AIデータガバナンス入門:企業データの品質管理と活用の基本

TIMEWELL編集部2026-02-01

データガバナンスとは何か

データガバナンスとは、組織全体でデータをどのように収集・管理・活用すべきかのルールや体制を定めることです。データマネジメント(実際のデータ運用)の上位概念にあたり、方針やルールを定める「ガバナンス」と、それを実行する「マネジメント」は車の両輪の関係にあります。

AI活用においてデータガバナンスが重要な理由は明快です。AIの出力品質は、入力されるデータの品質に直結します。いくら優れたAIモデルを導入しても、学習や検索の対象となるデータに問題があれば、正確な回答は期待できません。

なぜ今、データガバナンスが注目されているのか

インフォマティカが2026年1月に発表した「CDOインサイト2026」によると、2026年にデータマネジメント投資を増額する予定の日本企業は86%にのぼります。主な投資先として、データプライバシー・セキュリティの強化(39%)、データ・AIガバナンスの改善(33%)、従業員のデータリテラシー向上(33%)が挙げられています。

一方で、日本のデータ担当責任者の43%が「データの信頼性」をAI本番運用への障壁と回答しており、71%が「従業員によるAI活用に対して、自社のガバナンスが追いついていない」と認識しています。AIの活用が進むほど、ガバナンスの不備がリスクとして顕在化する構図です。

データ品質を構成する6つの要素

AIに供給するデータの品質は、以下の6つの観点から評価できます。

要素 意味 問題が起きる例
正確性 データが事実と一致しているか 古い住所情報がそのまま残っている
完全性 必要な項目が欠損なく揃っているか 顧客データに連絡先が入っていない
一貫性 複数のシステム間でデータが矛盾していないか 営業システムと経理システムで顧客名の表記が異なる
適時性 データが最新の状態に保たれているか 退職した社員が組織図に残っている
一意性 同じデータが重複して存在していないか 同じ顧客が2件の異なるレコードとして登録されている
有効性 データが定められたルールに従っているか 電話番号の桁数がバラバラ

これらの要素に問題があると、AIの回答に誤りが含まれたり、検索結果に重複が生じたりします。データ品質の課題は地味に見えますが、AI活用の成否を根本から左右する要因です。

データガバナンス体制の構築ステップ

ステップ1:現状のデータ資産を棚卸しする

まず、社内にどのようなデータがどこに格納されているかを把握します。ファイルサーバー、グループウェア、業務システム、個人のPC内など、データは想像以上に分散しています。

棚卸しの際には以下の情報を整理します。

  • データの種類(顧客情報、製品情報、議事録、規程類など)
  • 格納場所(どのシステム、どのフォルダ)
  • 管理責任者(誰がそのデータを管理しているか)
  • 更新頻度(どのくらいの頻度で更新されるか)
  • 機密レベル(社外秘、部門限定、全社公開など)

ステップ2:データポリシーを策定する

棚卸しの結果をもとに、データの取り扱いに関するルールを策定します。策定すべき主なポリシーは次の通りです。

分類ポリシー:データを機密レベルに応じて分類し、それぞれの取り扱いルールを定める

アクセスポリシー:誰がどのデータにアクセスできるかの権限を定義する

保持ポリシー:データの保存期間と廃棄ルールを定める

品質ポリシー:データ入力の基準、チェック項目、修正手順を定める

ステップ3:推進体制を整える

データガバナンスは特定の部署だけで完結するものではありません。経営層のスポンサーシップのもと、IT部門、業務部門、法務部門が連携する横断的な体制が必要です。

小規模な組織であっても、少なくとも以下の役割を明確にしておくと運用がスムーズになります。

  • データオーナー:各データ領域の最終責任者(業務部門の管理職が担うことが多い)
  • データスチュワード:日常的なデータ品質の維持を担当する実務者
  • ガバナンス推進者:全社横断でポリシーの策定・更新・教育を推進する担当

ステップ4:継続的なモニタリングと改善

ポリシーを策定しても、運用されなければ意味がありません。データ品質の指標を定期的に測定し、問題が発見されたら速やかに対処する仕組みを構築します。

AI時代のデータガバナンスで特に注意すべき点

従来のデータガバナンスに加えて、AI活用の文脈では以下の点にも注意が必要です。

AIへの入力データの管理

社員がAIに入力するプロンプトに機密情報が含まれる可能性があります。「どのデータをAIに渡してよいか」のルールを明確にし、社員に周知することが求められます。

AIの出力データの取り扱い

AIが生成した回答を社内文書や対外的な資料にそのまま使用する場合、内容の正確性を人間が検証するプロセスが必要です。AIの出力を無検証で使用するリスクについても、ガバナンスの対象に含めるべきです。

規制環境の変化への対応

2026年は、AIに関する規制が各国で具体化する年とされています。EU AI規制法の段階的な施行が進んでおり、日本でも自主的な枠組みから法的な規制へと議論が進展しています。データガバナンスの体制は、こうした規制の変化にも対応できる柔軟性を持たせておく必要があります。

まとめ

  • データガバナンスは、データの収集・管理・活用に関するルールと体制を定めること
  • AIの出力品質はデータ品質に直結するため、AI活用にはガバナンスが不可欠
  • データ品質は正確性・完全性・一貫性・適時性・一意性・有効性の6要素で評価する
  • 体制構築は棚卸し→ポリシー策定→推進体制→モニタリングの順で進める
  • AI時代には、入力データと出力データの両方をガバナンスの対象とする

TIMEWELLのZEROCKは、社内データの取り込みから権限管理まで、データガバナンスを考慮した設計がなされています。AWS国内サーバーでの運用により、データの所在を国内に限定できるため、機密性の高い企業データも安心して活用できます。