こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本隆太です。2026年6月、台湾・台北で開かれたアジア最大級のテックイベント「COMPUTEX 2026」と、併設のスタートアップイベント「InnoVEX 2026」(6月2日〜5日)に行ってきました。本稿はその現地レポートです。台湾もCOMPUTEXもInnoVEXも初めて、という方にも伝わるよう、歴史と背景から順を追って書きます。
先に、今回いちばん伝えたい3点を挙げておきます。
- COMPUTEX 2026は「AI Together」をテーマに33の国・地域から1,500社が集結し、過去最大規模となった。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが次世代プラットフォーム「Vera Rubin」のフル生産入りを宣言し、AIがクラウドの計算から実世界の「フィジカルAI(ロボティクス)」へ広がる転換点を示した。
- 台湾が世界の半導体の中心であるのは偶然ではない。1970年代のITRI設立とRCAからの技術導入、1980年の新竹サイエンスパーク、1987年のTSMC設立というイノベーションの積み重ねの結果であり、いまや世界の先端ロジック半導体の9割超を台湾が担っている。
- 私たちTIMEWELLは世界初の輸出管理AIエージェント「TRAFEED」をInnoVEXに出展し、6月3日のJapan Pavilionでピッチ登壇を行った。米中半導体摩擦と輸出管理強化という地政学的現実こそ、TRAFEEDが解こうとしている課題そのものだ。
会場で何度も実感したことがあります。半導体とAIの話は、最後はかならず「誰を信頼してモノと技術を流すか」という安全保障の話に着地する。今回のレポートは、その手触りを共有したくて書いています。
そもそもCOMPUTEXとは何か
COMPUTEX(コンピュテックス)は1981年に台北で始まったコンピュータ見本市です。主催は台湾の対外貿易振興機関TAITRA(台湾貿易センター)と台北市コンピュータ協会(TCA)。当初は台湾製の電子機器を輸出するためのプラットフォームでしたが、世界のICT産業の成長とともに45年かけて巨大化しました。毎年4万を超えるバイヤーが台湾に集まり、世界的企業が時代を画する製品を発表する場として知られています。
2026年は6月2日〜5日の開催で、テーマは「AI Together」。会場は台北南港展覧館の1館・2館、世界貿易センター、国際会議中心の4つに分散し、南港地区と信義地区にまたがる世界最大級のマルチ会場展示会になりました。33の国・地域から1,500社が出展し、6,000小間を埋めて過去最大規模を更新。開会式には頼清徳総統や卓栄泰行政院長も出席しました。
TAITRA会長のジェームズ・ホアン氏は「AIは人類文明の新たな章を切り開いている」と述べ、今年のCOMPUTEXを「AI生命体エコシステム」という概念で説明していました。AIコンピューティングを魂や脳、ロボティクスやスマートモビリティを手足、そこに次世代テックを加えて、クラウドから物理的な展開までの完全な青写真を描く、という発想です。Acer、ASUS、Delta Electronics、Foxconn、Intel、MediaTek、MSI、Pegatronといった常連に加え、新設の「AI Robotics Pavilion」が目立っていました。
各社CEOが描いたAIの未来 — 基調講演から
NVIDIA ジェンスン・フアン
実質的な開幕基調は、6月1日午前、台北ミュージックセンターでのジェンスン・フアン氏の講演でした。併催の「GTC Taipei」の一部です。台湾出身のフアン氏は地元のスターで、講演には両親も招かれていました。会場の空気が他とは違う。台湾にとって彼は誇りなのだと、肌で感じました。
講演の核心は「エージェンティックAIは既にここにあり、機能し、利益を生む。すべてのトークンが収益単位だ」というもの。フアン氏は「AIはいまや利益を生むもの、GDPを生むものだ」と語り、台湾のGDPがNVIDIAのサプライチェーンを背景に今年ほぼ10%成長すると主張しました。
最大の発表は次世代プラットフォーム「Vera Rubin(ヴェラ・ルービン)」のフル生産入りです。「Vera Rubinはフル生産に入った。そのために作ったサプライチェーンはGrace Blackwellの2倍の規模だ。かつてラック1台の組み立てに2時間かかっていたものが、いまや5分で済む」。Vera Rubinは社内開発のVera CPU(88コア)とRubin GPUを組み合わせたもので、4万人のエンジニアが関与し、TSMCの3nmプロセスで製造されます。Vera Rubin NVL72は36基のVera CPUと72基のRubin GPUを第6世代NVLinkで結び、前世代Blackwell比で推論あたりの電力効率を最大10倍、トークンあたりコストを10分の1にするとされます。COMPUTEX Best Choice Awardsでは史上初めて単一製品が3冠を獲得しました。ただしフル生産は宣言されたものの、量産出荷は2026年夏以降、広範な顧客への提供は2026年後半が目標です。「フル生産」と「量産出荷」が別物だという点は、報道を読むときに気をつけたいところです。
フアン氏はNVIDIAのPC市場本格参入も発表しました。Arm系のPC向けスーパーチップ「RTX Spark」(開発コード名N1X、同一チップ)で、Blackwell RTX GPUとMediaTekと共同開発した20コアのGrace CPUをNVLink-C2Cで融合したもの。TSMCの3nmプロセス製、700億トランジスタ規模のSoCで、Microsoft、Dell、HP、ASUS、Lenovo、MSIのWindows PCに2026年秋に搭載されます。「PCは再発明されつつある。これは電話がスマートフォンへ再発明されたのと同じくらい大きな出来事だ」。あわせて550億パラメータのMoE型オープンモデル「Nemotron 3 Ultra」も発表されました。
CNBCのジム・クレイマー氏は、この講演が「compute is revenue(計算は収益だ)」というメッセージでAIインフラ投資の正当性を示し、関連株を押し上げたと評しました。実際、台湾株は6月1日に45,000ポイントを突破し過去最高を更新、登壇企業の時価総額合計は10兆ドルを超えました。
Qualcomm、Intel、その他
開幕基調はQualcommのクリスティアーノ・アモン社長兼CEOが6月1日午後に担当。「AIコンピューティングはユビキタス(遍在)になる」というテーマで、SnapdragonによるAI PCやスマホ、産業用AI、ロボティクス、データセンターへの展開を語りました。
Intel CEOのリップブー・タン氏は6月2日、「The Next Era of AI」と題して登壇。AMDが今年は講演を見送ったため、Intelが唯一のx86ベンダーでした。マンダリンを話せる初のIntel CEOで、自らを台湾コミュニティの一員と位置づけていたのが印象的です。Intelは18A(1.8nm級)の量産立ち上げを発表。Perplexity CEOのアラヴィンド・スリニヴァス氏が登壇し、機密データは端末ローカルで、それ以外はクラウドで処理する「ハイブリッド推論」をデモしました。機密データ保護が計算アーキテクチャの設計思想に組み込まれつつある、その象徴的な場面でした。
Marvellのマット・マーフィー氏、NXPのラファエル・ソトマヨール氏も登壇。NXPは「フィジカルAI」とインテリジェントエッジに焦点を当て、安全・低遅延・リアルタイムを要する自律的な実世界システムへAIが移ることを論じました。COMPUTEX Forumは過去最大の3日間28セッション。TrendForceはロボティクス向けLLM市場が2028年までに1,000億ドルを突破し、2025〜2028年の年平均成長率48.2%と予測しています。Compal(仁宝電脳)がスマート病院向けにNVIDIAと連携した「POLYMEDX」プラットフォームを展示していたのも、フィジカルAIの具体例として記憶に残りました。
InnoVEX — スタートアップ発掘の場
InnoVEX(イノベックス)は、COMPUTEXのスタートアップ専門エリアとして2016年に始まりました。主催はTCAとTAITRA。初年度は22カ国から217社が出展し、35%が海外勢でした。当初の目的はIoTスタートアップの発掘・支援です。
InnoVEXがこれほど機能するのは、台湾が世界最強のICTサプライチェーンを持つからです。出展企業はTSMC、MediaTek、Delta Electronics、Wistronといった大手と直接商談でき、資金、R&D、製造パートナー、販売チャネルを一度に得られる。2016年にはアクセラレータGarage+の代表団が「2日目までにTSMCやMediaTekなどと65件の面談をこなした」と報告しています。展示、デモ、フォーラム、ピッチコンテスト、マッチメイキングの5つが揃っているのが強みです。
2026年は22〜23カ国から約500社が集結し、前年比11%増で過去最高。テーマは「AI Together」で、6月2日〜5日に南港展覧館2館で開催されました。フランス、日本、韓国、タイ、オーストラリア、イスラエル、カナダ、イタリア、チェコの9カ国がナショナルパビリオンを設置。ピッチコンテストの賞金総額は6万米ドル(単一チーム最大3万米ドル)にアップグレードされ、決勝は8分(5分ピッチと3分質疑、英語)で行われました。日本パビリオンは「Japan Bizcrew Pavilion」として出展し、6月3日にInnoVEX Center Stageで「Discover the Next Disruptors」を開催。COMPUTEX公式メディアも「InnoVEX 2026でAI・ディープテック・モビリティを披露する10の日本のイノベーター」として日本勢を取り上げていました。
該非判定の属人化を、AIで解消する。
経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDなら、判定時間を約7割削減し、判定根拠を構造化データで保存できます。
TIMEWELLとTRAFEEDが現地で見たもの
私たちTIMEWELLは、世界初の輸出管理AIエージェント「TRAFEED」をInnoVEX 2026に出展しました。6月3日14:00〜14:30のJapan Pavilionのピッチ枠で登壇。結果として複数のパートナーシップ商談と、顧客によるトライアル申し込みをいただき、実りある場となりました(商談相手は企業秘密のため「大手IT企業」とぼかして記します)。
正直に言うと、出展前は「輸出管理という地味なテーマが、最先端の半導体イベントで響くだろうか」という不安が少しありました。蓋を開けてみれば、まったくの杞憂でした。台湾は世界の半導体の心臓であるがゆえに、輸出管理とサプライチェーンセキュリティに最も神経を使う場所だからです。なぜここまで手応えがあったのか。その答えは、後半の地政学のテーマと深くつながっています。
台湾の半導体産業はなぜ強いのか
ここからが本稿の中核です。人口約2,400万人の島が、なぜ世界で最も重要な産業で最も重要な存在になれたのか。
朝食店の密談からTSMCへ
物語は1974年に始まります。台北のある朝食店で、7人の男たちが台湾の未来を形づくる会合を開きました。経済部長の孫運璿、ITRI院長の王兆振、行政院秘書長の費驊、そしてRCA(米ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ)研究所長の潘文淵ら。一食の朝食の上で、台湾半導体の青写真が描かれたわけです。この逸話を現地で聞き直すと、国家の意思というものの重さを感じます。
1973年、政府はITRI(工業技術研究院)を設立。1976年、ITRIは米RCAと技術移転・ライセンス契約を結びました。台湾は3年間、毎年100万米ドルをRCAに払い、見返りに技術と人材育成を得ます。最初に渡米した19名には、後にUMC会長となる曹興誠、MediaTek会長となる蔡明介、TSMC副会長となる曾繁城が含まれていました。導入したのは7ミクロンという既に時代遅れの技術でしたが、これがすべての出発点でした。
1980年、ITRIは4インチウェハ技術をスピンオフし、台湾初のIC企業UMC(聯華電子)を設立。同年、新竹サイエンスパークが開園します。そして1985年、転機が訪れました。米テキサス・インスツルメンツ(TI)で25年のキャリアを積んだモリス・チャン(張忠謀)が、孫運璿首相や李國鼎政務委員らの招きで台湾に渡り、ITRI院長に就任したのです。チャンはTI在職中、日本工場が米国工場の2倍の生産性を上げているのを見て「先端製造の未来はアジアにある」と確信していました。
ファウンドリモデルという発明
李國鼎はチャンに「台湾で半導体企業を起こしてほしい」と告げました。チャンは現実を冷静に見ます。台湾にはIC設計能力もグローバル市場へのアクセスもなく、製造技術は業界トップから2.5世代遅れていた。正面から競争しても勝てない。
そこで構想したのが「ピュアプレイ・ファウンドリ(受託製造専業)モデル」でした。自社製品を設計・販売せず、他社が設計したチップの製造だけに徹する。当時の業界常識は「real men have fabs(一人前の男は自前の工場を持つ)」、つまり設計から製造・販売まで一貫するIDM(IntelやSamsungが典型)が当然で、ファウンドリ専業など「うまくいくはずがない」と見られていました。
しかしチャンの読みは正しかった。工場を持たない「ファブレス」企業にとって、信頼できる第三者の製造サービスは渇望されていたのです。TSMCは「顧客と決して競争しない」という原則を掲げ、ファブレスのパートナーになりました。これがQualcomm、NVIDIA、Broadcom、MediaTekの勃興を可能にし、彼らが成長するほどTSMCの規模も拡大する自己強化ループが生まれます。
1987年2月21日、TSMC(台湾積体電路製造)が設立されました。出資は台湾政府の国家発展基金が48.3%、オランダのフィリップスが27.5%、残りを地元企業家が担いました。インテルもTIもチャンの出資要請を断り、フィリップスだけが応じたという事実は、当時このモデルがいかに異端視されていたかを物語ります。最初の工場は3ミクロン・6インチウェハという、業界から数世代遅れた技術での船出。創業初年と1990年に赤字を出しましたが、1991年以降は一度も赤字を出さず成長を続けました。技術的なキャッチアップも驚異的で、1987年から1999年の間に2.0μmから0.18μmまで9世代を進めています。
バリューチェーンのどこが強いのか
半導体産業は大きく設計、前工程(ウェハ製造)、後工程(パッケージング・テスト)に分かれます。台湾はこのほぼ全領域で強い。設計ではMediaTekが世界トップのモバイルチップ設計企業。前工程ではTSMCが世界最大のファウンドリで、3nmや2nmの最先端を独占的にリードします。後工程ではASE Technology(日月光投控)が世界最大のOSAT企業で、2024年のOSAT売上は185.4億ドル、上位10社の約44.6%を占めます。ASEはCoWoSの後工程でTSMCの重要なパートナーでもあります。
なぜ新竹に集積したのか
1980年12月15日、台湾政府は新竹サイエンスパークを開園しました。米シリコンバレーをモデルに、国立清華大学と国立交通大学に隣接して建設され、ITRIの研究所も移転。かつて荒れた農地だった場所が、世界の半導体サプライチェーンの心臓に変わったのです。成功要因は、優遇税制とスタートアップ支援、大学や研究機関との産学連携、シリコンバレーで経験を積んだ台湾系人材の呼び戻し、電力・水・交通への一貫投資、そして特殊ガスやウェハ、パッケージング、テストが車で数時間圏内に集まる地理的近接でした。李國鼎はベンチャーキャピタルの概念も台湾に持ち込んでいます。現在、新竹サイエンスパークには500社超が集積し、約16万人を雇用しています。
シリコンシールドと世界シェア
台湾の半導体集中は「シリコンシールド(矽盾)」という地政学概念を生みました。台湾の半導体産業が世界経済に不可欠であるがゆえに、中国による武力統一を抑止し、もし起きれば外国(特に米国)の介入を促す、という考え方です。
数字で見ると地位は圧倒的です。TSMC一社で世界の最先端チップの9割超を製造しています。米USITCの作業文書も「先端ロジックチップでは台湾が市場の9割超を供給し、米国の購入者が代替を見つけるのは難しい」と指摘しています。ファウンドリ市場全体では、TrendForceによればTSMCの2025年通年シェアは69.9%(前年の64.4%から上昇)で、2位サムスンの7.2%を62.7ポイント引き離しました。TSMCの2025年売上は1,225.4億ドル(前年比+36.1%)です。
ただ「台湾が先端半導体の9割」という言い回しには注意が要ります。これは先端ロジックに限った話で、DRAMやNANDを含む「先端シリコン全体」では台湾のシェアはずっと低くなる。半導体アナリストのScotten Jonesもこの数字の緩い使われ方に異議を唱えています。情報発信する側として、私は「先端ロジック半導体での9割超」という正確な表現を使うようにしています。
半導体製造のどこが特に強いのか
最先端プロセス
TSMCは2018年に7nm、2020年に5nm、2022年12月に3nmの量産を開始し、2025年第4四半期には2nm級の「N2」がナノシートトランジスタ(GAA)構造で量産入りしました。N2はN3E比で同電力なら10〜15%の性能向上、同性能なら25〜30%の電力削減を実現します。Intelの18Aも2025年第4四半期に量産入りし、2nm級では3つの選択肢が並びますが、設計確定(テープアウト)の9割超はTSMC N2に集中しています。選択肢があっても、結局みんなTSMCに集まる。これが現実です。
CoWoSという真のボトルネック
ここは意外と知られていないのですが、AI半導体の供給制約は、ウェハ製造より後工程の「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」という先端パッケージングにあります。CoWoSは演算ダイとHBM(広帯域メモリ)をシリコンインターポーザ上に高密度配線でつなぐ2.5D技術で、NVIDIAのBlackwellやAMDのMI355に不可欠です。3nmのウェハができても、CoWoS工程を経なければ機能するAIチップにはならない。チップ内に十分なメモリを詰め込めない「メモリの壁」を、HBMを演算チップのすぐ隣に置くことで打破するわけです。
TSMC CEOのC.C.ウェイ(魏哲家)氏は「CoWoSの能力は非常に逼迫しており、2025年から2026年にかけて完売状態が続く」と率直に認めています。TSMCはCoWoS能力を2024年後半の月産約3.5万枚から2026年末には約13万枚へと2年弱で約4倍に拡大していますが、それでも需要を満たせません。NVIDIAは2026年のCoWoS能力の過半を確保し、TSMCはASEやAmkorに一部工程を外注しています。AIチップが巨大化して1回の露光で印刷できる限界を超えたため、複数のチップレットを「縫い合わせる」CoWoS-L方式への移行も進んでいます。
TSMCの海外進出
地政学リスクの分散と各国政府の要請を受け、TSMCは海外展開を進めています。米国アリゾナでは総額1,650億ドルを投じ6つの先端Fabなどを建設する計画で、第1Fabは2024年第4四半期に4nmで量産開始。日本・熊本のJASM(ソニー、デンソーとの合弁)は第1Fabが2024年末に成熟プロセスで量産を始め、2026年第1四半期に初の黒字化、第2Fabは当初の6nm予定からAI需要を受けて3nmへ計画変更されました。ドイツ・ドレスデンのESMCは2027年末の量産開始予定です。これらは「シリコンシールド2.0」、つまり多様な民主主義国との相互依存を深めて供給網のレジリエンスを高めるという観点でも論じられます。一方で、先端生産が分散すれば「盾は薄くなる」との見方もあり、議論は続いています。
地政学とセキュリティ — TRAFEEDが解く課題
台湾の半導体覇権は、米中対立の最前線でもあります。米国は2022年10月に先端ロジックチップ・製造装置の対中輸出規制を導入。以後、規制は段階的に強化と調整を繰り返し、2025年にはトランプ政権が3月に42社、9月に23社の中国企業をエンティティリストに追加し、NVIDIAのH20 GPUに対中販売ライセンスを要求しました。一方で2025年12月8日のトランプ大統領の発表を受け、2026年1月13日には米商務省BISがH200・MI325Xを審査つきで対中輸出する方向に緩和するなど、規制は強化と緩和の間で揺れ動いています。
中国も対抗措置として、ガリウムやゲルマニウム、レアアースの輸出規制で応酬し、2026年4月には「産業・サプライチェーン安全保障規制」(国務院令第834号)を公布しました。米議会では装置規制をさらに強める「MATCH法」など、過去最大規模の20超の輸出管理法案が審議されています。
この複雑で頻繁に動く規制環境こそ、私たちTIMEWELLの輸出管理AIエージェント「TRAFEED」が解こうとしている課題です。規制の変更を人手だけで追い続けるのは、もう限界に近い。InnoVEXのCOMPUTEX Forumでも「データインテリジェンス・ガバナンス・セキュリティ」が6大テーマの一つに掲げられ、頼清徳総統は開会式で「AI発展の次の段階には、共通の価値観を持ち、共にグローバルに協働できる信頼できるパートナーが必要だ」と述べました。輸出管理は、まさにこの「信頼できるパートナー」であることの実務的な担保なのだと、現地で改めて腑に落ちました。
日台の文化的な近さ
台湾は世界で最も親日的な地域の一つです。日本台湾交流協会の「2024年度台湾における対日世論調査」によれば、台湾の人々の日本への親近感は81%で、「最も好きな国・地域」は76%と過去最高でした。逆に日本側の調査でも、日本人の7割以上が台湾に親しみを感じています。
この親密さは、1895〜1945年の日本統治期への複雑な記憶を含みつつも、独特の「親しみ」を生んでいます。2011年の東日本大震災の際、台湾からの義援金は約253億円に達し、世界最多となりました。ビジネスの現場でも、台湾の人々はフレンドリーで日本企業への信頼が厚い。InnoVEXで日本パビリオンが温かく迎えられるのも、この土壌があってこそです。私自身、現地で多くの台湾の方々の親切に助けられました。政府間の正式な国交がなくとも、「officially strangers, unofficially friends(公式には他人、非公式には友人)」という民間主導の関係が築かれている。その言葉を、滞在中に何度も思い出しました。
これらの技術がどう世界を変えるのか
COMPUTEXとInnoVEXが示した方向性は明確でした。AIは「より大きなモデルを訓練する」競争から、「実世界に展開する」段階へ移ったのです。
データセンターは「AIファクトリー」になります。NVIDIAは1ギガワットのAIインフラのコストが1,000億ドルに達すると述べ、電力効率が収益に直結する時代を示しました。AIはクラウドからエッジ・端末へ分散し、機密データはローカルで処理する「ハイブリッド推論」が標準になりつつある。セキュリティとプライバシーが設計の中核に組み込まれていきます。そしてフィジカルAI。AIが物理世界に手足を得て、製造、物流、介護、医療へと浸透していく。
こうした技術は、私たちの仕事のあり方、産業構造、社会のあり方そのものを変えます。そして変化が大きいほど、輸出管理やセキュリティといった「信頼の基盤」の重要性も増していく。今回の出張で、その確信はいっそう強くなりました。
次のアクションとして
最後に、立場ごとに実務的な提言を残しておきます。
日本のスタートアップへ。InnoVEXは台湾の世界最強ICTサプライチェーンに直接アクセスできる稀有な場です。出展はピッチコンテスト登録の約4週間前までに準備を。JETROやJapan Bizcrew経由のナショナルパビリオンなら、出展料の減免や露出支援が得られます。自社技術がAI、ロボティクス、半導体周辺、セキュリティのいずれかに該当し、アジア市場や大手との商談を求めるなら、出展する価値は十分にあります。
半導体サプライチェーンに関わる企業へ。CoWoS等の先端パッケージング能力は2026年を通じてボトルネックであり続けます。N2のような先端ノードの確保には、半年前の予約と前払いが必要な水準です。調達計画は前倒しを。
輸出管理・コンプライアンス担当へ。米中規制は強化と緩和の間で頻繁に動いています。取引にAI半導体や製造装置、対中輸出が絡むなら、人手だけの追随はもう厳しい。TRAFEEDのようなAIエージェントによる継続監視を検討すべき段階に来ています。
輸出管理を、止めない仕組みに
半導体とAIが世界を動かすほど、「誰に、何を、どこまで流していいか」を判断する輸出管理の重みは増していきます。規制は週単位で動き、品目も対象企業も増え続ける。これを担当者の手作業と気力で支え続けるのは、もう持続可能ではありません。
TIMEWELLのTRAFEEDは、世界初の輸出管理AIエージェントとして、規制の最新動向の監視から該非判定の補助、取引先のスクリーニングまでを支援します。経産省基準に準拠し、多言語にも対応しています。「規制改正のたびに社内が混乱する」「該非判定の属人化を解消したい」という課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。AI導入全般の戦略設計から伴走してほしい場合は、WARPコンサルティングもあわせてご検討いただけます。
TIMEWELLは、これからも世界と日本をつなぐ「信頼の基盤」を支える一社でありたいと思っています。
参考文献
- NVIDIA公式ブログ、GTC Taipei基調講演(2026年6月)
- TrendForce(ファウンドリシェア、2026年3月12日発表ほか)
- CNBC、Tom's Hardware、ServeTheHome、DigiTimes 各社報道
- 米USITC作業文書、米商務省BIS発表
- 日本台湾交流協会「2024年度台湾における対日世論調査」
- COMPUTEX / InnoVEX 2026 公式発表
