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ニュースを賑わす「国家情報局」って何なのか

2026-02-25濱本 隆太

2026年度中に創設予定の国家情報局とは何か。ウクライナ侵攻後の安全保障政策の大転換、世界の情報機関との比較、企業に求められる経済安全保障対応まで徹底解説。

ニュースを賑わす「国家情報局」って何なのか
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こんにちは、TIMEWELLの濱本です。今日はテック関連のサービスご紹介です。

…と、いつもなら始めるところですが、今回は少し趣向を変えます。最近ニュースで頻繁に登場する「国家情報局」という組織、皆さんはご存知でしょうか。スパイ映画の話ではありません。2026年の日本で今まさに動いている、かなりリアルな話です。

ニュースを賑わす「国家情報局」って何なのか

国家情報局と聞くと、ジェームズ・ボンドの秘密基地やハイテク機器が並んだ司令室を想像する方もいるかもしれません。あながち間違いではないのですが、2026年度中に日本で創設されようとしているこの組織は、もう少し地に足のついた存在です。

ざっくり言えば、日本のインテリジェンス、つまり情報活動の司令塔となる組織です [1]。

日本には情報を集める機関がすでにいくつもあります。内閣情報調査室、通称「内調」。警察庁、外務省、防衛省、公安調査庁 [2]。それぞれが自分の持ち場で情報を集めている。ところが、集めた情報がうまく共有されない。省庁の壁に阻まれて、全体像が誰にも見えないまま放置されている。いわゆる縦割りの弊害です。

サイバー攻撃、国際テロ、偽情報の拡散、経済安全保障。現代の脅威は一つの省庁だけで対処できるほど単純ではありません。バラバラの情報を一カ所に集約し、専門家が分析して、総理大臣が的確な判断を下せるようにサポートする。そんな頭脳が必要になった。その役割を担うのが国家情報局です。

内閣官房にある内調を格上げ・改組する形で設置されます。アメリカのCIAやイギリスのMI6といった海外の諜報機関とも、これまで以上に連携を強化していく方針が示されています [3]。

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ウクライナ侵攻が変えた世界と、日本の安全保障の「前」と「後」

なぜ今になって新しい情報機関を作る必要があるのか。この疑問はもっともです。ただ、2022年2月24日を境に、世界の景色は決定的に変わりました。

ロシアによるウクライナ侵攻。これは単なる軍事衝突ではありませんでした。情報、経済、サイバー空間が一体となったハイブリッド戦争の現実を、世界中がまざまざと見せつけられた出来事です。

この戦争が突きつけた最大の教訓の一つが、インテリジェンスの圧倒的な重要性でした [9]。

ウクライナ侵攻前、アメリカのインテリジェンス機関はロシアの侵攻計画を極めて高い精度で予測していました。2021年秋にはすでにロシア軍の動きを詳細に把握し、欧州諸国に警告を発していた。アメリカは情報を戦略的に公開するという異例の手段をとり、ロシアが準備していた偽旗作戦、つまり自作自演の攻撃を相手のせいにする工作を事前に無力化しました。情報が単なる秘密ではなく、戦略的な武器として使われる時代が来たのです。

翻って、日本はどうだったか。

長らく防衛費をGDP比1%に抑える慣行を維持し、専守防衛を原則としてきました。防衛装備品の輸出も厳しく制限され、インテリジェンス体制は内調を中心とした小規模なもの。経済安全保障という概念自体、まだ議論の途上にあった。正直に言えば、情報戦という観点では周回遅れの状態だったと私は考えています。

しかし、「今日のウクライナは明日の東アジア」という認識が広がる中で、日本も安全保障政策の大転換を迫られました。台湾有事への懸念が高まり、情報の一元的管理と分析能力の欠如が、国家の存立を揺るがす致命的な弱点になりうると痛感されたのです。

安保三文書から国家情報局へ、怒涛の政策転換

ウクライナ侵攻後、日本は急速に安全保障政策の舵を切りました。

その象徴が、2022年12月に閣議決定された安保三文書です [10]。国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の三つ。反撃能力の保有が明記され、防衛費を2027年度までにGDP比2%に引き上げる目標が掲げられました。戦後の日本の防衛政策における歴史的な転換点です。5年間で43兆円。この数字だけでも、日本がどれほど本気で安全保障体制を立て直そうとしているかが伝わるのではないでしょうか。

経済面でも動きが加速しています。2022年5月に経済安全保障推進法が成立し、サプライチェーンの強靱化や基幹インフラの安全確保、先端技術の官民協力が法的に位置づけられました [11]。2023年12月には防衛装備移転三原則が見直され、殺傷能力のある武器の輸出が一部解禁されています [12]。

時期 出来事 安全保障上の意味
2022年2月 ロシアによるウクライナ侵攻 情報戦とハイブリッド戦争の現実を世界に突きつけた
2022年5月 経済安全保障推進法の成立 サプライチェーンや先端技術の保護を法制化
2022年12月 安保三文書の閣議決定 防衛費GDP比2%、反撃能力の保有を明記
2023年12月 防衛装備移転三原則の見直し 殺傷武器の輸出を一部解禁
2025年12月 国家情報局の創設方針決定 インテリジェンスの司令塔を設置
2026年度中 国家情報局の設置(予定) 情報の一元管理と分析体制の構築

こうした流れの集大成として位置づけられているのが、国家情報局の創設です。バラバラだった情報を一元的に集約・分析し、政策決定を支援する体制を構築する。日本は情報戦の時代を生き抜くための頭脳を、ようやく手に入れようとしています。

日本版CIAの誕生なのか? 世界の情報機関と比べてみる

司令塔と聞くと、強大な権限を持つスパイ組織を想像するかもしれません。ただ、国家情報局はアメリカのCIAやFBIとは性格が違います。

多くの民主主義国家では、情報機関の役割を大きく二つに分けています。一つは、国外の情報を収集する対外情報機関。アメリカのCIAやイギリスのMI6がこれにあたります。もう一つは、国内の治安を維持し、外国のスパイを取り締まる国内治安・防諜機関。アメリカのFBIやイギリスのMI5がその代表格です。

一つの組織に権力が集中すると、国民の自由やプライバシーが脅かされかねない。だから分けている。では、日本の国家情報局はどちらなのか。

答えは、どちらでもありません。

創設当初の国家情報局は、自らスパイ活動を行うのではなく、各情報機関から上がってくる情報を集約・分析し、政策決定を支援する分析官庁としての性格が強いと見られています [5]。CIAのように海外で独自の情報源を運用するわけでもなければ、FBIのように国内で捜査権を行使するわけでもない。各省庁の情報を束ねるまとめ役。日本版CIAでもFBIでもないと言われる理由はここにあります。

対外情報 国内治安・防諜 通信傍受・分析 司令塔・調整
日本(構想) 対外情報庁(将来創設予定) 警察庁・公安調査庁 未定 国家情報局
アメリカ CIA FBI NSA ODNI
イギリス MI6/SIS MI5 GCHQ 合同情報委員会
イスラエル モサド シンベト 8200部隊 なし

話はここで終わりません。高市首相の構想や自民党と日本維新の会の連立合意には、将来的にCIAのような対外情報庁を2027年末までに創設することや、スパイ防止法の制定も盛り込まれています [6]。国家情報局は、日本のインテリジェンス体制を根本から作り変える第一歩に過ぎないわけです。

懸念がないわけではない

国家情報局の創設に期待が集まる一方で、懸念の声も上がっています。

最も根深いのは、国民の監視が強化されるのではないかという不安です。日本には戦前、特高警察や憲兵隊が国民の思想や言論を厳しく取り締まり、戦争に反対する人々を弾圧した歴史があります [7]。この記憶は今も社会の中に残っている。新しい情報機関がプライバシーや表現の自由に踏み込んでくるのではないか。その警戒感は、決して的外れではないと私は思います。

スパイ防止法が制定された場合、何をもってスパイ活動と定義するのか。線引きが曖昧であれば、政府に批判的な活動や正当なジャーナリズムまでが取り締まりの対象にされかねません。政府はあくまで外国のスパイ活動を対象にすると説明していますが、運用の乱用を防ぐ仕組みがなければ説明だけでは安心できない。国会による監視や司法のチェック機能をどこまで強化できるかが、この制度の信頼性を左右するでしょう。

組織運営の面でも課題はあります。各省庁が長年抱えてきた縦割り意識を、新しい看板を掲げるだけで本当に乗り越えられるのか。国家情報局が各省庁に対して法的に裏付けられた情報アクセス権を持たなければ、結局は名前が変わっただけで終わる [8]。政府は関連法案に情報アクセス権を明記する方向で調整を進めていますが、実際にどこまで機能するかは未知数です。

国益を守る頭脳と、企業に求められる経済安全保障への対応

国家情報局の創設は、ウクライナ侵攻以降の安全保障政策の大転換の中で、避けて通れない一手です。複雑化する国際情勢の中で、正確な情報に基づいて国益を守る頭脳を持つこと。情報戦の時代を生き抜くための武器を、日本はようやく手にしようとしています。

余談ですが、この安全保障環境の変化は、国家レベルの話だけでは済みません。企業活動にも直接的な影響が及んでいます。

経済安全保障の観点から、輸出管理の重要性は飛躍的に高まっています。中国によるレアアースや重要鉱物の輸出規制。2026年2月には日本の20企業・団体がデュアルユース品の輸出規制対象に追加されました [13] [14]。国際的なサプライチェーンは常にリスクに晒されている。これが今の現実です。

こうした状況下で、企業は自社の取引先が安全保障上のリスクを抱えていないか、輸出管理規制に抵触しないかを、これまで以上に厳格にチェックしなければなりません。ただ、このチェック作業は煩雑で、専門知識も求められる。1件あたり2時間から3時間かかることも珍しくなく、多くの企業にとって大きな負担になっています。

そこで注目されているのが、AIを活用した輸出管理ソリューションです。弊社TIMEWELLが提供するZEROCK ExCHECK(ゼロック エクスチェック)は、AIが輸出管理のバックチェックを自動化し、取引先の懸念度をわずか5秒で可視化するサービスです [15]。

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国家情報局が日本の国益を守る頭脳として機能していく中で、企業もまた、変化する安全保障環境に対応していくことが求められています。国が情報の司令塔を整備するなら、企業は自社のコンプライアンス体制を整備する。その両輪が噛み合ってはじめて、この国の経済安全保障は機能するのだと考えています。


参考文献

[1] 日本経済新聞. (2025年12月4日). 国家情報局、26年度中に新設 インテリジェンス強化へ政府・与党方針. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA036HS0T01C25A2000000/

[2] 内閣官房. 内閣の情報機関としての内閣情報調査室の役割について. https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jyouhoutyousa/yakuwari.html

[3] JAPAN Forward. (2026年1月14日). 国家情報局の体制概要判明、外国情報機関と協力強化へ 情報会議は11大臣で構成. https://japan-forward.com/ja/long-awaited-intelligence-agency-takes-shape/

[4] ビジネス+IT. (2026年2月12日). いよいよ創設間近の「国家情報局」、日本版「CIA」でも「FBI」でもないと言えるワケ. https://www.sbbit.jp/article/cont1/179958

[5] クーリエ・ジャポン. (2025年11月22日). 高市政権下で「国家情報局」は必要? 強大な"情報機関"を持つ韓国と比較. https://courrier.jp/columns/422819/

[6] しんぶん赤旗. (2026年2月23日). 「国家情報局」法案 戦争国家へ国民監視の司令塔. https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2026-02-23/2026022302_01_0.php

[7] 同上.

[8] 産経ニュース. (2026年1月7日). 「国家情報局」に各省庁への情報アクセス権 インテリジェンスの司令塔…関連法案に明記へ. https://www.sankei.com/article/20260107-NAZVJT7BBRKRLD2GLFIR6LHW3A/

[9] 茂田忠良. (2023年7月). ウクライナ戦争の教訓 我が国インテリジェンス強化の方向性(警察政策学会資料 第125号). https://shigetatadayoshi.com/

[10] 防衛省. (2022年12月). 国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画について. https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/index.html

[11] 内閣府. 経済安全保障推進法について. https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/index.html

[12] 日本経済新聞. (2023年12月22日). 防衛装備移転三原則、殺傷武器輸出を一部解禁. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA223400S3A221C2000000/

[13] 経済産業省. 安全保障貿易管理について. https://www.meti.go.jp/policy/anpo/

[14] 日本経済新聞. (2026年2月24日). 中国の輸出規制、日本の成長戦略・科技計画に影響. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA246280U6A220C2000000/

[15] TIMEWELL Inc. ZEROCK Ex-CHECK AI輸出管理エージェント. https://timewell.jp/zerock-excheck

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