はじめに ── 「ジュラシック・パーク」は現実になりつつある
こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本隆太です。
映画「ジュラシック・パーク」で描かれた絶滅動物の復活は、長らくSFの世界の話でした。しかし2026年1月、アメリカのバイオテクノロジー企業Colossal Biosciencesが、マンモスの形質を持つ仔象「マニー(Manny)」の誕生を発表し、世界に衝撃を与えました。
同社のBen Lamm CEO が語るビジョンは、単なる絶滅動物の復活にとどまりません。がん治療、プラスチック問題の解決、人類の長寿化、さらには宇宙移住への応用まで見据えた壮大な挑戦です。
本記事では、Colossal Biosciencesの最新動向と、バイオテクノロジーが拓く人類の未来について解説します。
Colossal Biosciencesとは
Colossal Biosciencesは2021年にBen Lamm氏とハーバード大学のジョージ・チャーチ教授によって設立されたバイオテクノロジー企業です。
企業概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 設立 | 2021年 |
| 本社 | テキサス州ダラス |
| CEO | Ben Lamm |
| 共同創業者 | ジョージ・チャーチ教授(ハーバード大学) |
| 企業価値 | 102億ドル(約1.5兆円、テキサス州初のデカコーン) |
| 累計調達額 | 2億ドル以上(シリーズCまで) |
| ミッション | 合成生物学による絶滅動物の復活と生物多様性の保全 |
2025年1月にシリーズCラウンドで2億ドル(約300億円)を調達し、企業価値は102億ドルに達しました。テキサス州初の「デカコーン」(企業価値100億ドル超のスタートアップ)です。
ウーリーマウスからマニーへ ── 絶滅動物復活の歩み
ウーリーマウスの成功
Colossal社の最初の大きな成果は、2025年3月に発表された**「ウーリーマウス」** の作製です。
ネズミの遺伝子にマンモスの毛に関連する遺伝子を組み込むことで、長く巻き毛のような毛を持つネズミを作り出しました。同社のチームは7つの遺伝子を同時に改変するマルチプレックスゲノム編集に成功し、毛の色、質感、厚さがマンモスの中核的な表現型に似たマウスを誕生させました。
この研究では、3,500年前から120万年以上前の59頭分のマンモスゲノムを計算解析し、重要なターゲット遺伝子を特定しています。
マニー ── マンモスの形質を持つ仔象
2026年1月30日、Colossal社は同社のフラッグシップミッションの集大成として、マンモスの形質を持つ仔象「マニー」 の誕生を発表しました。
マニーはインドゾウ(マンモスに最も近い現生種)をベースに、遺伝子編集によってマンモスの形質(赤褐色の体毛など)を付与した個体です。映画「アイス・エイジ」のキャラクターにちなんで名付けられました。
ただし、科学界からは「真のマンモス復活ではなく、マンモスの形質を持つ遺伝子改変ゾウ」であるとの指摘もあり、「脱絶滅」技術の定義や倫理について活発な議論が続いています。
絶滅動物の遺伝情報が拓く医療の可能性
Lamm CEOが繰り返し強調するのは、絶滅動物の復活が人類の医療課題の解決にもつながるということです。
がん治療への応用
ゾウは体のサイズと寿命の長さから考えると、がんになる確率が極めて低いことが知られています。これは「ペトのパラドックス」と呼ばれ、ゾウの遺伝子に含まれるがん抑制タンパク質の多さが原因と考えられています。
マンモスの遺伝子はゾウと非常に近いため、マンモスの遺伝情報からがん治療に役立つ知見が得られる可能性があります。
その他の医療・環境応用
| 応用分野 | 可能性 |
|---|---|
| がん治療 | マンモス/ゾウのがん抑制遺伝子の解析と応用 |
| 長寿研究 | 絶滅動物の長寿関連遺伝子の特定 |
| プラスチック分解 | アマゾン由来微生物の遺伝子改変でプラスチックを短期間分解 |
| 耐環境性作物 | 干ばつ・塩害に強い作物の開発 |
| 人工子宮 | 絶滅危惧種の保護に向けた人工子宮技術の開発 |
生物多様性の保全 ── 複数の絶滅種復活プロジェクト
Colossal社はマンモスだけでなく、複数の絶滅動物の復活プロジェクトを同時進行しています。
進行中のプロジェクト
| 対象種 | 状況 |
|---|---|
| ウーリーマンモス | マニー誕生。2028年までにマンモス型仔象の本格誕生を目標 |
| ドードー | プロジェクト進行中 |
| タスマニアタイガー(フクロオオカミ) | プロジェクト進行中 |
| キタシロサイ | ミナミシロサイの遺伝子にキタシロサイの遺伝子を組み込む研究 |
| ダイアウルフ | TIME誌が取り上げた最新プロジェクト |
Lamm CEOは「2050年までに地球上の生物種の半数が絶滅する可能性がある」と危機感を表明し、「できるだけ多くの種を絶滅から救うことが我々の目標」と述べています。
バイオテクノロジーがもたらす未来の可能性
Colossal社の技術は、将来的にさまざまな分野への応用が期待されています。
宇宙探査への応用
地球外の過酷な環境で生存できる動植物を遺伝子工学で作り出すことで、他の惑星への移住を支援できる可能性があります。耐寒性や耐放射線性を備えた動植物の開発は、宇宙探査の重要な要素となるかもしれません。
食料問題への貢献
干ばつや塩害に強い作物の開発、植物に動物性タンパク質を生成させる技術など、食料の安定供給に寄与する可能性もあります。
倫理的課題
一方で、絶滅動物の復活には倫理的な課題も伴います。
- 復活した動物の福祉をどう確保するか
- 生態系への影響をどう管理するか
- 遺伝子改変技術の適用範囲をどこまでとするか
- 知的財産権の問題(MIT Technology Reviewは、Colossal社がマンモス関連の特許を取得しようとしていると報じています)
Lamm CEOは「我々の技術は人類が直面するあらゆる問題の解決に役立つ可能性を秘めている。重要なのは、その可能性を倫理的に、そして賢明に活用することだ」と語っています。
WARP AIコンサルティング ── バイオテクノロジーとAIの融合
Colossal Biosciencesの事例が示すように、最先端のバイオテクノロジーはAI(ゲノム解析、シミュレーション)と不可分の関係にあります。テクノロジーの活用は、業界を問わず企業の競争力を左右します。
TIMEWELLのWARP AIコンサルティングは、先端技術の活用戦略を企業に提供するサービスです。
- WARP: AI・テクノロジーの活用戦略策定から導入・運用まで一貫支援
- WARP NEXT: 月次更新型の継続コンサルティング
- WARP BASIC: 社員のテクノロジーリテラシー向上研修
まとめ
- Colossal Biosciencesは2026年1月にマンモスの形質を持つ仔象「マニー」の誕生を発表した
- 2025年のウーリーマウス作製成功で、7つの遺伝子の同時改変というマルチプレックスゲノム編集技術を実証
- シリーズCで2億ドルを調達し、企業価値102億ドル(テキサス州初のデカコーン)に
- 絶滅動物の遺伝情報はがん治療、長寿研究、プラスチック分解、食料問題など幅広い応用が期待される
- マンモス以外にもドードー、タスマニアタイガー、ダイアウルフなど複数の復活プロジェクトが進行中
- 倫理的課題(動物福祉、生態系への影響、知的財産権)についての議論も活発化している
参考文献
- Colossal Biosciences 公式サイト
- Baby Manny announcement - Technology.org
- Colossal Biosciences - Wikipedia
- Woolly Mouse breakthrough - CRISPR Medicine
- Colossal $200M funding - SAN
- How Colossal is attempting to own the "woolly mammoth" - MIT Technology Review
