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設計業務の効率化をAIで実現する方法|機械設計の工数を削る実践策

公開2026-07-19濱本 隆太

設計者の工数は「探す・描き直す・答える」に消えています。図面の横断検索、スキャンPDFのDXF変換、2D図面の3D化、図面からの見積もりまで、AIで機械設計の工数を削る実践策を、人手不足と2024年問題の一次情報を踏まえて実務目線で解説します。

設計業務の効率化をAIで実現する方法|機械設計の工数を削る実践策
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

製造業のお客様を訪ねると、設計課長がこぼす言葉はだいたい同じです。「設計者なのに、設計している時間がいちばん短いんですよ」。朝から晩まで働いているのに、図面に向き合えるのは夕方以降。日中は似た図面を探し、営業からの見積もり依頼に答え、若手の質問をさばき、支給依頼のあった3Dデータを2D図面から起こし直している。設計そのものより、その周辺の雑務のほうが1日の大半を占めているわけです。

この矛盾は、設計者本人がサボっているから起きているのではありません。工数が構造的に別の作業へ吸い取られているからです。この記事では、設計者の1日から工数がどこへ消えているかをまず分解し、そのうえでAI、とりわけ図面を扱うAIでどこまで取り戻せるのかを、誇張せずに整理します。自社のどこにAIが効きそうかを先に俯瞰したい方は、AI活用度チェックで現状を棚卸ししてから読み進めると、話が具体的に落ちてきます。

設計者なのに設計する時間がいちばん短い。工数はどこへ消えているのか

ある機械部品メーカーの設計課長、田中さんの1日を追ってみます。仮のケースですが、私が現場で見てきた光景をつないだものです。

出社してまず、前日に営業から回ってきた見積もり依頼の図面を開きます。似た部品を過去に作った覚えがあるのに、そのデータがどこにあるか思い出せない。共有サーバーのフォルダをたどり、途中で「これは別案件だった」と気づき、キャビネットの紙図面まで見に行く。30分探して見つからず、結局ゼロから寸法を拾い直す。ここまでで午前が半分終わります。

午後は取引先から「STEPデータで支給してほしい」という連絡。手元にあるのは2D図面だけなので、三面図を見ながら3D CADでモデリングし直します。角柱に穴とフィレットが数か所ある、決して複雑ではない部品です。それでも整合を取りながら起こすと、この1個だけで半日が飛びます。

夕方、ようやく本来の設計に取りかかろうとした矢先、若手から「この公差、どう決めればいいですか」と質問が飛んでくる。加工の癖や過去のトラブルを知っているのは田中さんしかいないので、手を止めて説明する。気づけば定時。設計は今日もできませんでした。

田中さんの1日から見えるのは、工数が主に四つの作業へ消えているという事実です。ひとつは資料と図面を探す時間。ふたつめは、紙やスキャンPDFしか残っていない図面を描き直す時間。三つめは、見積もりや原価の回答を待たせ、あるいは自分で抱え込む時間。四つめは、若手からの質問やDR資料づくりといった細切れの割り込みです。探して、描き直して、答えるだけで1日が終わる。これが多くの設計現場のBeforeです。

なぜ今、設計効率化は「待ったなし」なのか

「昔からそうだった」で済ませられないのは、設計者を増やす選択肢がほぼ消えているからです。人を採れないなら、一人あたりの生産性を上げるしか道がありません。ここは感覚論ではなく、公的な統計が同じ方向を指しています。

経済産業省・厚生労働省・文部科学省がまとめる『ものづくり白書』は、製造業就業者数の長期的な減少と、技能の承継が製造業の構造課題だと繰り返し指摘してきました。2000年代初頭に1,200万人規模だった製造業就業者は、近年およそ1,000万人前後まで減っています1。若年層の比率も下がる傾向にあり、現場の平均年齢は上がり続けています。ベテランが持っている見積もりの相場観や公差の決め方が、退職とともに失われる。これは人事の話ではなく、事業が回るかどうかの話です。

そこへ、いわゆる「2024年問題」が重なります。働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が2024年4月から建設業や自動車運転、医師などで本格適用され、社会全体で残業を前提にした働き方の見直しが進みました2。製造業も例外ではありません。受注と図面枚数は増えるのに残業は増やせない。人も増やせない。この二重の締め付けのなかで、設計や見積もりの工数をどう削るかが、そのまま経営課題になっています。

DXで乗り切ろうにも、それを担う人材が足りないという声も根強くあります。IPA(情報処理推進機構)の調査でも、DXを進めるためのデジタル人材が量的に不足していると感じる企業が多数にのぼると報告されています3。帝国データバンクの人手不足調査でも、正社員が不足していると感じる企業は例年およそ半数規模で推移し、製造業や建設業で特に目立ちます4。人が足りない、育てる時間もない、それでも生産性は上げねばならない。設計効率化が「あとでやる改善」から「今やる経営判断」に変わったのは、この構造のためだと私は考えています。

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効率化の王道施策と、そこで必ずぶつかる壁

AIの話に入る前に、設計効率化の王道を先に押さえておきます。ここを飛ばしてツールだけ入れても効果は出ません。定番の施策は、おおむね次のように整理できます。

王道施策 中身 効いてくる場面
設計標準化 部品や記法、公差の基準をルール化する 人によって図面の書き方がばらつくとき
部品と図面の流用 過去に作ったものを再利用し、ゼロから描かない 類似案件が多いとき
3D CAD化 2D運用から3Dに移行し、干渉チェックや後工程連携を楽にする 取引先が3Dデータを求めるとき
設計審査(DR)の型化 チェック項目を決め、レビューを仕組みにする 手戻りや見落としが多いとき
チェックリスト整備 属人的な確認を明文化する 品質のばらつきを抑えたいとき

どれも正論です。私も導入は賛成です。ただ、現場で必ずぶつかる壁があります。

流用しようにも、流用元の図面が検索できないのです。田中さんが午前を溶かしたのは、まさにこれでした。標準化や流用は「過去の資産をすぐ取り出せる」ことが大前提なのに、その肝心の資産が探せない状態のまま「流用を徹底しよう」と号令をかけても、現場は動きようがありません。もうひとつの壁は、流用したい図面が紙やスキャンPDFのまま眠っていること。CADで開けないのですから、結局は描き直しです。

つまり王道施策は、それ単体では回りません。「探せる」「使える形になっている」という土台があってはじめて機能します。この土台づくりこそ、いまのAIが最も得意とする領域です。

AIで設計工数を削る。効きどころは四つ

生成AIの一般論、たとえば議事録の要約やメール文の下書きも便利ですが、設計の工数を大きく動かすのはもっと製造業に固有の使い方です。私が現場で効果を実感しているのは、次の四つに集約されます。

ひとつめは、類似図面と技術文書の横断検索です。「あの穴あき角柱、前にやったよな」を、フォルダをたどらずに自然言語で「似た図面を探して」と聞けば候補が出てくる。散らばった図面や仕様書、過去の見積もり、問い合わせ履歴までまたいで探せると、設計者の最大の時間ロスである資料探しがまるごと縮みます。当社の製造業の導入事例では、技術部門の情報検索が1日平均1時間15分、年間にすると一人あたり約300時間に達していました。ここにGraphRAG(知識をグラフ構造でつなぎ、関連情報をたどって検索する仕組み)を使った横断検索を入れたところ、検索時間を約80%削減できました。75分が15分になった計算です5

ふたつめは、スキャン図面のPDFをDXF(CADソフト間で図面をやり取りするための事実上の標準形式)に変換する処理です。スキャンPDFは中身が画素の集まり、つまり画像なので、線や円弧、寸法といった意味情報を持っていません。だからCADで開いても編集できず、描き直すしかなかったわけです。ここをAIが図形要素として認識し、DXFに起こす。1枚2時間かかっていた再作図が、数十分に変わります。詳しい手順や外注との使い分けは、図面PDFをDXFに変換する方法のガイドにまとめています。

三つめは、2D図面から3Dモデル(STEP)の生成です。STEPはISO 10303として定められた3D CADデータ交換の国際規格で、CADの種類を問わずやり取りできます。取引先からの3Dデータ支給要求に対応する標準フォーマットです。三面図の整合が取れた図面から立体形状を推定し、角柱や円筒、穴、フィレットといった機械部品らしい形状ならかなりの精度でたたき台を出せます。田中さんが半日つぶしたモデリングが、確認込みで大幅に短くなります。

四つめは、図面からの見積もりと原価計算です。材質や寸法、公差、加工内容を読み取って見積もりの下地をつくる。自社の過去見積もりと単価表を学習させるほど、自社の相場観に近づいていきます。営業が設計に聞きに行かずに当日中に回答できれば、案件が他社へ流れる前に一次回答を返せます。原価計算も、自社の原価テーブルを登録して材料費と加工費の積み上げを補助させれば、「この値段で利益が出るのか」という不安を、勘ではなく数字で確かめられるようになります。

この四つに共通する現実解は、AIが8割から9割のたたき台をつくり、最後は人が確認するという運用です。全自動を狙うと、精度の詰めに時間を取られてかえって遅くなります。たたき台を人が仕上げる形にすると、いちばん時間のかかっていた「ゼロから起こす」部分だけがきれいに消えます。

機械設計AIの実力と限界を、正直に整理する

期待をあおる記事は多いのですが、私はここを誇張したくありません。導入を検討する立場からすると、どこが苦手かを先に知っておいたほうが、結局は早く効果が出るからです。

図面変換にしても3D生成にしても、精度を左右するのは主に四つの要因です。スキャンの品質、線のかすれや手書きの修正跡、図面の密度、そして社内独自の記法です。きれいにベクターデータを内包したPDFと、何度もコピーを重ねてかすれた紙のスキャンとでは、出てくる結果がまるで違います。自由曲面が多い意匠部品より、角柱や円筒に穴とフィレットという機械部品のほうが、AIとの相性は明らかに良い。ここは事実として受け止めておくべきです。

だからこそ、導入前に自社の実図面で試すことが欠かせません。カタログのデモ図面できれいに変換できても、それはあなたの会社の図面ではありません。私がお客様にいつもお願いしているのは、いちばん状態の悪い図面を1枚持ってきて試してみることです。そこで及第点なら、日常の図面はまず問題なく回ります。逆にきれいな図面でしか通らないツールは、現場では使いものになりません。

生成AIの一般論と決定的に違うのは、ここが製造業の実務に接続しているかどうかです。文章の要約は誰の環境でも同じように動きますが、図面AIの価値は「あなたの図面」「あなたの単価表」「あなたの記法」にどれだけ寄り添えるかで決まります。過度な期待も、逆に「どうせ使えない」という過小評価も、どちらも判断を誤らせます。自社図面で測って決める。これに尽きます。

技能継承と脱属人化こそ、効率化の本丸

ここまで工数削減の話をしてきましたが、私が本当に大事だと思っているのはその先です。設計効率化の本丸は、技能継承と脱属人化にあります。

見積もりの相場観、公差の決め方、加工の癖、社内でしか通じない記法。これらはベテランの頭の中にある暗黙知で、聞ける人が限られています。田中さんが夕方まで設計に入れなかったのは、若手の質問に答えられるのが自分だけだったからでした。属人化は、日々の割り込みという形で現在の工数を奪い、退職や世代交代という形で将来の事業継続を脅かします。効率化と技能継承は別々の課題ではなく、同じ問題の表と裏です。

AIによる横断検索とナレッジ化は、ここに効きます。ベテランの見積もり感覚や単価表、過去のトラブル対応、公差の判断根拠をナレッジとして蓄積しておけば、若手が自分で調べて一定水準の判断にたどり着けるようになります。ベテランは同じ質問に何度も答えずに済み、より高度な判断に集中できる。前述の導入事例でも、検索時間の80%削減という数字の裏側で起きていたのは、若手が自力で過去案件を引けるようになり、質問による割り込みが減ったという変化でした。

これは単なる時短ではありません。ベテランが辞めた瞬間に会社の見積もり力が落ちる、というリスクを事業継続リスクから外すための投資です。効率化を「残業削減」の枠だけで語ると小さく見えますが、「会社の技術をどう次世代に残すか」と捉え直すと、経営として手をつける優先順位が変わってくるはずです。技能継承の具体的な進め方は、製造業の技能伝承をAIで進める記事でも掘り下げています。

図面AI・設計AIツールをどう選ぶか

最後に、ツールをどう選ぶかです。ここは競合他社の名前を挙げる場ではないので、判断基準だけをお伝えします。私がお客様に勧めているチェックポイントは五つです。

第一に、自社の実図面で試せるかどうか。無料トライアルや実図面デモを断るツールは、その時点で候補から外して構いません。第二に、DXF変換から3D化、見積もり、原価計算までを一つのプラットフォームで完結できるか。機能ごとにツールが分かれると、二重管理と連携コストで効率化の効果が相殺されます。第三に、入力した図面が学習に使われないか、保管場所は国内かという、データの扱いです。図面は技術情報そのものですから、ここは契約書で確認すべき点です。第四に、単発の変換で終わらず、ナレッジとして蓄積し横断検索できるか。第五に、図面変換だけでなく、検索や見積もりといった図面まわりの業務全体をカバーするかどうか。

こうした基準で選んでいくと、TIMEWELLのZEROCKは素直に候補に入ってくると思います。手前味噌になりますが、ZEROCKは製造業の設計と営業に向けたAIエージェントとして、スキャン図面のDXF化、2D図面の3D(STEP)化、図面からの見積もり作成、原価計算、そして図面と技術文書の横断検索を、単一のプラットフォームで提供しています。データは国内のAWSサーバーで暗号化して保管し、入力した図面がAI事業者の再学習に使われることはありません。部署や役職ごとの閲覧権限とISMS準拠の運用も備えています。7日間の無料トライアルと実図面でのデモを用意しているので、精度は必ず自社図面で確かめてから判断してください。全体像を俯瞰したい方は、製造業DXとAI活用の完全ガイドから各テーマの詳細記事へたどれます。

まとめ

設計者の工数は、探す、描き直す、答える、という三つにほとんど消えています。人を増やせない前提が固まった今、一人あたりの生産性を上げるしか選択肢はありません。そこにAIが効くのは、資料と図面の横断検索、スキャン図面のDXF化、2D図面の3D化、図面からの見積もりと原価計算という、製造業に固有の実務においてです。現実的な運用は、AIが8割から9割をつくり、人が最終確認する形。精度は図面の状態で決まるので、導入判断は必ず自社図面で行うこと。そして効率化の本丸は、ベテランの暗黙知をナレッジに残す技能継承にあります。

まず1枚、いちばん状態の悪い手元の図面で試してみてください。そこで手応えがあれば、田中さんの夕方から始まっていた設計が、午前中に戻ってきます。何から手をつけるか迷うなら、個別相談で自社の図面と業務フローを見せていただければ、効きそうな順番を一緒に整理します。設計に向き合う時間を取り戻すことが、そのまま会社の技術力を守ることにつながる。私はそう考えています。


Footnotes

  1. 経済産業省・厚生労働省・文部科学省『ものづくり白書』。製造業就業者数の長期的減少と技能承継を構造課題として継続的に指摘。就業者数の具体的な数値は各年版の白書本編(経済産業省サイト内の白書ページ)で最新値を確認してください。

  2. 厚生労働省「働き方改革関連法」による時間外労働の上限規制。建設業・自動車運転業務・医師等は2024年4月から本格適用(いわゆる2024年問題)。

  3. 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書」および「DX動向」調査。DXを推進するデジタル人材の量的不足を課題として報告。最新の割合はIPA公表資料で確認してください。

  4. 株式会社帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」。正社員が不足していると感じる企業の割合は調査時期により変動します。最新値は同社の公表資料を参照してください。

  5. 株式会社TIMEWELLの製造業導入事例(自社調べ)。技術部門の情報検索時間およびZEROCK導入後の削減率は、当該企業での実測値であり、成果は図面の状態や運用体制により異なります。

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