返しこの成果を確認してきました。本記事では、A社がどのような課題を抱えていたのか、どのようにZEROCKを導入したのか、そして何がどう変わったのか。5000文字を超えるボリュームで、具体的なストーリーをお伝えします。
第1章:50年の歴史が生んだ「情報の迷宮」
企業概要と背景
A社は従業員約800名を擁する精密部品メーカーです。創業から50年以上の歴史があり、その技術力は業界内で高く評価されてきました。しかし、その長い歴史がもたらしたのは、技術力だけではありませんでした。
膨大な量のドキュメント、複雑なフォルダ構造、そして**「あの情報はどこにあるのか誰も知らない」**という状況でした。
情報システム部門の田中部長(仮名)は、当時をこう振り返ります。
「ある製品について調べようとすると、まずどのシステムを見ればいいのかがわからない。設計図面はPDMシステムに、製造工程の記録はERPに、品質管理データは独自のデータベースに、営業資料はファイルサーバーに。そしてそれぞれの担当者のローカルPCにも大量のファイルが保存されていました。PDMを見て、ERPを見て、ファイルサーバーを探して、最後は担当者にメールで問い合わせる。そんなことを毎日繰り返していました。」
数字で見る問題の深刻さ
A社は、ZEROCKの導入を検討するにあたり、まず現状の課題を定量化することから始めました。全社員を対象としたアンケートと、一部部署でのタイムスタディを実施したのです。
その結果、驚くべき数字が明らかになりました。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 技術部門の1日あたり情報検索時間 | 平均1時間15分 |
| 一人あたり年間検索時間 | 300時間(約37.5営業日) |
| 全社年間換算(800名) | 24万時間(3万人日相当) |
| 使用しているドキュメント管理システム | 7種類 |
| 新入社員が情報を探すのにかかる時間 | 1日2時間以上 |
表1:A社の情報検索に関する実態調査結果
年間3万人日相当の工数が、「探す」という行為に消費されていた。これは、約100名分のフルタイム従業員に相当します。100名を追加採用することなく、この工数を取り戻せるとしたら——その可能性が、A社を動かしました。
迫る世代交代の危機
事態をさらに深刻化させていたのは、世代交代でした。A社では創業期から活躍してきたベテラン技術者が次々と定年を迎え、その知識の継承が喫緊の課題となっていました。
「ベテランの山田さん(仮名)は、40年間この会社で働いてきて、製品のことなら何でも知っていました。でも、その知識のほとんどは山田さんの頭の中にしかない。山田さんが退職したら、どうなってしまうのか。そんな危機感がありました」
暗黙知を形式知に変換する取り組みは以前から行われていましたが、ドキュメント化しても「どこに保存したかわからない」「検索しても見つからない」という状況では、せっかくの努力が無駄になっていたのです。
第2章:導入の決断とアプローチ
複数ツールの比較検討
A社は、課題解決のために複数のツールを比較検討しました。従来型の社内検索エンジン、エンタープライズ向けの統合検索プラットフォーム、そしてAIを活用した次世代型のソリューション。
評価のポイントとして重視したのは以下の4点でした。
- 検索精度: 自然言語での質問に正確に答えられるか
- 複数データソース対応: 散在するシステムを横断検索できるか
- 導入の容易さ: 専門知識なしで構築・運用できるか
- 将来性: AI技術の進化に対応できるか
最終的に、graphRAG技術を活用した高い検索精度と、マルチLLM対応による柔軟性が評価され、ZEROCKの採用が決定しました。
スモールスタートの選択
A社がZEROCK導入にあたって選択したのは、全社一斉導入ではなく、パイロット部門を設定したスモールスタートでした。私たちTIMEWELLとしても、この判断を強く推奨しました。
パイロット部門として選ばれたのは、技術サポート部門でした。この部門を選んだ理由は3つあります。
- 顧客からの技術的な問い合わせに対応するため、社内のあらゆる技術情報にアクセスする必要があり、情報検索の課題がもっとも顕在化していた
- 問い合わせ対応件数という明確なKPIがあるため、効果測定がしやすい
- 部門規模が20名程度と、パイロットとして適切な規模だった
第3章:導入プロセスの実際
フェーズ1:データ整備(1ヶ月目)
パイロット導入の最初の1ヶ月は、データ整備に費やしました。私たちTIMEWELLのチームがA社の情報システム部門と協力し、取り込むべきデータソースの洗い出しと優先順位付けを行いました。
取り込み対象として選定したデータ:
- 技術仕様書(過去5年分)
- 製品マニュアル(現行全製品)
- 過去の問い合わせ対応履歴(過去3年分、約15,000件)
- 品質管理レポート(過去3年分)
- トラブルシューティングガイド
この過程で重要だったのは、「何を取り込むか」の選定です。すべてのドキュメントを無差別に取り込むのではなく、実際に業務で参照される可能性が高いものを優先しました。古すぎる情報や、すでに無効になった規程類は除外することで、ノイズを減らし検索精度を高めることができました。
フェーズ2:初期構築とトレーニング(2ヶ月目)
データ取り込みと並行して、技術サポート部門の20名のメンバーに対するトレーニングを実施しました。ここで意識したのは、「機能の説明」ではなく「業務での活用シーン」を中心に伝えることです。
たとえば、「ベクトル検索とgraphRAGのハイブリッド検索ができます」と説明するよりも、以下のような具体的なシナリオを示しました。
「お客様から『製品Xでエラーコード001が出た』と問い合わせが来たら、ZEROCKに『製品Xのエラーコード001の原因と対処法を教えて』と質問してみてください。過去の対応履歴と技術仕様書から、解決策を提示してくれます。」
このアプローチが、圧倒的に効果的でした。
フェーズ3:定着支援(3ヶ月目)
トレーニング後の2週間は、私たちのカスタマーサクセスチームが常駐に近い形でサポートを提供しました。「質問しても良い回答が返ってこない」「この情報がナレッジに入っていない」といったフィードバックを即座に収集し、改善を重ねました。
この初期段階での手厚いサポートが、その後の定着に大きく貢献したと考えています。ユーザーが「使ってみたけどダメだった」という経験をすると、その後の利用意欲が大きく低下します。初期段階で小さな成功体験を積み重ねることが、定着の鍵でした。
第4章:導入後の成果
検索時間80%削減の達成
導入から3ヶ月後に実施した効果測定では、技術サポート部門における情報検索時間が、平均1時間15分から15分へと80%削減されていました。
特に顕著だったのは、過去事例の検索です。「この製品で同様のエラーが過去にあったか」という問い合わせに対して、以前は複数のシステムを順番に検索し、関連する事例を手動で集める必要がありました。ZEROCKでは、自然言語で質問を入力するだけで、関連する過去事例が回答とともに提示されます。
| 指標 | 導入前 | 導入後 | 改善率 |
|---|---|---|---|
| 1日あたり検索時間 | 75分 | 15分 | 80%削減 |
| 1件あたり対応時間 | 25分 | 15分 | 40%削減 |
| 1日あたり対応件数 | 12件 | 18件 | 50%増加 |
| 顧客満足度スコア | 72点 | 87点 | 15ポイント向上 |
表2:導入効果の定量測定結果
属人化の解消
もう一つの大きな成果は、属人化の解消でした。技術サポート部門には、いわゆる「何でも知っている」ベテラン社員が数名おり、難しい問い合わせは彼らに集中していました。
ZEROCKの導入により、新人でも一定水準の回答ができるようになり、ベテラン社員の負荷が軽減されました。
あるベテラン社員はこう語ります。
「正直、最初は自分の存在意義がなくなるのではと不安でした。でも実際には、自分にしかできない複雑な技術判断に集中できるようになり、やりがいがむしろ増えました。ルーティンの問い合わせ対応から解放されて、本当に価値のある仕事に時間を使えるようになったんです。」
ベテラン知識の継承
さらに重要だったのは、ベテラン社員の知識が組織に蓄積されていったことです。ベテラン社員が日常業務の中でAIへの質問に回答したり、業務の過程で得た知見をナレッジに保存したりすることで、暗黙知が形式知化されていきました。
田中部長はこう語ります。「山田さんの知識の一部は、もうZEROCKの中に入っています。山田さんが退職しても、その知識は組織に残る。これが一番ありがたいことです。」
第5章:全社展開とその後
成功体験の横展開
パイロット導入の成功を受けて、A社は全社展開を決定しました。技術サポート部門での成功事例を社内で共有し、各部門からのヒアリングを経て、優先順位をつけながら段階的に展開していきました。
設計部門、製造部門、営業部門と順次展開し、導入から1年後には全社でZEROCKを活用する体制が整いました。全社展開後の調査では、情報検索時間の削減効果は全社平均で78%。年間換算で**約18万時間(2.3万人日相当)**の工数削減を実現しました。
継続的な改善サイクル
全社展開後も、改善の取り組みは続いています。月次でZEROCKの利用状況を分析し、「よく検索されるが見つからない情報」を特定して、ナレッジベースを拡充しています。
田中部長はこう締めくくります。「ZEROCKは『入れて終わり』のツールではありませんでした。使うほどにナレッジが蓄積され、精度が上がっていく。それが、導入して本当に良かったと感じるポイントです。」
結論:変革は可能である
A社の事例は、**ナレッジマネジメントの変革が「可能である」**ことを示しています。50年分の情報が散在し、ベテランの退職が迫る中でも、適切なツールと正しいアプローチによって、劇的な改善を実現できたのです。
重要なのは、いきなり大きなことをやろうとせず、スモールスタートで成功体験を作ること。そして、その成功を横展開しながら、継続的に改善を続けること。A社の取り組みは、そのお手本といえるでしょう。
私たちTIMEWELLは、こうした変革を多くの企業で実現してきました。御社でも、同じような成果を出せるはずです。まずは14日間の無料トライアルで、ZEROCKの効果を体験してみてください。
参考文献 [1] McKinsey Global Institute, "The social economy: Unlocking value and productivity through social technologies", 2012 [2] IDC, "The High Cost of Not Finding Information", 2023