コミュニティのエンゲージメントを高める15の施策|KPI設定から実践まで
株式会社TIMEWELLの濱本です。
コミュニティを運営していると、ある日ふと気づくことがあります。「最近、投稿しているのは運営メンバーだけだな」と。メンバー数は増えているのに、実際に発言する人は一握り。大半がROM(読むだけ)の状態で、コミュニティというより一方通行のメディアに近くなっている。
これは珍しい話ではありません。オンラインコミュニティにおけるアクティブ率(月1回以上投稿する人の割合)は、平均で10〜20%と言われています。つまり、8割のメンバーは「見ているだけ」です。
ただ、これを「仕方ない」で片付けてしまうと、コミュニティは徐々に活力を失っていきます。この記事では、エンゲージメントを高める具体的な施策15個と、効果を測定するためのKPI設定ガイド、実際に成果を出した3つの事例を紹介します。
そもそもエンゲージメントとは何か
「エンゲージメント」という言葉は便利ですが曖昧でもあります。コミュニティ運営におけるエンゲージメントとは、メンバーがコミュニティに対して能動的に関わっている度合いのことです。
もう少し分解すると、以下の3つのレベルに分けられます。
| レベル | 行動の例 | 全体に占める割合の目安 |
|---|---|---|
| 閲覧のみ | ログインして投稿を読む、イベント告知を見る | 60〜70% |
| リアクション | いいね、スタンプ、コメント、アンケート回答 | 20〜30% |
| 能動的な貢献 | 投稿の作成、質問への回答、イベント登壇、他メンバーの紹介 | 5〜10% |
全員を「能動的な貢献」レベルに引き上げるのは現実的ではありません。目指すべきは「閲覧のみ」から「リアクション」への移行を促すこと。この層を厚くすることで、コミュニティ全体の活気が変わります。
KPI設定ガイド:何を測ればいいのか
施策を打つ前に、まず現状を把握するための指標を設定します。「なんとなく盛り上がっている」では改善のしようがありません。
コミュニティ運営で追うべきKPI
| KPI | 計算方法 | 健全な目安 | 測定頻度 |
|---|---|---|---|
| MAU(月間アクティブ率) | 月1回以上ログインした人 ÷ 全メンバー | 40%以上 | 月次 |
| 投稿アクティブ率 | 月1回以上投稿した人 ÷ 全メンバー | 15%以上 | 月次 |
| リアクション率 | リアクションがついた投稿数 ÷ 全投稿数 | 70%以上 | 週次 |
| 7日以内アクション率 | 新規参加7日以内に何かアクションした人の割合 | 50%以上 | 月次 |
| イベント参加率 | イベント参加者 ÷ イベント申込者 | 60%以上 | イベント毎 |
| NPS(推奨度) | 「このコミュニティを人に勧めたいか」の10段階評価 | +30以上 | 四半期 |
| 離脱率 | 当月退会者 ÷ 前月末メンバー数 | 5%以下 | 月次 |
特に重要なのは「7日以内アクション率」です。新規メンバーが最初の1週間で何もアクションしなかった場合、その後アクティブになる確率は極めて低い。オンボーディングの成否がコミュニティの命運を分けます。
KPIの組み合わせで状態を診断する
単一のKPIだけでは状況を正しく把握できません。組み合わせで見ることが重要です。
| 状態 | MAU | 投稿アクティブ率 | 離脱率 | 診断 |
|---|---|---|---|---|
| 健全 | 高い | 高い | 低い | 理想的な状態。現状維持しつつ規模拡大 |
| ROM化 | 高い | 低い | 低い | 見てはいるが参加していない。投稿のハードルを下げる施策が必要 |
| 流出 | 低い | 低い | 高い | コンテンツの魅力不足。根本的な見直しが必要 |
| 濃い少数 | 低い | 高い | 低い | コアメンバーは活発だが新規が定着しない。オンボーディング改善 |
エンゲージメント向上施策15選
施策を「すぐできるもの」から「仕組みとして整えるもの」まで、難易度別にまとめました。
| No. | 施策 | 難易度 | 効果の大きさ | カテゴリ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ウェルカムメッセージの自動化 | 低 | 大 | オンボーディング |
| 2 | 自己紹介テンプレートの用意 | 低 | 中 | オンボーディング |
| 3 | 週1回の「お題」投稿 | 低 | 中 | 定期コンテンツ |
| 4 | リアクションスタンプの活用促進 | 低 | 中 | 参加ハードル低下 |
| 5 | メンバー紹介コーナー | 低 | 中 | 承認欲求 |
| 6 | アンケート / 投票の定期実施 | 低 | 中 | 参加ハードル低下 |
| 7 | 月1回のオンラインイベント | 中 | 大 | イベント |
| 8 | メンバー同士のマッチング | 中 | 大 | 関係構築 |
| 9 | 分科会(サブグループ)の設置 | 中 | 大 | 居場所づくり |
| 10 | メンバーの投稿をピックアップして紹介 | 低 | 中 | 承認欲求 |
| 11 | チャレンジ企画(7日間○○チャレンジ等) | 中 | 大 | ゲーミフィケーション |
| 12 | バッジ / ランク制度の導入 | 高 | 中 | ゲーミフィケーション |
| 13 | メンバーによるコンテンツ投稿制度 | 中 | 大 | 共創 |
| 14 | オフラインミートアップ | 高 | 大 | 関係構築 |
| 15 | コミュニティアンバサダー制度 | 高 | 大 | 共創 |
以下、特に効果の大きい施策について補足します。
施策1:ウェルカムメッセージの自動化
新規メンバーが参加した直後に送るメッセージです。「ようこそ」だけでなく、以下の要素を含めてください。
- コミュニティの簡単な紹介(何のための場所か)
- 最初にやってほしいこと(自己紹介の投稿)
- 困ったときの連絡先(運営のメンションやDM先)
- 直近のイベント情報
これだけで7日以内のアクション率が大きく変わります。手動で送るのが大変なら、プラットフォームの自動化機能を使いましょう。
施策7:月1回のオンラインイベント
テキストベースのやり取りだけでは、メンバー同士の関係は深まりにくいです。月1回でも「顔が見える」イベントを開催すると、その後のテキストコミュニケーションの質が変わります。
イベントの形式例:
- 勉強会(外部ゲストを招いたセミナー形式)
- ライトニングトーク(メンバーが5分ずつ発表)
- 雑談会(テーマを決めたフリートーク)
- AMA(Ask Me Anything:特定の人に何でも質問)
形式にこだわりすぎず、まずは「集まる機会を作る」ことが大事です。
施策9:分科会(サブグループ)の設置
メンバーが50人を超えたあたりから「大きすぎて発言しにくい」という声が出てきます。全体の場に加えて、興味関心別のサブグループを作ると、居場所感が生まれます。
例えば、マーケティングコミュニティなら「SNS運用」「コンテンツマーケ」「広告運用」「データ分析」といったサブグループ。10〜20人の小さなグループのほうが、メンバーは発言しやすいです。
施策13:メンバーによるコンテンツ投稿制度
運営だけがコンテンツを作る体制は、早晩限界が来ます。メンバーが自分の経験や知見を共有できる仕組みを作ると、コンテンツの多様性が増し、投稿者本人のコミュニティへの愛着も深まります。
ただし「自由に投稿してください」だけでは動きません。テーマのガイドラインやテンプレートを用意し、投稿へのフィードバックを手厚くすることが重要です。
成功パターン3事例
事例1:BtoBのSaaSユーザーコミュニティ(メンバー300名)
課題:導入企業向けのコミュニティを作ったが、質問掲示板として使われるだけで交流がなかった。
実施した施策:
- 月1回のユーザー事例発表会を開始
- 「活用TIPS」を投稿した人にバッジを付与
- 業種別のサブグループを5つ設置
結果:投稿アクティブ率が8%から22%に向上。ユーザー事例発表会の参加者からの製品改善提案が月10件以上集まるようになった。
事例2:クリエイター向けコミュニティ(メンバー150名)
課題:作品を見せ合う場として立ち上げたが、上手い人ばかりが投稿し、初心者が萎縮していた。
実施した施策:
- 「今日のスケッチ」チャレンジ(上手さを問わず毎日投稿を促す)
- 初心者歓迎のサブグループを設置
- 月1回の「制作過程共有会」(完成品ではなく途中経過を見せ合う)
結果:投稿者の裾野が広がり、月間投稿数が3倍に。初心者から「ここは安心して投稿できる」という声が増えた。
事例3:地域コミュニティ(メンバー80名)
課題:オフラインイベントに来る人は楽しんでくれるが、オンラインでの交流がほぼゼロだった。
実施した施策:
- イベント前後にオンラインで「予習 / 復習」の場を設置
- 日常的な「おすすめスポット共有」の投稿チャネルを追加
- メンバー同士の1on1マッチングを月2回実施
結果:オンラインのMAUが25%から55%に向上。オフラインイベントの申込率も上がり、「オンラインで知っている人がいるから行きやすい」というフィードバックがあった。
やってはいけないこと
効果的な施策の一方で、逆効果になるアクションもあります。
投稿の強制 「月1回は必ず投稿してください」のようなルールは、義務感を生み、かえってコミュニティから距離を置かれます。あくまで「投稿したくなる仕掛け」を作るのが正解です。
数字の追いすぎ KPIは大事ですが、数字だけを追うと「エンゲージメント数を増やすために薄い投稿を量産する」という本末転倒な状態になります。量より質を意識してください。
運営の存在感が強すぎる 全ての投稿に運営が即レスする状態は、一見良さそうに見えますが、メンバー同士の対話を阻害します。あえて返信しない余白を作ることも大切です。
まとめ
エンゲージメントの改善は一朝一夕にはいきません。ただ、正しい指標を持ち、地道に施策を積み重ねれば、確実に変化は起きます。
- KPIは「MAU」「投稿アクティブ率」「7日以内アクション率」を最優先で追う
- 施策は「参加ハードルを下げるもの」から始める
- 全員をアクティブにするのではなく「閲覧→リアクション」の移行を目指す
- 50人を超えたらサブグループの設置を検討する
- 運営が前に出すぎない。メンバーが主役の場を作る
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