こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。輸出管理の相談を受けていると、輸出貿易管理令の別表第2がすっぽり抜け落ちている会社に、いまでもよく出会います。別表第1、いわゆるリスト規制の該非判定には神経を使うのに、そこで「非該当」が出た時点で出荷してしまうのです。ところが別表第2には、ワシントン条約に触れる革製品、ダイヤモンドの原石、有害廃棄物、フロン類、水銀を使った製品が並び、2026年1月からはCCS(二酸化炭素の回収・貯留)のために海外へ送る二酸化炭素も加わりました。別表第1に一切載っていなくても、別表第2に載っていれば経済産業大臣の承認なしには輸出できません。
この記事は、2026年10月4日時点のe-Gov法令検索の条文(2026年6月5日施行版)と、2025年以降の施行版を一つずつ突き合わせて書き直したものです。7月の初版では、北朝鮮やロシア向けの仕組みと、行政制裁の期間の説明に不正確なところがありました。今回それを直し、全項目の一覧には仕向地と注記を加えています。
30秒で読む要点 輸出貿易管理令 別表第2(輸出令別表第2)は、外為法第48条第3項にもとづき、輸出に経済産業大臣の「承認」が要る貨物(中欄)と仕向地(下欄)を定めた表です。2026年10月4日時点で効いている行は23あり、ダイヤモンド原石、血液製剤、核燃料物質、漁船、オゾン層破壊物質、有害廃棄物、水銀、CCS用の二酸化炭素、ワシントン条約の動植物、文化財などが並びます。安全保障のための別表第1の「許可」とは根拠も目的も別なので、別表第1で非該当でも別表第2の確認は残ります。北朝鮮・ロシア・ベラルーシ向けのように仕向地や取引相手で決まる承認は、別表第2の2、2の3、2の4という別の表と輸出令第2条で定められています。承認を受けずに輸出すると、外為法第69条の8により5年以下の拘禁刑や1,000万円以下の罰金の対象になります。
輸出貿易管理令 別表第2とは。「承認」と「許可」の違い
輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号、以下は輸出令)には、名前のよく似た二つの表があります。別表第1と別表第2です。現場では「別1」「別2」と略されますが、根拠の条文も、守ろうとしている利益もまったく違います。ここを取り違えると、社内の確認手順そのものが崩れます。輸出令の全体の構成から押さえたい方は、輸出貿易管理令とは?別表第1・第2の全体地図を先に読むと位置関係がつかめます。
別表第1は、輸出に「許可」が要る貨物の表です。根拠は外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号、以下は外為法)第48条第1項と輸出令第1条で、国際的な平和と安全の維持、つまり安全保障のために、武器や軍事転用のおそれがある貨物を性能や仕様の数値で線引きします1。1〜16項の中身と調べ方は輸出令別表第1の項目一覧と調べ方にまとめました。
別表第2は、輸出に「承認」が要る貨物の表です。根拠は外為法第48条第3項と輸出令第2条第1項第1号です21。第48条第3項は、国際収支の均衡の維持、外国貿易と国民経済の健全な発展、日本が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行、国際平和のための国際的な努力への寄与、そして第10条第1項の閣議決定の実施という目的のために、必要な範囲で承認を受ける義務を課せると定めています。条約の履行や資源・環境の保護、制裁措置のための仕組みで、安全保障のリスト規制とは狙いが違います。許可と承認という言葉そのものの違いは、輸出許可と輸出承認の違いで詳しく扱っています。
表の読み方も押さえておきます。別表第2は、貨物を書いた中欄と、地域を書いた下欄でできていて、両方に当てはまる輸出に承認が要ります2。ほとんどの行は下欄が「全地域」ですが、34の項(冷凍のあさり、はまぐり、いがい)は下欄が「アメリカ合衆国」で、米国向けにだけ承認が要ります。35の2の項(有害廃棄物)は「全地域(南緯六十度の線以北の公海を除く。)」です。品目名だけを見て判断せず、下欄まで読む習慣をつけてください。
| 比較項目 | 輸出令 別表第1(輸出許可) | 輸出令 別表第2(輸出承認) |
|---|---|---|
| 必要な手続き | 経済産業大臣の許可 | 経済産業大臣の承認 |
| 外為法の根拠 | 第48条第1項 | 第48条第3項 |
| 輸出令の根拠 | 第1条 | 第2条第1項第1号(委託加工貿易は第2号) |
| 目的 | 国際的な平和と安全の維持(安全保障) | 条約の履行、国民経済の健全な発展、国際収支の均衡、国際平和への寄与、閣議決定の実施 |
| 主な対象 | 武器、大量破壊兵器や通常兵器の開発に使われうる貨物 | ダイヤモンド原石、ワシントン条約の動植物、有害廃棄物、オゾン層破壊物質、水銀、CCS用の二酸化炭素、文化財など |
| 判定の物差し | 性能・仕様の数値(貨物等省令) | 品目、仕向地、参照先の法令や条約の定義 |
| 無許可・無承認の罰則 | 第69条の7(7年以下、核兵器等関連は10年以下) | 第69条の8(5年以下) |
大切なのは、二つが独立して効いてくることです。別表第1で非該当だったからといって、別表第2の承認が要らないとは言えません。逆に、別表第2の承認を取った貨物でも、別表第1に当たれば許可も必要です。自社の手順がこの二段構えになっているか気になる方は、輸出管理体制の無料診断で現在地を確かめてみてください。
別表第1側の確認は記録に残す 別表第2を確かめたあとも、別表第1の項番の確認は残ります。当社が独自に作った「項目別チェックシート(輸出令別表第1・外為令別表)」は、経済産業省のマトリクス表から該当行を貼り付け、規制値と自社の仕様値を突き合わせて判定の根拠を残すためのExcelです。2026年2月14日施行の改正に対応しています。CISTEC発行の「項目別対比表」とは別の、当社オリジナルの様式です。項目別チェックシートをダウンロード(無料。会社名とお勤め先のメールアドレスのご登録が必要です)
別表第2の全項目一覧(2026年10月時点)
現行の別表第2で「削除」になっていない行は、2026年10月4日時点で23あります。経済産業省の「輸出承認対象貨物一覧」(最終更新2026年6月10日)にも同じ項番が並んでいます3。条文の言い回しは長いので、中欄は要旨にし、下欄の地域と実務上の注記を添えました。正確な範囲は必ずe-Govの条文と、各項が参照する告示・省令で確かめてください。
| 項番 | 中欄(貨物)の要旨 | 下欄(地域) | 性格・注記 |
|---|---|---|---|
| 1 | ダイヤモンド(告示で定めるもの) | 全地域 | キンバリー・プロセス。経産省の一覧では「ダイヤモンド原石」 |
| 19 | 血液製剤(告示で定めるもの) | 全地域 | 経産省の一覧では「原則輸出禁止」 |
| 20 | 核原料物質・核燃料物質(使用済燃料を含む) | 全地域 | 原子力 |
| 21 | 核原料物質などで汚染された物、使用済燃料から分離された物などの廃棄物(告示で定めるもの) | 全地域 | 放射性廃棄物 |
| 21の2 | 放射性同位元素(告示で定めるもの) | 全地域 | 放射線 |
| 21の3 | 麻薬向精神薬原料など、麻薬・向精神薬の原材料になる化学物質(省令で定めるもの) | 全地域 | 薬物対策。一部に少額特例あり |
| 25 | 漁ろう設備、漁獲物の加工設備、保蔵設備を持つ船舶 | 全地域 | 漁業資源 |
| 30 | しいたけ種菌 | 全地域 | 農林水産大臣の同意が必要。経産省の一覧では「原則輸出禁止」 |
| 34 | 冷凍のあさり、はまぐり、いがい | アメリカ合衆国 | 米国向けだけ承認が要る |
| 35 | モントリオール議定書の附属書A・B・C・Eに掲げる物質 | 全地域 | オゾン層の保護 |
| 35の2 | (1) バーゼル法の特定有害廃棄物等 (2) 廃棄物処理法の廃棄物 | 全地域(南緯60度以北の公海を除く) | (2)は廃棄物処理法の確認が承認の前提 |
| 35の3 | ロッテルダム条約附属書Ⅲの化学物質、登録を拒否・取り消された農薬の成分、特定毒物、労安法の製造等禁止物質、化審法の第一種特定化学物質など | 全地域 | 化学品の安全。参照先の法令で対象が増える |
| 35の4 | 水俣条約の水銀、特定水銀使用製品とそれを部品に使う製品 | 全地域 | 水銀規制 |
| 35の5 | ロンドン議定書の処分(海底下の地層への貯留)のために輸出する二酸化炭素を含んだガス | 全地域 | 2026年1月19日に新設 |
| 36 | ワシントン条約附属書Ⅰ・Ⅱの動植物、個体の一部、卵、種子、はく製、加工品などの派生物(告示で定めるもの) | 全地域 | 生物多様性 |
| 37 | 種の保存法の希少野生動植物種の個体、器官、加工品 | 全地域 | 国内法による保護 |
| 38 | かすみ網 | 全地域 | 生物多様性 |
| 39 | 偽造・変造・模造の通貨、郵便切手、収入印紙 | 全地域 | 社会秩序 |
| 40 | 反乱を主張・せん動する内容の書籍、図画など | 全地域 | 社会秩序 |
| 41 | 風俗を害するおそれがある書籍、図画、彫刻物など | 全地域 | 風俗 |
| 43 | 国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別天然記念物、天然記念物、重要美術品 | 全地域 | 他の法令による許可・確認が承認の前提 |
| 44 | 仕向国の特許権・商標権・著作権などを侵害すべき貨物、原産地を誤認させるべき貨物(大臣が指定するもの) | 全地域 | 経産省の一覧では、現在の対象は原産地を誤認させる貨物に限る |
| 45 | 関税法の認定手続が執られた貨物(知的財産を侵害するおそれがあるもの) | 全地域 | 税関の手続きと連動 |
初めて見る方が必ず戸惑うのが、番号の抜けです。2〜18、22〜24、26〜29、31〜33、42の28行は、条文上「削除」と書かれているだけです2。かつて規制していた品目が外れても、番号は詰めずに残します。新しい項は35の5のように「の」付きの番号で差し込まれるので、既存の項番は動きません。いちばん新しい削除は、2025年12月1日に外れた33の項の「うなぎの稚魚」です。経緯は輸出貿易管理令の改正一覧で整理しています。古い解説記事やネットの一覧に別表第2として載っている品目でも、いまは削除済みということが珍しくありません。輸出の前には、e-Govの現行条文と経済産業省の一覧で、その品目がまだ載っているか、何の項に当たるかを確かめてください。
所管が経済産業省だけで閉じない項があることも、頭の隅に置いておくと実務で慌てずにすみます。30の項のしいたけ種菌は、承認の前に農林水産大臣の同意が要ります(輸出令第2条第2項)。35の2の項の(2)と43の項は、廃棄物処理法や文化財保護法など他の法令の許可・確認を受けていることが承認の前提です(同条第3項)2。社内で「経産省に申請すれば終わり」と思っていると、手前の手続きで止まります。
該非判定の属人化を、AIで解消する。
経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。
仕向地と取引相手で決まる承認。別表第2の2、2の3、2の4の仕組み
ここまでは「何を送るか」で決まる承認でした。輸出令第2条第1項には、第1号(別表第2)のほかに、第1号の2から第1号の8まで、「どこへ」「誰と」で承認を求める号が並んでいます2。それぞれが参照するのが、別表第2の2、別表第2の3、別表第2の4という別の表です。名前が似ているので、別表第2の中の「2の項」と取り違えないよう注意してください。2の項は削除済みの行で、別表第2の2はそれとは別の独立した表です。
北朝鮮向けは第1号の2です。別表第2の2には、冷凍の牛肉、キャビア、酒類、たばこ、香水、革製のバッグや財布、毛皮製品、真珠や貴石、ノートパソコン、乗用車、腕時計、美術品など36行が並んでいます。ただし輸出令の附則第3項が、2027年4月13日までの間、この号を「北朝鮮を仕向地とする貨物」と読み替えています。除かれているのは、別表第2(第1号)でもともと承認が要る項の貨物なので、結果として北朝鮮向けのすべての貨物に承認義務がかかります。経済産業省は、この承認義務を課すことで輸出を禁止していると説明しています24。政府は2025年4月8日の閣議決定で、この措置を2025年4月14日から2027年4月13日まで2年間延長しました4。
ロシアとベラルーシ向けは第1号の3と第1号の4で、別表第2の3に掲げる貨物の輸出に承認が要ります。別表第2の3には、別表第1の1〜15項の貨物と、省令で品目を定める汎用品などが入っています。品目を定めるのは「輸出貿易管理令別表第二の三の規定に基づき貨物を定める省令」(令和4年経済産業省令第15号)で、e-Govで確認できる最終改正は2025年1月23日施行の分です5。さらに第1号の6と第1号の7は、告示で指定された特定の者との直接・間接の取引であれば、品目を問わずロシア・ベラルーシ向けの輸出に承認を求めます。第1号の5は、ウクライナのドネツク州とルハンスク州のうち告示で定める区域を仕向地とする輸出で、こちらも品目を問いません。
第三国向けは第1号の8です。別表第2の4には、アラブ首長国連邦、アルメニア、中国、インド、カザフスタン、キルギス、シリア、タイ、トルコ、ウズベキスタンの10か国が並んでいます2。ここは誤解が多いところなので書いておくと、これらの国向けの輸出がすべて承認制になるわけではありません。告示で指定された特定の者との直接・間接の取引で、別表第2の3の貨物を輸出する場合に限って承認が要る仕組みです。指定は日本の制度上の区分であって、その国やその企業の是非を判断するものではありません。2026年10月2日には、外務省・財務省・経済産業省が、ロシアとベラルーシ以外の国の特定団体4団体を輸出等禁止の対象に加え、ロシアの産業基盤強化に資する物品等の輸出等禁止措置を導入すると発表しました。対象品目と施行日は、この発表資料には書かれていません6。
この領域の怖さは、対象が告示と省令で動くことです。昨日まで承認が要らなかった取引が、告示の改正で今日から承認制になることもあります。品目の表を一度確認して終わりにせず、取引のたびに相手先と最新の告示を突き合わせる運用が欠かせません。経済産業省の「対ロシア等制裁関連」ページは、新しい措置の施行後でもe-Govに最新の法令が載っていない場合があると注意書きしています7。各国の制裁リストの照合手順は経済制裁リストの照合ガイドにまとめました。
品目で承認が要る代表ケース。ダイヤ、ワシントン条約、廃棄物、化学品、CCS
一覧を眺めるだけではピンとこないので、相談の多いケースで具体を確かめます。どれも「武器は扱っていないから輸出管理は関係ない」と考えている会社が引っかかるパターンです。
ダイヤモンドの原石とワシントン条約
ダイヤモンドの原石は1の項に当たり、輸出には承認に加えてキンバリー・プロセス証明書が必要です8。キンバリー・プロセスは、紛争地域で採掘され武装勢力の資金源になるダイヤモンドを、国際的な流通から締め出すための証明制度です。宝飾用でなく研磨用や工業用でも、原石であればこの枠組みが効きます。
ワシントン条約(CITES)は36の項です。附属書Ⅰまたは附属書Ⅱに掲げる種の動物・植物と、その個体の一部、卵や種子、はく製、加工品などの派生物のうち、経済産業大臣が告示で定めるものが対象です29。条約は、附属書Ⅰは原則として商業取引を禁止、附属書Ⅱは輸出国の輸出許可書が必要、附属書Ⅲは輸出許可書か原産地証明書が必要、という三段構えで運用されています1011。革製のハンドバッグやベルト、象牙の製品、爬虫類の皮を使ったアクセサリーは、素材の種によって承認の対象になりえます。自社ブランドの革製品を海外の顧客に送るだけで、この項に触れる可能性があるわけです。
附属書は締約国会議のたびに改正されます。2025年11月24日から12月5日までウズベキスタンのサマルカンドで開かれた第20回締約国会議(CoP20)の改正は2026年3月5日に発効し、一部の種は2027年6月5日まで発効が延期されています12。36の項は附属書を参照しつつ、日本での範囲は告示で定める作りなので、扱う素材の種が最新の告示でどうなっているかを確かめてください。国内法の種の保存法(平成4年法律第75号)の希少野生動植物種は、36の項とは別に37の項に置かれています。条約の仕組みそのものはワシントン条約(CITES)の輸出入規制ガイドで解説しています。
有害廃棄物と委託加工貿易
有害廃棄物は35の2の項です。(1)はバーゼル条約を受けた特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(平成4年法律第108号)の特定有害廃棄物等、(2)は廃棄物処理法の廃棄物で、(2)は廃棄物処理法による輸出の確認を受けていることが承認の前提です2。使用済みの電子基板、金属スクラップ、廃バッテリーを資源として海外に送る取引は増えていますが、有害性の判定しだいで承認が要ります。リサイクルのつもりが規制違反になる典型で、税関の輸出関係他法令一覧表でも確認できます13。
委託加工貿易は、品目の表とは少し毛色が違い、輸出令第2条第1項第2号が根拠です2。外国での加工を委託する契約のうち、経済産業大臣が定める指定加工に当たるものは、加工原材料を輸出する時点で承認が要ります。代表例は、革や毛皮、皮革製品の原材料を海外の工場で靴やバッグ、衣料に加工させて再輸入するケースです14。承認が要るのは、製品を輸入する側ではなく原材料を輸出する側です。この発想の転換が必要なので、初めての方はここでよくつまずきます。
化学品。条文を変えずに対象が増える項
化学品メーカーや商社にとって身近なのは、21の3、35、35の3、35の4の項です。麻薬向精神薬原料、オゾン層破壊物質、ロッテルダム条約の化学物質や化審法の第一種特定化学物質、水銀と、どれも他の法令や条約の定義をそのまま参照しています2。参照先で物質が追加されると、輸出令の条文は1文字も変わらないまま、別表第2の対象が広がります。ここがこの表のいちばんの落とし穴だと私は考えています。
実際に2026年も動いています。35の3の項(6)が参照する化審法の第一種特定化学物質には、2026年6月17日施行の令和7年政令第416号でPFHxS関連物質が加わりました。さらに2026年5月22日に公布された令和8年政令第171号で、長鎖ペルフルオロアルカン酸(LC-PFCA)とその塩、LC-PFCA関連物質、クロルピリホス、中鎖塩素化パラフィン(MCCP)が、2026年11月22日から第一種特定化学物質になります1516。いずれもストックホルム条約の廃絶対象に加わった物質群で、化審法の上では製造・輸入の原則禁止などの対象です。輸出の側では、35の3の項を通じて承認の対象になります。
CISTECも、別表第2の化学品関連パラメータシートのなかで「別表第1の法令改正は通常年に一度実施されますが、別表第2は年に複数回実施されることが多い」と注意を促しています17。取引先から別表第2の該非を聞かれる化学品の担当者は、輸出令の改正だけでなく、化審法、農薬取締法、毒物及び劇物取締法などの改正情報も追いかける体制が要ります。
CCSのために輸出する二酸化炭素(35の5の項)
2026年1月19日、令和7年政令第382号で35の5の項が新設されました2。対象は、ロンドン議定書(1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書)の附属書一に定める処分、つまり海底下の地層への貯留のために輸出する二酸化炭素を含んだガスです。経済産業省の一覧では「CCS目的の二酸化炭素を含んだガス」と書かれています3。
手続きは、経済産業省の輸出注意事項2026第1号「二酸化炭素を含んだガスの輸出承認について」(2026年1月13日制定、1月19日施行)が定めています。申請できるのは、資源エネルギー庁の要領にもとづく「二酸化炭素を含んだガスの輸出確認証」の交付を受けた者です。承認は、日本と輸入国の間に、ロンドン議定書などの国際法に沿って許可の責任を確認・配分する協定や取決めがあり、その内容に沿った輸出である場合に限られます。申請書は貿易経済安全保障局の貿易審査課に出し、申請理由書、輸出契約書の写し、確認証の写しを添えます18。電力、鉄鋼、化学、エンジニアリングの会社で海外CCSの案件に関わる方は、別表第2の話として社内の担当を決めておくとよいでしょう。
承認が要らない場合、申請の手続き、無承認輸出の罰則
承認の特例は、別表第1より狭いと考えておくのが安全です。輸出令第4条第3項は、仮に陸揚げした貨物の輸出、別表第5の貨物(無償の救じゅつ品、総価額200万円以下の無償の商品見本や宣伝用物品など)、別表第6の携帯品などについて第2条を適用しないと定めています。ただ、どの特例にも例外が付いていて、たとえば無償の商品見本の特例は、ダイヤモンド、ワシントン条約の対象物、水銀、一部の化学品には使えません。37〜41の項と43〜45の項には、どの特例も使えません2。
少額特例も限られています。第4条第4項と別表第7が定めるのは、21の3の項のうちアセトンやエチルエーテルなど省令で定める物質(総価額30万円以下)、19の項の血液製剤(5万円以下)、30の項と34の項(3万円以下)の3区分だけです2。別表第1のように「少額だから大丈夫」と考える余地は、別表第2にはほとんどありません。
申請の手続きは輸出貿易管理規則(昭和24年通商産業省令第64号)が定め19、項ごとの細かな運用は経済産業省の通達(「輸出貿易管理令の運用について」や、項ごとの輸出注意事項)で決まります。承認の有効期間は、承認の日から6か月が原則です。経済産業大臣が特に必要と認めれば、別の期間を定めたり延長したりできます(輸出令第8条)2。取引の内容が変われば取り直しになることもあるので、承認書の条件は必ず読んでください。
そして罰則です。承認は許可より軽いから多少ルーズでもいい、という感覚は危険な誤解です。別表第2に当たる貨物を承認を受けずに輸出すると、外為法第69条の8第1項第4号により、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方です。目的物の価格の5倍が1,000万円を超えるときは、罰金の上限は価格の5倍になります。法人には第72条により5億円以下(価格の5倍が上回ればその額まで)の罰金が科されます1。
刑事罰とは別に、行政制裁もあります。外為法第53条第2項にもとづく輸出入の禁止で、期間は1年以内が原則です。ただし、第10条第1項の閣議決定にもとづく対応措置のうち輸出承認・輸入承認に関わるものに違反した場合は、3年以内まで延びます1。北朝鮮に対する措置は、この閣議決定にもとづく対応措置です4。経済産業省が公表した処分では、ロシアへのバイクの無承認輸出に1年間、北朝鮮産のしじみの無承認輸入に3年間の禁止が科されています。事例と罰則の全体は外為法違反の罰則一覧と事例で整理しました。輸出入を止められれば、輸出で稼ぐ会社にとっては事業停止に近い打撃です。
初版(2026年7月)から何が変わったか。当時と現在
この記事の初版は2026年7月19日です。その後の約2か月半で、別表第2そのものの条文は変わっていません。ただ、初版を書いた時点で拾いきれていなかった変化と、説明の誤りがありました。手元の資料と見比べやすいよう、表にまとめます。
| 項目 | 初版(2026年7月19日)の記述 | 現在(2026年10月4日に確認) |
|---|---|---|
| e-Govの現行版 | 2026年6月5日施行版 | 同じ。別表第2系の表は2026年1月19日施行版から変わっていない2 |
| 35の5の項 | 「海洋投棄用二酸化炭素」 | CCS(海底下の地層への貯留)のために輸出する二酸化炭素を含んだガス。2026年1月19日新設。申請者は資源エネルギー庁の輸出確認証が必要18 |
| 33の項 | 削除済みの番号として記載 | 2025年12月1日にうなぎの稚魚が削除された |
| 北朝鮮向け | 「別表第2の2に置かれる」とだけ記載 | 別表第2の2は奢侈品など36行の表。附則の読み替えで2027年4月13日まで、北朝鮮向けのすべての貨物に承認義務がかかり、輸出は禁止4 |
| ロシア・第三国向け | 別表第2の3と2の4とだけ記載 | 別表第2の4は10か国の表で、告示で指定された者との取引に限る。2026年10月2日に第三国の4団体を追加6 |
| 行政制裁の期間 | 承認違反は最長3年 | 原則1年以内。閣議決定にもとづく対応措置の違反は3年以内(外為法第53条第2項)1 |
| 化審法の指定 | 記載なし | 2026年6月17日にPFHxS関連物質、11月22日にLC-PFCAなど4物質群が第一種特定化学物質に。35の3の項の対象が増える15 |
| ワシントン条約 | 記載なし | CoP20の附属書改正が2026年3月5日に発効(一部は2027年6月5日)12 |
| 少額特例・有効期間 | 記載なし | 少額特例は別表第7の3区分だけ。承認の有効期間は原則6か月2 |
初版の誤りは二つありました。一つは北朝鮮向けの説明で、「別表第2の2」を北朝鮮向けの規制の置き場所とだけ書いていました。条文を読むと、別表第2の2自体は奢侈品の表で、いまの全面的な承認制は附則の読み替えで成り立っています。もう一つは行政制裁で、承認違反を一律に最長3年と書いていましたが、条文上は1年以内が原則です。どちらも、条文を一次情報で読み直して見つけました。
いま振り返って感じるのは、別表第2は「表そのものは静か、周辺は騒がしい」ということです。2026年に入ってからの条文改正は35の5の項の新設だけでしたが、化審法の指定、ワシントン条約の附属書、ロシア関連の告示は、輸出令とは別のルートで動き続けています。別表第1は年1回の定例改正を軸に追いかけられますが、別表第2はそうはいきません。
確認の順番を決めておく。別表第1で止めないために
ここまでの話を、実務の確認順に並べ直しておきます。私がおすすめしているのは、少なくとも次の五つを毎回通すことです。一つめは、別表第1のリスト規制に当たるか。二つめは、非該当ならキャッチオール規制(用途や需要者による規制)の確認。三つめは、別表第2の承認対象か、下欄の地域まで含めて確かめること。四つめは、仕向地と取引相手が北朝鮮・ロシア・ベラルーシ関連の措置や告示の指定に当たらないか。五つめは、ワシントン条約、文化財保護法、廃棄物処理法、関税法といった他の法令に触れないか。別表第1で止まると、残りの四つを丸ごと見落とします。キャッチオール規制の考え方はリスト規制とキャッチオール規制の違いで解説しています。
これを手作業で、しかも改正のたびに追いかけて回すのは、正直かなりの負担です。当社のTRAFEEDで何ができて何ができないかも、はっきり書いておきます。TRAFEEDは輸出管理のAIエージェントで、部品表や製品仕様から、輸出令別表第1と外為令別表に照らした該非判定の下書きを根拠付きで作ります。岡山大学との共同実証では、過去の審査データ約3万件をもとに、この該非判定でAI判定精度95%以上を確認しました(2026年3月時点・自社調べ)。取引先を経済産業省の外国ユーザーリストや米国の統合スクリーニングリストなどと照合する機能もあります。一方で、別表第2の承認要否そのものは、いまのTRAFEEDの判定対象に入っていません。上の三つめは、この記事の一覧と経済産業省の案内を使って、人の目で確かめてください。最終的な判定と承認要否の判断は、貴社の輸出管理責任者が行うものです。製品の詳細はTRAFEEDのサービスページにまとめています。
最後に、明日からできることを挙げておきます。
- 自社の取扱品目を、この記事の23行と照らして一度棚卸しする(下欄の地域まで)
- 化学品を扱うなら、化審法などの参照先の改正を追う担当を決める
- 北朝鮮・ロシア・ベラルーシと別表第2の4の10か国向けの取引は、告示の指定と突き合わせる手順を作る
- 特例と少額特例が別表第1より狭いことを、営業や物流の担当にも伝えておく
別表第2は、武器でも先端技術でもない、ごく普通の革製品や中古の資材や化学品が対象になりうる表です。地味なぶん抜けやすく、抜けたときの罰則は5年です。自社のケースが承認の対象になるのか迷う、体制づくりから相談したいという場合は、輸出管理の個別相談(TRAFEED)からお声がけください。具体的な状況に合わせて一緒に整理します。
参考文献・一次情報
Footnotes
-
e-Gov法令検索「外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)」第10条・第48条・第53条・第69条の7・第69条の8・第72条(2026年8月12日施行版。2027年1月4日施行予定の改正でもこれらの規定は変わらないことを確認、2026年10月4日) https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000228/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
e-Gov法令検索「輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)」。現行の2026年6月5日施行版(令和8年政令第194号による改正)の第2条・第4条・第8条・附則第3項・別表第2〜第2の4・別表第5・別表第7と、改正履歴(令和7年政令第177号・第376号・第382号)の各施行版を当社で比較(2026年10月4日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/324CO0000000378/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17
-
経済産業省「輸出承認対象貨物一覧」(最終更新2026年6月10日) https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/04_kamotsu/01_export/export_kamotsu.html ↩ ↩2
-
経済産業省「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮に係る対応措置について」(2025年4月8日閣議決定、措置期間2025年4月14日〜2027年4月13日) https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250408002/20250408002.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
e-Gov法令検索「輸出貿易管理令別表第二の三の規定に基づき貨物を定める省令」(令和4年経済産業省令第15号、最終改正は令和7年経済産業省令第1号・2025年1月23日施行) https://laws.e-gov.go.jp/law/504M60000400015 ↩
-
外務省・財務省・経済産業省「ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について」(2026年10月2日) https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/01_seido/04_seisai/downloadCrimea/20261002press_russia.pdf ↩ ↩2
-
経済産業省「対ロシア等制裁関連」 https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/01_seido/04_seisai/crimea.html ↩
-
経済産業省「ダイヤモンド原石の輸出(キンバリー・プロセス)」 https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/05_diamond/kimberley_ex.html ↩
-
経済産業省「ワシントン条約について」 https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_about.html ↩
-
税関「ワシントン条約」 https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/washington/topcontents_jr.htm ↩
-
JETRO「ワシントン条約に基づく輸出入規制:日本」(貿易・投資相談Q&A) https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010911.html ↩
-
米国魚類野生生物局「CITES CoP20 Amendments to Appendices I and II」(Public Bulletin PB 26-001、2026年1月13日) https://www.fws.gov/sites/default/files/documents/2026-01/ole-public-bulletin-cites-cop20-amendments-to-appendices-i-and-ii-pb-26-001-01_13_2026.pdf ↩ ↩2
-
税関「輸出関係他法令一覧表」 https://www.customs.go.jp/yusyutu/2021_1/data/export.htm ↩
-
経済産業省「委託加工貿易(革、毛皮、皮革製品等)」 https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_export/16_itaku/index.html ↩
-
e-Gov法令検索「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令」改正履歴(令和7年政令第416号・2026年6月17日施行、令和8年政令第171号・2026年11月22日施行)と第1条の比較(2026年10月4日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/349CO0000000202 ↩ ↩2
-
経済産業省「『化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令』が閣議決定されました」(2026年5月19日) https://www.meti.go.jp/press/2026/05/20260519001/20260519001.html ↩
-
CISTEC「パラメータシート 輸出貿易管理令 別表第2関連〈別表第2化学品関連〉」(2025年10月、令和7年10月22日施行政省令等対応) https://cistec.or.jp/publication/20251022-betsu2_mushou.pdf ↩
-
経済産業省 輸出注意事項2026第1号「二酸化炭素を含んだガスの輸出承認について」(2026年1月13日制定、1月19日施行) https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/download/export/2026/20260113_01_ex.pdf ↩ ↩2
-
輸出貿易管理規則(昭和24年通商産業省令第64号/日本法令索引・国立国会図書館) https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000041858¤t=-1 ↩






