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AI導入の進め方8ステップ|稟議を通す企画書と投資対効果の試算方法

2026-02-12濱本竜太

AI導入の具体的な進め方を8ステップで解説。企画書に盛り込むべき要素、投資対効果の試算方法、PoC死を防ぐ実践ノウハウを経営企画・DX推進担当者向けにまとめました。

AI導入の進め方8ステップ|稟議を通す企画書と投資対効果の試算方法
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AI導入の進め方8ステップ|稟議を通す企画書と投資対効果の試算方法

株式会社TIMEWELLの濱本です。

「AIを導入したい。でも、どこから手をつければいいのか分からない」「経営会議で稟議を通すには、何をどう説明すればいいのか」。経営企画やDX推進の担当者から、こうした相談を毎週のように受けます。

野村総合研究所の調査によれば、日本企業の57.7%が生成AIを導入済み。一方で、MITの調査では95%の企業がAI投資のリターンを得られていないという厳しいデータもあります。「導入した」だけでは意味がなく、成果につなげるプロセス設計が勝負を分けるわけです。

稟議を控えている方は、このままたたき台としてお使いください。


AI導入プロジェクトの全体像

8つのステップに分けて進めます。一発勝負ではなく、段階を踏んでいく前提で読んでください。

ステップ フェーズ 主な活動 期間の目安
1 課題の棚卸し 業務課題の洗い出しと優先順位づけ 2〜3週間
2 目的と目標の設定 KGI・KPIの定義 1〜2週間
3 業務プロセスの可視化 As-IsとTo-Beの整理 2〜4週間
4 ソリューション選定 ツール比較と技術検証 2〜3週間
5 投資対効果の試算 ROI算定と稟議資料作成 1〜2週間
6 PoC(概念実証) 小規模テストと効果検証 4〜8週間
7 本番導入と展開 段階的ロールアウト 8〜12週間
8 定着化と改善 モニタリングとPDCA 継続的

PoC開始まで約2〜3か月、本番導入まで半年程度が標準的なタイムラインです。「来月から全社導入」は失敗の最大要因になるので、焦らないでいただきたい。


ステップ1:課題の棚卸し

AI導入で最初にやるべきことは、ツール選定ではありません。「どの業務の、何が問題なのか」を洗い出すこと。

やり方はシンプルで、各部門のマネージャーに3つだけ聞きます。

  • 時間がかかっている業務は何か(例:月次報告書の作成に毎回3日かかる)
  • 属人化している業務は何か(例:ベテラン社員しか対応できない問い合わせ対応)
  • ミスが発生しやすい業務は何か(例:手作業のデータ入力で月に数件の誤り)

出てきた課題を「AI適用のしやすさ」と「効果のインパクト」の2軸でマッピングすると、どこから着手すべきかが見えてきます。

課題の優先順位づけ

評価軸 高い 低い
AI適用のしやすさ テキスト処理、定型業務、データが蓄積されている業務 判断基準が曖昧、データがない、例外処理が多い業務
効果のインパクト 全社横断、高頻度、コスト大 特定個人のみ、低頻度、コスト小

両方が高い領域がファーストターゲット。「全社で週に何十時間も使っている定型業務」が見つかれば、そこが起点になります。


ステップ2:目的と目標の設定

課題が特定できたら、AI導入の目的と測定可能な目標を設定します。ここを曖昧にすると、後の効果測定ができず「結局どうだったのか分からない」で終わる。私の経験上、ここが甘いプロジェクトは8割方うまくいきません。

目標の良し悪しを具体的に見てみます。

  • NG:「業務を効率化する」(何をどれくらい?)
  • OK:「月次報告書の作成時間を現行の3日から1日に短縮する」
  • OK:「問い合わせ対応の一次回答率を60%から85%に引き上げる」
  • OK:「データ入力のエラー率を月5件から月1件以下にする」

数値目標があれば、後から投資対効果を計算できる。経営会議でも「やって意味があったのか」を明確に報告できます。


ステップ3:業務プロセスの可視化

AIを入れる前に、現在の業務フローと、AI導入後の理想像を整理します。現状をAs-Is、理想をTo-Beと呼びます。これを飛ばすと「AIを入れたが、結局は元の手作業に戻った」という事態に陥る。

整理のポイントは3つ。

  1. 現状フローを書き出す。担当者へのヒアリングで「実際に何をどの順番でやっているか」を可視化する
  2. AIが代替できる工程を特定する。自動化、支援、判断補助のどれに該当するかを分類する
  3. 人間が担うべき工程を明確にする。最終判断、例外対応、顧客対応など、人の関与が必須の部分を残す

余談ですが、この工程で「実はAI以前に業務フロー自体が非効率だった」と気づくケースがけっこうあります。業務の棚卸し自体に価値があるので、面倒がらずにやってほしい。


ステップ4:ソリューション選定

ここで初めてツールの話に入ります。課題と目標が明確になっていれば、選定基準も自ずと決まる。

ソリューション比較の評価軸

評価項目 確認ポイント 重要度
課題への適合性 特定した課題を解決できるか 最重要
セキュリティ データの保管場所、暗号化、アクセス制御 最重要
導入の容易さ 既存システムとの連携、初期設定の負荷
カスタマイズ性 自社の業務フローに合わせた調整が可能か
コスト構造 初期費用、月額費用、従量課金の有無
サポート体制 日本語対応、導入支援、トレーニング
拡張性 将来の利用範囲拡大に対応できるか

「話題だから」「競合が使っているから」で選ぶのは禁物です。自社の課題に合っているかどうか。判断基準はそれだけです。


ステップ5:投資対効果(ROI)の試算

稟議を通すうえで避けて通れないのが、投資対効果の試算。「AIを入れるとどれくらい得するのか」を、経営層が判断できる形で示す必要があります。

コスト項目の洗い出し

コスト区分 項目例 概算の出し方
初期費用 ライセンス、導入コンサル、開発費 ベンダー見積もり
運用費用 月額利用料、保守費用 月額 x 12か月
人的コスト 推進担当者の工数、研修費用 人月単価 x 投入月数
間接コスト 既存業務への影響、移行期の生産性低下 過去のIT導入実績から類推

効果項目の洗い出し

効果区分 項目例 算定方法
時間削減 作業時間の短縮 削減時間 x 時間単価 x 対象人数
エラー削減 ミスの減少による手戻り防止 エラー1件あたりの対応コスト x 削減件数
売上向上 対応スピード向上による受注率改善 改善率 x 平均受注額
機会損失の回避 属人化リスクの軽減 定性的に説明

ROIの計算式

ROI(%)=(年間効果額 − 年間コスト)÷ 年間コスト × 100

たとえば、年間コスト600万円のAIツールで、年間900万円分の業務効率化が見込めるなら、ROIは50%。初年度でROI 30%以上が見込めるプロジェクトは稟議が通りやすい傾向にあります。

正直なところ、効果の見積もりには不確実性がつきまとう。だからこそ、ステップ2で設定した数値目標が効いてきます。「この数字が達成できればROIはこうなる」というロジックが組めれば、経営層も判断しやすいはずです。


ステップ6:PoC(概念実証)

PoCは、本番導入前に小さく試して効果を検証するフェーズ。ここでの最大のリスクは「PoC死」です。PoCを繰り返すだけで本番に進めない状態。

PoC死を防ぐ3つのルール

  1. 期間を区切る。PoCは最長8週間。延長は1回まで、理由を明文化する
  2. 判断基準を事前に決める。「何が達成できたらGo、何が未達ならStop」を数値で定義する
  3. 関係者を限定しすぎない。現場の担当者を必ず巻き込む。IT部門だけで進めると、現場に展開する段階で詰む

PoC設計テンプレート

項目 記載内容
検証テーマ 何を検証するか(例:問い合わせ対応の自動化率)
成功基準 数値目標(例:自動回答率70%以上)
検証期間 開始日から終了日(例:4月1日から5月31日)
対象範囲 部門、業務、データ範囲
参加者 プロジェクトメンバーと役割
Go/Stop判断日 中間レビューと最終判断の日付
次のアクション Go時の本番導入計画、Stop時の撤退基準

ステップ7:本番導入と展開

PoCで効果が確認できたら、本番導入へ。一気に全社展開するのではなく、段階的に広げていくのが鉄則です。

展開の順序はこうなります。

  1. パイロット部門(PoCを実施した部門)で本番運用を開始
  2. 隣接部門(業務内容が近い部門)に横展開
  3. 全社展開(全部門への導入とルール整備)

各段階で「うまくいった点」と「想定外だった点」を記録し、次の展開に反映する。展開のたびに現場からフィードバックを集め、運用ルールを改善していくことが定着のカギになります。


ステップ8:定着化と改善

導入して終わりではなく、導入後の定着化こそ本番。

クラウドエースの調査によれば、KPIを設定してAI活用を推進した企業の80.2%が目標を達成しています。逆にKPI未達の企業の81.8%は「AI出力の品質が不安定」を理由に挙げている。定期的なモニタリングと改善サイクルが欠かせません。

定着化のチェック項目を挙げておきます。

  • 利用率を月次で計測しているか
  • 効果指標(KPI)を定期的にレビューしているか
  • 現場からの改善要望を吸い上げる仕組みがあるか
  • ツールのアップデートや新機能を社内に周知しているか
  • 成功事例を社内で共有しているか

特に5つ目の「成功事例の共有」は過小評価されがちですが、私はここが定着の分かれ目だと思っています。「隣の部署がAIでこんな成果を出した」という話は、どんなトップダウンの号令よりも人を動かします。


企画書に盛り込むべき要素

ここまでの内容を企画書にまとめるなら、以下の構成が経営会議で通りやすいフォーマットです。

セクション 記載内容 ページ数の目安
エグゼクティブサマリー 提案の要旨と期待効果(1枚で完結) 1ページ
背景と課題 現状の課題とAI導入の必要性 1〜2ページ
目的と目標 KGI・KPIの定義 1ページ
ソリューション概要 選定したツールと選定理由 1〜2ページ
投資対効果 コスト、効果、ROI試算 1〜2ページ
実行計画 スケジュール、体制、マイルストーン 1ページ
リスクと対策 想定リスクと軽減策 1ページ

合計8〜10ページ程度にまとめるのが適切です。分厚い資料は読まれません。


よくある失敗パターン5選

コンサルティングの現場で繰り返し見てきた失敗パターンを5つ紹介します。

失敗1:ツール先行型

「ChatGPTが流行っているから導入しよう」。課題の特定を飛ばしてツールから入ると、「導入したけど何に使うか分からない」で終わります。このパターンが一番多い。

失敗2:トップ不在型

推進担当者は熱心だが、経営層が無関心。予算もリソースも中途半端で、結局は担当者の片手間プロジェクトになる。IPAの調査では、DX人材が不足している企業は日本で85.1%。経営層が覚悟を持ってリソースを割かなければ前に進みません。

失敗3:PoC永久ループ型

PoCを何度も繰り返すが、本番導入に踏み切れない。「もう少しデータを集めてから」「もう一度検証してから」と先送りを続け、半年、1年と時間だけが過ぎていく。判断基準を事前に決めておくことで防げます。

失敗4:外部丸投げ型

AIベンダーにすべて任せて、社内にノウハウが残らない。ベンダーの契約が切れた瞬間に運用が止まります。外部の力を借りること自体は正しい判断ですが、同時に社内人材の育成を進めなければ持続しない。

失敗5:全社一斉導入型

パイロット検証を経ずにいきなり全社展開。現場の準備が追いつかず、混乱と不満が広がり、「AIなんて使えない」という空気が社内に蔓延する。段階的な展開が鉄則です。


まとめ

ここまでの内容を踏まえて、次のアクションを決めてください。

もしまだ課題の棚卸しが済んでいないなら、まずは各部門のマネージャーに3つの質問をするところから始める。課題が見えているなら、数値目標を設定してROI試算に進む。PoCまで来ているなら、期間と判断基準を明文化してPoC死を防ぐ。

AI導入は、正しい手順を踏めば着実に成果が出るプロジェクトです。逆に手順を飛ばせば確実に失敗する。8つのステップのうち、今の自分がどこにいるのかを確認し、次の1歩を踏み出してください。


TIMEWELLのWARPでは、AI導入の戦略立案からPoC設計、本番展開、社内人材の育成まで、一気通貫で伴走するコンサルティングを提供しています。元大手企業のDXやデータ戦略の専門家が、御社の状況に合わせたプロジェクト設計を支援します。企画書のレビューだけでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

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