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【完全解説】先端半導体・量子コンピュータ関連21品目規制強化|全地域許可制と米国Advanced Computing FDPRとの補完関係

2026-05-20濱本 隆太

2025年5月28日施行の外為法・輸出貿易管理令改正で、先端半導体・量子コンピュータ関連の21品目がリスト規制(別表第一)に追加されました。全地域許可制の意味、21品目の内訳、米国Advanced Computing FDPR・AI Diffusion Ruleとの補完関係を、輸出管理初心者にもわかるよう一次情報ベースで整理します。

【完全解説】先端半導体・量子コンピュータ関連21品目規制強化|全地域許可制と米国Advanced Computing FDPRとの補完関係
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株式会社TIMEWELLの田中です。今回は、輸出管理を始めたばかりの方からよくご質問をいただく「2025年5月28日施行の半導体・量子21品目規制って結局なに?」というテーマを、一次資料を頼りに丁寧に整理していきます。

2025年5月28日、外為法および輸出貿易管理令・貨物等省令・外為令別表が改正され、先端半導体および量子コンピュータ関連の合計21品目がリスト規制(別表第一)に追加されました。これは2023年7月施行の半導体製造装置23品目規制に続く第2弾で、規制範囲を量子・GAAFET(Gate-All-Around FET)・cryo-CMOS(極低温CMOS)といった次世代領域まで広げた重要な改正です。

報道では「先端半導体の対中輸出規制」と紹介されることが多いのですが、条文上は仕向地を限定していません。仕向地を問わず原則として経産大臣の許可が必要となる、いわゆる「全地域許可制」という建付けです。本記事ではこの構造を分解し、米国Advanced Computing FDPR・AI Diffusion Ruleとの関係まで含めて整理していきます。

なお、「21品目」という呼称は経産省の公式発表ではなく報道表現です。一次資料では「重要・新興品目」と総称されています。本記事中でもこの点は都度補足します。

この記事でわかること

  • 2025年5月28日施行の外為法・輸出貿易管理令改正の全体像
  • 「21品目」の中身(製造装置9+設計技術5+IC等4+量子3)
  • 「全地域許可制」の意味と、グループA向け一般包括許可との関係
  • 申請プロセス(標準90日)と審査基準のポイント
  • 米国Advanced Computing FDPR・AI Diffusion Ruleとの補完関係
  • 影響を受ける日本企業と、実務で押さえるべき5つのステップ

まず用語を3つだけ理解する

法令の中身に入る前に、本記事を読み解くカギになる3つの用語を整理します。輸出管理は専門用語が多く、ここで足元を固めておくと報道記事の解像度が一段上がります。

GAAFET(Gate-All-Around FET)

3nm世代以降の先端半導体で採用される新しいトランジスタ構造です。従来のFinFET(フィン型)に代わり、ゲートでチャネルを四方から囲む構造にすることで、リーク電流を抑えつつ高性能化できます。Samsungは2022年から3nm世代でGAA構造を、TSMCは2nm世代から採用予定で、業界全体が移行中の領域です。今回の規制では、このGAAFET構造ICの「設計に必要な技術」と「製造に必要な技術」が独立した品目として明記されました。

cryo-CMOS(極低温CMOS)

液体ヘリウム温度(4K前後)またはそれ以下の極低温環境で動作するCMOS集積回路です。超伝導量子ビットの制御・読み出し回路に使われ、室温CMOSとは設計指針も製造プロセスも異なります。Intel・IMECなどが研究を進めており、量子コンピュータの実用化に不可欠な要素技術です。今回の規制では量子コンピュータ本体と並列で品目化されました。

全地域許可制(all destinations license)

リスト規制(輸出貿易管理令別表第一)に該当する貨物・技術は、仕向地を問わず原則として経産大臣の許可が必要、というルールです。新興品目に固有の概念ではなく、別表第一に載っている品目すべてに共通する建付けです。ただし、新興21品目については「最初から全世界対象を明文化した」点が報道で強調されています。

用語 一言で言うと 本記事での扱い
GAAFET 3nm以降の先端トランジスタ構造 設計技術・製造技術の2品目で規制
cryo-CMOS 量子ビット制御用の極低温CMOS 単独品目として規制
全地域許可制 仕向地を問わず原則許可必要 21品目の中核的特徴

改正の概要:いつ、何が、どう変わったのか

ここから本題に入ります。まずは今回の改正の骨格を時系列で確認します。

公布・施行スケジュール

日付 できごと
2025年1月31日 パブコメ公表(毎日新聞・日経・Bloombergが「21品目」と報道)
2025年3月25日 閣議決定
2025年3月28日 政令本体公布
2025年4月3日 関連省令公布
2025年5月28日 施行

改正されたのは「外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令」、および「貨物等省令」「外為令別表」です。重要・新興品目を中心とした改正で、先端半導体・量子コンピュータ関連の21品目がリスト規制(別表第一)に追加されました。

法的位置づけ

日本の輸出管理は 外為法(法律) → 政令(外為令・輸出貿易管理令) → 省令(貨物等省令・外為令別表) の3層構造です。外為法は日本の輸出管理の上位法で、その下に外為令(外国為替令)・輸出貿易管理令があり、さらに技術スペックレベルの規定として貨物等省令が紐づいています。今回の改正は、政令と省令の同時改正で完結する建付けです。法律本体(外為法)の改正は不要でした。

国際的な枠組みとしては、ワッセナー・アレンジメント(WA)等の多国間レジームでの合意を国内法に取り込む位置づけです。同時に、米国の対中半導体規制との整合・補完という側面もあります。後述するように、米国BISは「同盟国の輸出管理が米国と完全には整合していない」と公言しており、日本側の規制強化はこのギャップを埋める意味合いも持っています。

該非判定の属人化を、AIで解消する。

経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDなら、判定時間を約7割削減し、判定根拠を構造化データで保存できます。

21品目の内訳:何が規制対象になったのか

ここが多くの方が一番気になる部分かと思います。METIの2025年3月28日資料、4月3日改正概要、CISTEC解説、各報道から確認できる主な品目群を、カテゴリ別に整理します。再掲ですが「21品目」は報道表現で、一次資料では「重要・新興品目」とされます。

カテゴリ1:先端半導体製造装置(9品目)

  1. 走査型電子顕微鏡(SEM、半導体素子・集積回路画像用)
  2. マルチビーム描画装置(multi-beam mask writer、EUVマスク用)
  3. EUVリソグラフィ周辺技術(マスク防護膜製造装置・EUV用塗布現像装置の追加)
  4. ALD(Atomic Layer Deposition/原子層堆積)装置の高度品
  5. ALE(Atomic Layer Etching/原子層エッチング)装置
  6. エピタキシャル成長装置の仕様精緻化
  7. 異方性ドライエッチング装置の仕様精緻化
  8. 3次元実装・先端パッケージ向け装置
  9. 高度な信頼性試験装置(先端パッケージ向け)

2023年7月の23品目規制が「先端ノード製造装置」を中心としていたのに対し、今回はALD・ALE・3D実装といった次世代プロセス向けの装置を厚く追加した形です。レーザーテックのEUVマスク検査装置、ディスコの3D実装向けダイシング装置などは要注目領域です。

カテゴリ2:先端半導体設計・製造技術/ソフト(5品目)

  1. GAAFET構造集積回路の設計に必要な技術
  2. GAAFET構造集積回路の製造に必要な技術
  3. 多層GDSIIデータ生成プログラム(チップ設計データを物理層に展開するEDA系ソフト)
  4. 14nm未満ノード向け設計ツール(パブコメ段階で言及)
  5. 3Dチップスタッキング用シミュレーションソフト

GDSII(Graphic Database System II)は半導体レイアウトの業界標準データ形式で、チップの物理設計データを各社間でやり取りする際の共通フォーマットです。EDA(Electronic Design Automation)は半導体の設計支援ソフト全般を指す業界用語で、回路設計・レイアウト・検証までを担うツール群です。このGDSIIを生成するソフトが規制対象に含まれた点は、EDAベンダーや国内の受託設計企業にも影響します。「技術」とは、設計ノウハウ・製造プロセス情報の提供、ソフトウェアの利用権許諾なども含む広い概念です。

カテゴリ3:先端IC・関連デバイス(4品目)

  1. CMOS集積回路(高性能仕様)
  2. 極低温CMOS回路(cryo-CMOS、量子ビット制御用)
  3. 先端ICチップ(advanced IC chips)
  4. パラメトリック信号増幅器(パラメトリックアンプ、量子ビット信号読み出し向け)

cryo-CMOSとパラメトリックアンプは、量子コンピュータシステムの「制御層」を構成する要素デバイスです。量子ビット本体だけでなく、それを動かすための周辺デバイスまで一気に規制対象にした点が今回の特徴です。

カテゴリ4:量子コンピュータ本体・周辺(3品目)

  1. 量子コンピュータ本体(性能スペック規定。例:完全制御・接続・利用可能な物理量子ビット34〜100でC-NOTエラー0.0001以下、または100量子ビット以上で各種性能水準を満たすもの)
  2. 量子コンピュータの設計・製造に必要な技術
  3. 極低温冷却装置(dilution refrigerator/cryocooler、10mK級の超低温環境を生成するもの)

量子コンピュータの規制スペックは、量子ビット数とエラー率の組み合わせで規定されています。ただし、これらの数値は貨物等省令の細かい規定で記載されており、技術進展に応じて変動する可能性があります。実務では必ず最新省令本文を確認してください。

希釈冷凍機(dilution refrigerator)は10mK級の超低温を生成する装置で、超伝導量子計算機の必須設備です。国内ではULVACなどがメーカーとして知られています。

なお、同じ2025年5月28日施行の改正パッケージには、別表第一・別表第二の他カテゴリ(重水製造触媒、五ふっ化よう素、金属積層造形装置、電磁波吸収材の赤外線明記、セラミックス複合材の高温コーティング技術等)の改正も含まれますが、これらはWA合意に基づく仕様精緻化で「21品目」には含めない整理です。

「全地域許可制」の意味を分解する

報道でもっとも誤解されやすいのが、この「全地域許可制」というキーワードです。実務で対応するためには、ここを正確に理解しておく必要があります。

リスト規制の基本原則

別表第一(リスト規制)に該当する貨物は、仕向地を問わず原則として経産大臣の許可が必要です。これは「全世界向け許可制(all destinations license)」とも呼ばれ、新興21品目に限らず、もともと別表第一に載っている品目すべてに共通する建付けです。

ここを押さえておくと、「21品目になって何が新しいのか?」が明確になります。新しいのは「品目が追加されたこと」と「最初から全世界対象を明文化したこと」であって、「全地域許可制」という制度そのものは以前から存在しています。

グループAへの簡易手続き

仕向地別の差は「許可の取得方法」に現れます。

グループ 主な国・地域 利用可能な許可形態
A(26カ国・地域) 米国、韓国、台湾、英国、ドイツ、フランス、オランダなどWA参加国 一般包括許可(登録制、個別申請不要)
B A以外のWA参加国・一部の国 特別一般包括許可・特定包括許可(要件多め)
C 大部分の国 個別許可中心
D 国連武器禁輸国など 原則不許可

グループAは旧「ホワイト国」と呼ばれていた区分です。よく誤解されますが、グループAは「規制が免除されている」のではなく「手続が軽い」だけです。規制そのものは適用されます。Bloomberg・DCDの報道で「韓国・シンガポール・台湾も対象」と強調されたのは、この点を読者に伝えるためでした。

従来との差分

従来、一部の汎用半導体関連は事実上中国等のみを念頭にした個別許可運用で対応されていました。新興21品目はそうした「事実上の運用」ではなく、最初から条文ベースで全世界対象を明文化した点が異なります。

実務的には、グループA向けは一般包括許可で簡素化できる一方、包括許可の取得・維持のための社内コンプライアンス負荷は確実に増えます。統括輸出責任者・該非確認責任者の専任化、年次監査、教育研修などが求められます。

編集メモ:今回の21品目はグループA向けも例外なし(包括化はできるが規制自体は適用)。ただし、特に懸念の高い量子・極低温・GAAFET関連の一部は「包括許可対象外」となる可能性があり、これは省令ベースの除外規定で定まります。汎用化した記述は避けて、自社品目ごとに最新省令を確認してください。

申請プロセスと審査基準

ここから実務寄りの話に入ります。21品目に該当する取引が発生したとき、何をどの順番で進めるのか、を整理します。

標準フロー(個別許可)

  1. 該非判定(自社品目が別表第一の規制スペックに当たるかを自己判定する作業):品目が別表第一の規制スペックに該当するか、自社で確認
  2. 輸出許可申請:経産省貿易管理部に申請(紙またはNACCS/CCAR経由)
  3. 書類添付:用途確認・需要者確認の書類(エンドユース/エンドユーザー)
  4. 経産省内審査:関係省庁協議を含む。標準90日
  5. 許可証発行:通関時に提示

標準審査期間が90日というのは、輸出管理を長く担当している方にとっては馴染みのある数字ですが、新興品目で実務蓄積が少ない領域では4〜6か月かかるケースも想定されています。装置の年内納入計画には、このリードタイムを織り込む必要があります。

グループA向け一般包括許可

グループAを主な仕向地とする企業は、一般包括許可の取得を検討する価値があります。

  • 統括輸出責任者・該非確認責任者を社内に置く
  • 「登録書」を経産省へ提出
  • 登録後は個別の許可申請なしで輸出可能(一定の報告義務あり)

ただし、繰り返しになりますが、21品目のうち特に懸念の高い量子・極低温・GAAFET関連の一部は包括許可対象外となる可能性があります。省令の除外規定を必ず確認してください。

審査基準のポイント

経産省内審査では、おおむね次の観点で見られます。

  • エンドユーザー審査:軍・国防研究機関・制裁対象との関係
  • エンドユース審査:大量破壊兵器・通常兵器の開発製造への転用懸念
  • キャッチオール規制との接続(リスト規制非該当品でも、軍事転用懸念があれば許可申請を求める補完的な仕組み):別表第一非該当でも、用途・需要者から軍事転用懸念がある場合は許可申請を求める
  • Foreign End User List:経産省公表リスト掲載企業向けは原則不許可運用

2025年10月9日施行の補完的輸出規制(キャッチオール)改正により、キャッチオール規制も強化されました。21品目該当性だけでなく、別表第一非該当の汎用品でも用途・需要者によっては許可必要となる点に注意が必要です。

米国Advanced Computing FDPR・AI Diffusion Ruleとの関係

ここが本記事の中盤の山場です。日本企業の輸出管理担当者にとって、米国規制との「二重コンプライアンス」は最大の悩み所になっています。

米国側の主な規制の整理

規制名 公布時期 主な内容
BIS規則(2022年10月7日) 2022年10月 対中先端半導体・SME輸出規制の出発点
BIS規則(2023年10月17日) 2023年10月 Advanced Computing品目の拡張、SME対象拡大
BIS規則(2024年12月) 2024年12月 HBM追加、Entity List拡張
FDPR 既存ルールの拡張 米国原産技術・ソフトを使った国外製造品にもEAR域外適用
AI Diffusion Rule 2025年1月公表 計算能力配分の国別Tier化(バイデン政権末期)

FDPRは「Foreign Direct Product Rule」の略で、米国原産技術・ソフトを使って国外で製造された製品にもEAR(米国輸出管理規則)を域外適用する仕組みです。Advanced Computing FDPR、Entity List FDPR、SME FDPRが併存しています。

AI Diffusion Ruleは2025年1月にバイデン政権末期に公表されましたが、2025年5月にトランプ政権が撤回方針を表明し、代替規制を準備中です。日本はAI Diffusion Ruleでは「Tier 1(18同盟国)」に分類され、ライセンス例外を享受していました。撤回後の代替案でも日本は同等の地位を維持する見通しと報じられています。

日本の21品目規制との関係

日本の21品目規制は、WA(ワッセナー・アレンジメント)ベース+米国規制を意識した補完という性格を持ちます。

  • 米国が個別に対中規制している品目を、日本も「全世界向け許可制」に格上げ
  • グループA(米国・韓国・台湾等)も対象にすることで、第三国経由迂回を防ぐ
  • 一方で「対中名指し」は避けており、外形上は仕向地中立

米国BISは「同盟国の輸出管理が米国と完全には整合していない」と公言(特に半導体領域で「不十分」と発言)しており、日本側の規制強化はこのギャップを埋める意味合いがあります。同時に、21品目規制は日本が「Tier 1にふさわしい厳格な輸出管理を実施している」というシグナルとしても機能します。

二重コンプライアンスの実務

実務上の最大のポイントは、米国FDPRとの二重適用です。

日本企業が米国原産技術・ソフトを使って日本で製造した装置を中国に輸出する場合、

  • 日本の輸出許可(21品目該当時、経産省)
  • 米国EAR許可(FDPR該当時、米商務省BIS)

の両方が必要になります。許可申請書類は別系統、審査主体も別、許可有効期間も別、と社内コンプラ部門の負荷が急増する構造です。実務では、米国原産技術の含有比率の把握、サプライヤーからのEAR該否情報の取得、二重申請の同期管理などが新たな業務として発生しています。

影響を受ける日本企業

ここで、具体的に影響を受ける主要セクターと企業群を整理しておきます。

半導体製造装置

  • 東京エレクトロン(コーター・デベロッパ、エッチング装置、成膜装置)
  • SCREENホールディングス(洗浄装置)
  • アドバンテスト(テスタ)
  • ニコン(半導体露光装置・精機部門)
  • レーザーテック(マスク検査装置、EUV関連)
  • KOKUSAI ELECTRIC(バッチALD装置)
  • ディスコ(ダイシング・グラインディング)
  • 東京精密(測定機)

東京エレクトロンの中国売上比率は2024年度時点で約45%、規制対象品目はその一部です。SCREEN、アドバンテスト、レーザーテックも対中売上比は20〜40%規模で、規制対象21品目はその上位品目に集中しています。

量子ハード関連

  • ULVAC(希釈冷凍機)
  • 住友重機械工業(クライオクーラー)
  • 日立製作所、富士通、NEC、東芝(量子コンピュータ研究開発)
  • 理研系スタートアップ

国内研究開発の海外連携(米IBM、欧州IQM等)が許可制となり、共同研究での機微技術提供にもみなし輸出ルールが適用されます。

EDA・設計ツール/先端パッケージ

  • EDA:海外大手中心だが、国内代理店・受託設計企業も対象
  • 先端パッケージ材料:信越化学、JSR、東京応化工業
  • 基板:新光電気工業、イビデン

みなし輸出(deemed export)の影響

みなし輸出とは、国内にいる外国人や外国組織の影響下にある者へ規制技術を提供する行為を、国境を越える輸出と同等に扱う制度です。国内で外国人研究員に対し21品目の技術提供を行う場合も、輸出と同等に扱われます。2022年5月の運用見直しで「特定類型該当者」(外国政府の影響下にある者など)への技術提供は仕向地輸出と同視される運用に変わりました。

大学・研究機関の量子・先端半導体研究室は、実質的に最大のリスク領域です。2025年9月公表の「機微技術管理ガイダンス第五版」に沿った体制構築が必要です。

実務で押さえる5つのステップ

ここからは「自社で何をすべきか」という観点で、明日から動ける5ステップに落とし込みます。

ステップ1:21品目該当性の棚卸し

自社の取扱品目・技術情報を21品目に照らして該非判定します。製造装置メーカーであればカテゴリ1、設計受託やEDA関連ならカテゴリ2、量子関連ならカテゴリ3・4を重点的に確認します。

該非判定は「該当しない」ことを示すドキュメント(該非判定書、パラメータシート)の整備も含めて行います。後で説明を求められたときに、判定根拠を再現できる状態にしておくことが重要です。

ステップ2:エンドユーザー・エンドユース審査体制の構築

販売先・取引先のエンドユーザー審査体制を作ります。

  • 顧客の事業内容・組織形態の確認
  • 軍・国防研究機関・制裁対象との関係の有無
  • 用途確認書(End User Statement)の取得
  • Foreign End User List・Entity Listとの照合

ステップが多いように見えますが、ここを自動化・標準化できると、リードタイム短縮に直結します。

ステップ3:包括許可の取得検討

グループA向け取引が中心なら、一般包括許可の取得を検討します。

  • 統括輸出責任者・該非確認責任者の任命
  • 「輸出管理内部規程(CP)」の整備
  • 経産省へ登録書提出
  • 年次監査・教育研修の体制構築

ただし、21品目のうち除外規定がある品目は包括許可の対象外となる可能性があるため、品目ごとの確認が必要です。

ステップ4:米国FDPRとの二重コンプライアンス対応

米国原産技術を使って製造する装置・部品は、FDPR該当性の確認が必要です。

  • サプライヤーからのEAR該否情報取得
  • 米国原産技術・ソフトの含有比率の把握(de minimisルール)
  • BIS許可申請プロセスの社内手順整備
  • 日米同時申請のスケジュール管理

ここはAI輸出管理エージェントを使った効率化が効く領域です。TRAFEED(旧ZEROCK ExCHECK)は経産省基準準拠で、日米両規制を踏まえた取引フロー設計を支援できる構成にしています。

ステップ5:研究開発・大学連携でのみなし輸出対応

研究開発部門・大学連携を持つ企業は、みなし輸出への対応を並走で進めます。

  • 外国人研究員の受入時の特定類型該当性判定
  • 共同研究契約の見直し(技術提供範囲の明確化)
  • 国際共著論文の公開前チェック
  • 機微技術管理ガイダンス第五版に沿った体制構築

特に量子・GAAFET関連は研究開発フェーズで国際協力が活発な領域なので、研究遂行と輸出管理のバランス設計が重要です。

よくある誤解/FAQ

Q1. 21品目以外なら自由に輸出していいのか?

いいえ。別表第一の他の品目は引き続き規制対象です。また、別表第一非該当でも、用途・需要者から軍事転用懸念がある場合はキャッチオール規制(補完的輸出規制)で許可申請が必要になります。2025年10月9日施行の改正でキャッチオール規制も強化されました。

Q2. 2023年の半導体製造装置23品目規制との関係は?

2023年規制は「先端ノード製造装置」を中心に追加。2025年21品目はそれを補完し、量子・GAAFET・cryo-CMOSなど「次世代」領域へ拡張する位置づけです。両方とも別表第一の追加で、両規制は累積的に適用されます。

Q3. 中小企業はどう対応すべきか?

まず該非判定をCISTECガイダンスに沿って実施します。21品目該当の可能性があれば該非確認責任者を社内に置き、エンドユーザー審査体制を作るのが優先です。グループA向け取引中心であれば一般包括許可の取得を検討してください。リソースが限られる場合、外部の安全保障貿易管理コンサルタント、または輸出管理AIエージェントの活用も選択肢です。

Q4. 違反した場合の罰則は?

外為法違反は3〜10年以下の懲役、最大3,000万円または取引価額の5倍の罰金(法人両罰)。加えて最大3年間の輸出禁止行政処分が科される可能性があります。2024〜2025年も複数件の行政処分が公表されています。実務上は罰金よりも、行政処分・取引停止・レピュテーション影響のほうが経営インパクトとして大きくなります。

Q5. 包括許可と個別許可、どちらから着手すべき?

通常、まず個別許可で実績を積みつつ、社内体制を整備して包括許可を取得する流れが一般的です。新興21品目は施行直後で運用ノウハウが少ないため、当面は個別許可案件が中心になると見込まれます。

まとめ

最後に、本記事のポイントを整理します。

  • 2025年5月28日施行の外為法・輸出貿易管理令改正で、先端半導体・量子コンピュータ関連の21品目がリスト規制に追加された
  • 「21品目」は報道表現で、一次資料では「重要・新興品目」と総称される
  • 内訳は製造装置9+設計技術・EDA系5+IC・cryo-CMOS等4+量子本体・冷凍機3
  • 「全地域許可制」は仕向地を問わず原則許可必要、というリスト規制の建付け。グループA向けは一般包括許可で簡素化可能
  • 申請プロセスは標準90日、エンドユース・エンドユーザー審査が中核
  • 米国Advanced Computing FDPR・AI Diffusion Ruleとの関係では、二重コンプライアンスが実務上の最大課題
  • 実務では該非判定・エンドユーザー審査・包括許可検討・FDPR対応・みなし輸出対応の5ステップで対応する

輸出管理は、規制の正確な理解と、それを業務プロセスに落とし込む運用設計の両輪が必要な領域です。21品目規制は施行から1年が経過し、運用ノウハウが少しずつ蓄積されてきていますが、米国規制との二重適用、品目数の多さ、技術進展に伴う省令アップデートなど、現場の負荷は引き続き高い状態にあります。

TIMEWELLが開発したAI輸出管理エージェントTRAFEED(旧ZEROCK ExCHECK)は、経産省基準準拠・多言語対応で、21品目該当性の自動判定、グループA向け包括許可の社内運用、米国FDPRとの並走管理を支援する構成にしています。

「自社の装置・技術が21品目に該当するか確認したい」「グループA向け包括許可の取得を検討している」「米国FDPRとの二重コンプラ体制を整えたい」といったご相談は、TRAFEEDの個別相談からお問い合わせください。サービス詳細はTRAFEEDサービスページからご確認いただけます。

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参考文献

経済産業省(一次情報)

パブコメ・法令

解説・分析

報道

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