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輸出管理体制をゼロから構築する10ステップ|中小企業向け実務ガイド

2026-02-12濱本竜太

中小企業が輸出管理体制をゼロから構築するための10ステップを解説。社内規程テンプレートの要素一覧や経産省ガイドライン参照先など、実務に直結する情報を網羅します。

輸出管理体制をゼロから構築する10ステップ|中小企業向け実務ガイド
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

「海外取引が増えてきたが、輸出管理の体制がまったくできていない」「経産省のアウトリーチ事業で体制構築を勧められたが、何から始めればいいかわからない」「社内規程を作れと言われたが、ひな形もない」。中小企業の管理部門からよく聞く悩みです。

経済産業省は中小企業向けにアドバイザー派遣や説明会を無料で実施しています。それでも「何をどの順番で進めればよいのか」という全体像が見えにくいという声は絶えません。正直なところ、公的な資料は網羅的である反面、優先順位がわかりづらいのです。

この記事では、輸出管理体制をゼロから構築するための10ステップを、社内規程の構成要素一覧と経産省ガイドラインへの参照先を交えながら説明します。


この記事でわかること

  • 輸出管理体制構築の全体像と10ステップの進め方
  • 輸出管理内部規程(CP)に盛り込むべき要素一覧
  • 経産省やCISTECが提供する公式支援リソースの活用法
  • 中小企業が最低限押さえるべき「輸出者等遵守基準」の9項目
  • 体制構築後の運用と改善サイクル

なぜ中小企業にも輸出管理体制が必要なのか

「うちは武器や軍事品を扱っていないから関係ない」。この認識は危険です。

外為法は武器そのものだけでなく、大量破壊兵器や通常兵器の開発に転用できるデュアルユース品目も規制対象としています。高精度の工作機械、特定の化学物質、電子部品、ソフトウェアなど、一見すると民生品にしか見えない製品が規制にかかることは珍しくありません。

2025年10月の制度改正で、キャッチオール規制の対象が通常兵器関連にも拡大されました。HSコードで特定品目が指定される方式が導入され、これまで確認が不要だった製品カテゴリでも確認義務が生じるケースが出ています。

罰則の話もしておきます。外為法違反は個人に対して10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、法人に対しては10億円以下の罰金。これに加えて最大3年間の輸出禁止措置という行政制裁もあります。事業継続そのものに影響する水準です。


輸出者等遵守基準を知っておく

体制構築に着手する前に、「輸出者等遵守基準」を押さえておいてください。外為法に基づき、すべての輸出者が守るべき最低限の基準です。

項目 基準の内容 区分
1 組織の代表者を輸出管理の最高責任者とする 義務
2 組織内の輸出管理体制(業務分担と責任関係)を定める 義務
3 該非確認の手続きを定める 義務
4 用途や需要者等の確認手続きを定める 義務
5 出荷時に該非確認した製品と一致しているか確認する 義務
6 輸出管理の監査手続きを定め、実施する 努力義務
7 子会社への指導体制や手続きを定め、定期的に指導する 努力義務
8 輸出等関連文書を適切な期間保存する 努力義務
9 法令違反時は速やかに経産大臣に報告し、再発防止措置を講じる 義務

項目1〜5と9は法的義務、項目6〜8は努力義務です。ただし、立入検査では努力義務の部分についても確認が行われます。「努力義務だからやらなくてもいい」とは考えないほうが賢明です。


輸出管理体制構築の10ステップ

ステップ1:現状把握と自社リスクの棚卸し

最初にやるべきは、自社の輸出実態の把握です。自社が輸出している貨物や技術の種類と数量、主な輸出先の国や地域、取引先の業種と用途、現在の管理フローがあるかどうか。

この段階で完璧を目指す必要はありません。「何が管理できていて、何ができていないか」を可視化するのが目的です。

ステップ2:経営層のコミットメントを得る

輸出管理体制は、経営トップのコミットメントなしには動きません。遵守基準の第1項目にも「組織の代表者を最高責任者とする」と明記されています。

経営層を動かすには、法令違反時のリスクを具体的に伝えるのが一番です。

リスクの種類 具体的な内容 実例
刑事罰 個人は10年以下の懲役か3,000万円以下の罰金 精密機器メーカーの輸出禁止命令事例
行政制裁 最大3年間の輸出禁止措置 加工機器メーカーがイラン等へ無許可輸出し3ヶ月間の輸出禁止
レピュテーション 社名公表、取引先からの信頼喪失 経産省HPで違反企業名を公表
取引停止 大手取引先からのサプライチェーン排除 管理体制不備企業との取引見直し

私の経験では、「10億円の罰金」と「輸出禁止措置」の二つを具体的に伝えると、経営層の反応が変わることが多いです。

ステップ3:輸出管理の責任者と担当者を任命する

専任が理想ですが、中小企業では兼任が現実的でしょう。その場合でも、役割だけは明確に定めてください。

最低限必要なのは4つの役割。統括責任者として代表取締役か経営層。輸出管理責任者として管理部門長。該非判定担当者として技術に精通した社員。取引審査担当者として営業か法務部門の社員。

中小企業で4人揃えるのが難しければ、兼務でかまいません。ただし「誰がどの判断をするのか」が不明確なまま走り出すと、検査で指摘されるうえ、有事の際に責任の所在が曖昧になります。

ステップ4:輸出管理内部規程(CP)を策定する

CISTECが公開している「モデルCP」をベースに、自社の実情に合わせて作成するのが効率的です。パターンが複数用意されており、企業規模や業種に応じて選べます。

CPに盛り込むべき要素は以下のとおりです。

規程の要素 記載すべき内容
第1章 目的と適用範囲 規程の目的、対象となる業務範囲
第2章 管理体制 責任者や担当者の役割と権限、組織図
第3章 該非判定手続き 判定のフロー、判定書の書式、承認プロセス
第4章 取引審査手続き 用途確認、需要者確認、審査基準
第5章 許可申請手続き 経産省への申請フロー、添付書類
第6章 出荷管理 出荷前の照合確認、通関手続き
第7章 監査 監査の頻度、方法、記録
第8章 教育と研修 対象者、頻度、内容
第9章 文書管理 保存期間、保管方法、廃棄ルール
第10章 違反対応 報告ルート、経産省への報告手順、再発防止策

モデルCPはあくまで骨格です。実務で回すためには、「誰が、何を、どのように実行するか」を具体的に規定した細則が別途必要になります。ここを飛ばして「CPを作ったから大丈夫」と安心してしまう企業が多いのですが、立入検査で確認されるのはむしろ細則レベルの運用です。

ステップ5:該非判定の運用ルールを整備する

該非判定は体制の核です。文書化すべきルールは4つ。判定を実施するタイミング(新製品開発時、輸出案件発生時、法令改正時)。判定に使用する資料(仕様書、実測データ、マトリクス表)。判定結果の承認フロー(判定者から確認者、承認者へ)。判定書の保存方法と保存期間。

ステップ6:取引審査のフローを構築する

取引先の確認手続きを整備します。チェック対象となるリストは、経済産業省の外国ユーザーリスト、米国BISのEntity ListやSDN List、EU規制リスト、国連安保理制裁リストなど。

確認すべきは、取引先の所在国と仕向地、最終用途と最終需要者、取引の経緯に不自然な点がないか、介在者の存在と役割。

ステップ7:教育と研修プログラムを計画する

体制を整備しても、現場で運用する社員が理解していなければ機能しません。

対象 頻度 内容
経営層 年1回 法令違反リスク、最新の規制動向
輸出管理部門 年2回以上 該非判定の実務、取引審査の実務
営業部門 年1回 受注時の確認事項、リスクの兆候
技術部門 年1回 技術移転のリスク、みなし輸出
新入社員 入社時 輸出管理の概要、社内ルール

経産省の委託事業による無料説明会やCISTECの各種講座は、外部の専門知識を低コストで取り入れる手段として有用です。

ステップ8:文書管理と記録保存の仕組みを作る

輸出関連の書類は法令により5年間の保存が義務付けられています。該非判定書、取引審査記録、輸出許可証、契約書や仕入書、最終用途証明書、出荷記録、監査報告書、教育研修実施記録。これらすべてが保存対象です。

紙での保管は場所を取るうえ検索性が低いため、電子化の導入を検討してください。電子データの場合はタイムスタンプやアクセスログ管理による改ざん防止策も必要です。

ステップ9:内部監査を計画し実施する

最低年1回は内部監査を実施します。税関が公開している「内部監査チェックリスト」やCISTECの「輸出者等概要・自己管理チェックリスト(CL)」が参考になります。

監査で見るべきポイントは、CPどおりに運用されているか、該非判定の記録が適切に残されているか、取引審査が省略されているケースがないか、教育研修が計画どおり実施されているか、文書の保存状態は適切か。

2025年のCL改定で、監査の実施回数や方法について記載が求められるようになりました。自社の監査部門による監査が難しければ、同一部門内のクロス監査やグループ会社による監査、外部専門家への委託も認められています。

ステップ10:PDCAサイクルで継続的に改善する

体制構築はゴールではなくスタートです。法令は頻繁に改正され、自社の取扱製品や取引先も変わります。

年間スケジュールの一例を載せておきます。

実施事項
4月 年度計画策定、前年度の振り返り
5月 教育と研修(第1回)
7月 自己管理チェックリスト(CL)の提出
9月 法令改正の確認と社内規程の見直し
10月 内部監査の実施
11月 教育と研修(第2回)
12月 監査結果に基づく改善計画の策定
1月 外国ユーザーリストの更新確認
3月 次年度に向けた改善策の取りまとめ

経産省とCISTECの公式支援リソース

中小企業が活用できる公式リソースを整理しました。すべて無料か低コストで利用できます。

提供元 リソース名 内容 費用
経済産業省 安全保障貿易管理ガイダンス(入門編) 体制構築から手続きまでの解説書 無料
経済産業省 アウトリーチ事業 アドバイザー派遣、個別相談 無料
経済産業省 説明会資料(初級から中級編) 法令の概要と改正内容の解説 無料
CISTEC モデルCP 社内規程のひな形(複数パターン) CISTEC会員は無料
CISTEC 該非判定の手引き 判定手続きの解説と事例 CISTEC会員は無料
東京商工会議所 輸出管理体制構築支援 セミナー、個別相談 無料
JETRO 安全保障貿易管理 早わかりガイド 入門者向けの概要解説 無料

EX-Checkを活用した体制構築の加速

10ステップを自力で進めることは可能です。ただ、「人手が足りない」「専門知識を持つ社員がいない」という中小企業にとって、すべてを自前で整備するのは現実的でない場合もあります。

TIMEWELLが提供する輸出管理AIエージェント「EX-Check」(worried.jp)は、体制構築の負荷を下げる手段の一つです。

AIが製品情報をもとに判定結果と根拠を提示するため、専門知識が限られた担当者でも該非判定業務を始められます。最終判断は人間が行う前提ですが、判定にかかる時間と心理的ハードルは大きく下がる。

外国ユーザーリストや各国制裁リストとの照合はシステムが自動で実施。名前表記のバリエーション(英語、中国語、アラビア文字など)にも対応しており、手動チェックでの見落としリスクが減ります。

判定履歴や審査履歴はシステム上に自動的に蓄積されるため、内部監査や立入検査の際にすぐ参照できます。「記録が残っていない」「担当者が退職して経緯がわからない」という問題の予防になります。

導入は最短翌営業日から可能で、初期費用も抑えられています。高額なERPを入れる余裕がない中小企業にとっては、現実的な選択肢だと思います。


まとめ

輸出管理体制の構築は、一度にすべてを完成させる必要はありません。段階的に進めるのが現実的です。

まず取り組むべきは、経営層のコミットメント確保と、責任者や担当者の任命、該非判定と取引審査の基本フロー策定。ここが義務項目に直結する部分です。

次の段階として、社内規程(CP)の正式策定、教育研修プログラムの開始、文書管理の電子化、内部監査の初回実施に進む。

そのうえで、法令改正への追随、PDCAサイクルによる改善、監査の定期実施を継続的に回していく。

経産省のアウトリーチ事業やCISTECのモデルCPを活用しつつ、ツールの力も借りれば、限られたリソースでも実効性のある体制は構築できます。完璧を目指して動けなくなるより、まず一歩踏み出すこと。それが最善の戦略です。

輸出管理体制の構築にお悩みの方は、EX-Check(worried.jp)をご覧ください。既存の取引先のスクリーニングから始めてみることをお勧めします。


参考文献

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