【2026年版】軍事転用されやすい部品・技術とは?デュアルユース品目の見分け方と具体例
株式会社TIMEWELLの濱本です。
「うちの製品は民生品だから軍事転用とは無関係」
そう思っている企業は多いですが、実は市販の民生品が軍事利用される事例が世界中で報告されています。
2022年以降のウクライナ紛争では、日本製のカメラやエンジンがロシア軍の無人機に搭載されていたことが発覚しました。「民生品だから大丈夫」という認識は、もはや通用しません。
本記事では、軍事転用されやすい部品・技術(デュアルユース品目)とは何か、具体的な事例とともに、企業が知っておくべきリスクと対策を解説します。
要約(この記事でわかること)
- デュアルユース:民生用にも軍事用にも使える技術・製品
- 転用リスクの高い品目:炭素繊維、半導体、工作機械、ドローン部品等
- 実際の事例:日本製部品がロシア軍ドローンに使用
- 規制の動き:2025年キャッチオール規制強化で対象拡大
- 企業の責任:「知らなかった」では済まされない
目次
- デュアルユース(軍民両用)とは?
- なぜ今、デュアルユースが問題になっているのか
- 軍事転用されやすい部品・技術の具体例
- 実際に起きた軍事転用の事例
- 業界別:リスクの高い品目
- 軍事転用リスクの見分け方
- 企業が取るべき対策
デュアルユース(軍民両用)とは?
定義
**デュアルユース(Dual-Use)**とは、「民生用にも軍事用にも使用できる技術・製品」のことです。日本語では「軍民両用」とも呼ばれます。
スピンオフとスピンオン
デュアルユース技術の流れには2つの方向があります。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| スピンオフ | 軍事技術 → 民生転用 | インターネット、GPS |
| スピンオン | 民生技術 → 軍事転用 | ドローン、3Dプリンター |
身近なスピンオフの例
実は、私たちが日常的に使っている技術の多くは、もともと軍事目的で開発されたものです。
| 技術 | 起源 |
|---|---|
| インターネット | 米国防総省のARPANET(1960年代) |
| GPS | 米軍のミサイル・航空機位置特定用(1970年代) |
| 電子レンジ | レーダー技術の副産物 |
| 缶詰 | ナポレオン軍の保存食 |
デュアルユース・ジレンマ
技術が本来の用途を離れ、人の生命や財産に危害を加える目的に転用されてしまうリスクを「デュアルユース・ジレンマ」といいます。
技術の発展と安全保障のバランスをどう取るかは、国際社会が直面する大きな課題です。
なぜ今、デュアルユースが問題になっているのか
民生技術の高性能化
かつては、軍事技術が民生技術より優れているのが普通でした。しかし現在は、民生技術が軍事技術を上回る分野が増えています。
| 分野 | 状況 |
|---|---|
| 半導体 | 最先端チップは商用が先行 |
| AI | 民間企業が最先端をリード |
| ドローン | 民生用が軍事利用可能な性能に |
| 通信 | 5Gは民間主導で発展 |
ウクライナ紛争での教訓
2022年以降のウクライナ紛争は、デュアルユースの問題を浮き彫りにしました。
報告された事例:
- ロシア軍の軍用ドローン「Orlan-10」に日本製カメラが搭載
- 日本製エンジンが使用されていることが確認
- スイス製GPSモジュール、米国製GPSアンテナの流用
- 韓国製通信機器の不正利用
国際的な規制強化の動き
これらの事態を受け、各国は輸出規制を強化しています。
| 国・地域 | 対応 |
|---|---|
| 日本 | 2025年キャッチオール規制強化 |
| 米国 | Entity Listの拡大、半導体輸出規制 |
| EU | デュアルユース規則の改正 |
軍事転用されやすい部品・技術の具体例
1. 炭素繊維
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 民生用途 | 航空機構造材、スポーツ用品、自動車部品 |
| 軍事転用 | ミサイル構造材、ウラン濃縮遠心分離機 |
| 規制 | 輸出令別表第1 5項(先端素材) |
| 過去の事例 | 日本製炭素繊維が中国経由でイランへ流出 |
炭素繊維は「鉄の10倍の強度で1/4の重さ」という特性があり、軍事用途で非常に重宝されます。特に、ウラン濃縮用の高性能遠心分離機には不可欠とされています。
2. 半導体・集積回路
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 民生用途 | スマートフォン、PC、家電 |
| 軍事転用 | 誘導兵器、ドローン制御、暗号装置 |
| 規制 | 輸出令別表第1 7項(エレクトロニクス) |
| 規制強化 | 2023年に23品目追加、計33品目に |
半導体は現代の兵器システムに不可欠です。特に高性能なFPGA(プログラマブルロジック)は、誘導兵器の制御システムに使用される可能性があります。
3. 工作機械
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 民生用途 | 自動車部品製造、精密機器製造 |
| 軍事転用 | ウラン濃縮遠心分離機、兵器部品の製造 |
| 規制 | 輸出令別表第1 6項(材料加工) |
| 過去の事例 | 東芝機械ココム違反事件(1987年) |
高精度な工作機械は、核兵器部品の製造に不可欠です。1987年の東芝機械ココム違反事件では、ソ連への工作機械不正輸出が米国を激怒させ、日米関係の重大問題になりました。
4. 無人航空機(ドローン)部品
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 民生用途 | 空撮、農業、物流 |
| 軍事転用 | 偵察ドローン、攻撃ドローン |
| 規制 | 2025年改正で強化 |
| 対象部品 | モーター、フライトコントローラー、カメラ |
ウクライナ紛争では、民生用ドローンの軍事利用が広く行われています。日本からの部品流出も報告されており、2025年の規制改正で重点的に規制対象となりました。
5. センサー・カメラ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 民生用途 | デジタルカメラ、監視カメラ、車載カメラ |
| 軍事転用 | 偵察衛星、誘導装置、暗視装置 |
| 規制 | 輸出令別表第1 10項(センサー) |
| リスク | 高解像度カメラは偵察・誘導に使用可能 |
6. 通信機器・暗号技術
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 民生用途 | スマートフォン、Wi-Fiルーター、VPN |
| 軍事転用 | 軍用通信、暗号通信、サイバー兵器 |
| 規制 | 輸出令別表第1 9項、15項 |
| 注意点 | ソフトウェアも規制対象 |
7. 3Dプリンター
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 民生用途 | 試作品製造、部品製造 |
| 軍事転用 | 銃器部品、前線での装備品製造 |
| 規制 | 一部が輸出令別表第1に該当 |
| リスク | 設計データの管理も重要 |
実際に起きた軍事転用の事例
事例1:ロシア軍ドローンOrlan-10
ウクライナ軍が鹵獲(ろかく)したロシア軍の軍用ドローン「Orlan-10」を分解したところ、以下の部品が確認されました。
| 部品 | 製造国 |
|---|---|
| カメラ | 日本 |
| エンジン | 日本 |
| GPSモジュール | スイス |
| GPSアンテナ | 米国 |
| 通信機器 | 韓国 |
これらの部品は、民生用途として正規ルートで輸出されたものが、第三国経由でロシアに流れたと見られています。
事例2:東芝機械ココム違反事件(1987年)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 概要 | 東芝機械がソ連に高精度工作機械を不正輸出 |
| 転用先 | ソ連海軍の原子力潜水艦のスクリュー加工 |
| 影響 | 米国で東芝製品不買運動、日米関係悪化 |
| 処分 | 輸出禁止処分、担当者の逮捕 |
この工作機械により、ソ連は潜水艦の静粛性を大幅に向上させ、米軍の対潜水艦戦能力に深刻な影響を与えました。
事例3:イランへの炭素繊維流出
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 概要 | 日本製炭素繊維が中国経由でイランに流出 |
| 転用先 | ウラン濃縮用遠心分離機 |
| 発覚 | 国連安保理専門家パネルが報告 |
| 問題点 | 正規輸出した後の再輸出管理 |
事例4:中国への半導体製造装置流出疑惑
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 背景 | 中国の半導体産業育成政策 |
| 懸念 | 軍事用半導体の国産化に利用 |
| 対応 | 2023年に日本も23品目の規制を強化 |
業界別:リスクの高い品目
製造業
| 業種 | リスクの高い品目 |
|---|---|
| 機械 | 工作機械、精密測定機器 |
| 電機 | 半導体、センサー、電源装置 |
| 化学 | 炭素繊維、高性能プラスチック、特殊化学物質 |
| 金属 | 特殊合金、チタン合金 |
エレクトロニクス
| 品目 | 軍事転用リスク |
|---|---|
| FPGA | 誘導兵器の制御 |
| 高性能IC | 暗号装置、通信機器 |
| センサー | 偵察システム、誘導装置 |
| 電池 | 無人機、兵器電源 |
IT・ソフトウェア
| 品目 | 軍事転用リスク |
|---|---|
| 暗号ソフトウェア | 軍用通信 |
| AIアルゴリズム | 自律型兵器、画像認識 |
| シミュレーションソフト | 兵器開発 |
| サイバーセキュリティツール | サイバー攻撃 |
研究機関
| 分野 | リスクの高い技術 |
|---|---|
| 材料工学 | 新素材、ナノテクノロジー |
| 電子工学 | 量子技術、先端半導体 |
| 生命科学 | 生物剤、毒素研究 |
| 航空宇宙 | 推進技術、航法技術 |
軍事転用リスクの見分け方
チェックポイント1:性能・スペック
以下のような高性能品は、軍事転用リスクが高いです。
| 観点 | 例 |
|---|---|
| 高精度 | 位置決め精度6μm以下の工作機械 |
| 高耐久 | 極端な温度・衝撃に耐える素材 |
| 高速度 | 高速演算能力を持つプロセッサ |
| 高感度 | 微弱信号を検出できるセンサー |
チェックポイント2:用途の汎用性
特定の民生用途だけでなく、軍事用途にも転用しやすい製品は注意が必要です。
| リスクが高い製品 | リスクが低い製品 |
|---|---|
| 高性能モーター | 特定家電専用部品 |
| 汎用センサー | 玩具専用部品 |
| プログラマブル機器 | 機能固定機器 |
チェックポイント3:輸出先の状況
以下の輸出先には特に注意が必要です。
| 懸念される輸出先 | 理由 |
|---|---|
| 軍・国防関連機関 | 直接的な軍事利用 |
| 研究機関(懸念国) | 軍事研究への転用 |
| トンネル会社 | 迂回輸出の可能性 |
| フリーゾーン所在企業 | 再輸出のリスク |
チェックポイント4:取引の不自然さ
以下のような不自然な取引は、軍事転用の可能性を示唆します。
- 用途を明確に説明できない
- 需要者が不自然に多くの量を発注
- 技術サポートを拒否する
- 現金払いにこだわる
- 中継地が複数ある
企業が取るべき対策
対策1:自社製品のリスク評価
まず、自社製品の軍事転用リスクを評価します。
| 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|
| リスト規制該当性 | 輸出令別表第1との照合 |
| キャッチオール対象性 | 2025年改正HSコードリストとの照合 |
| 過去の転用事例 | 業界情報、ニュースの確認 |
対策2:取引審査の強化
新規・継続取引で以下を確認します。
| 確認項目 | 具体的な確認内容 |
|---|---|
| 最終用途 | 民生用途であることの確認 |
| 最終需要者 | 軍・軍関連機関でないことの確認 |
| 再輸出リスク | 第三国への再輸出可能性 |
| 取引の整合性 | 注文量、用途の妥当性 |
対策3:契約条項の整備
輸出契約に以下の条項を盛り込みます。
- 用途制限条項:軍事用途への使用禁止
- 再輸出制限条項:第三国への再輸出禁止
- 監査権条項:立入検査の権利
- 契約解除条項:違反時の契約解除
対策4:社内教育の実施
従業員に以下を周知します。
- デュアルユースの概念
- 自社製品の転用リスク
- 不自然な取引の見分け方
- 違反した場合の罰則
対策5:AIツールの活用
膨大な確認作業をAIで効率化します。
ZEROCK EX-Checkは、以下の機能で軍事転用リスクの管理を支援します。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 該非判定支援 | リスト規制・キャッチオール対象かを自動判定 |
| 需要者スクリーニング | 懸念対象者かを自動チェック |
| 取引パターン分析 | 不自然な取引の検知 |
| 規制変更の自動反映 | 最新の規制情報を反映 |
まとめ
デュアルユースの現実
- 民生品でも軍事転用される:「民生品だから大丈夫」は通用しない
- 日本製品も例外ではない:実際に転用事例が報告されている
- 規制は強化される一方:2025年キャッチオール規制強化
リスクの高い品目
- 炭素繊維、半導体、工作機械
- 無人航空機部品、センサー、通信機器
- 暗号技術、AI、3Dプリンター
企業に求められること
- 自社製品のリスク評価
- 取引審査の強化
- 契約条項の整備
- 社内教育の実施
- 「知らなかった」では済まされない覚悟
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