株式会社TIMEWELLの濱本です。
「1件の該非判定に半日以上かかる」「省令の条文が読みにくくて、毎回調べ直している」「判定結果に自信が持てず、上長の確認待ちで何日もロスする」。輸出管理の現場では、こうした声をよく耳にします。
該非判定は輸出管理の根幹をなす業務です。にもかかわらず、多くの企業で属人化と非効率の温床になっている。経済産業省が毎年実施している法令遵守立入検査は2023年度に100件に上り、検査を受けた企業のなかには該非判定の運用面で改善指導を受けるケースも少なくありません。
この記事では、該非判定業務を5ステップで体系化する方法と、現場でありがちな判定ミス5選、手動作業とAI活用の時間比較をお伝えします。
この記事でわかること
- 該非判定を5つのステップで進める具体的なフロー
- 手動判定とAI支援判定の所要時間と精度の比較
- 現場で実際に起きている判定ミス5パターンと防止策
- 判定根拠の記録方法と監査対応のコツ
1. そもそも該非判定とは何か
該非判定とは、輸出しようとする貨物や提供しようとする技術が、輸出貿易管理令別表第1のリスト規制品に該当するか非該当かを判定する作業です。外為法に基づく輸出管理の出発点であり、この判定を誤ると無許可輸出として法令違反に問われます。
経済産業省の「安全保障貿易管理ガイダンス(入門編)」(令和7年1月・第2.4版)では、輸出者が踏むべき手続きとして該非判定、取引審査、許可申請、出荷管理の4段階を示しています。該非判定はその第一関門にあたります。
判定には二つの力が求められます。法令の規制条文構造を理解する力と、対象製品の技術的内容を把握する力。この両方を兼ね備えた人材は限られており、特定の担当者に業務が集中するという構造的な問題が、どの企業でも起きています。
2. 該非判定の5ステップフロー
ステップ1:対象製品の技術情報を整理する
判定の精度は、入力となる技術情報の質に直結します。カタログスペックだけでは不十分です。設計図面、試験成績書、仕様書など詳細な技術データを収集してください。
確認すべき情報は、製品の用途と機能、技術仕様(精度、性能、容量、周波数帯域など)、構成部品や材料、ソフトウェアの有無と機能。ここで手を抜くと、後のステップで手戻りが発生します。技術部門との連携は省略できません。
ステップ2:該当する可能性のある項番を特定する
経済産業省が公開している「貨物・技術のマトリクス表」を使い、製品の種類から候補となる項番を絞り込みます。CISTECの「項目別対比表」も有用です。
| 製品の種類 | 主に確認すべき項番 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 工作機械 | 6の2、6の3 | 位置決め精度、NC軸数 |
| 電子部品や半導体 | 9、10 | 周波数、処理能力 |
| センサーや計測器 | 14 | 検出感度、分解能 |
| 化学物質 | 3の2、3の3 | CAS番号、組成比 |
| ソフトウェア | 各項番のD欄 | 対象貨物との関連 |
| 暗号製品 | 9の1 | 鍵長、アルゴリズム |
ここで見落としがちなのが、一つの製品が複数の項番に該当する可能性です。「該当しそうな項番が見つかったからOK」ではなく、関連する項番をすべて洗い出すこと。これを怠ると、あとで紹介するミス2に直結します。
ステップ3:貨物等省令の規定と技術仕様を照合する
特定した項番ごとに、貨物等省令が定める技術パラメータの閾値と製品の実際のスペックを突き合わせます。
手順はシンプルです。省令の該当条文を読む。規定されている技術パラメータを抽出する。製品の技術データと数値を比較する。閾値を超えるかどうかを判定する。
気をつけるべきは、カタログ上の公称値ではなく実測データを用いることが原則だという点。公称値が閾値をわずかに下回っていても、実測値が超えている場合は「該当」です。
ステップ4:キャッチオール規制の該当性を確認する
リスト規制で非該当と判定されても、ここで終わりではありません。キャッチオール規制に基づく確認が残っています。
確認すべきは4点。仕向地がグループA以外の国や地域か。用途が大量破壊兵器や通常兵器の開発等に関連しないか。需要者が外国ユーザーリストに掲載されていないか。経済産業省からインフォーム(通知)を受けていないか。
2025年10月の制度改正で、キャッチオール規制の対象が通常兵器関連にも拡大されました。HSコードで特定品目が指定される形式に変わったため、これまで確認が不要だった製品でも確認が必要になるケースが出ています。私の感覚では、この改正の影響を正しく把握できている中小企業はまだ少数です。
ステップ5:判定結果を記録し、該非判定書を作成する
判定結果は社内文書として記録します。該非判定書に明記すべき項目は以下のとおりです。
| 記載項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 製品名称 | 正式名称、型式番号 | カタログ名称と社内呼称が異なる場合は両方 |
| 技術仕様 | 判定に用いたパラメータ値 | 実測値を優先 |
| 該当項番 | 照合した項番すべて | 複数項番の場合は各項番ごとの判定結果 |
| 判定結果 | 該当か非該当か | 項番ごとに記載 |
| 判定根拠 | なぜそう判定したかの説明 | 省令条文への参照を含む |
| 判定日 | 判定を行った日付 | 法令改正への対応状況を示す |
| 判定者 | 担当者の氏名と所属 | 承認者も記載 |
2025年10月以降の制度改正により、非該当判定の根拠についてはこれまで以上に詳細な説明が求められています。「非該当」の場合こそ、なぜ非該当なのかを具体的に記録しておくべきです。
3. 手動判定とAI支援判定の比較
該非判定の所要時間は製品の複雑さや担当者の習熟度によって差がありますが、製造業の現場で見られる傾向を整理しました。
| 比較項目 | 手動判定(従来方式) | AI支援判定 |
|---|---|---|
| 1件あたりの所要時間 | 2〜8時間(複雑な製品は丸1日以上) | 数分〜30分 |
| 大量処理(100件) | 2〜4週間 | 1〜2営業日 |
| 判定根拠の記録 | 担当者が手動で作成 | 自動でレポート生成 |
| 法令改正への追随 | 改正通知を手動で確認して反映 | システム側で2週間以内に更新 |
| 複数項番の見落とし | 起きやすい | クロスチェックで低減 |
| 担当者不在時の対応 | 停滞する | システムが稼働し続ける |
| 監査対応のしやすさ | 紙やExcel管理で検索が困難 | 履歴が一元管理され即座に参照可能 |
誤解のないように補足しておくと、AI支援は人間の判断を置き換えるものではありません。AIが事前に判定結果と根拠を提示し、担当者がその内容を確認して最終判断するという分業体制が現実的です。私はこの「下調べをAIに任せ、意思決定は人間が行う」という形が、少なくとも現時点では最もバランスが良いと考えています。
4. よくある判定ミス5選と防止策
CISTECの事例集や経済産業省の説明会資料をもとに、現場で実際に発生しているミスのパターンを整理しました。
ミス1:カタログスペックだけで判定してしまう
カタログには製品の公称値や標準仕様が記載されていますが、実際の性能がこれを上回っている場合があります。精度の公称値が規制閾値をわずかに下回っていても、実測データでは閾値を超えるケースは珍しくありません。
防止策としては、判定には必ず技術部門から実測データを取り寄せること。カタログ値と実測値が乖離している場合は、実測値で判定する。これは基本中の基本ですが、忙しい現場では省略されがちです。
ミス2:複数項番の確認を怠る
ある項番で非該当と判定できたことに安心し、他の該当し得る項番の確認を省略するケース。工作機械の本体が非該当でも、搭載されている制御ソフトウェアが別の項番で該当する場合があります。
マトリクス表で候補項番をすべて洗い出し、チェックリスト化して一つずつ確認する。地味な作業ですが、これが最も確実です。
ミス3:「民生用だから」と安易に非該当としてしまう
リスト規制の該当か非該当かは、用途ではなく技術仕様で判定します。「うちの製品は民生用だから非該当」という論理は成り立ちません。民生用途であっても、技術パラメータが閾値を超えていれば該当です。
余談ですが、このミスはベテランの営業担当者に多い印象があります。長年の経験から「この製品は問題ない」と直感で判断してしまう。用途の判断が必要になるのはキャッチオール規制の確認フェーズであって、リスト規制の該非判定ではないことを社内に繰り返し周知する必要があります。
ミス4:法令改正を反映していない古い判定結果を使い回す
過去に非該当と判定した製品について、その後の法令改正で閾値が変更されていた場合、同じ判定結果は使えません。日本化学品輸出入協会の「ヒヤリ・ハット事例集」でも、古い判定結果の使い回しに起因するリスクが報告されています。
該非判定書に判定日を必ず記載し、法令改正があった際には関連製品の再判定を実施してください。年1回以上の定期的な見直しスケジュールを設けておくのが理想です。
ミス5:システム登録時の入力誤り
判定自体は正確に行われたにもかかわらず、社内システムへの登録時に該当と非該当を取り違えるミス。本来許可が必要な製品が無許可で輸出されてしまう危険があるため、影響は深刻です。
システム登録後のダブルチェックは必須。登録者と確認者を分けるワークフローを構築しておくだけで、このミスの大半は防げます。
5. 判定品質を維持するための仕組みづくり
定期的な教育と研修
CISTECが提供する「該非判定手続の基礎講座」や、経済産業省委託のアウトリーチ事業(中小企業向け・無料)を活用して、担当者のスキルを継続的に更新するのが有効です。特にアウトリーチ事業はアドバイザーが無料で派遣される制度で、活用しない手はありません。
判定データベースの構築
過去の判定結果をデータベース化しておくと、同種の製品の判定時に参照でき、作業時間の短縮につながります。ただし、法令改正の反映漏れには注意してください。「前に非該当だったから今回も非該当」という運用は、ミス4で述べたとおり危険です。
マニュアルの整備と更新
経済産業省が公開している「輸出管理手続の実務マニュアルの例」を参考に、自社の業務フローに合わせたマニュアルを整備してください。マニュアルは法令改正のたびに更新することが前提です。
6. EX-Checkによる該非判定の効率化
ここまで述べてきた課題に対して、TIMEWELLが提供する輸出管理AIエージェント「EX-Check」(worried.jp)は、次のアプローチで該非判定業務を支援します。
複数のAIモデルがクロスチェックを行うマルチLLM合議方式で、判定結果と根拠を提示。人間の最終判断が前提ですが、事前のスクリーニング精度が上がります。判定根拠と参照法令を明示したレポートは自動で出力され、監査時にそのまま使えます。
100〜200件の案件を一度に処理できる一括処理機能は、大量の製品を扱う製造業や商社に向いています。法令改正があった場合は2週間以内にシステムを更新するため、「古い判定結果の使い回し」リスクの低減にもなります。
EX-Checkは経済産業省指定様式に準拠し、外為法とキャッチオール規制に対応。導入は最短翌営業日から可能で、Webブラウザからすぐに利用を開始できます。
まとめ
該非判定の効率化とは、単に作業を速くすることではありません。判定の品質を維持しながら、属人化と手戻りを解消すること。その手段として5ステップのフロー化、よくあるミスの仕組みでの防止、AI支援ツールの活用を紹介しました。
ただ、ツールを入れれば万事解決とは思っていません。最終判断は常に人間が行うものであり、担当者の教育や研修は引き続き欠かせない。道具と人、両方に投資する会社が、結局は一番強い体制を築けます。
該非判定業務の効率化にお悩みの方は、EX-Check(worried.jp)をご覧ください。デモやお問い合わせは無料で受け付けています。
参考文献
- 経済産業省「安全保障貿易管理ガイダンス(入門編)第2.4版」(令和7年1月)
- 経済産業省「具体的な該非判定の事例」
- 経済産業省「輸出管理手続の実務マニュアルの例」
- CISTEC「該非判定の手引き」
- CISTEC「該非判定手続の基礎講座」
- 日本化学品輸出入協会「ヒヤリ・ハット事例集」
- JETRO「輸出における安全保障貿易管理の規制品目・内容に対する該非の確認方法」
