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【完全解説】中国の対日デュアルユース品輸出規制強化(2026年1月)|MOFCOM公告第1号・第11号・第12号の整理

2026-05-20濱本 隆太

2026年1月6日のMOFCOM公告第1号と、2月24日の第11号・第12号で日本企業40団体がリスト掲載。公告本文の根拠・対象範囲・申請プロセスの変更点を一次情報ベースで整理し、調達担当が押さえるべき5つの実務ステップまで解説します。

【完全解説】中国の対日デュアルユース品輸出規制強化(2026年1月)|MOFCOM公告第1号・第11号・第12号の整理
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株式会社TIMEWELLの濱本です。

2026年1月6日、中国商務部(MOFCOM)が「両用物項の対日本輸出管制強化に関する公告」(公告2026年第1号)を即日施行しました。続いて2月24日には公告第11号・第12号で、日本企業・機関40団体が「輸出管理コントロールリスト(管控名単)」と「注視リスト(関注名単)」に掲載されています。

防衛・宇宙・半導体関連の調達担当の方から「具体的に何が、いつから、どこまで止まるのか」というご相談が増えています。本記事では、報道ベースの解釈ではなく、MOFCOM公告本文と日本側公的機関(ジェトロ、CISTEC)の整理を一次情報として、制度の構造を順番に分解していきます。

なお本記事は、中国側措置と日本側の安全保障貿易管理(外為法に基づく先端半導体21品目の追加規制等)を「並列の安全保障措置」として扱います。どちらかを「報復」「対抗」と位置付ける論調は採用しません。

この記事でわかること

  • MOFCOM公告2026年第1号・第11号・第12号の正式な内容と根拠法
  • 「軍事エンドユーザー」「管控名単」「関注名単」の3用語の違い
  • 公告には品目リストがなく、エンドユース基準で運用される仕組み
  • リスト掲載40団体の対象範囲と、第三国経由の再輸出規制
  • 米国・EUに対する同種規制との対称性(事実ベースでの比較)
  • 自社の調達・取引で今すぐ確認すべき5ステップ

まず用語を3つだけ理解する

公告の中身に入る前に、輸出管理の議論で混同しがちな3つの用語を整理します。これを押さえておくと、報道記事を読むときの解像度が一段上がります。

軍事エンドユーザー(軍事最終ユーザー)

軍隊、国防関連政府機関、軍事関連企業など、軍事活動を行う組織を指します。日本の場合は防衛省、自衛隊、防衛装備庁、およびこれらに関連する研究機関が典型例です。輸出管理では「品目」よりも「誰が使うか」を重視するため、この概念が中核になります。

管控名単(輸出管理コントロールリスト)

中国の両用物項輸出管理条例に基づき、特定対象への輸出を禁止または制限するために商務部が公表するリストです。掲載されると、中国原産の両用物項の輸出が原則停止します。進行中の取引も止まります。

関注名単(注視リスト)

包括許可・登録方式などの簡便な許可形態の利用が停止され、案件ごとの個別許可申請が必要になる対象リストです。誓約書など追加書類の提出も求められます。全面禁輸ではなく、手続き負荷の大幅な増加と理解するのが正確です。

用語 法的効果 一言で言うと
軍事エンドユーザー 公告本文上、原則禁輸 「誰に売るか」の概念
管控名単(管制リスト) 輸出禁止または重い制限 「ほぼ売れない」リスト
関注名単(注視リスト) 個別許可必須、誓約書要求 「個別審査になる」リスト

なお、よくニュースで耳にする「不可靠実体リスト(信頼できないエンティティリスト)」はまったく別系統の制度です。後ほどFAQで触れます。

該非判定の属人化を、AIで解消する。

経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDなら、判定時間を約7割削減し、判定根拠を構造化データで保存できます。

2026年1月6日 公告第1号の全体像

まず、起点となった公告第1号の正式情報を整理します。

項目 内容
正式名称 商務部公告2026年第1号「关于加强两用物项对日本出口管制的公告」
発表主体 中華人民共和国商務部(MOFCOM)安全管制局
公布日・施行日 2026年1月6日(公布の日から施行、即日発効)
根拠法令 中華人民共和国輸出管理法(2020年12月施行)/両用物項輸出管理条例(2024年12月1日施行)
公式に示された目的 国家安全と利益の維持、不拡散等の国際義務の履行

ポイントは3つあります。

ポイント1:品目リストが付されていない

公告本文には、対米向け2024年12月3日公告(ガリウム・ゲルマニウム・アンチモン等を明示)と異なり、個別品目のリストがありません。代わりに、後述の「エンドユース/エンドユーザー基準」が採用されています。

これは輸出者にとって「何が対象か明確に分からない」状態を生みます。実務的には、両用物項輸出管理条例の付属リスト(5桁ECCN類似コード)に該当する品目を全件、案件ごとに個別確認する作業が発生します。

ポイント2:3類型のエンドユース基準

公告は禁止対象を次の3類型で定義しています。

  1. 日本の軍事エンドユーザー向け輸出(防衛省、自衛隊、関連機関)
  2. 軍事エンドユース向け輸出(軍事装備の設計・開発・生産・使用)
  3. その他、日本の軍事能力向上に寄与しうるエンドユース/エンドユーザー向け輸出

3番目はいわゆるキャッチオール条項で、民生企業であっても用途次第で適用されうる構造になっています。日本の外為法や米国EARにも同様のキャッチオール規制が存在するため、概念自体は輸出管理の世界では珍しいものではありません。

ポイント3:民生用途は影響しないとの公式説明

MOFCOMは2026年1月7日の追加説明で、「民生用途には影響しない」と表明しています(Global Times報道)。ただし、品目リストがない以上、輸出者側で個別案件ごとにエンドユース/エンドユーザー確認を行う必要があり、結果としてリードタイムの長期化は避けにくい構造です。

2026年2月24日 公告第11号・第12号

公告第1号が「制度の枠組み」を示したのに対し、約7週間後の2月24日に公布された公告第11号・第12号は「具体的な対象リスト」を確定させた位置付けです。

リスト 公告番号 件数 主な対象 法的効果
輸出管理コントロールリスト(管控名単) 2026年第11号 20団体 三菱重工系列、川崎重工系列、IHI系列、JMU系列、富士通防衛、NEC航空宇宙等 中国原産両用物項の輸出禁止(進行中取引も停止)
注視リスト(関注名単) 2026年第12号 20団体 TDK、トーキン、防衛装備庁系列、大学・研究機関等 包括許可の停止、個別許可申請時に誓約書等を要求

掲載企業・機関の例(一部公表分):

  • 三菱造船、三菱重工航空エンジン
  • 川崎重工航空宇宙
  • IHIエアロスペース
  • ジャパンマリンユナイテッド(JMU)
  • 富士通ディフェンス&ナショナルセキュリティ
  • 防衛大学校
  • 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

リスト掲載企業のグループ会社・サプライヤーであっても、直接掲載されていなければ通常取引は継続可能というのが現時点の運用解釈です。ただし、リスト掲載企業向けの「中国原産部材を含む完成品」の納入経路は、後述の再輸出規制の論点が絡みます。

影響を受ける可能性のある業界

公告本文に品目リストはありませんが、両用物項輸出管理条例の付属リストと過去の対米措置から、業界アナリスト・法律事務所の整理として以下の品目が実務上の重点として挙げられています。

鉱物・金属

  • レアアース類:サマリウム、ジスプロシウム、テルビウム、ガドリニウム、ルテチウム、イットリウム、スカンジウム
  • レアアース磁石:ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石
  • タングステン、モリブデン、関連合金

レアアース類については、既存の2025年4月施行のレアアース7種輸出管理と重なる部分があります。背景は別記事の中国レアアース輸出規制 2025-2026マップで整理しています。

半導体・電子部品

  • 高精度センサー、レーザー
  • 軍民両用に該当しうる半導体材料・装置部品
  • テレメトリ機器

航空宇宙・海洋

  • 炭素繊維、特殊合金
  • 海洋工学関連ソフトウェア

これらはあくまで「公告本文外」の業界整理であり、最終的にどの品目が許可対象となるかは個別案件ごとの判断になります。

日本企業への影響

「自社は防衛とは関係ない」と思っている企業ほど、実は思わぬ点で影響を受けます。整理すると、影響経路は次の4パターンです。

1. 直接の輸入停止

中国から両用物項を直接輸入している企業のうち、軍事エンドユーザー向けの用途を持つもの。これは公告第1号の最も明確な対象です。

2. リスト掲載企業のサプライヤー

公告第11号・第12号の40団体に部材を供給している企業。掲載企業に納める製品に中国原産の規制対象品目が含まれていると、サプライチェーン全体が止まる可能性があります。

3. 第三国経由の再輸出ルート

公告本文には、中国原産の両用物項を第三国経由で日本の対象に再輸出・移転することも禁止対象と明記されています。違反した場合、いかなる国・地域の組織・個人も法的責任を問われる旨が示されています。

たとえば「中国→ベトナム加工→日本」というルートで中国原産の部材が流入するケースは、ベトナム側の組織も域外適用の対象となる構造です。米国EARの再輸出規制(Re-export rule)と類似の発想です。

4. 民生用途取引のリードタイム長期化

民生用途は対象外という公式説明があるにせよ、エンドユース/エンドユーザー証明書類の徴求が事実上強化されると見込まれます。「これまで2週間で出ていた許可が、書類の追加でひと月以上かかる」というケースは現実に起きやすい範囲です。

影響試算(参考)

NRI(野村総合研究所)の試算では、レアアース輸出規制が3か月継続で約6,600億円、1年継続で約2.6兆円の経済損失と推計されています(出典:NRI 木内登英コラム 2025年11月28日)。

ただしこれは特定の仮定を置いた試算値であり、実際の影響は許可運用の実態と代替調達の進度で大きく変わります。「最大2.6兆円」だけが独り歩きしないよう、引用時は仮定条件とセットで扱うのが安全です。

米国・EUに対する同種規制との対称性

中国側の輸出管理は、対米・対EU向けにも近い時期に強化されています。事実関係のみで比較すると、形式上の差異は次の通りです。

項目 対米(2024年12月3日 公告) 対日(2026年1月6日 公告)
公告番号 商務部公告2024年第46号系 商務部公告2026年第1号
根拠法 輸出管理法/両用物項輸出管理条例 同左
対象 米国の軍事ユーザー・軍事用途 日本の軍事ユーザー、軍事用途、および軍事能力向上に寄与しうるその他エンドユース/エンドユーザー
品目 ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、超硬材料等を明示 品目リストなし(エンドユース/エンドユーザー基準のみ)
域外適用 あり(再輸出規制) あり(再輸出規制)

対日措置は、対米措置にあった「品目特定」が外され、キャッチオール(軍事能力向上寄与)が明文化された点が形式上の差異です。

なお、日本側の安全保障貿易管理(経済産業省・外為法)も近年大きく動いています。2025年5月施行の改正では、先端半導体製造装置21品目・量子コンピューター関連が許可対象に追加されました。これは日本独自の不拡散・安全保障目的の措置であり、中国側の対日措置とは別個の制度として運用されています。両者を「対抗関係」と整理するか「並列の安全保障措置」と整理するかは、各社の事業環境認識に依存します。本記事では後者の整理を採用しています。

実務でやるべき5ステップ

調達・法務・輸出管理部門の実務として、次の順番で進めるのが現実的です。

ステップ1:自社・グループのリスト掲載確認

まず、自社および国内外グループ会社が公告第11号(管控名単)・第12号(関注名単)の40団体に含まれていないかを確認します。直接掲載されていなくても、グループ名や合弁会社名の表記揺れに注意してください。

ステップ2:中国原産両用物項の調達棚卸し

中国から輸入している品目のうち、両用物項輸出管理条例の付属リストに該当しうるものを洗い出します。レアアース、特殊合金、特定の電子部品、特定のセンサーなどが典型です。

棚卸しの粒度は、HSコード単位ではなく、サプライヤー名・品目名・用途まで紐付けるのが望ましいです。

ステップ3:第三国経由ルートの可視化

直接の対中取引がなくても、第三国の加工拠点経由で中国原産品が流入している場合は再輸出規制の対象です。輸入時のCO(原産地証明)と、サプライヤーから取得する素材原産地情報を突き合わせます。

ステップ4:エンドユース/エンドユーザー証明の体制整備

民生用途であっても、書類整備の負荷は増えます。サプライヤーへの誓約書テンプレート、社内のエンドユース判定フロー、許可申請に必要な技術情報の整理を進めます。

ここはAI輸出管理エージェントを使った効率化が効く領域です。TRAFEED(旧ZEROCK ExCHECK)は経産省基準準拠で、中国・日本双方の制度を踏まえた取引フロー設計を支援できる構成にしています。

ステップ5:調達多元化・代替材料の検討

中期的には、調達先の多元化(豪州、米国、ベトナム、フランス等)と代替材料への切替を並走で進めます。レアアースであれば、プロテリアル等のレアアースフリー磁石技術が代替候補に挙がります。

在庫戦略も合わせて見直してください。リードタイム長期化を前提に、安全在庫水準の再設計が必要です。

よくある誤解/FAQ

実務で頻繁に出る質問を、誤解されやすい順に整理します。

Q1. 民生用途の中国製レアアースを今すぐ調達できなくなるのか

A. MOFCOMは民生用途には影響しないと公式に説明しています。ただし品目リストが公告に付されていないため、輸出者側で個別案件のエンドユース/エンドユーザー確認が必要です。実務上はリードタイムが長期化する可能性が高い、というのが現時点の見方です。

Q2. 注視リスト(関注名単)に掲載されると全く調達できなくなるのか

A. 全面禁輸ではありません。包括許可・登録方式の利用が停止され、個別許可申請が必要になります。誓約書等の追加書類提出を求められる、という運用負荷の増加が主たる効果です。

Q3. 中国原産の部材を組み込んだ第三国製品が日本へ輸入される場合は対象になるか

A. 公告は第三国経由の中国原産両用物項の移転・提供を規制対象としています。デミニミス基準(成分割合の閾値)は公告第1号本文には明示されていませんが、2024年条例および後続公告(例:2025年第61号における0.1%基準)の運用が参照される可能性があります。

Q4. 「管控名単」と「不可靠実体リスト」は同じものか

A. 別系統の制度です。不可靠実体リスト(信頼できないエンティティリスト)は、商務部が運用する別系統の制裁リストで、対中投資制限・対中貿易制限・入国制限等を発動できます。一方、今回の対日措置(2026年第1号・第11号・第12号)は両用物項輸出管理条例に基づく輸出管理リストで、根拠法も効果も異なります。報道で混同されやすいので、社内資料で整理する際は明示的に分けてください。

Q5. 米中合意で輸出規制が一時停止された対米措置と、対日措置は連動するか

A. 2025年10月の対米向け域外レアアース措置(公告2025年第61号)は米中協議を受けて2026年11月10日まで実施停止となっています。一方、対日措置(2026年第1号)は別案件で、停止は発表されていません。両者は連動しない別個の措置と整理するのが現時点で正確です。

Q6. リストへの掲載は永続的か

A. 両用物項輸出管理条例上、リストは見直し・除外申請の余地があります。当該企業は商務部に対して説明・除外申請を行うことが制度上可能です。ただし、運用実績がまだ少ないため、除外までのリードタイムは不透明です。

Q7. 中国側措置と日本側措置の関係をどう社内説明すべきか

A. 「並列の安全保障措置」と説明するのが、断定を避けつつ事実関係を整理する穏当な表現です。日本側の外為法に基づく先端半導体21品目の追加(2025年5月施行)と、中国側の対日措置はそれぞれ独自の根拠法と目的を持つ制度として並立しています。社内向け資料では、「報復」「対抗」といった因果関係を断定する表現は避けるのが安全です。

まとめ

整理すると、次のようになります。

  • 公告第1号(2026年1月6日):両用物項の対日輸出管制強化の枠組み。品目リストは無く、エンドユース/エンドユーザー基準で運用
  • 公告第11号(2026年2月24日):管控名単(コントロールリスト)に日本企業・機関20団体を掲載。原則輸出禁止
  • 公告第12号(2026年2月24日):関注名単(注視リスト)に日本企業・機関20団体を掲載。個別許可化、誓約書要求
  • 第三国経由の再輸出も対象:中国原産品目を経由してでも対象には流れない構造
  • 民生用途は対象外(公式説明):ただし書類整備によりリードタイム長期化は不可避
  • 米国・EU向けにも同種規制あり:対米措置と対日措置の連動は現時点で確認されていない
  • 対称性の整理:中国側措置と日本側措置は「並列の安全保障措置」として整理するのが穏当

調達担当・輸出管理担当としては、まずリスト掲載確認とサプライチェーン棚卸しから着手し、エンドユース/エンドユーザー証明の体制整備に進めるのが優先順位として現実的です。

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参考文献

一次資料(中国政府)

二次資料(日本公的機関・法律事務所)

二次資料(中国・国際)

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