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「これからはAPIでもMCPでもCLIだ」AIエージェント時代にソフトウェアが生き残る条件

2026-02-24濱本 隆太

SaaS株4,000億ドル消失の「SaaSpocalypse」。AIエージェント時代にソフトウェアが生き残るにはAPI・MCP・CLIの三位一体が不可欠。実務で何をすべきか解説。

「これからはAPIでもMCPでもCLIだ」AIエージェント時代にソフトウェアが生き残る条件
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こんにちは、TIMEWELLの濱本です。今日はテック関連のサービスご紹介です。

SaaSpocalypseの衝撃

2026年2月、SaaS企業の株価が軒並み急落しました。Anthropic社のClaude Opus 4.6やOpenAI社のCodexといったAIエージェントの登場がきっかけです。Fortune誌はこの出来事を「SaaSpocalypse」と名付け、わずか数週間で4,000億ドル以上の時価総額が市場から消えたと報じています [1]。

この急落を予見していたかのような発言があります。Microsoftのサティア・ナデラCEOが2024年末のポッドキャストで語った一言です。

今日のビジネスアプリケーションは、結局のところCRUDデータベースと少しのビジネスロジックにすぎない [2]

正直なところ、初めてこの発言を聞いたとき、私は「さすがに言い過ぎだろう」と思いました。しかし2026年の今、この言葉が現実味を帯びてきている。AIエージェントは美しい画面を必要としません。APIを直接呼び出し、ビジネスロジックを実行する。人間が操作することを前提に作られたSaaSのGUIは、その存在意義を根本から問われています。

「SaaS is Dead」という過激な言葉の裏にあるのは、この構造変化です。では、AIエージェント時代にソフトウェアはどう変わるのか。なぜ私が「APIでもMCPでもCLIだ」という結論に至ったのか。最新の動向を交えながら掘り下げていきます。

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UIファーストの終焉

従来のSaaSは、人間がUIを操作する前提で設計されてきました。価値の中心は、いかに使いやすく、効率的に業務を遂行できるかというUXにあった。フローは単純です。人間がUIを操作し、SaaSがデータを処理し、結果を画面に返す。

2026年の現実は違います。AIエージェントがSaaSの「ユーザー」になり、人間は自然言語で指示を出すだけ。エージェントは画面を見ません。マウスも使わない。彼らが理解するのは、JSON形式でやり取りされるAPIです。SaaSに求められる価値は、UIの使いやすさからAPIの表現力と信頼性へと移りました [3]。

この変化を、企業システムの進化として整理してみます。1990年代はSoR、つまり記録のシステムの時代でした。ERPやCRMが顧客データや取引記録を正確に管理する。2010年代にはスマートフォンの普及でSoE、顧客接点のシステムが加わり、その後ビッグデータとAIでSoI、洞察のシステムが登場した [2]。

そして今、AIエージェントの時代に求められているのはSoK、知識創造のシステムです。データを記録するだけでなく、データから知識を生成し、業務プロセスそのものを再構築する。ナデラが「CRUDデータベースにすぎない」と言ったのは、SoRの段階にとどまっているSaaSへの批判だったわけです。

MCPへの期待と、現場の温度差

AIエージェントと外部ツールを接続する標準プロトコルとして、2024年にAnthropic社が提唱したのがMCP、Model Context Protocolです [4]。AIモデルが外部のAPIやデータソースを統一された方法で呼び出せるようにする。AmazonやMicrosoftも対応を表明し [5] [6]、2026年2月時点で9,000を超えるプラグインが公開されるなど、エコシステムの拡大は目覚ましい。

ただ、現場の温度感は少し違います。

dev.toに掲載された記事では、MCPの現実的な問題点が鋭く指摘されています [7]。

課題 何が起きているか
設定の断片化 プラットフォームごとに複数のコミュニティ製MCPサーバーが乱立し、どれを信頼すべきか判断しづらい。ツールごとに設定が分断される
APIカバレッジの穴 MCPサーバーの多くは既存APIの不完全なラッパーにすぎず、必要な機能が実装されていないケースが目立つ。自律ワークフローが途中で止まる
トークンの浪費 ツール仕様を記述した巨大なJSONスキーマがAPI呼び出しのたびにLLMへ送信され、コンテキストウィンドウとコストを圧迫する

余談ですが、私自身もMCPサーバーをいくつか試してみて、「あれ、この機能ないの?」と手が止まった経験が何度かあります。理想と現実のギャップは、触ってみると想像以上に大きい。

こうした中、GoogleとMicrosoftが共同開発したWebMCPがChrome 146 Canaryでプレビュー公開されました [8]。ウェブサイトがブラウザ内で直接AIエージェントにツールを公開できる仕組みで、バックエンドにMCPサーバーを構築する必要がありません。MCPを補完する技術として注目されていますが、MCP自体の課題を根本から解決するものではない。

CLIの逆襲

MCPが喧騒に包まれる一方で、30年以上の歴史を持つCLI、コマンドライン・インターフェースが静かに、しかし確実に存在感を増しています。

象徴的なのが、ターミナルネイティブなAIエージェントClaude Codeの台頭です。2026年2月時点で、GitHub上の全パブリックコミットの4%がClaude Codeによる自動生成。年末にはその割合が20%に達するという予測もあります [9]。ソフトウェア開発のあり方が根本から変わりつつあることを示す数字です。

なぜCLIがAIエージェントとこれほど相性がいいのか。理由は三つあります [7]。

まず、普遍性。一度PCに設定すれば、IDE、ターミナル、その他のツールから共通して利用できます。AWS CLIやgcloud SDKのように、単一のバイナリでプラットフォームのほぼ全機能をカバーする。MCPサーバーのように「このツールだけ別の設定ファイルが必要」という断片化が起きません。

次に、成熟度。認証やエラーハンドリングといった、コンピュータ間通信で厄介な問題が数十年かけて解決されています。MFAもSSOも、CLIの世界ではとっくに枯れた技術です。

そして、エージェントとの親和性。AIエージェントは画面の文脈を読み解く必要がない。--helpで得られる構造化されたテキスト情報だけで、ツールの使い方を正確に理解し、タスクを実行できます。

OpenClawの創業者Peter氏は「MCPでできることは、すべてCLIでよりうまくやれる」と断言しています [10]。これは意見が分かれるところですが、私はかなり共感しています。Node.jsの創設者Ryan Dahl氏が「人間がコードを書く時代は終わった」と述べ、Ruby on Railsの作者DHH氏が「手でコードを書くのは贅沢品だ」と語る。トップエンジニアほどAIエージェントを駆使した開発スタイルへ移行しており、その中心にあるのがCLIです [9]。

三つのインターフェースは競合しない

ここまでAPI、MCP、CLIの動向を追ってきました。「これからはAPIでもMCPでもCLIだ」という主張の真意は、この三つが競合するものではなく、それぞれ異なるレイヤーで役割を担う補完関係にあるという点にあります。

APIは、すべての基盤となるレイヤーです。サービスが外部に機能を公開するための契約であり、プログラムからアクセスする公式な玄関口。堅牢で表現力豊かなAPIがなければ、その上のレイヤーは成り立ちません。

MCPは、AIモデルと多種多様なツール群の間の翻訳者です。異なる仕様を持つ無数のAPIを、AIモデルが理解できる統一された形式に変換し、接続を標準化する。エコシステムの広がりがその価値を左右します。

CLIは、AIエージェントにとって最も自然な対話インターフェースです。計画を立て、実行し、結果を確認するというエージェントの思考プロセスと、コマンドベースの逐次的な操作は、驚くほど親和性が高い。

ここにWebMCPという選択肢も加わります。ユーザーがブラウザを介してAIエージェントと協働するシナリオに特化した、いわばクライアントサイドの接続手段です。

問われているのは「どの技術が一番か」という二元論ではありません。自社のサービスをいかにエージェントフレンドリーにするか。AIエージェントがアクセスしやすく、操作しやすい形で機能を提供できるかどうかが、今後のソフトウェアの生死を分けます。APIという土台の上に、MCPによる接続性、CLIによる操作性。この三位一体の設計が欠かせません。

実務で何をすべきか

構造変化の話はわかった。では具体的に何をすればいいのか。

まず、自社サービスのAPI品質を見直すことです。冪等性の確保、高粒度なAPI設計、非同期ワークフローへの対応、詳細な監査ログの提供。これらは「あると良い」ではなく「なければ生き残れない」要件になりつつあります [3]。

次に、CLIツールの整備。自社サービスにCLIがなければ、今すぐ開発に着手すべきです。すでにある場合も、AIエージェントが利用する前提でヘルプメッセージの充実、出力形式のJSON対応、認証フローの簡素化を進めてください。

そしてMCPへの対応検討。自社サービスが属するエコシステムでMCPが標準になりつつあるなら、対応は避けられません。ただし自前でサーバーを構築するだけでなく、既存のOSSやサードパーティのソリューション活用も視野に入れ、費用対効果を見極める必要があります。

SaaSを選定する側の方には、以下のチェックリストを提案します。UIのデモだけで判断する時代は終わりました。

チェック項目 確認すること
API品質 RESTやGraphQL APIは公開されているか。冪等性は担保されているか
CLIの有無 公式のCLIツールが提供されているか。操作性は十分か
MCP対応 MCPサーバーは存在するか。コミュニティは活発か
ドキュメント APIリファレンスやCLIのチュートリアルは充実しているか
認証と認可 エージェント用のサービスアカウントを作成できるか。APIスコープは細かいか
可観測性 APIの利用状況や監査ログをAPI経由で取得できるか

CLIファーストで未来へ

三つのインターフェースの中で、今後最も重要度を増すのはCLIだと私は考えています。CLIはAIエージェントの母国語に最も近い存在です。APIが基盤であること、MCPがエコシステムを繋ぐ役割を担うことは間違いない。しかし、エージェントが自律的にタスクを遂行する上で、最も摩擦が少なく、最も表現力豊かなインターフェースは、現時点ではCLIだと断言できます。

ところで、この記事を書きながら改めて感じたのは、CLIファーストという考え方がエンジニアだけの話ではなくなっているということです。プロダクトマネージャーがSaaSを選定するとき、経営者がDX戦略を練るとき、「このサービスにはCLIがあるか」「APIは十分に整備されているか」が判断基準に入ってくる。それが2026年の現実です。

「APIでもMCPでもCLIだ」。この三位一体の視点で、自社のサービスをエージェントフレンドリーな存在へ進化させていく。この変化は不可逆的であり、ソフトウェアに関わるすべての人が向き合うべきテーマだと考えています。

こうした構造変化への対応は、技術チームだけで完結する話ではありません。API設計の見直し、CLIツールの整備、MCP対応の優先度判断。これらは経営戦略そのものです。私たちTIMEWELLのWARPプログラムでは、AIエージェント時代のDX戦略立案から、実際のAPI設計・システムアーキテクチャの見直しまで、元大手DX・データ戦略の専門家が伴走型でサポートしています。「自社のサービスをエージェントフレンドリーにするには何から手をつければいいのか」。その問いに、一緒に答えを出していきましょう。


参考文献

[1] Fortune. (2026, February). SaaSpocalypse: How AI Agents Wiped Out $400 Billion in SaaS Value.

[2] NewsPicks. (2026, February 22). 「SaaS is Dead」の本当の意味 チャレンジャーが取るべき戦略. https://newspicks.com/news/16100165/body/

[3] Qiita. (2026, February 17). SaaSは死なない、ただし「人間がUIを触る前提の設計」は終わる. https://qiita.com/nogataka/items/e04d1f6f417eec2bab54

[4] Model Context Protocol. (2026, January 26). MCP Apps. https://modelcontextprotocol.io/docs/extensions/apps

[5] AWS Machine Learning Blog. (2026, February 20). Integrate external tools with Amazon Quick Agents using MCP. https://aws.amazon.com/blogs/machine-learning/integrate-external-tools-with-amazon-quick-agents-using-model-context-protocol-mcp/

[6] Microsoft Learn. (2026, February 13). MCP and Foundry Agents. https://learn.microsoft.com/en-us/agent-framework/agents/tools/hosted-mcp-tools

[7] DEV Community. (2026, February 7). The Uncomfortable Truth: Why CLIs Are Still Beating MCP Servers. https://dev.to/mechcloud_academy/the-uncomfortable-truth-why-clis-are-still-beating-mcp-servers-in-the-age-of-ai-agents-4n9f

[8] VentureBeat. (2026, February 12). Google Chrome ships WebMCP in early preview. https://venturebeat.com/infrastructure/google-chrome-ships-webmcp-in-early-preview-turning-every-website-into-a

[9] SemiAnalysis. (2026, February 5). Claude Code is the Inflection Point. https://newsletter.semianalysis.com/p/claude-code-is-the-inflection-point

[10] Zhihu. (2026, February 12). MCP已死、80%App将消亡、Vibe Coding是侮辱. https://zhuanlan.zhihu.com/p/2005607548506621432

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