輸出管理用語集|該非判定・外為法・EARなど40語を初心者向けに解説
株式会社TIMEWELLの濱本です。海外取引を担当していると、「該非判定」「キャッチオール規制」「EAR」といった聞き慣れない言葉が次々と出てきます。輸出管理は国際的な安全保障に直結する分野で、用語の理解不足が法令違反につながるリスクもあります。この用語集では、輸出管理に携わるうえで避けて通れない40の基本用語を、初めてこの分野に触れる方にも伝わるように整理しました。
目次
日本の輸出管理制度編
外為法(がいためほう / 外国為替及び外国貿易法) — 海外に製品を出すなら、まずこの法律です。日本の輸出管理の根幹であり、モノ(貨物)の輸出と技術の提供を規制しています。武器や軍事転用可能な製品が不適切な相手に渡るのを防ぐ役割があり、海外取引のあるすべての企業に関係します。
輸出貿易管理令(ゆしゅつぼうえきかんりれい / 輸出令) — 外為法に基づく政令で、どの貨物(モノ)が輸出規制の対象かを具体的に定めています。別表第一の1〜15項にリスト規制品目が、16項にキャッチオール規制の対象品目が記載されています。輸出実務ではこの別表と照合する作業が基本です。
外国為替令(がいこくかわせれい / 外為令) — 外為法に基づくもう一つの政令で、技術の提供を規制しています。設計図やソフトウェア、口頭での技術指導なども規制対象になり得る点が特徴です。
該非判定(がいひはんてい) — 輸出管理の「一丁目一番地」がこの作業です。輸出しようとする製品や技術が、規制リストに「該当するか、非該当か」を一つずつ照合して判定します。間違えれば法令違反。だからこそ、時間も神経も使う。TIMEWELLの「EX-Check」はこの該非判定をAIで支援し、判定にかかる時間と見落としリスクを大幅に削減します。
リスト規制 — 輸出令別表第一の1〜15項に掲載された、特定の性能や仕様を持つ製品・技術を規制する仕組みです。たとえば「周波数安定度が○○以下の発振器」のように、細かいスペックで規制対象が決まります。どの国に輸出する場合でも適用されます。
キャッチオール規制(補完的輸出規制) — リスト規制という「ザル」の目をすり抜けたものまで拾い上げる仕組みです。リストには載っていない製品でも、大量破壊兵器や通常兵器の開発に使われる恐れがあれば規制対象になります。「うちの製品はリスト規制に非該当だから大丈夫」と安心してはいけない理由が、このキャッチオール規制の存在です。
経済産業省(けいざいさんぎょうしょう / METI) — 日本の輸出管理を所管する省庁です。輸出許可の審査、規制品目の告示、違反への処分などを担当しています。
CISTEC(システック / 安全保障貿易情報センター) — 日本の安全保障貿易管理を支援する一般財団法人です。該非判定のための各種ツール、研修、最新規制情報の提供を行っています。輸出管理担当者にとって日常的に利用する機関です。
該非判定書(がいひはんていしょ) — 該非判定の結果を記録した書類です。「この製品はリスト規制に非該当である」「この技術は○○項に該当する」という判定結果と根拠を文書化します。取引先や税関から提示を求められることがあります。
パラメータシート — 該非判定の「カンペ」のような存在。製品の技術仕様を、規制項目に沿って整理した書類で、メーカーが作成して輸出者に提供します。これが不正確だと判定自体が狂うため、正確な記載が絶対条件です。
ここからは日本を飛び出して、国際的な枠組みの話です。略語が多くて面食らいますが、「何を防ぐための集まりか」で分類すると覚えやすくなります。
国際レジーム・多国間枠組み編
ワッセナーアレンジメント(Wassenaar Arrangement / WA) — 通常兵器と軍民両用品目の輸出を管理するための国際的な枠組みです。42か国が参加しており、日本も加盟しています。各国はWAの合意に基づいて国内規制を整備しますが、法的拘束力はなく、最終判断は各国に委ねられています。
NSG(Nuclear Suppliers Group / 原子力供給国グループ) — 核兵器の拡散防止を目的とした国際的な輸出管理レジームです。ウランの濃縮設備や原子炉関連資材などの輸出を管理しています。
MTCR(Missile Technology Control Regime / ミサイル技術管理レジーム) — 大量破壊兵器の運搬手段となるミサイルやロケット技術の拡散を防止するための国際的な枠組みです。射程300km以上・ペイロード500kg以上のミサイル関連品目が主な管理対象です。
AG(Australia Group / オーストラリア・グループ) — 化学兵器・生物兵器の拡散防止を目的とした国際的な輸出管理レジームです。化学物質や生物剤、関連する製造装置の輸出を管理しています。
大量破壊兵器(WMD / Weapons of Mass Destruction) — 核兵器、化学兵器、生物兵器、およびそれらの運搬手段(ミサイル等)を総称した言葉です。輸出管理の最大の目的は、これらが不適切な国や組織に渡ることを防ぐことです。
デュアルユース(Dual-use / 軍民両用) — 「うちの製品は民生品だから関係ないだろう」——この思い込みが最も危ない。民生用にも軍事用にも転用できる製品・技術のことで、工作機械、高性能コンピュータ、暗号ソフトウェアなどが典型例。普通の町工場の旋盤でも、精度次第では規制対象になり得ます。
次は米国の輸出管理制度。日本企業であっても米国製の部品やソフトウェアを使っていれば無関係ではいられません。
米国の輸出管理制度編
EAR(Export Administration Regulations / 輸出管理規則) — 「アメリカの法律なのに、なぜ日本企業に関係するの?」と聞かれることが多い規則です。米国製品だけでなく、米国原産の技術や部品を一定割合以上含む海外製品にも適用されるのがポイント。日本で作った製品でも、米国製の半導体やソフトウェアが入っていれば、第三国に輸出する際にEARの許可が必要になる場合があります。
ITAR(International Traffic in Arms Regulations / 国際武器取引規則) — 米国国務省が管轄する、軍事品目に特化した輸出管理規則です。米国軍需品リスト(USML)に掲載された品目はITARの管理下に置かれ、EARより厳格な規制が適用されます。
ECCN(Export Control Classification Number / 輸出管理分類番号) — EARの対象品目に付与される5桁の識別番号です。最初の数字がカテゴリ(電子機器、コンピュータ等)、続くアルファベットが品目の種類(装置、ソフトウェア、技術等)を示します。たとえば「3A001」は電子機器カテゴリの装置を意味します。
EAR99 — ECCNに分類されない低リスクの品目に付けられる包括的な区分です。一般的な民生品の多くはEAR99にあたりますが、だからといって規制なしで輸出できるわけではなく、禁輸国やエンドユーザー制限の確認は必要です。
BIS(Bureau of Industry and Security / 産業安全保障局) — 米国商務省の機関で、EARの運用と執行を担当しています。輸出許可の審査、規制品目リストの更新、違反企業への制裁措置などを行います。
Entity List(エンティティリスト) — いわば「取引要注意リスト」。米国政府が安全保障上の懸念ありと指定した外国の企業・組織が掲載されており、このリストに載っている相手への輸出は原則として個別許可が必要です。2019年にファーウェイが掲載されたことでニュースになりましたが、リストは頻繁に更新されるため、定期的なチェックが欠かせません。
SDN List(Specially Designated Nationals List) — 米国財務省OFAC(外国資産管理室)が管理する制裁対象者リストです。このリストに載っている個人や組織との取引は全面的に禁止されます。Entity Listより厳しい措置です。
de minimis(デミニミス)規制 — 料理に例えるなら、「アメリカ産の食材が25%以上入っていたら、アメリカのルールに従ってください」という規制です。米国原産の部品や技術が一定割合(通常25%、一部の国向けは10%)以上含まれる外国製品にもEARが適用されます。日本で組み立てた製品でも、米国製チップの調達比率を把握していないと痛い目に遭います。
余談ですが、de minimis比率の計算は見た目より厄介です。ソフトウェアのライセンス費用を含むのか、サブコンポーネントまで遡るのか——解釈がグレーな部分もあり、実務では専門家に相談するのが無難です。
ここからは実務の手続き寄りの話です。「包括」と「個別」の違い、みなし輸出など、知らないと実務で手が止まる用語が並びます。
手続き・許可制度編
包括許可(ほうかつきょか) — 「毎回申請するのが大変」を解消する仕組み。一定の条件を満たす取引なら、案件ごとの個別申請なしに輸出を認める許可制度です。信頼性の高い国や取引先への反復的な輸出に適用され、手続きの効率化が図れます。
個別許可(こべつきょか) — 一つの取引ごとに経済産業大臣(日本の場合)に申請して取得する輸出許可です。リスト規制に該当する品目を規制地域に輸出する場合や、キャッチオール規制に抵触する場合に必要になります。
許可例外(License Exception) — 米国EARにおいて、本来は許可が必要な品目であっても、特定の条件下で許可なしに輸出を認める制度です。対象品目や仕向地によって複数の許可例外が設けられています。
みなし輸出(Deemed Export) — モノを国外に出していなくても「輸出」になる、というのがこの規定の怖いところです。国内にいる外国籍の人に規制技術を提供することが輸出と「みなされ」ます。2022年に管理が厳格化され、社内の外国人エンジニアへの技術開示も対象に。「国境を越えていないから大丈夫」とは言えません。
技術提供(Technology Transfer) — 設計図の受け渡しだけが技術提供ではありません。口頭での説明、メール送信、クラウドストレージでの共有——形を問わず、規制技術の情報を外国に提供する行為はすべて該当します。
ここで一つ、意外と見落とされがちな話をします。海外の展示会でエンジニアが製品デモを行い、「この部品の精度はどれくらい?」と聞かれて答えるのも、内容次第では技術提供にあたります。対面のカジュアルなやりとりでも規制の対象になる——この認識が現場に浸透していないケースは少なくありません。
エンドユーザー(End User / 最終需要者) — 輸出した製品や技術を最終的に使用する者のことです。直接の取引先(バイヤー)とは異なる場合があり、最終的にどこの誰が使うのかを確認する義務が輸出者にあります。
最終用途(End Use) — 輸出した製品や技術が最終的にどのような目的で使用されるかを指します。同じ製品でも、民間の研究開発に使うのか、兵器製造に使われるのかで規制の適用が変わります。
用途確認(End-use Check) — 輸出する製品が最終的にどのような用途で使われるかを確認する手続きです。取引先からの誓約書の取得や、公的機関のリスト照合などで行います。
輸出者等遵守基準(ゆしゅつしゃとうじゅんしゅきじゅん) — 輸出者が組織として守るべき輸出管理の体制基準です。経済産業省が定めており、該非判定の手続き、出荷管理、監査体制などを整備することが求められます。一定規模以上の輸出を行う企業では、社内コンプライアンス・プログラム(CP)として文書化するのが標準です。
ICP(Internal Compliance Program / 社内管理規程) — 包括許可を取りたいなら、まずICPの整備から。企業が自主的に策定する輸出管理の社内規程で、該非判定の手順、取引審査のフロー、教育訓練の計画などを文書化したものです。経済産業省の包括許可取得にはICPが前提条件となっています。
対象・分類編
規制品目(Controlled Items) — 輸出管理法令によって規制されている製品や技術のことです。日本では輸出令別表第一・外為令別表に記載されたもの、米国ではCCLに掲載されたものが規制品目にあたります。
CCL(Commerce Control List / 商務省規制品目リスト) — EARの「規制品目カタログ」。ワッセナーアレンジメントのリストをベースに米国独自の品目も追加されており、各品目にECCNが割り振られています。
まとめ
輸出管理の用語は専門的で取っつきにくいものが多いですが、基本的な考え方はシンプルです。
押さえておきたいポイントを整理します。
- 日本の輸出管理は外為法が根拠で、リスト規制とキャッチオール規制の二本柱
- 該非判定は輸出管理の最重要工程であり、製品ごとに必ず実施する
- 米国のEARは日本企業にも波及する場合があるため、米国製部品の使用状況を把握すること
- 国際レジーム(WA、NSG、MTCR、AG)の動向が各国の規制に反映される
- みなし輸出など、モノを国外に出さなくても規制がかかるケースがある
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