この記事のポイント
- 項目別対比表とは、輸出品目がリスト規制に該当するかを確認するためのCISTEC発行の公式チェックシート
- 事前チェックだけでは不十分 — 輸出実績との対比・照合が法的に必要
- EARアフィリエイト・ルールは、エンティティリスト掲載企業の50%以上子会社も規制対象とする米国の新規則
- 日本企業も米国製技術を含む製品の再輸出で影響を受ける — 違反で最大100万ドルの罰金リスク
- 2026年11月の本格施行までに、取引先の資本関係を可視化する体制整備が急務
こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
2026年、輸出管理の世界では重要な規制変更が相次いで施行されます。特に日本企業にとって見逃せないのが、CISTEC項目別対比表の活用義務化の流れと、米国EAR(輸出管理規則)のアフィリエイト・ルールです。
「うちは米国と直接取引していないから関係ない」——そう思っていませんか?実は、米国製の部品やソフトウェアを1つでも使っていれば、あなたの会社も影響を受ける可能性があります。
本記事では、これらの規制変更がなぜ重要なのか、対応しないとどんなリスクがあるのか、そしてどう準備すべきかを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
第1部:項目別対比表とは何か
該非判定の「公式チェックシート」
項目別対比表とは、安全保障貿易情報センター(CISTEC)が発行する、輸出管理のための公式チェックシートです。正式名称は「輸出貿易管理令別表第1・外国為替令別表 項目別対比表」といいます。
簡単に言えば、「この製品を輸出してよいか」を判断するためのチェックリストです。
対比表の構成
| 部 | 内容 |
|---|---|
| 第1部 | 輸出貿易管理令 別表第1(貨物)の項目別対比表 |
| 第2部 | 外国為替令 別表(技術)の項目別対比表 |
| 第3部 | キャッチオール規制の参考資料 |
| 第4部 | その他の参考情報 |
なぜ「実績との対比」が必要なのか
多くの企業が見落としがちなのが、事前チェックだけでは不十分という点です。
輸出管理では、以下のサイクルを回す必要があります:
事前確認 → 輸出実行 → 実績記録 → 対比・照合 → 改善
対比が必要な3つの理由
- 法的義務: 輸出管理内部規程(CP)では、申請内容と実績の整合性確認が求められます
- 監査対応: 経産省の立入検査時に、対比記録の提示を求められることがあります
- 継続的改善: 事前判定と実績のズレを分析することで、判定精度を向上できます
対比表を使った実務の流れ
1. 輸出前: 対比表で該非判定を実施
2. 輸出時: 判定結果に基づき手続き
3. 輸出後: 実際の輸出内容を記録
4. 定期的: 事前判定と実績を照合
5. 必要時: 判定基準を見直し
この事前と事後のサイクルを回すことで、形だけでない実効性のある輸出管理体制を構築できます。
第2部:EARアフィリエイト・ルールとは何か
米国輸出管理の大転換
2025年9月29日、米国商務省産業安全保障局(BIS)は、輸出管理規則(EAR)の適用範囲を大幅に拡大する**暫定最終規則(IFR)**を公表しました。
この中で導入されたのが**アフィリエイト・ルール(関連事業体ルール)**です。
アフィリエイト・ルールの内容
従来のEARでは、エンティティリスト(EL)に掲載された企業のみが規制対象でした。
新ルールでは、以下も規制対象に追加されます:
| 対象 | 条件 |
|---|---|
| EL掲載企業 | 従来通り規制対象 |
| EL掲載企業の子会社 | 50%以上所有で規制対象に |
| MEUリスト掲載企業の子会社 | 50%以上所有で規制対象に |
| SDNリスト一部企業の子会社 | 50%以上所有で規制対象に |
施行スケジュール
| 時期 | 状況 |
|---|---|
| 2025年9月29日 | 暫定最終規則を公表 |
| 2025年11月10日〜2026年11月9日 | 適用停止(猶予期間) |
| 2026年11月10日 | 本格施行予定 |
つまり、2026年11月までに対応体制を整える必要があります。
なぜ日本企業に影響があるのか
「うちは米国企業じゃないから関係ない」は大きな誤解です。
EARは域外適用があります。以下のケースでは、日本からの輸出でもEARが適用されます:
- 米国原産品目の輸出: 米国製の製品・部品をそのまま輸出
- 米国技術を使った製品: 米国の技術やソフトウェアで製造した製品
- 米国部品の組込製品: 米国製部品を一定割合以上含む製品
違反した場合のリスク
EAR違反のペナルティは極めて重いです:
| 罰則 | 内容 |
|---|---|
| 刑事罰 | 20年以下の懲役 |
| 罰金 | 違反1件あたり最大100万ドル |
| 課徴金 | 違反1件あたり最大30万ドル |
| 輸出禁止 | 米国関連の一切の取引禁止 |
特に最後の「輸出禁止」は、事実上、米国製品・技術を使った事業ができなくなることを意味します。グローバルにビジネスを展開する企業にとっては致命的です。
第3部:なぜ「関係性の可視化」が重要なのか
Red Flag 29の導入
アフィリエイト・ルールと同時に導入されたのが**「Red Flag 29」**です。
これは、取引先企業の直接または間接の所有者の中に1社でもリスト掲載企業が含まれていることを知った場合、その所有比率を可能な限り特定する積極的義務を負うというものです。
つまり、「知らなかった」は通用しなくなります。
資本関係の調査は困難
問題は、海外企業の資本関係を調査することの難しさです:
- 公開情報が限られている
- 言語の壁(中国語、アラビア語など)
- 複雑な持株構造(間接所有の連鎖)
- 頻繁な資本構成の変更
手作業でこれらを調査するには、膨大な時間と専門知識が必要です。
可視化することの3つの価値
1. リスクの早期発見
取引先の資本関係を可視化することで、潜在的なリスクを事前に把握できます。エンティティリスト掲載企業の子会社と気づかずに取引していた、という事態を防げます。
2. 監査への備え
BISや経産省の監査時に、取引先の資本関係を調査した証跡を示すことができます。「デューデリジェンスを実施した」という証明になります。
3. 意思決定の迅速化
可視化されていれば、新規取引の可否判断が迅速かつ正確に行えます。営業機会を逃さず、かつリスクを回避できます。
第4部:今から始める対応策
2026年11月までにやるべきこと
ステップ1:現状把握(〜2026年3月)
- 自社の輸出品目の棚卸し
- 米国原産・米国技術含有の有無を確認
- 主要取引先リストの作成
ステップ2:体制整備(〜2026年6月)
- 輸出管理内部規程(CP)の見直し
- アフィリエイト・ルール対応の手順追加
- 担当者への教育・研修
ステップ3:ツール導入(〜2026年9月)
- 取引先スクリーニングツールの選定
- 資本関係調査機能の確認
- 既存取引先の一括チェック
ステップ4:運用開始(〜2026年11月)
- 新規則に基づく運用開始
- 定期的なモニタリング体制の確立
- 監査対応資料の整備
Ex-CHECKの対応予定
TIMEWELLが提供する輸出管理AIエージェント「ZEROCK Ex-CHECK」では、以下の対応を予定しています:
| 時期 | 対応内容 |
|---|---|
| 2026年2月 | 項目別対比表対応(事前・実績照合機能) |
| 2026年11月 | EARアフィリエイト・ルール対応(資本関係チェーン分析) |
AIを活用することで、数百件の取引先を一括でスクリーニングし、資本関係の連鎖を自動で追跡することが可能になります。
まとめ:変化に備えよ
2026年は輸出管理にとって大きな転換点となります。
押さえるべきポイント
- 項目別対比表: 事前チェックだけでなく、輸出実績との対比・照合が必要
- EARアフィリエイト・ルール: エンティティリスト掲載企業の50%以上子会社も規制対象
- 日本企業への影響: 米国製技術を含む製品の再輸出時に適用される
- 違反リスク: 最大100万ドルの罰金、米国関連取引の全面禁止
- 対応期限: 2026年11月10日の本格施行までに体制整備が必要
輸出管理は「面倒なコンプライアンス業務」ではありません。日本の科学技術を守り、企業の信頼性を高め、グローバルビジネスを持続可能にするための重要な取り組みです。
猶予期間のうちに、しっかりと準備を進めていきましょう。
