企業AI導入のセキュリティガイド - データ保護の基本

TIMEWELL編集部2026-02-01

なぜAI導入にセキュリティが重要なのか

企業がAIを業務に活用する場合、社内の機密情報や顧客データをAIシステムに読み込ませることになります。この過程で適切なセキュリティ対策が取られていなければ、情報漏洩や不正アクセスのリスクが発生します。

特に注意が必要なのは、汎用的なクラウドAIサービスをそのまま業務利用するケースです。入力したデータがモデルの学習に使われたり、第三者がアクセス可能な環境に保存されたりする可能性があります。

企業AI導入で考慮すべきセキュリティ課題

1. データの保存場所(データレジデンシー)

AIシステムが処理するデータがどの国のサーバーに保存されるかは、法規制の面で重要です。日本の個人情報保護法や、業界固有の規制(金融、医療など)により、データを国外に持ち出せないケースがあります。

国内サーバーでの運用が可能なサービスを選択することで、このリスクを回避できます。TIMEWELLのZEROCKは、AWSの東京リージョンでデータを管理しており、日本国内にデータが留まる構成を採用しています。

2. 入力データの学習利用

一般向けのAIサービスでは、ユーザーが入力したデータがモデルの改善(学習)に利用される場合があります。これは企業にとって、機密情報が外部に流出するリスクを意味します。

エンタープライズ向けのAIサービスでは、入力データが学習に利用されないことが明示されているものを選ぶ必要があります。

3. アクセス制御と権限管理

「経営層向けの財務データに一般社員がアクセスできる」「退職者のアカウントが残っている」といった状態は、AIシステムでも同様にリスクとなります。

既存の認証基盤(Active Directory、SAML、OAuthなど)と連携し、役職や部署に応じたアクセス制御を実装することが求められます。

4. 監査ログとトレーサビリティ

誰が、いつ、どのデータにアクセスし、どのような質問をしたかを記録する監査ログは、コンプライアンス対応の基本です。問題が発生した際の原因究明や、内部統制の証跡としても重要な役割を果たします。

オンプレミスとクラウドの選択

企業AIの導入形態は、大きく分けてオンプレミス(自社サーバー)とクラウドの2つがあります。

観点 オンプレミス クラウド
データの管理 完全に自社で管理 クラウド事業者に委託
初期コスト 高い(サーバー構築) 低い(従量課金)
運用負荷 高い(自社で保守) 低い(事業者が保守)
スケーラビリティ 限定的 柔軟に拡張可能
セキュリティ管理 自社の責任範囲が広い 共同責任モデル

どちらが適切かは、扱うデータの機密性レベル、IT部門のリソース、予算、スケーラビリティ要件によって異なります。最近は「クラウドだが国内リージョン限定」というハイブリッドな選択肢も増えています。

情報漏洩を防ぐための実践的対策

入力フィルタリング

AIへの入力時に、個人情報やクレジットカード番号などの機密データを自動検出し、マスキングする仕組みを設けます。

出力のチェック

AIが生成した回答に機密情報が含まれていないかをチェックする仕組みも有効です。特にRAGを使う場合、検索結果に権限外の情報が混入するリスクがあります。

通信の暗号化

ユーザーとAIシステム間の通信、およびAIシステムとデータベース間の通信は、すべてTLS暗号化で保護します。保存データも暗号化(Encryption at Rest)を適用します。

定期的なセキュリティレビュー

AIシステムの設定やアクセス権限は、定期的に見直す必要があります。新しい脆弱性や攻撃手法に対応するため、継続的なセキュリティアセスメントを実施しましょう。

コンプライアンスへの対応

業界によっては、AIの利用に関する固有の規制が存在します。

  • 金融業界:金融庁のAI利活用ガイドライン
  • 医療業界:厚生労働省のAI利用に関する指針
  • 個人情報全般:個人情報保護法、GDPR(EU取引がある場合)

これらの規制要件を満たすためには、AIサービスの提供事業者がどのような認証(ISO 27001、SOC 2など)を取得しているかも確認ポイントになります。

まとめ

  • データの保存場所、学習利用の有無、アクセス制御、監査ログの4点がセキュリティの基本
  • オンプレミスとクラウドの選択は、機密性レベルとリソースに応じて判断する
  • 入力フィルタリング、出力チェック、暗号化、定期レビューで情報漏洩を防ぐ
  • 業界固有のコンプライアンス要件も事前に把握しておくこと

エンタープライズAIの基礎知識は以上です。セキュリティを確保した上でAIを活用することで、企業は安心してDXを推進できます。