こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。
半年前にこの記事を書いたときのPerplexityは、「引用付きで答えてくれるAI検索」でした。それが2026年7月には、AIが自分でWebを操作するブラウザ「Comet」を持ち、日本の新聞社から著作権侵害で提訴される会社になっています。同じ名前のまま、中身がここまで変わったサービスも珍しいです。
だからこの記事も、機能を並べるだけのカタログから、「導入するかどうかを自分で判断できる」実務ガイドに作り直しました。自社のAI活用がいまどの段階にあるかを先に把握したい方は、AIリテラシー診断を10分ほど回してから読むと、この後の話が自分ごととして刺さると思います。
2026年、Perplexityは「検索の会社」をやめた
まず、公式に確認できる範囲から押さえます。この半年でPerplexityが手にしたのは、AIが自分でWebを操作するブラウザ「Comet」と、広がり続ける開発者向けAPIです。公式チェンジログを見ると、選べるモデルの入れ替えから新しい検索モードや業務向けツールの追加まで、更新が途切れていません1。検索窓ひとつだった会社が、ブラウザとAPI基盤の両方を持つ会社に組み替わった、というのがこの半年の実態です。
一方で、評価額や調達額、GPU確保の契約額といった数字は報道ベースで大きく振れます。同社や投資家の公式発表で基準日つきに確認できないものは、この記事では書きません。
それでも、「検索の入り口そのものを取りにいく」という意思ははっきり出ています。ブラウザを自前で持つというのは、検索結果ページの外側まで押さえにいく手です。
収益モデルの置き方は、AI検索を出す各社に共通の宿題です。回答の信頼性で勝負するプロダクトが、その回答の周りに広告を並べるのは綱渡りになりかねません。ツールを選ぶ側も、この点は一度考えておいて損はないところです。半年での変化を一枚にまとめると、こうなります。
| 項目 | 初版時(2026年1月) | 現在(2026年7月) |
|---|---|---|
| 会社の立ち位置 | 引用付きAI検索 | ブラウザ+企業向けAPI基盤 |
| ブラウザ | 言及なし | Comet(エージェント型AIブラウザ) |
| 選べるモデル | GPT-5.2・Claude 4.5 Sonnet世代 | GPT-5.6系・Claude Sonnet 5など総入れ替え |
| API課金 | トークン単価が中心 | トークン単価+リクエスト検索料の二階建て |
| 日本での法的論点 | 記載なし | 日経・朝日が2025年8月に共同提訴 |
Comet、AIが自分で操作するブラウザ
半年前の記事に一番欠けていたのが、このCometです。姉妹記事のPerplexity Cometの詳報も用意していますが、ここでも要点は押さえておきます。
CometはPerplexityが出したAIブラウザです。各OSへの提供時期については、同社の公式発表を直接確認できなかったので、ここでは日付を書きません。この記事で押さえておきたいのは日付よりも、その上に載っているAIアシスタントの動き方のほうです。
このアシスタントは、ユーザーの指示を受けてブラウザ上で動き、Gmailやカレンダーといった利用者がつないだサービスにもアクセスできます2。いわゆるエージェント型のブラウジングです。「このページの要点を3行で」だけでなく、「この記事を読んで、要点を添えて上司にメールしておいて」といった連続動作を、人間がクリックする代わりにAIがこなしてくれる。検索窓に質問を打ち込む体験から、AIに仕事を任せる体験へと、入り口の性質そのものが変わりつつあります。
ただ、便利さの裏側は正直に書いておきます。2025年10月、セキュリティ研究者からCometの「CometJacking」と呼ばれる情報漏えいの手口が指摘されました。悪意ある細工で、利用者の機密データを外部サーバーへ持ち出せる可能性があるという内容です。研究チームは2025年8月27日に責任ある開示の手順で開発元へ通報しましたが、Perplexity側は「セキュリティ上の影響を特定できない」として対象外(Not Applicable)と判断した、と研究チームは記録しています2。AIがブラウザ上で自律的に操作するということは、そのAIが騙されたときの被害範囲も広がるということです。業務端末に入れる前に、社内でどこまで権限を与えるかは必ず線引きしておきたいところです。
SonarとDeep Research、料金と実力を最新の数字で
エンジンの話に移ります。Perplexityの検索特化モデルが「Sonar」系です。初版では「Llama 3.3 70Bベース」と断定していましたが、これは2025年1月のSonar発表時点の情報で、現在の基盤モデルについてPerplexityは公式に細かく開示していません。ここでは「Metaのオープンモデルをベースにチューニングして始まったモデル群」という程度にとどめておきます。断定して外すより、確認できる範囲で正確に書くほうが、この製品を売る会社としても筋が通ると考えています。
よく引用される「Sonar ProがSimpleQAでF-score 0.858」という数字も、出所は2025年1月の発表です。当時の比較対象は2024年世代のモデルでした。事実性ベンチマークとしては優秀な結果でしたが、2026年7月のいま「最新の業界最高スコア」として持ち出すのは正直ミスリードになります。ベンチマークの世界はこの1年半で何度も塗り替わりました。数字を使うなら発表時期とセットで、というのが誠実な扱い方だと思います。
Perplexityが選べるAIモデルの顔ぶれも、初版から総入れ替えになりました。2026年7月時点の公式チェンジログでは、次のモデルが利用可能です1。
| 提供元 | チェンジログ記載のモデルID(2026年7月時点) |
|---|---|
| OpenAI | openai/gpt-5.6-sol、openai/gpt-5.6-terra、openai/gpt-5.6-luna |
| Anthropic | anthropic/claude-opus-5 |
google/gemini-3.6-flash、google/gemini-3.5-flash-lite |
|
| xAI | xai/grok-4.5 |
| Moonshot | perplexity/kimi-k3 |
半年前に書いた「GPT-5.2、Claude 4.5 Sonnet、Gemini 3 Pro」という並びは、もう1つも残っていません。旧モデルの整理も進み、非Proのsonar-reasoningは2025年12月15日に、初期のR1-1776は2025年8月1日にAPIから外れています1。なお上表はチェンジログに記載を確認できたものだけを並べています。同ページは完全な一覧をモデルリファレンス側に案内しているので、実際に使えるモデルの全体は公式のリファレンスでご確認ください1。この入れ替わりの速さこそ、AIツールを固定の前提で語れない理由です。個々のモデルの違いを深掘りしたい方は、GPT系の解説やGeminiの解説も合わせて読むと立体的に見えてきます。
開発者向けAPIの料金は、公式ドキュメントで一次確認できます。100万トークンあたりの単価は次の通りです3。
| モデル | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| Sonar | $1 | $1 |
| Sonar Pro | $3 | $15 |
| Sonar Reasoning Pro | $2 | $8 |
| Sonar Deep Research | $2 | $8 |
このトークン料金に加えて、Sonar・Sonar Pro・Sonar Reasoning Proにはリクエスト検索料が別途かかります。コンテキスト量に応じてLow・Medium・Highの3段階で、1,000リクエストあたりSonarが5〜12ドル、Sonar ProとSonar Reasoning Proが6〜14ドルです3。ここを見落とすと、トークン単価だけで見積もったコストが実際とずれます。
Deep Researchはもう一段複雑で、入力2ドル・出力8ドルのトークン料金に、citationトークン2ドル、reasoningトークン3ドル(いずれも100万トークンあたり)、さらに検索が1,000クエリあたり5ドルという構成です3。初版に書いた「典型クエリ約0.41ドル」は現行の料金体系では成り立ちません。
実額の感覚をつかむために、モデルケースで試算してみます(以下のトークン消費量は仮の前提です)。1回のDeep Researchで、入力5万トークン、推論20万トークン、出力1万トークン、引用3万トークン、検索30回を消費したとすると、入力0.10ドル、推論0.60ドル、出力0.08ドル、引用0.06ドル、検索0.15ドルで、合計およそ0.99ドルになります。数百のソースを横断して構造化レポートを1本つくって約1ドルなら、人手で数時間かける調査の代替としては十分に安いと感じます。とはいえ消費量は調査の重さで大きく振れるので、必ず自社の実クエリで測ってから予算を組んでください。
Perplexityに「引用される」ための最適化(GEO/AEO)
ここが2026年で一番検索需要が伸びている論点なのに、半年前の記事には一言もありませんでした。従来のSEOは「検索結果の上位に自社ページを出す」戦いでした。GEO(生成エンジン最適化、Generative Engine Optimization)やAEO(回答エンジン最適化)は、「AIの回答文そのものに自社が引用される」ことを狙います。Perplexityは回答に引用元を必ず表示する設計なので、この土俵での立ち回りが売上にも効いてきます。
私が実務で優先しているのは、次の4点です。ひとつ目は、結論を先に書くこと。AIは冒頭の明快な一文を切り出して引用しがちなので、ページの頭で問いに答えてしまうのが効きます。ふたつ目は、数字と日付と出典を本文に埋め込むこと。「多くの企業が導入」ではなく「2026年時点で20組織以上が導入」と書けば、AIはそのまま引用できます。三つ目は、クローラのアクセス可否を整えること。ただしここは慎重さも要ります。2025年8月にはCloudflareが、Perplexityが宣言していないクローラでrobots.txtの拒否指定を回避していると指摘し、検証済みボットの登録も取り消したと公表しました4。許可設定とアクセス実態が食い違う可能性がある以上、自社のアクセスログで実際にどう読まれているかを見ておくべきです。四つ目は、FAQや定義、明確な見出しといった構造をつけること。AIが答えとして切り出しやすい形にしておくほど、引用の確率は上がります。
要するに、GEOはSEOの延長というより、「AIが要約しやすい素材づくり」です。Perplexityだけでなく、ChatGPT SearchやGoogleのAI Mode、Gemini、Grokといった各サービスの回答面が広がるほど、この考え方の重みは増します。Googleの回答型検索がどう変わったかはGoogle AI Modeの解説にまとめてあるので、横に並べて読むと「回答に載る」ための共通項が見えてきます。自社サイトをどう作り替えれば回答に引用されるのか、その設計から一緒に考えたい場合は、WARPのAI活用コンサルティングが具体的な支援先になります。
日本のBtoBで使う前に押さえる論点
最後に、日本企業が業務で使うときの現実的な論点をまとめます。
避けて通れないのが著作権です。2025年8月26日、日本経済新聞社と朝日新聞社が共同で、Perplexityを相手取り東京地方裁判所に提訴しました。両社の発表によると、robots.txtで利用を禁じていたにもかかわらず記事が複製・蓄積され、日経の有料会員向け記事にも及んだこと、さらに自社名や記事を出典として示しながら記事と異なる内容が表示されたことを問題としています。著作権法上の複製権・翻案権・公衆送信権の侵害と、不正競争防止法違反を理由に、差止めと各社22億円(一部請求)の損害賠償を求めています5。係争中の事案なので、ここで良し悪しを断じることはしません。ただ、提訴されているという事実がある以上、Perplexityの回答をそのまま資料に転載する運用は避け、引用コンテンツの再利用範囲は社内ポリシーで線引きしておくのが安全です。回答に付く引用元は必ず開いて、一次情報で裏を取る。これは自社の製品でも同じくらい口を酸っぱくして言っている原則です。
法人導入なら、Enterprise版の設計も判断材料になります。入力データを学習に使わない非学習オプション、SSO、管理コンソール、利用状況の分析といった、情報管理部門が最初に確認する要素は用意されています。ここは「便利だから現場が勝手に無料版を使う」状態を放置しないためにも、会社として契約形態を決めておきたいところです。
調査業務での使い勝手も、この1年で大きく伸びました。SEC提出書類に絞り込むフィルタ(2025年7月)、学術文献に寄せたacademic検索モード(2025年半ば)、株価や財務、決算、アナリスト予想などを扱うfinance_searchツール(2026年5月)が加わっています1。市場調査や規制リサーチの一次あたりが速くなる方向の機能です。私たちの輸出管理AIエージェントTRAFEEDも、各国法規や取引先の情報を一次ソースで押さえることを前提に設計しているので、こうした調査系ツールの進化とは相性がよいと感じています。もっとも、汎用の検索ツールと、責任ある該非判定を担う専用エージェントは役割が違います。最終的な判定は自社の輸出管理責任者が行うという原則は動きません。
企業のナレッジをAIで活かす発想そのものを整理したい方は、RAGと企業AIの解説やAGI時代の展望も参考になります。ツール選びの前に、「自社の情報をどこまでAIに読ませるか」の線引きから決めるのが、遠回りに見えて一番早いです。
まとめ
半年でここまで動いたサービスを、固定の理解のまま使い続けるのは危険です。2026年7月時点で押さえておきたい要点を並べます。
- Perplexityは検索アプリから、AIブラウザCometと企業向けAPI基盤へ広がった(評価額・調達額は公式に確認できないため本稿では扱わない)
- Cometのようなエージェント型ブラウザは、CometJackingのような自律操作ならではのリスクもあるため権限設計は慎重に
- 選べるAIモデルは総入れ替えされ、GPT-5.6系やClaude、Gemini、Grokなど最新世代が並ぶ
- APIはトークン単価に加えてリクエスト検索料がかかり、Deep Researchは実クエリで実額を測ってから予算を組む
- これからは「上位表示」より「AIの回答に引用される」GEOの設計が効く
- 日本では日経・朝日の共同提訴が進行中で、引用の再利用範囲と一次情報での裏取りを社内ルールにする
「検索する」から「AIに任せる」へと入り口が移るなかで、勝ち負けを分けるのはツールの選定そのものより、自社の情報とAIをどうつなぐかの設計だと考えています。ここで手を打った会社と、無料版を各自が勝手に使うだけの会社とでは、1年後の差が大きく開くはずです。自社に合ったAI活用の道筋を具体的に描きたい方は、WARPへのご相談から気軽に話をぶつけてみてください。まずは現状把握から、で構いません。
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参考文献
Footnotes
-
Perplexity API 公式チェンジログ(選択可能モデル・新機能・廃止モデルの発表日)https://docs.perplexity.ai/changelog/changelog ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
LayerX Security「Is Perplexity Comet Safe? LayerX Finds a Prompt Injection Attack Vector(CometJacking)」(2025年10月4日/Cometのアシスタントが指示を受けて動き接続済みサービスにアクセスすること、および責任ある開示の経緯)https://layerxsecurity.com/blog/cometjacking-how-one-click-can-turn-perplexitys-comet-ai-browser-against-you/ ↩ ↩2
-
Perplexity API 公式料金ドキュメント(Sonar系のトークン単価・リクエスト検索料・Deep Researchの追加課金)https://docs.perplexity.ai/getting-started/pricing ↩ ↩2 ↩3
-
Cloudflare「Perplexity is using stealth, undeclared crawlers to evade website no-crawl directives」(2025年8月4日)https://blog.cloudflare.com/perplexity-is-using-stealth-undeclared-crawlers-to-evade-website-no-crawl-directives/ ↩
-
日本経済新聞社・朝日新聞社「Joint Lawsuit Filed Against Generative AI Company for Copyright Infringement」(2025年8月26日/東京地方裁判所への共同提訴に関する公式リリース。請求内容・法的根拠を含む)https://www.nikkei.co.jp/nikkeiinfo/en/news/release_en_20250826_01.pdf ↩




