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EMC GLOBAL SUMMIT 2026特別レポート|「ラストサムライ」にはなるな!平石郁生氏×アジア太平洋の起業家たちの対話

2026-02-13濱本

EMC GLOBAL SUMMIT 2026で開催された平石郁生氏のセッションを完全レポート。日本のスタートアップエコシステムの課題、「ラストサムライ」への警鐘、そしてアジア太平洋の若き起業家たちによるリスク・多様性・共創についての魂の対話を記録しました。

EMC GLOBAL SUMMIT 2026特別レポート|「ラストサムライ」にはなるな!平石郁生氏×アジア太平洋の起業家たちの対話
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

先日、EMC GLOBAL SUMMIT 2026で開催された海外メンバーとのセッションに参加しました。シリアルアントレプレナー平石郁生氏の講演と、インド・シンガポール・フィリピンなどから集まった起業家たちの対話は、日本のスタートアップエコシステムの課題と可能性を鮮烈に浮き彫りにするものでした。

本稿では、その88分間のセッションを可能な限り再現しながらレポートとしてお届けします。

EMC GLOBAL SUMMIT 2026 集合写真 EMC GLOBAL SUMMIT 2026の参加者たち。日本、インド、シンガポール、フィリピンなど、アジア太平洋各国から集結した。


第1部:平石郁生氏の講演 ― 日本の現在地と「ラストサムライ」への警鐘

失敗を恐れない「ジェットコースター」人生

セッション風景 平石郁生氏の講演。円形に並べられた椅子で、参加者と近い距離で対話が展開された。

2026年1月、東京。EMC GLOBAL SUMMIT 2026の会場の一室は、外の冬空とは対照的な熱気に包まれていました。円形に並べられた椅子に座るのは、アジア太平洋の未来を担う若き起業家や学生たち。彼らの視線の先にいたのが、平石郁生氏です。

1回のIPO、1回のM&Aによるイグジットを経験し、シリアルアントレプレナーとして知られる平石氏。しかし講演は輝かしい成功譚ではなく、失敗の話から始まりました。

「私のキャリアは、まさに"ongoing roller coaster ride"です」

投資先のInfarm(インファーム)は一時ユニコーンとなったものの最終的に破綻し、投資額はゼロに。シンガポールで設立した10社目の会社は、わずか2ヶ月で閉鎖。「撤退の決断は早くすべきです。先延ばしは本当に悪い」と、痛みを伴う経験から語られました。

この赤裸々な自己開示が、セッション全体のトーンを決定づけました。ここは、成功を誇示する場ではない。失敗から学び、本質を語り合う場だ、と。

データで見る日本の立ち位置

平石氏は冷静なデータ分析で日本のスタートアップエコシステムの現在地を解き明かしていきます。

ユニコーン輩出数ではアメリカと中国が世界を席巻し、都市別ランキングでもサンフランシスコ、北京、ニューヨーク、上海がトップ。日本の都市はレーダーにすら映りません。

しかし、視点を変えると別の景色が見えてきます。

「時価総額10億ドル以上の『上場企業』数を見ると、日本はアメリカに次ぐ第2位。インドや中国よりも多いのです」

日本はアメリカの「ムーンショット」(月を目指す壮大な挑戦)とは異なる、「アースショット」(地に足のついた挑戦)型の独自エコシステムを形成しています。IPOが主要なイグジット戦略であり、堅実だが爆発力に欠ける傾向があるということです。

文化という「見えざる壁」

なぜ、日本はムーンショットを撃てないのか。平石氏の分析は文化の深層にまで及びます。

項目 シリコンバレー 日本
製品開発 素早くローンチし、改善を繰り返す リリース前に完璧を目指す
リスク許容度 リスクを恐れない リスクを避ける
志向 グローバル 国内市場
多様性 創業者の半数以上が移民 均質的で「空気を読む」文化
コミュニケーション ストーリーテリングとビジョン 製品の品質と細部へのこだわり

「日本には『KY(空気を読めない)』という言葉があります。社会が暗黙のうちに同調を求める。だから一般的に『異なること』を恐れるのです」

シリコンバレーではスタートアップ創業者の50%以上が移民であり、多様性が当たり前の環境。この「均質性」こそが日本のエコシステムの最大の足枷だと平石氏は指摘します。

なぜ次なるソニーやホンダは生まれないのか?

講演の核心で、平石氏は最も根源的な問いを投げかけました。

「日本は世界第4位のGDPを誇り、治安は良く、食事も美味しい。しかし、この恵まれた環境が国民を『甘やかしている』のではないか」

平石氏が挙げた理由は6つです。

  1. 均質性の高い社会:多様な視点が生まれにくい
  2. 過去の成功体験への安住:ソニー、ホンダ、トヨタが国を豊かにしたため、切迫感がない
  3. リスク回避の文化
  4. 国内市場への依存
  5. 起業家教育の不足
  6. 言語の壁

そしてデータを突きつけます。

「アメリカのユニコーンの63%に移民の創業者がいます。EUでも40%。創業者のバックグラウンドが多様であるほど、より多くのユニコーンが生まれる。均質な国である日本は大きな不利を抱えているのです」

「ラストサムライ」になりたいですか?

講演の締めくくりは、強烈なメッセージでした。

「日本には1億2,000万人の人口がいます。しかし、均質な国の中で日本人だけをターゲットにするなら、私たちは『ラストサムライ』になりたいのでしょうか? 少なくとも私は、そうはなりたくありません」

「お互いに繋がり、連絡を取り合い、多くのことを議論し続けましょう。そして願わくば、いつかこのようなカンファレンスやプラットフォームが、次のユニコーンを生み出すことを」


第2部:国境を越えた魂の対話 ― リスク、苦悩、そして希望

平石氏の挑発的な問いかけは、アジア太平洋の若き才能たちの魂に火をつけました。ここからは予定調和なしの真剣勝負です。

対話の様子 国境を越えた対話。インド、フィリピン、シンガポール、日本の参加者がそれぞれのリアルを語り合った。

ユニコーンはなぜ破綻したのか?

議論の口火を切ったのは、ある参加者の鋭い質問でした。「なぜ、あなたの投資先のユニコーンは破綻したのですか?」

平石氏はInfarmの内幕を語りました。15億7,000万ドルの評価額を受けていたものの完全に赤字。破綻の直接的な原因は2つありました。

第一の原因:ロシアのウクライナ侵攻。 ヨーロッパのエネルギー価格が3倍に跳ね上がり、垂直農法の主要コストである電力が高騰。ビジネスモデルが成り立たなくなりました。

第二の原因:FRBの利上げ。 金利が5%に引き上げられ、LP(有限責任組合員)たちがVCから資金を引き揚げ始めた。「S&P 500に投資してソファに座っていた方がいい」と判断されたのです。

「地政学的なトリガーがユニコーンバブルを崩壊させた。これが私たちが破綻した理由です」

リスクの捉え方 ― 冒険か、恐怖か?

「なぜ日本では起業家が少ないのか?」という問いをきっかけに、議論は「リスク」の本質に迫っていきます。

インドからの声:「リスクよりもスリルが勝る」

「起業家になるために、並外れて賢い必要はないと思います。ただ、やり続けること、機知に富むこと。それだけです」

「起業家になるには少し妄想的である必要がある。自分が最高になると思い込み、もし最高が起こらなかったら、次は最高になると思う。このループが永遠に続く。それが起業家精神です」

フィリピンからの声:「毎日がリスクだから、挑戦は祝福される」

「台風のような自然災害、政治的リスク、就職すること自体がリスク。毎日がリスクなのです。だから人々は自然とリスクを受け入れるようになる」

「私たちには『ディスカルテ(diskarte)』という言葉があります。戦略、粘り強さ、期待以上のことを考える能力。それが優れた起業家に必要なものです」

日本人参加者の苦悩:「社会から追い出されるリスク」

「小さなリスクでさえ、他の人と違う行動をとれば、それもリスクになり得ます。社会から追い出される可能性があるからです」

安定した社会は挑戦を躊躇させ、不安定な社会は挑戦を必然にする。このパラドックスが、アジア太平洋の多様性そのものでした。

「面子」と「苦しむ覚悟」

シンガポールからの声:

「私は計算していました。就職するなら中央値の給与は年間900万円。だから、リスクを取るのは大きなこと。具体的に失うのは『面子(Face)』です。同窓会で他の人が大企業にいて肩書きを持っているのに、自分はまだ毎晩ラーメンを食べている」

「若者は次のFacebookになりたい、TikTokを始めたいと思っている。でも苦しむ覚悟ができていない。もしお金のためにスタートアップを始めたいなら、その会社に投資すべきではありません」

平石氏がここで核心的な質問を投げかけます。「もしスタートアップに失敗したら、大企業に再就職できますか?」

シンガポールの参加者は「問題ない。戻れます」と即答。インドの参加者は「時間はかかる」。フィリピンの参加者は「国内より海外で雇われやすい」と、才能流出の現実を語りました。

失敗が許容され、再挑戦の道が確保されているかどうか。それがエコシステムの成熟度を測る一つのバロメーターであることが、この対話から浮き彫りになりました。

多様性という希望と共創への道

ポスターセッションとネットワーキング ポスターセッションでのネットワーキング。国境を越えた対話がそこかしこで生まれていた。

シンガポールからの声:

「成功しているスタートアップのほとんどは、異なるバックグラウンド、異なる国籍から来た創業者の混合を持っている。全員がシンガポール人ではいけないのです」

この発言は、平石氏の「ラストサムライになるな」というメッセージに対する力強いアンサーとなりました。

セッション終盤、ある参加者から具体的な提案がなされます。

「日本には素晴らしい技術とノウハウがある。なぜ共同創業者マッチングの場を作らないのか? EMCを通じて、日本でベンチャーを探求したい人々が協力者を見つけられるようにできるはずだ」

国境を越えた「共創」の芽。それがこの日の対話から生まれた、最初の具体的な一歩でした。


結び:対話から共創へ

平石氏は穏やかな笑みで締めくくりました。

「皆さんとの会話を楽しんでいただけたなら幸いです。ありがとうございました」

88分間の対話は、多くの問いを残しました。

  • 安定は、本当に幸せなのか?
  • リスクとは、失うものか、得るものか?
  • 失敗を許容できない社会に、未来はあるのか?
  • 我々は、何のために挑戦するのか?

EMC GLOBAL SUMMIT 2026のこの一室で起きた化学反応は、アジア太平洋のスタートアップエコシステムが「競争」から「共創」へと向かう転換点になるかもしれません。日本の技術とアジアのハングリー精神が融合したとき、誰も想像しなかったイノベーションが生まれるはずです。

EMC GLOBALについて

EMC GLOBALは、アジア太平洋から世界を変える挑戦者を輩出することを目指すコミュニティです。伊藤羊一氏、津吹達也氏、そしてTIMEWELL代表の濱本が共同で推進しています。インド、インドネシア、フィリピン、韓国、タイ、シンガポールなど6カ国以上が参加し、「United Asia」を掲げて活動しています。

EMC GLOBALのイベント情報やコミュニティへの参加は、公式サイトからご確認いただけます。次回のサミットや各種セッションの案内もこちらで配信しています。グローバルに挑戦したい方、アジア太平洋の起業家ネットワークに興味がある方は、ぜひご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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