株式会社TIMEWELLの濱本です。
「あの手順書、どこにあったっけ?」「前任者のやり方がわからない」。こういう声、自分の職場でも聞き覚えがあるのではないでしょうか。IDC Japanの調査では、ナレッジワーカーが情報検索に費やす時間は業務時間の約20%。年間営業日を240日で計算すると、ひとりあたり約48日を「探しもの」に使っています。
ここでは、社内ナレッジベースをゼロから構築して定着させるまでの全手順を7つのステップにまとめました。ツール選定の判断基準表や運用ルールのテンプレートもそのまま使えます。「構築したけど誰も使わない」という、よくある落とし穴の避け方にも踏み込んでいます。
そもそもナレッジベースとは何か
ナレッジベースは、業務に必要な知識やノウハウを整理・蓄積して、社内の誰もが参照できるようにした情報基盤です。紙のマニュアル棚をデジタル化し、検索できるようにしたもの、と考えるとわかりやすい。
似た用語が多いので、違いを整理しておきます。
| 用語 | 主な用途 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| ナレッジベース | 業務知識の体系的な蓄積と検索 | 構造化された情報、検索性重視 | ZEROCK、Confluence |
| 社内Wiki | 共同編集によるドキュメント管理 | 自由度が高い、更新履歴管理 | NotePM、Notion |
| FAQ | よくある質問と回答の一覧 | 定型的な問い合わせ対応 | Zendesk、Helpfeel |
| ファイルサーバ | ファイル単位の保存と共有 | フォルダ階層管理、検索性は低い | SharePoint、Google Drive |
| グループウェア | コミュニケーションとスケジュール管理 | 情報のフロー管理が中心 | Teams、Slack |
ナレッジベースの核は「蓄積された情報に、必要な人が、必要なときにたどり着ける仕組み」です。ツールを入れたらゴールではなく、情報が流通する仕組みを作ること自体がゴール。この前提がないまま進めると、途中で判断に迷います。
なぜ今、ナレッジベース構築が急務なのか
背景は大きく3つあります。
人材の流動化で知識が消える
転職が当たり前になった結果、ベテラン社員が辞めるたびにノウハウがごっそり抜ける。コマツは法務部門にナレッジベースを導入し、契約検討業務の時間を40%短縮しました。年間200件だった契約相談の処理件数は3,000件まで拡大。属人化を放置するとどれだけ損失が大きいか、この数字がよく示しています。
AI活用には土台がいる
生成AIを社内業務に使うには、そもそも社内の情報がデジタル化・構造化されている必要があります。RAGで社内AIを作ろうとしても、元のデータが散らばっていれば回答精度は出ません。ナレッジベースはAI活用の前提条件です。
リモートワークが定着した
隣の席の先輩に「ちょっと聞く」ができない環境では、セルフサービスで情報にアクセスできないと仕事が止まります。
7ステップで進める構築手順
ステップ1:目的と対象範囲を決める
最初にやること。「何のために、誰のために作るか」をはっきりさせる。ここが曖昧なまま始めると、情報の集め方も構造もぼやけて、結局使われないナレッジベースが出来上がります。
次の3つの質問に答えてみてください。
- 誰が使うのか?(全社なのか、特定の部門なのか、特定の職種なのか)
- 何を解決したいのか?(問い合わせを減らしたいのか、オンボーディングを短縮したいのか、属人化を防ぎたいのか)
- 成功の指標は何か?(検索の利用率か、問い合わせ件数の減少率か、利用者の満足度か)
ありがちな落とし穴は「全社の情報を全部入れよう」と風呂敷を広げすぎること。まず1つの部門、1つの課題に絞って始めるほうが確実です。
ステップ2:既存の情報資産を棚卸しする
社内に散在する情報を、一度すべてリストアップします。ファイルサーバ、メール、チャット、個人のPC、紙の資料まで、対象は全部。
棚卸しシートの例はこんな感じです。
| 情報の種類 | 保管場所 | 件数(概算) | 更新頻度 | 現在の管理者 | 優先度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 製品マニュアル | ファイルサーバ | 120件 | 四半期 | 技術部・田中 | 高 |
| 営業FAQ | 個人のメモ | 不明 | 随時 | 属人化 | 高 |
| 社内規程 | 紙バインダー | 30件 | 年1回 | 総務部・佐藤 | 中 |
| トラブル対応記録 | メール | 散在 | 随時 | 属人化 | 高 |
| 研修資料 | Google Drive | 50件 | 年2回 | 人事部・鈴木 | 低 |
この作業の過程で「古くて使えない情報」や「内容が重複している情報」が見つかります。構築前にどれだけ整理できるかが、後の品質を決めます。
ステップ3:情報のカテゴリ構造を設計する
棚卸しした情報を、どう分類するか。ここの設計ミスは後から直しにくいので、時間をかける価値があります。
カテゴリ設計の原則は3つ。
- 階層は3段まで。それ以上深いと誰もたどり着けない
- ユーザー視点で分類する。管理者の都合ではなく、情報を探す人の頭の中に合わせる
- 「その他」カテゴリは作らない。ここに情報が溜まり始めたら分類の見直しどき
構造の例です。
├── 製品・サービス情報
│ ├── 製品A
│ ├── 製品B
│ └── 料金体系
├── 業務プロセス
│ ├── 受注フロー
│ ├── 請求処理
│ └── クレーム対応
├── 社内制度・規程
│ ├── 勤怠・休暇
│ ├── 経費精算
│ └── 情報セキュリティ
└── 技術情報
├── 開発環境
├── インフラ
└── トラブルシュート
ステップ4:ツールを選定する
ここでようやくツール選びです。選定基準を事前に決めておけば、ベンダーの営業トークに振り回されずに済みます。
| 評価項目 | 重み | 確認ポイント | 評価方法 |
|---|---|---|---|
| 検索性能 | 高 | 全文検索、あいまい検索、AI検索の対応 | デモデータで実際に検索してみる |
| 操作の簡単さ | 高 | 記事の作成・編集のしやすさ | 非IT部門の社員にトライアルで触ってもらう |
| 権限管理 | 中 | 部門別・役職別のアクセス制御 | セキュリティ要件とすり合わせる |
| 外部連携 | 中 | Slack、Teams、Google Workspaceとの連携 | 既存ツールとの接続を確認する |
| AI機能 | 高 | AIによる回答生成、要約、レコメンド | 回答精度を実データで検証する |
| 導入・運用コスト | 中 | 初期費用、月額費用、追加費用 | 3年間のTCOで比較する |
| セキュリティ | 高 | データの暗号化、保管場所、認証方式 | セキュリティチェックシートで確認する |
| カスタマイズ性 | 低 | テンプレート、ワークフロー設計 | 自社の運用フローに合わせた設定可否 |
ZEROCKはGraphRAG技術によるAI検索に加え、AWS東京リージョンでのデータ保管、マルチLLM対応、プロンプトライブラリ機能を備えています。AI検索の精度を重視するなら、一度触ってみることをおすすめします。
ステップ5:運用ルールを策定する
ツール導入と同時に運用ルールを固めてください。ルールのないナレッジベースは1年で荒れ地になります。以下のテンプレートをそのまま使えます。
■ ナレッジベース運用ルール(v1.0)
【記事作成ルール】
1. タイトルは「〇〇の△△方法」「〇〇について」の形式で統一する
2. 記事冒頭に「この記事の対象者」「この記事でわかること」を記載する
3. 手順は番号付きリストで記載する
4. スクリーンショットは必ず加工して個人情報を消す
5. 作成者名と作成日を必ず記入する
【更新ルール】
1. 情報が変わったら7営業日以内に更新する
2. 更新履歴を記事末尾に追記する
3. 古い情報はアーカイブに移動する(削除しない)
【レビュールール】
1. 新規記事は部門リーダーの確認後に公開する
2. 四半期に1回、担当カテゴリの棚卸しを行う
3. 半年以上更新がない記事にはアラートを出す
【命名規則】
- カテゴリ:[部門名]-[業務名](例:sales-quote-process)
- タグ:最大5個まで、既存タグから選択を優先
- ファイル添付:[YYYYMMDD]_[内容].[拡張子]
ステップ6:パイロット運用を始める
いきなり全社展開はしません。まず1つの部門で2〜4週間のパイロット運用を行います。
パイロット運用のチェックリスト。
- 初期コンテンツ30件以上を登録したか
- 利用者向け説明会を実施したか
- 問い合わせ窓口を設置したか
- 週次でアクセスログを確認する体制があるか
- ユーザーからのフィードバック収集方法を決めたか
- 書いてくれた人を評価する仕組みがあるか
パイロット期間中に必ず「使いにくい」「見つからない」という声が出ます。それが全社展開前に潰すべき課題です。ここでフィードバックが出ないほうが心配で、使われていない可能性があります。
ステップ7:全社展開と継続改善
パイロットで得た知見をもとに運用ルールを微修正し、段階的に他部門へ展開します。
全社展開後も回し続けるべき改善サイクルがあります。
月次でやること。新規記事数と更新記事数の集計。検索ログの分析。とくに「検索されたが記事がなかった」キーワードの特定が大事です。よく読まれた記事トップ10の確認も。
四半期でやること。カテゴリ構造の見直し、古い記事のアーカイブ判定、利用者アンケートの実施。
年次でやること。運用ルールの全面見直し、ツールの継続利用か乗り換えかの検討、ROIの算出。
よくある失敗パターンと対策
ナレッジベース構築で繰り返し見られる失敗を3つ挙げます。
情報が増えすぎて検索しても見つからない
ある企業では、たった1年で4,000件以上の記事が乱立し、必要な情報にたどり着けなくなりました。カテゴリ設計の甘さが原因です。キーワード検索だけでは限界があるので、意味を理解して検索するAI検索の導入が現実的な解決策になります。ZEROCKのGraphRAG検索は、単語の一致ではなく情報同士の関係性まで把握したうえで検索結果を返すので、この問題に直接効きます。
誰も書き込まない
「忙しくて書く暇がない」と全員が口をそろえる。ナレッジ共有が「追加の仕事」になっている限り、この状況は変わりません。テンプレートを用意して記入コストを下げること、そして人事評価にナレッジ共有への貢献を組み込むこと。この2つを同時にやると、目に見えて書き込みが増えます。
古い情報が残り続けて信用を失う
「書いてある内容が古くて使えない」と思われた瞬間、ナレッジベースは見向きもされなくなります。一度失った信頼を取り戻すのは、ゼロから作り直すより大変です。記事に有効期限の概念を持たせて、期限切れの記事に自動でフラグを立てる仕組みを入れてください。
まとめ
ナレッジベース構築で最も大事なのは「完璧を目指さないこと」です。60点の状態で公開して、使いながら80点、90点に育てていく。そのサイクルを回す仕組みさえあれば、ナレッジベースは確実に組織の力になります。まずは1つの部門、30件の記事から始めてみてください。
ZEROCKで始めるナレッジベース構築
ZEROCKは、GraphRAG技術を搭載したエンタープライズAIナレッジプラットフォームです。ドキュメントをアップロードするだけで、AI検索、自動要約、関連情報のレコメンドが使えるようになります。データはAWS東京リージョンで管理されるため、セキュリティ要件の厳しい企業にも導入実績があります。
社内のナレッジ管理に課題を感じている方は、まず資料請求からどうぞ。
参考情報
- ITトレンド「ナレッジベースとは?構築方法やおすすめツールを紹介」
- NotePM「失敗しない社内wikiとは 失敗の原因とその対策」
- ONES.com「ナレッジベース構築の成功事例とベストプラクティス」
- TUNAG「ナレッジマネジメントの成功事例4社、よくある失敗3パターン」
