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AIは巨人を倒すのか?AnthropicのCOBOL解析が告げる、IBMとビッグテックの未来

2026-02-24濱本 隆太

AnthropicのCOBOL近代化ツール発表でIBM株価が13%暴落。SaaS黙示録と呼ばれる一連のAIショックの深層と、ビッグテックの未来を解説。

AIは巨人を倒すのか?AnthropicのCOBOL解析が告げる、IBMとビッグテックの未来
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こんにちは、TIMEWELLの濱本です。今日はテック関連のサービスご紹介です。

2026年2月23日、テクノロジー業界に激震が走りました。AIスタートアップのAnthropicがブログ記事を一本出しただけで、IBMの株価が13%吹き飛んだのです。時価総額にして約310億ドル、日本円で4.7兆円。たった一日で。しかも引き金になったのは、1959年生まれの古びたプログラミング言語COBOLに関する話題でした。

何が起きたのか。なぜ市場はここまで動揺したのか。そしてこの出来事は、ビッグテック全体の未来にとって何を意味するのか。順を追って整理していきます。

眠れる巨象COBOL、それを目覚めさせたAI

COBOLという言語を聞いたことがあるでしょうか。1959年に誕生した、プログラミング言語の世界では「生きた化石」と呼ばれる存在です。ただし、化石と侮ってはいけない。今なお米国のATM取引の95%がCOBOLで処理されています。世界中の金融機関、保険会社、航空会社、政府の社会保障システム。社会の根幹を支える基幹システムで、推定8000億行ものコードが現役で稼働し続けている。

60年以上前の技術がなぜ生き残っているのか。理由はシンプルで、COBOLは大量のデータを正確かつ高速に一括処理する事務処理に特化して設計されており、その信頼性が長年にわたって証明されてきたからです。安定稼働しているシステムを、莫大なコストとリスクを冒してまで置き換える動機は、多くの組織にとって乏しかった。

ただ、この安定は深刻な問題を内包していました。COBOLを扱える技術者の高齢化です。開発当時のエンジニアは次々と引退し、COBOLを専門的に教える大学は世界でもごくわずかしか残っていません。ドキュメントもろくに整備されていない「秘伝のタレ」と化したレガシーコード。改修も機能追加も困難で、組織のDXを阻む巨大な壁になっている。

余談ですが、私が以前ある金融系のプロジェクトに関わった際、COBOLのコードを読める人が社内に一人しかおらず、その方が体調を崩しただけでプロジェクト全体が止まりかけたことがありました。レガシーコードの怖さは、こういう「属人化の極み」にあります。

この膠着状態を打ち破る一手として現れたのが、AnthropicのAIモデルClaudeを搭載したClaude Codeです。2026年2月23日、Anthropicは公式ブログで、このAIツールがCOBOLの近代化を劇的に加速させると発表しました。

レガシーコードの近代化は何年もの間、停滞していました。なぜなら、レガシーコードを理解するコストが、それを書き換えるコストを上回っていたからです。AIはその方程式をひっくり返します

Claude Codeがやることは、単なるコードの自動翻訳ではありません。もっと体系的で、外科手術に近いアプローチを取ります。

フェーズ やること
自動探索と発見 数千、数万行に及ぶCOBOLコードベース全体を読み込み、プログラムの構造やデータフロー、モジュール間の依存関係を自動でマッピングする。人間なら数ヶ月かかるような、ファイルやデータベースを介した暗黙の依存関係まで可視化し、誰も覚えていない業務ワークフローをドキュメントとして再構築する。
リスク分析と機会特定 マッピング結果をもとに、近代化が容易な独立コンポーネントと、慎重に扱うべき結合度の高い危険箇所を仕分ける。安全かつ効率的な移行計画の立案を支援する。
段階的な実装と検証 一括置換ではなく、コンポーネント単位でCOBOLのロジックをJavaなどの現代言語に翻訳し、テストを繰り返しながら段階的に進める。大規模なロールバックのリスクを最小限に抑える設計。

Anthropicはこのアプローチで「数年かかっていた近代化プロジェクトが、数四半期で完了する」と宣言しました。COBOLという巨大な壁の前で立ち尽くすしかなかった企業にとっては福音。その壁に寄りかかってきた巨人にとっては、足元が崩れる音が聞こえた瞬間だったはずです。

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巨人の蹉跌、IBM株価はなぜ暴落したのか

発表当日の2026年2月23日、ニューヨーク株式市場でIBMの株価は13.1%急落しました。一日で約310億ドルの時価総額が消失。ドットコムバブル崩壊時の2000年10月以来、25年以上ぶりとなる歴史的な下落幅です。

なぜ市場はここまで動揺したのか。答えはIBMのビジネスモデルとCOBOLの関係にあります。

IBMはCOBOLが稼働する主要プラットフォームであるメインフレームの巨人です。メインフレームとは、金融機関などが大規模なトランザクション処理に使う巨大なコンピュータのこと。IBMはこの分野で圧倒的なシェアを持ち、メインフレームの販売と関連ソフトウェア、保守サービスが収益の大きな柱になっています。2026年1月の決算発表では、メインフレーム事業が過去20年で最高の年間収益を記録したばかりでした。

つまり市場は「AnthropicのAIがCOBOLを近代化し、企業がメインフレームから脱却する動きを加速させるのではないか」と恐れたわけです。

皮肉な話があります。IBM自身は2013年頃から、自社AI watsonxを活用したCOBOL近代化ツール watsonx Code Assistant for Zを提供していました。自らCOBOLからJavaへの変換を支援してきたのです。にもかかわらず、市場はIBMのツールよりもAnthropicのツールのほうが破壊的だと判断した。

これはイノベーションのジレンマそのものです。既存ビジネスを守りながら漸進的に改革を進める巨人と、しがらみなく破壊的イノベーションを仕掛ける挑戦者。クリステンセンが描いた構図が、2026年の株式市場でリアルタイムに再現されました。

アナリストの見解は割れています。JPモルガンは「AIがソフトウェア業界を破壊するという見方は論理の破綻であり、投資家の懸念は過大だ」と冷静な分析を示しました。ウェドブッシュ証券のダン・アイブス氏は「ウォール街でのキャリアの中で見た最も乖離した取引だ」と述べつつ、AIの進展が最終的には企業を後押しするという楽観論を維持しています。

ただ、私はこれを単なるパニック売りだとは思っていません。もっと大きな構造変化の始まりを告げる号砲だと考えています。Anthropicの野心は、COBOLという一つの言語の近代化に留まるものではないからです。

SaaS黙示録の到来か? AIがビッグテックを喰らう日

IBMの株価暴落は氷山の一角でした。2026年2月、Anthropicは計算し尽くされたかのように、立て続けに市場を揺るがす発表を行いました。一部メディアはこの事態をSaaS-pocalypse、SaaS黙示録と呼んでいます。

タイムラインを整理します。

日付 Anthropicの発表 市場への影響
1月30日 Claude Coworkプラグイン発表。顧客対応、マーケティング、法務、データ分析などを自動化する11個のプラグインを公開 SaaS業界が直撃。SalesforceやAdobe、ServiceNowなどが軒並み下落。一連の動きで2850億ドルの時価総額が消失したとの報道
2月20日 Claude Code Security発表。コードをスキャンしてセキュリティ上の脆弱性を自動で発見、修正提案するツール サイバーセキュリティ業界に波及。CrowdStrikeやZscalerなどが約9%急落
2月23日 COBOL近代化ツール発表 IBMが13%の歴史的暴落。ダウ平均も800ポイント下落

わずか1ヶ月足らずで、SaaS、サイバーセキュリティ、レガシーシステムという、ソフトウェア産業の根幹をなす3つの領域に次々と戦いを挑んだ。正直、ここまで畳みかけてくるとは思いませんでした。DeepSeekショックで市場が揺れた1月に続き、2月はAnthropicショックとでも呼ぶべき事態が進行しています。

特に衝撃的だったのは、これまで人間が担ってきた専門業務、たとえばセールスリードの調査や財務諸表の作成、コードの脆弱性診断といった仕事を、AIがエージェントとして自律的に実行できることを示した点です。従来のAIは「人間が指示を出し、AIが補助する」という関係でした。それが今や「AIが自分で考え、自分で実行する」段階に入りつつある。この違いは決定的です。

従来のSaaS、つまりSoftware-as-a-Serviceは、特定の機能を持つソフトウェアを月額課金で提供するビジネスモデルでした。しかしAIエージェントがその機能をオンデマンドで実行できるようになれば、高価なライセンス契約を結ぶ必要性が薄れていく。Salesforceの代わりに、AIに「今月の見込み客リストをまとめて」と指示する。そんな世界観が、すぐそこまで来ています。

AIはソフトウェア開発の参入障壁も劇的に下げます。何百人ものエンジニアを抱えて開発してきた複雑な機能が、少人数のチームと高性能なAIで短期間に実装可能になるかもしれない。既存のビッグテックが築き上げてきた参入障壁を一気に埋め立ててしまうほどのインパクトです。

もちろん、すぐに全てのソフトウェアがAIに置き換わるとは思いません。AIの運用コスト、品質管理、巨大な顧客基盤と信頼というビッグテックの牙城は、そう簡単には崩れない。エンタープライズの世界では、ベンダーとの長期契約やコンプライアンス要件が切り替えのハードルを高くしている現実もあります。

ただ、歴史を振り返れば、オンプレミスからクラウドへの移行も「すぐには起きない」と言われながら、気づけば不可逆な流れになっていました。今回のAIエージェントによるSaaS代替も、同じ道をたどる可能性は十分にある。AIが単なる便利なツールから、人間の知的労働を代替する自律的なエージェントへと進化し始めた今、ソフトウェア産業の競争原理そのものが根本から変わりつつある。これは間違いないと思っています。

この波をどう乗りこなすか

Anthropicの一連の発表と市場の激震は、何を物語っているのか。

AIによるディスラプション、つまり創造的破壊が、もはや遠い未来の話ではなく、今まさに現実のビジネスの世界で起きている。COBOLという60年以上も動きのなかった巨大な岩盤が動いたことは、その象徴でした。IBMという巨人の足元を揺るがし、SaaSという現代のソフトウェア産業の基盤すらも変容させようとしている。

個人的には、産業革命以来の転換点に立っていると確信しています。興味深いのは、今回の震源地がGoogleでもOpenAIでもなく、Anthropicだったということです。安全性を重視するAI企業として知られてきた同社が、結果的に市場で最も破壊的なプレイヤーになりつつある。この逆説は、AI業界の勢力図がいかに流動的かを物語っています。

ただ、破壊の先には必ず新たな創造がある。レガシーシステムという足枷から解放された企業は、より迅速に新しい価値を届けられるようになる。定型業務から解放された私たちは、より創造的で人間的な仕事に集中できるようになるはずです。

こうした激動の時代にこそ問われるのは「変化を恐れるか、変化を味方につけるか」という姿勢だと思います。

TIMEWELLのWARPコンサルティングは、まさにこの問いに向き合うためのサービスです。レガシーシステムの近代化をどう進めるか、AIエージェントをどの業務に導入すべきか。元大手企業でDX戦略を推進してきた専門家が、御社の現状を分析し、最適な移行ロードマップを一緒に設計します。

「うちのCOBOLシステム、このままでいいのか」「SaaS費用がAIで圧縮できるのでは」。そんな疑問をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。変化を味方につける一歩を、一緒に踏み出しましょう。


参考文献

  • SMA-LABO. (2025). COBOLとは何か? 時代遅れでは語れない"現役"の理由(前編)
  • Micro Focus. (2022). The World depends on 800 billion lines of Legacy-Code. Medium
  • CodeAura. (2025). What 344 Billion Lines of COBOL Code Mean for the Future of Banking Tech
  • Anthropic. (2026). How AI helps break the cost barrier to COBOL modernization. Claude.com
  • Forbes JAPAN. (2026). IBM株が13%急落、2000年以来最悪の1日
  • The Register. (2026). Anthropic touts AI for COBOL, IBM stock takes a hit
  • Forbes. (2026). SaaSpocalypse Now: Claude's 11 Plugins Triggered A $285B Wipeout
  • Bloomberg. (2026). Cyber Stocks Slide as Anthropic Unveils Claude Security Tool
  • CNBC. (2026). Dow drops 800 points as AI disruption fears and tariff woes weigh on markets

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