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DX推進チームの立ち上げ方|3つの組織パターンと必要スキルの全体設計

2026-02-12濱本竜太

DX推進チームの立ち上げ方を組織パターン別に解説。集約型・分散型・ハイブリッド型の比較、必要スキルマトリックス、12か月のロードマップをCTO・CDO向けにまとめました。

DX推進チームの立ち上げ方|3つの組織パターンと必要スキルの全体設計
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DX推進チームの立ち上げ方|3つの組織パターンと必要スキルの全体設計

株式会社TIMEWELLの濱本です。

「DX推進の専任組織を作れ」。経営トップからこの指示を受けたCTOやCDO、あるいは経営企画の方は少なくないはずです。ただ、「組織を作れ」と言われても、何人で、どんなスキルを持った人材を、どう配置すればいいのか。設計図がなければ、形だけのチームになって終わります。

IPAの「DX動向2025」によれば、日本企業の85.1%がDX推進人材の不足を感じている。米国の23.8%、ドイツの44.6%と比べると圧倒的に足りていません。経済産業省は2030年までに最大79万人のIT人材が不足すると推計しています。外から人を採ってくるだけでは解決しない。社内の人材を育てながら、外部の知見も取り込む組織設計が求められます。


DX推進チームの3つの組織パターン

組織形態は大きく3つに分かれます。自社の規模、DXの成熟度、経営の優先度に応じて選んでください。

パターン比較表

項目 集約型(CoE) 分散型 ハイブリッド型
体制 経営直下に専任チームを設置 各事業部にDX担当者を配置 中央チーム+各事業部の兼任者
人数の目安 5〜15名(専任) 事業部あたり1〜2名(兼任含む) 中央3〜5名+各部1〜2名
意思決定 中央集権的、トップダウン 各部門で自律的に判断 方針は中央、実行は部門
推進スピード 速い(全社横断で動ける) 部門ごとにばらつきあり 中程度(調整コストが発生)
現場との距離 遠くなりがち 近い 中程度
ナレッジ共有 チーム内で完結しやすい 部門間で分断されやすい 中央が横串で共有を促進
適する企業規模 大企業(従業員1,000名以上) 中堅企業、事業部制の企業 中堅から大企業
適するDX成熟度 初期から中期 中期から成熟期 初期から成熟期
リスク 現場と乖離する「象牙の塔」化 全社統制が効かず品質がばらつく 役割分担が曖昧になる

集約型(CoE)

経営直下にDX推進の専任組織を設置し、全社のDX施策を一元管理するモデルです。Center of Excellenceの略でCoEと呼ばれます。

向いている企業は、DXの初期段階で全社的な方針統一が必要なケース、経営トップが強いコミットメントを持っているケース、デジタル人材が限られており集中配置したいケースです。

気をつけたいのは、現場の業務を知らないメンバーだけで構成しないこと。そうなると「机上の空論」で終わります。現場経験のあるメンバーを必ず含めてください。事業部門から「あの部署は何をやっているのか」と思われた時点で、推進力は半減します。

分散型

各事業部門にDX推進の担当者を置き、部門ごとに自律的にDXを進めるモデル。

向いているのは事業部門の独立性が高い企業、各部門が独自の業務課題を抱えている企業、DXの成熟度がある程度進んでいる企業です。

ただし、全社で統一すべきルールは中央で策定しなければなりません。セキュリティポリシー、ツール選定基準、データガバナンスの3つは最低限。各部門が好き勝手にツールを導入すると、セキュリティリスクやコストの無駄が発生します。

ハイブリッド型

中央にコアチームを置きつつ、各事業部門にDX推進の兼任者を配置するモデル。私は多くの企業にとって、最もバランスが取れた選択肢だと考えています。

向いているのは、部門横断の施策と部門固有の施策を両方進めたい企業、中央チームの人数に限りがある企業です。

注意点は1つ。中央チームと事業部担当者の役割分担を明文化すること。「誰がどの意思決定をするのか」が曖昧だと、責任の押し付け合いか、逆にどちらも手を出さない空白地帯が生まれます。


必要スキルマトリックス

DX推進チームに必要なスキルを、経済産業省とIPAの「デジタルスキル標準」を参考に整理します。

人材類型と必要スキル

人材類型 主な役割 必要スキル 社内調達 外部調達
ビジネスアーキテクト DX戦略の立案、業務設計 経営戦略の理解、業務プロセス設計、ステークホルダー調整 経営企画や事業企画出身者 戦略コンサル
プロジェクトマネージャー 施策の推進管理 プロジェクト管理、リスク管理、ベンダー管理 IT部門やPMO出身者 PM専門人材
データサイエンティスト データ分析、AI活用 統計解析、機械学習、ビジネスインサイト抽出 分析部門出身者 データ分析会社
ソフトウェアエンジニア システム構築、ツール連携 クラウド、API連携、セキュリティ 開発部門出身者 SIerやフリーランス
UXデザイナー ユーザー体験の設計 ユーザーリサーチ、プロトタイピング デザイン部門出身者 デザイン会社
チェンジマネージャー 組織変革の推進 社内コミュニケーション、研修設計、抵抗管理 人事や広報出身者 組織コンサル

スキルの優先順位

すべてのスキルを初日から揃える必要はありません。立ち上げ期に最低限必要なのは3つ。

  1. ビジネスアーキテクト。何をやるかを決める人。DX戦略と業務課題をつなげられる人材
  2. プロジェクトマネージャー。やると決めたことを推進する人。スケジュールと品質を管理する
  3. チェンジマネージャー。変革に対する現場の抵抗を管理し、社内の巻き込みを推進する人

技術系の人材、つまりデータサイエンティストやエンジニアは外部パートナーで補完できます。ビジネス側の人材は社内から出さなければ機能しません。自社の業務と組織を理解している人間でなければ、現場に刺さる施策は設計できない。ここは妥協しないでほしい。


チームメンバーの選定基準

「誰をアサインするか」は、DX推進チームの成否を決める最大の変数です。

選ぶべき人材の特徴

特徴 理由 見極め方
現場経験がある 業務課題を肌感覚で理解している 直近3年以内に現場業務に従事した経験
部門横断の調整ができる DXは複数部門にまたがる 過去に部門横断プロジェクトに参加した経験
変化を恐れない 前例踏襲では変革は起きない 新しい取り組みを自ら提案・実行した実績
学習意欲が高い 技術は常に進化する 自主的に勉強会や資格取得に取り組んでいる
経営視点を持っている DXは経営課題 事業のP/Lや競争環境を語れるかどうか

避けるべきアサインパターン

ここは辛口で書きます。

「余剰人員の受け皿」にするのは最悪の選択です。「手が空いている人」を集めてもDXは進まない。それならチームを作らないほうがまし。

IT部門だけで構成するのも失敗の典型。技術視点に偏り、ビジネス成果につながりません。

兼任比率が高すぎるのも問題。本業が忙しくなるとDXが後回しになる。最低でもリーダーは専任にしてください。


12か月の立ち上げロードマップ

DX推進チームの立ち上げから成果創出までの12か月を、4つのフェーズに分けます。

Phase 1:準備期(1〜2か月目)

タスク 担当 アウトプット
DX戦略の策定 経営層+ビジネスアーキテクト DX方針書(3〜5ページ)
組織形態の決定 経営層 組織図、レポートライン
メンバーの選定とアサイン 人事+経営層 チーム編成表
外部パートナーの選定 PM 契約書、SLA
現状分析(業務課題の棚卸し) 全メンバー 課題一覧と優先順位表

ゴールは、チームの体制が確定し、最初に取り組むテーマが決まっている状態です。

Phase 2:実証期(3〜5か月目)

タスク 担当 アウトプット
PoCテーマの選定と設計 ビジネスアーキテクト+PM PoC計画書
PoCの実施 技術メンバー+現場担当 検証結果レポート
効果測定と判断 PM+経営層 Go/Stop判断資料
社内への中間報告 チェンジマネージャー 報告資料、社内広報
第2テーマの検討開始 ビジネスアーキテクト テーマ候補リスト

ゴールは、最低1つのPoCが完了し、本番導入の判断ができている状態。

Phase 3:展開期(6〜9か月目)

タスク 担当 アウトプット
PoCで検証済み施策の本番導入 PM+技術メンバー 運用マニュアル、導入完了報告
対象部門への研修と説明会 チェンジマネージャー 研修資料、FAQ
KPIモニタリングの開始 PM 月次レポート
第2テーマのPoC開始 全メンバー PoC計画書
成功事例の社内共有 チェンジマネージャー 事例集、社内メディア

ゴールは、1つ目の施策が本番運用に入り、2つ目のPoCが進行中であること。成功事例が社内に共有されている状態です。

Phase 4:定着期(10〜12か月目)

タスク 担当 アウトプット
年間成果の集計と報告 PM 年次報告書
次年度DX計画の策定 ビジネスアーキテクト+経営層 次年度計画書
チーム体制の見直し 経営層+人事 改定組織図
ナレッジの体系化 全メンバー DXプレイブック
社内人材育成プログラムの設計 チェンジマネージャー 育成計画書

ゴールは、初年度の成果が定量的に報告され、2年目の計画と体制が承認されている状態。ここまで来れば、チームの存在意義は社内に認知されているはずです。


立ち上げ時のよくある壁と乗り越え方

壁1:「DXって何をすればいいのか分からない」

DX推進チームに配属された直後、メンバーの多くが感じる不安です。

対策はシンプルで、最初の2か月で具体的なテーマを1つ決め、小さな成果を出す。大きなビジョンは後から語ればいい。「これをやりました、こう変わりました」という実績が、チームの自信とモチベーションを生みます。

壁2:「現場から協力が得られない」

DX推進チームが現場に「新しいツールを使ってください」と依頼しても、「忙しいのに余計な仕事を増やすな」と拒否される。よくある話です。

乗り越え方は2つ。1つは、現場が感じている困りごとを起点にすること。「このツールを使え」ではなく「この困りごとを解決するためにこういう方法がある」というアプローチに変える。もう1つは、協力的な部門から始めること。全部門を同時に動かそうとせず、味方になってくれる部門で成果を出し、それを横展開するほうが現実的です。

余談ですが、私がこれまで見てきた中で、現場の協力を一番うまく引き出していたDX推進リーダーは、元営業部長の方でした。「数字で語れる」「現場の痛みが分かる」「人脈がある」の三拍子が揃っていた。技術力よりも、こうした現場との接点を持つ人がリーダーに向いていると思います。

壁3:「経営層の関心が薄れる」

立ち上げ時は注目されていたのに、半年も経つと経営会議でDXの話題が出なくなる。

対策は、月次で定量的な進捗を経営層に報告すること。「何件のPoCを実施し、何時間の業務削減を達成し、次は何に取り組むか」を数字で示す。報告がなければ関心は薄れます。毎月具体的な数字を出し続ければ、経営層の支援は継続する。報告書を作る手間を惜しんではいけません。


まとめ

DX推進チームの立ち上げで考えるべきことは多いですが、最初の一手は組織パターンの選定です。集約型、分散型、ハイブリッド型のどれが自社に合うかを決めてください。迷ったらハイブリッド型から始めるのが無難です。

組織パターンが決まったら、ビジネスアーキテクト、PM、チェンジマネージャーの3名を確保する。技術は外部で補える。この3名の質がチームの命運を握ります。

12か月で最低1つの本番導入と成果報告を達成すること。それがチームの存続と2年目以降の予算確保を決めます。DX推進チームは「作って終わり」ではなく、成果を出し続けることで社内での存在意義を証明する組織。最初の1年が勝負です。


TIMEWELLのWARPでは、DX推進チームの立ち上げから運用まで、組織設計、人材育成、施策推進を一気通貫で支援しています。元大手企業でDXやデータ戦略を推進してきた専門家が、御社の組織状況に合わせたチーム設計と立ち上げロードマップを一緒に作ります。組織形態の選定で迷っている、メンバーのスキル要件を整理したいといった段階から、お気軽にお問い合わせください。

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