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【完全解説】中国レアアース輸出規制マップ|永続規制7元素+停止中5元素、日本企業が確認すべき影響範囲

2026-05-20濱本 隆太

中国レアアース輸出規制を初心者向けに整理。商務部公告18号(永続規制7元素:Sm/Gd/Tb/Dy/Lu/Sc/Y)と、公告55-58号・61号で導入され2026年11月まで停止中の追加5元素・域外適用・50%ルールを切り分け、日本企業が確認すべき影響範囲と実務5ステップを解説します。

【完全解説】中国レアアース輸出規制マップ|永続規制7元素+停止中5元素、日本企業が確認すべき影響範囲
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株式会社TIMEWELLの濱本 隆太です。中国のレアアース輸出規制は、2025年4月の公告18号から2026年1月の対日両用品目規制まで立て続けに動き、「いま何が規制中で、何が停止中なのか」がわかりにくくなっています。この記事では、商務部(MOFCOM)公告の一次資料をベースに、規制構造と影響範囲を初心者向けに整理します。米国EARや日本の外為法と同じ「主権国家による輸出管理」として中立に扱います。

この記事でわかること

  • 中国の輸出管理法・両用品目輸出管理条例・商務部公告という3層構造
  • 現在も継続中の「永続規制7元素」(Sm/Gd/Tb/Dy/Lu/Sc/Y)
  • 2026年11月10日まで施行停止中の「追加5元素」(Ho/Er/Tm/Eu/Yb)と関連設備・電池
  • 域外適用条項(0.1%ルール)と50%ルールの内容と現状
  • 自社が影響を受けるかを3点でチェックする方法と、実務でやるべき5ステップ

まず用語を3つだけ理解する

中国の規制文書には独特の用語が多いので、最低3つだけ押さえます。

1. 両用品目(デュアルユース):民生用にも軍事用にも使える物品・技術・ソフトウェアの総称。半導体製造装置、化学品、暗号、特殊材料が代表例で、世界各国が同じカテゴリーで輸出管理しています。中国の規制対象も「兵器」ではなくこの両用品目です。

2. 輸出許可制:中国国内の輸出者が、輸出のたびに商務部へ申請して許可を得る仕組み。米国EARの「License Required」、日本の外為法の「許可制」と同じ機能で、「個別/包括/一般」の3類型があります。

3. 域外適用(再輸出規制):中国国外で行われる取引にも自国法の効力を及ぼす仕組み。米国の de minimis ルールやFDP規則と同じ構造で、後述の「0.1%ルール」「50%ルール」がこれに当たります(現在は施行停止中)。

中国レアアース輸出規制の全体像

中国の輸出管理は、上位法から個別公告まで4層のピラミッドになっています。新しい公告が出るたびに最下層が更新される、と理解するとわかりやすいです。

[最上位]  輸出管理法(2020年12月施行)
            │ 許可制度・域外適用・罰則の根拠
            ▼
[条例]    両用品目輸出管理条例(2024年12月施行)
            │ 両用品目の実施規則(個別/包括/一般許可、エンドユース管理、再輸出)
            ▼
[リスト]  両用品目輸出管理リスト(2024年11月公布)
            │ 許可制の対象品目を列挙
            ▼
[個別公告] 商務部公告(年度ごとの追加・改正)
            例:2025年第18号、55-58号、61号、70号、2026年第1号

この構造は、米国の「ECRA → EAR → CCL → 個別Federal Register Notice」、日本の「外為法 → 輸出貿易管理令/貨物等省令 → 通達」と機能的に対応しています。リスト外でも、最終用途が大量破壊兵器や軍事目的に関わると判断されれば許可申請が求められる「キャッチオール規制」がある点も、米国・日本・EUと共通です。

輸出許可の3類型

両用品目輸出管理条例は、許可を3類型に整理しています。

類型 内容 想定用途
個別許可 1案件1許可(one batch, one license) 通常のケース
包括許可 一定期間・同一相手先に複数回輸出可 取引実績のある相手先
一般許可 信頼性の高い輸出者向け、事後管理ベース 上級コンプライアンス認定企業

2025年12月、商務部は信頼性の高い輸出者・相手先に対し、初の「一般許可」を付与したと公表しました(報道ベース)。

該非判定の属人化を、AIで解消する。

経産省2024年度データによれば、外為法違反の52%は該非判定起因。TRAFEEDなら、判定時間を約7割削減し、判定根拠を構造化データで保存できます。

永続規制7元素(公告2025年第18号)

2025年4月4日付の商務部公告 第18号で、中重希土類7元素および関連物項(金属・合金・酸化物・化合物・混合物・スパッタリングターゲット・永久磁石材料)が輸出管理対象に追加されました。この措置は、後述する2025年11月の包括的な施行停止の対象外で、2026年5月時点でも継続しています。

元素 記号 区分 主な産業用途
サマリウム Sm 中希土 サマリウムコバルト磁石(耐熱モーター、宇宙・防衛)
ガドリニウム Gd 中希土 MRI造影剤、原子炉中性子吸収材
テルビウム Tb 中希土 NdFeB磁石の高温対応添加、緑色蛍光体
ジスプロシウム Dy 中希土 NdFeB磁石の保磁力向上(EVモーターで必須)
ルテチウム Lu 重希土 PET検出器、石油精製触媒
スカンジウム Sc (準希土) 高強度アルミ合金(航空機・3Dプリント)
イットリウム Y 重希土 YAGレーザー、蛍光体、高温超伝導

補足:レアアース17元素と「中重希土類」

レアアース(希土類)は、ランタノイド15元素にスカンジウム(Sc)とイットリウム(Y)を加えた合計17元素です。「希」と呼ばれますが、地殻中の存在量が極端に少ないわけではなく、経済的に分離・精製できる場所が偏っていることが本質です。産業界では次のように整理されます。

区分 主な元素 主な用途
軽希土(LREE) La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm 触媒、ガラス研磨、永久磁石(Nd)
中希土(MREE) Sm〜Dy(Eu, Gd, Tb等) 永久磁石の高温特性、蛍光体
重希土(HREE) Ho〜Lu, Y 永久磁石の保磁力向上、レーザー、医療

中希土と重希土を合わせて「中重希土類」と呼びます。公告18号の対象7元素もこのカテゴリーに集中しています。

停止中5元素(公告2025年第57号)

2025年10月9日付の公告55-58号で追加された規制は、2025年11月7日付の公告70号により2026年11月10日まで施行停止されています。停止対象のうち追加5元素は次の通りです。

元素 記号 区分 主な用途
ホルミウム Ho 重希土 医療用レーザー
エルビウム Er 重希土 光通信アンプ、レーザー
ツリウム Tm 重希土 携帯X線装置
ユウロピウム Eu 中希土 赤色蛍光体、ディスプレイ
イッテルビウム Yb 重希土 光ファイバーアンプ、原子時計

なお一部報道では「鉄」「青銅」を含む訳出も見られますが、これは中国語原文の翻訳エラーに由来する可能性が高く、複数の英文一次資料で確認できるのは Ho・Er・Tm・Eu・Yb の5元素です。

同時に停止中の関連規制

公告55・56・58号は、5元素以外にもサプライチェーンに影響する品目を含んでおり、いずれも2026年11月10日まで停止中です。

公告 対象
公告55号 超硬材料・人造ダイヤモンド
公告56号 レアアース採掘・精錬設備・抽出剤
公告58号 リチウム電池・人造黒鉛負極材

レアアース本体だけでなく、採掘・精錬装置や電池材料まで一括で停止対象になっている点が特徴です。

域外適用条項—中国原産材料を使った海外製品も対象

2025年10月の公告61号は、中国国外で製造された製品にも次の条件で中国の許可を要求する内容を含んでいました(2026年11月10日まで施行停止)。

0.1%ルール(de minimisに相当)

中国原産のレアアース(公告添付リスト掲載品)が、海外製品の価格の0.1%以上を占める場合、その海外製品の輸出にも中国の許可が必要になる構造です。米国の de minimis ルール(米国原産品が一定割合以上含まれる外国製品に米国EARが及ぶ仕組み)と機能的に同じです。0.1%は厳しめですが、これはレアアースが製品価値に占める比率の小ささを反映した設計と考えられます。

50%ルール(関連会社規制)

コントロールリスト掲載企業が50%以上を所有・支配する子会社・関連会社にも、本体と同じ規制が及ぶことが明示されました。米国商務省BISが2025年9月に導入した「Affiliates Rule(50%ルール)」と対称的な構造です。

中国由来技術を使った製品

「中国由来の抽出・分離・磁性材製造技術を使って製造された製品」も域外適用の対象でした。米国の外国直接製品規則(FDPR)と機能的に対応する設計です。

実務シナリオ:3つのパターン

域外適用が再開された場合、次のようなケースが対象になり得ます。

シナリオ 規制対象になる経路
商社経由で間接的に調達した中国産Dy 商社が中国を出る時点で公告18号の対象
海外OEMが中国原産レアアースを組み込んだ部品 完成品の0.1%以上なら、OEMから日本への輸出にも許可が必要
米国経由で再輸入される中国レアアース 第三国経由の迂回輸出として取締対象

「中国から直接買っていない」場合でも、サプライチェーンを遡ると影響を受け得るのがこの規制の特徴です。

時系列で見る2025-2026年の動き

ここまでの公告を時系列に並べると次の通りです。

日付 出来事
2024年12月1日 両用品目輸出管理条例・リスト 一体施行
2025年2月 タングステン・テルル・ビスマス・モリブデン・インジウムを追加
2025年4月4日 公告18号:中重希土類7元素(Sm/Gd/Tb/Dy/Lu/Sc/Y)を許可制対象に追加
2025年10月9日 公告55-58号:追加5元素、設備、リチウム電池、超硬材料を追加。公告61号:域外適用・50%ルールを導入
2025年11月7日 公告70号:公告55, 56, 57, 58, 61, 62号を2026年11月10日まで施行停止
2025年12月18日 商務部、信頼性の高い輸出者・相手先に初の「一般許可」を付与(報道)
2026年1月6日 公告2026年第1号:日本向け、軍事最終用途・最終ユーザーへの両用品目(7元素含む)輸出禁止
2026年11月10日(予定) 公告70号による施行停止が満了し、域外適用・追加5元素規制等が再開予定

ポイントは2つです。

  1. 公告18号(7元素)は停止対象に含まれず、現在も継続中
  2. 2026年11月10日に施行停止が満了するため、再開・修正・延長のいずれになるか、運用情報を継続的にウォッチする必要がある

自社に影響するかの3点チェック

「うちは関係ないかも」と思っても、次の3点をチェックすると影響範囲が見えてきます。

チェック1:使っている部材に7元素が含まれるか

EV駆動モーター、産業用サーボモーター、風力発電タービン、MRI、PET、YAGレーザー、ディスプレイ用蛍光体、サマリウムコバルト磁石を扱う企業は、ほぼ確実に該当します。次の業界別マッピングが参考になります。

業界 影響を受ける部材 用途例
自動車(EV含む) NdFeB磁石(Dy, Tb添加) 駆動モーター、ステアリング、センサー
半導体製造装置 レアアース合金、研磨剤、特殊ガス エッチング、研磨工程
防衛・航空宇宙 SmCo磁石、Sc合金 戦闘機、誘導装置、レーダー
医療機器 Gd(MRI)、Lu(PET) 画像診断
再生エネルギー NdFeB磁石 風力発電タービン
民生エレクトロニクス Y, Eu(蛍光体) ディスプレイ、LED

チェック2:調達ルートに中国が含まれるか

直接輸入していなくても、商社経由・海外OEM経由・第三国経由で間接的に中国産レアアースを使っているケースは少なくありません。日本のレアアース輸入は中国が約60〜70%、重希土類のDy・Tbはほぼ全量が中国経由とされます。

チェック3:最終用途・最終ユーザーに軍事関連が含まれるか

2026年1月の公告2026年第1号により、日本の軍事最終用途・軍事最終ユーザー向けは、7元素を含む両用品目の輸出が原則不許可となりました。防衛装備品サプライヤー、軍関連の50%以上出資子会社など、自社の取引先にこうした主体が含まれるかを確認する必要があります。

違反した場合のリスク

中国輸出管理法の罰則体系は、行政処罰と刑事罰の二段構えです。

違反類型 罰則
無許可輸出 違法行為の停止命令、違法収入の没収、違法経営額の5〜10倍の罰金(最大20倍の事例あり)
輸出経営資格の取消 重大な違反で当該品目の輸出経営許可を取消
個人責任 直接責任者に罰金、職務停止、輸出関連業務への従事禁止
刑事責任 密輸罪・違法経営罪等。重大事案で懲役刑
その他 不可靠実体リスト掲載。外国企業の場合は中国との取引・投資・入国制限

法人・個人ともに対象で、日本企業の中国子会社や駐在員も適用を受け得ます。2026年2月には日本企業20社が注視リスト等に掲載されたとの報道もあり、日本法人が実質的にリスクを負う構造です。

実務でやるべき5ステップ

中国レアアース規制の影響を最小化するために、次の5ステップを推奨します。

ステップ1:レアアース使用部材の棚卸し:購買データ・BOM(部品表)から、レアアースを含む部材を洗い出します。HSコード85051110(永久磁石)、28530030(希土類化合物)が入口です。

ステップ2:サプライチェーンの原産国トレーシング:商社・OEM・第三国経由を含めて、レアアース原料の原産国を一次・二次サプライヤーまで確認します。0.1%ルール再開に備え、トレーサビリティ書類(産地証明、輸入通関書類)も整備します。

ステップ3:最終用途・最終ユーザーの分類:出荷先を「民生」「軍事最終用途・最終ユーザー」「該否不明」に分類します。2026年第1号により、日本の軍事関連向けは7元素の輸出が原則不許可となっているため、該当取引には早期対応が必要です。

ステップ4:申請・代替調達の二本立て計画:中国側輸出者と連携し、必要な許可申請を進めます。法定審査期間は最大45営業日ですが、実務では数か月の遅延も報告されています。並行して、Lynas(マレーシア)、MP Materials(米国)、Carester(フランス)等の動向もウォッチします。

ステップ5:規制再開を前提とした継続モニタリング:公告70号の施行停止は2026年11月10日が期限です。停止延長・再開・別形式の再導入のいずれになるかを、商務部公告で継続監視する必要があります。

よくある誤解/FAQ

Q1. 商社経由なら関係ないのでは?

商社経由でも、商社が中国を出る時点で公告18号の許可申請が必要です。商社が許可を取得できなければ、最終的に貨物は届きません。第三国経由の迂回輸出も商務部が取締対象として明示しています。

Q2. 日本国内で消費するだけなら関係ない?

国内消費でも、中国から日本への輸入時点で中国側の輸出許可が下りなければ調達できません。民生用途であれば許可は下りる方向ですが、申請プロセスでの遅延や追加情報提出を前提にした計画が必要です。

Q3. 「停止中」と聞いたが、いつ再開される?

公告70号による施行停止は2026年11月10日が期限です。それ以前に再開・修正される可能性も、停止が延長される可能性もあります。公告18号による7元素規制は停止対象外で、現在も継続している点に注意してください。

Q4. 該非判定はどうやればいい?

両用品目輸出管理リストの品目番号と、自社製品の仕様(化学組成、用途、HSコード)を照合します。組み込み品・加工品は判定が難しく、商務部の問い合わせ制度を活用するか、CISTEC等の専門機関に相談することがJETROからも推奨されています。

Q5. 日本企業も罰則の対象になるのか?

中国輸出管理法は中国国内からの輸出を一次的に規制するため、輸出者(中国側企業)が一義的な対象です。ただし、域外適用条項が再開されれば海外企業も中国の許可が必要になり、不可靠実体リストに掲載されれば中国との取引全般が制限されます。

まとめ

  • 中国レアアース規制は、輸出管理法 → 両用品目輸出管理条例 → リスト → 商務部公告の4層構造で運用される
  • 継続中なのは公告18号の「永続規制7元素」(Sm/Gd/Tb/Dy/Lu/Sc/Y)
  • 公告55-58号の追加5元素(Ho/Er/Tm/Eu/Yb)と公告61号の域外適用(0.1%ルール)・50%ルールは、公告70号により2026年11月10日まで施行停止中
  • 公告2026年第1号により、日本の軍事最終用途・最終ユーザー向けは7元素を含む両用品目が原則不許可
  • 米国EAR・日本の外為法・EU規則2021/821と機能的に対称な構造。各国が経済安全保障の観点から導入する輸出管理として理解するのが正確

関連記事に米国BIS関連会社ルール(50%ルール)クリティカルミネラルの供給構造輸出管理2026年の主要変更点もあります。

自社で対応できるか不安な方へ

中国レアアース規制の難しさは、「7元素を使っているか」だけでは終わらない 点です。域外適用条項(0.1%ルール・50%ルール)により、商社経由で間接的に調達した素材、海外OEMが組み込んだ部品、米国経由の再輸出など、サプライチェーン全体を遡及的に確認する必要があります。

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