こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。輸出管理の社内規程(CP:Compliance Program、輸出管理内部規程)を整備しようと調べはじめると、ほぼ確実にたどり着くのがCISTEC(安全保障貿易情報センター)のモデルCPです。ところが実際にページを開くと、1A・1B・2A・2B・3A・3Bと6種類のWordファイルが並んでいて、どれを選べばいいのか、ダウンロードした後にどこをどう直せばいいのかで手が止まる、という相談を本当によく受けます。
この記事では、モデルCPの6パターンの構造と選び方、仲介取引版・グループCPへの分岐、2025年10月9日に施行された補完的輸出規制の見直しでCPのどこを改定すべきか、輸出者等遵守基準や特別一般包括許可との関係、そしてモデルCPをそのまま使うと危ない箇所までを、CISTECと経済産業省の一次情報にあたりながら整理します。読み終えるころには、自社が選ぶべきパターンと、ダウンロード後にやるべき作業の一覧が頭の中にできているはずです。なお、規程の整備に入る前に自社の輸出管理体制の現在地を知りたい方は、3分で終わる輸出管理体制の無料診断を先に試していただくと、この記事のどこを重点的に読むべきかが見えやすくなります。
CISTECモデルCPとは何か
モデルCPは、CISTECが公開している輸出管理内部規程のひな形です。外為法(外国為替及び外国貿易法)と、その下位規範である輸出者等遵守基準が企業に求める社内体制を、そのまま規程文書の形に落とし込んだもので、CISTECのモデルCPページからWord形式で無償ダウンロードできます1。経済産業省へのCP届出(通達「輸出管理内部規程の届出等について」に基づく手続き)で提出する規程のベースとしても広く使われており、日本企業の輸出管理規程の事実上の標準様式と言っていい存在です2。
CP自体の骨格は、基本方針、組織・体制、該非判定手続、取引審査手続、出荷管理、教育、監査の7要素で構成されるのが一般的です。これに文書管理と違反時の報告・再発防止を加えた章立てが、モデルCPにもほぼそのまま反映されています。ゼロから書き起こすと数か月かかる文書ですが、モデルCPを出発点にすれば、埋めるべき箇所と自社向けに直すべき箇所の作業に集中できます。
もうひとつ押さえておきたいのが更新の速さです。2025年10月9日に施行された補完的輸出規制の見直しを受けて、モデルCPには改正対応の改訂が入り、改訂箇所にマーキングを付したファイルも掲載されています。ページ上は2026年4月1日現在の表記で、モデルCPと関連帳票は随時更新するとされています1。つまりモデルCPは一度ダウンロードして終わりの文書ではなく、CISTEC側の改訂に自社の規程を追随させていく前提の素材です。この点は記事の後半でもう一度取り上げます。
6パターン(1A〜3B)の構造と選び方
モデルCPの6パターンは、2つの軸の掛け算でできています。1つ目の軸は管理形態で、(1)輸出管理の専門部署を設ける、(2)専任者を任命する、(3)代表取締役等が直接管理する、の3類型です。2つ目の軸は判定対象で、(A)自社品あり(メーカー等)、(B)自社品なし(商社等)の2類型です1。組み合わせると次の表のようになります。
| 管理形態\判定対象 | (A) 自社品あり(メーカー等) | (B) 自社品なし(商社等) |
|---|---|---|
| (1) 専門部署を設ける | パターン1A | パターン1B |
| (2) 専任者を任命する | パターン2A | パターン2B |
| (3) 代表取締役等が直接管理する | パターン3A | パターン3B |
数字が管理体制の重さ、アルファベットが該非判定の性質を表す、と覚えると迷いません。メーカーは自社で設計・製造した製品のスペックを起点に該非判定を行うため(A)系を、商社は仕入先から該非判定情報を入手して確認する立場なので(B)系を選びます。管理形態は、輸出管理に割ける人員の実態で決めます。専門部署を置ける規模なら(1)、貿易実務や品質保証との兼任でも責任者を明確に立てられるなら(2)、少人数組織で代表がすべてを見るなら(3)です。
企業タイプ別の目安を整理すると、次のようになります。あくまで出発点の目安で、最終的には自社の組織図と業務フローに照らして決めてください。
| 企業タイプの目安 | 起点となるパターン | 選ぶ理由 |
|---|---|---|
| 大手・中堅メーカー(貿易管理部門あり) | 1A | 専門部署を前提とした役割分担が組織の実態に合う |
| 大手・中堅商社 | 1B | 自社設計品を持たず、仕入品の該非確認が業務の中心になる |
| 中堅メーカー(兼任者が管理) | 2A | 専任者型の責任分担なら兼任でも運用が回る |
| 中小商社・販売代理店 | 2B | 仕入先からの該非判定情報の入手・確認を軸に組める |
| スタートアップ・小規模メーカー | 3A | 代表が統括する体制から始めて、成長に応じて2A・1Aへ移行できる |
| 小規模商社・輸出代行 | 3B | 少人数でも代表直轄なら責任の所在が明確になる |
パターン選びで大事なのは、背伸びをしないことです。実態は代表と担当者2名の会社なのに、専門部署を前提とするパターン1Aを届け出てしまうと、規程に書かれた部署や会議体が実在しないという、いちばん筋の悪い状態になります。経済産業省の実地調査では規程と運用の一致が見られるため、今の組織で回るパターンを選び、組織が育ったらパターンを乗り換えるのが正攻法です。
なお、6パターンの外側に2つの分岐があります。外国相互間の貨物の移動を仲介する仲介取引を行う企業向けには、パターン1Aをベースにした仲介取引対応版が用意されています。また、親会社が子会社を含めてグループ一体で輸出管理を行う場合には、グループ企業向けのモデルCPが別ページで提供されています1。商社機能を持つメーカーや、海外子会社経由の取引がある企業は、本体のパターン選びとあわせてこの2つも確認しておくと、後から規程を継ぎ足す手戻りを避けられます。
該非判定の属人化を、AIで解消する。
経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDの機能・導入フローをまとめたサービスカタログを無料でダウンロードできます。
2025年10月9日施行の改正でCPのどこを改定するか
2025年4月9日に公布され10月9日に施行された補完的輸出規制(キャッチオール規制)の見直しは、CPの改定を伴う規模の改正でした3。柱は3つです。1つ目が、これまでキャッチオール規制の対象外だったグループA国(旧ホワイト国)向けにも、迂回輸出の懸念がある場合には経産大臣がインフォーム通知を出せる枠組みの新設。2つ目が、輸出令別表第1の第16項を「16項(1)特定品目」と「16項(2)その他」に分割し、工作機械・集積回路・航空機関連など6カテゴリーの特定品目(HSコードで指定)については一般国向けにも用途要件・需要者要件を課す変更。3つ目が、国連武器禁輸国・地域向けの通常兵器に関する需要者要件の新設です。あわせて外国ユーザーリストが835団体(前回比87団体増)に更新されました。改正全体の解説は補完的輸出規制2025年10月施行の完全解説に譲り、ここではCPのどこを直すかに絞ります。
| 改正点(2025年10月9日施行) | CPで改定すべき箇所 |
|---|---|
| グループA国向けインフォーム要件の新設 | 取引審査手続に、インフォーム通知を受領した際の受付窓口、出荷の即時停止、統括責任者・経営層へのエスカレーション手順を明記する |
| 16項(1)特定品目の新設(HSコード指定) | 該非判定・取引審査の手続に、リスト規制の該非判定とは別に特定品目該当性(HSコード)を確認するステップを追加し、判定書・審査票の様式にも確認欄を設ける |
| 国連武器禁輸国向け需要者要件の新設 | 取引審査手続の需要者確認基準に、通常兵器の開発・製造等に関与する懸念の確認項目を追加する |
| 外国ユーザーリストの835団体への更新 | 取引審査で参照するリストの版管理ルールと、リスト更新時に既存取引先を再スクリーニングする手順を明記する |
実務でとくに効いてくるのが特定品目のHSコード管理です。従来の該非判定は製品のスペックを輸出令別表第1・貨物等省令の技術要件と突き合わせる作業でしたが、特定品目の該当性はHSコードという通関上の分類で決まります。つまり、輸出管理部門だけでなく、HSコードを扱う物流・通関部門との連携手順をCPに書き込む必要が出てきた、ということです。該非判定書に「特定品目該当・非該当」の欄を追加し、その根拠となるHSコードを誰がいつ確認するかを決めておくと、実地調査でも説明しやすくなります。一般国向けの用途・需要者確認で使う客観要件の考え方は、明らかガイドラインの解説記事で詳しく扱っています。
自社CPの改定作業では、CISTECが公開している改訂マーカー付きのモデルCPファイルが役立ちます1。マーキング箇所を自社CPの対応条文と突き合わせれば、直すべき箇所の一覧がそのまま作れます。改定後は、施行日と改定理由(政令第175号による補完的輸出規制の見直し対応、といった形)を自社CPの改訂履歴に残しておくと、後年の監査や届出更新で説明がぶれません。
モデルCPと輸出者等遵守基準・特別一般包括許可の関係
モデルCPの立ち位置は、法令上の要求と許可制度の中間にあります。整理すると3層構造です。いちばん下にあるのが輸出者等遵守基準を定める省令(平成21年経済産業省令第60号)で、これはすべての輸出者等に対する法的な最低ラインです4。その要求を自社の手続として文書化したものがCPで、モデルCPはその文書化を助けるひな形です。そしてCPを経済産業省に届け出て受理され、運用実績を実地調査で示すことが、特別一般包括許可という優遇制度を使うための入口になります5。
遵守基準が求める事項と、モデルCPの対応箇所、特別一般包括許可の審査で追加的に見られる点を1枚にまとめると次のとおりです。
| 輸出者等遵守基準が求める事項 | モデルCPの対応箇所 | 特別一般包括許可で追加的に見られる点 |
|---|---|---|
| 該非確認責任者の選任(全輸出者等) | 組織・体制の章 | 統括責任者から部門責任者までの体制図の実在 |
| 統括責任者(代表者クラス)の選任と体制整備(リスト規制品取扱者) | 組織・体制の章 | 代表権を持つ者の関与が形式でないこと |
| 該非確認手続の策定・実施 | 該非判定の章と判定書様式 | 判定書の保管状況と再判定ルールの運用実績 |
| 用途確認・需要者確認手続の策定・実施 | 取引審査の章と審査票様式 | 外国ユーザーリスト照合の証跡 |
| 出荷時の同一性確認 | 出荷管理の章 | 出荷記録のサンプリング確認への耐性 |
| 監査(努力義務) | 監査の章 | 内部監査の実施実績と是正措置の記録 |
| 研修(努力義務) | 教育の章 | 受講記録と対象者のカバレッジ |
| 文書の保存(努力義務) | 文書管理の規定 | 保存期間の設定と検索できる状態 |
| 法令違反時の報告・再発防止 | 報告・制裁の章 | エスカレーションフローが機能すること |
よくある誤解が「CPを届け出れば特別一般包括許可が自動的に使える」というものです。実際には、CPの届出と輸出管理内部規程受理票の取得、輸出者等概要・自己管理チェックリストの提出と受理票の取得、そして実地調査という一連の手続きを経てはじめて申請資格が得られます65。受理後も毎年7月1日から7月31日の間にチェックリストを提出する運用が続くため、CPは届け出て終わりではなく、毎年の定期点検とセットの制度だと理解しておくのが正確です。現状分析から実地調査対応まで含めると、準備には通常6か月から12か月を見込む必要があります。
モデルCPをそのまま使うと危ない箇所
モデルCPは優れたひな形ですが、ひな形であるがゆえの落とし穴があります。公式の解説にはあまり書かれない、実務で実際に指摘につながりやすい箇所を挙げておきます。
1つ目は、選択式・空欄箇所の埋め残しです。モデルCPには部署名・責任者・会議体などを自社に合わせて記入する箇所が多数あり、ここが「〇〇部」のまま残っていたり、実在しない部署名が入っていたりする規程を、届出直前のレビューで何度も見てきました。Wordファイルを開いたら、まず置換対象箇所をすべて洗い出してチェックリスト化するのが安全です。
2つ目は、規程と実態の乖離です。モデルCPの手続をそのまま写すと、自社では実施していない会議や帳票が規程上は存在することになります。実地調査で見られるのは規程の立派さではなく、規程どおりに運用されているかです。実施していない手続は、規程から削るか、実施できる形に書き換えるかのどちらかに倒すべきで、「いつかやるかもしれないから残しておく」がいちばん危険です。
3つ目は、帳票様式の二重運用です。モデルCPには判定書や審査票の関連帳票が付属しますが、既に自社で別様式を使っている場合、規程はモデルCP様式を引用しているのに現場は旧様式のまま、というねじれが起きます。様式は必ずどちらかに寄せ、規程本文の様式番号と実際の帳票を一致させてください。
4つ目は、再判定のトリガーが自社仕様になっていないことです。政省令の改正時、製品仕様の変更時、用途変更の連絡を受けた時など、どんな事象が起きたら該非判定をやり直すのかは、モデルCPの一般的な記述だけでは現場が動けません。自社の製品改廃フローや設計変更管理と接続した具体的なトリガーを書き足す必要があります。
5つ目は、みなし輸出の手当てです。貨物の輸出を中心に組まれた規程だけでは、国内での技術提供や外国人従業員への技術開示(みなし輸出の特定類型該当性の確認)が漏れがちです。研究開発部門を持つ企業や外国籍の従業員が多い企業は、技術管理のパートを重点的に自社向けに肉付けする必要があります。
6つ目は、改訂への追随です。冒頭で触れたとおり、モデルCPは制度改正のたびに更新されます。自社CPをいつのモデルCPに基づいて作ったかを記録し、CISTECの改訂マーカー付きファイルとの差分確認を年次タスクにしておくと、規程の陳腐化を仕組みで防げます。
CP運用をAIで実質化する
ここまでCPの作り方を中心に書いてきましたが、CPの真価は運用で決まります。7要素のうち、該非判定・取引審査・出荷管理の3つは日常業務としての負荷が圧倒的に重く、輸出案件が月10件を超えたあたりから、人手だけで規程どおりの運用を維持するのが難しくなってきます。判定書の様式が整っていても、毎回リスト規制の別表を読み込み、スペック表と突き合わせ、根拠を記録する作業には、熟練者でも1件あたり30分から数時間かかるためです。
TIMEWELLが開発したTRAFEEDは、この負荷を下げるための輸出管理AIエージェントです。経産省のリスト規制・キャッチオール規制の基準に準拠したワークフローをAIに組み込み、製品スペックや仕様書を入力すると該非判定のドラフトを根拠条項つきで生成します。判定精度は95%以上(岡山大学との共同実証・自社調べ)で、判定手法は特許(特許第7862062号)を取得しており、すでに20を超える組織で使われています。CPの観点では、判定の標準化、判定根拠の記録化、新任担当者の教育という3点で効きます。AIのドラフトとレビュー履歴が分離して記録されるため、判定ログがそのまま監査証跡になり、実地調査対応の負担も軽くなります。最終判断は必ず人間が行うという設計なので、外為法上の輸出者の責任という前提とも矛盾しません。導入形態や機能の詳細は資料一覧からご確認いただけます。
まとめ
最後に、この記事のポイントを整理します。
- CISTECモデルCPは、管理形態3類型と判定対象2類型の組み合わせで6パターン(1A〜3B)があり、Word形式で無償ダウンロードできる。仲介取引対応版(1Aベース)とグループ企業向け版も別途用意されている
- パターン選びは背伸びをせず、今の組織で運用が回る形態を選ぶ。組織の成長に応じた乗り換えが正攻法
- 2025年10月9日施行の補完的輸出規制見直しでは、インフォーム対応のエスカレーション手順、16項(1)特定品目のHSコード確認、外国ユーザーリスト835団体の照合手順の3点を中心にCPを改定する
- CPの届出と受理票、チェックリストの受理票、実地調査の3点が揃ってはじめて特別一般包括許可の申請資格が得られ、受理後も毎年7月のチェックリスト提出が続く
- モデルCPをそのまま使うと、空欄の埋め残し、規程と実態の乖離、帳票の二重運用、再判定トリガーの欠落、みなし輸出の漏れ、改訂への未追随という6つの落とし穴にはまりやすい
CPは作ることがゴールではなく、自社の血肉として回し続けることに意味があります。モデルCPのカスタマイズ、2025年改正対応の規程改定、運用の仕組み化でお困りの方は、TRAFEEDの個別相談からお気軽にご連絡ください。関連記事として、輸出管理体制の作り方と輸出管理の監査対応実務もあわせてどうぞ。
