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ホルムズ海峡封鎖はいつまで続く?いつからか、2026年10月の現状と再開条件

公開2026-03-03更新2026-10-04濱本 隆太
地政学リスク経済安全保障サプライチェーンエネルギー安全保障経済制裁TRAFEED

ホルムズ海峡の事実上の封鎖は2026年2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃から始まり、10月時点でも続いています。公開データで見える通航は1日数隻。再開には米イランの合意、その履行、機雷と保険の正常化という3段階が残ります。ガソリン補助50.7円など日本経済への影響と企業の備えを、一次情報で整理しました。

ホルムズ海峡封鎖はいつまで続く?いつからか、2026年10月の現状と再開条件
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

「ホルムズ海峡の封鎖はいつまで続くのか」。この記事に来られる方の多くが、この一文で検索しています。先に答えを書きます。2026年10月4日時点で、封鎖は終わっていません。始まりは2月28日、米国とイスラエルがイランへの攻撃を始めた日です。そこから7か月あまり、6月に数日だけ通航が戻った時期を除けば、海峡は「事実上の封鎖」が続いています。終わる日付は、どの政府も示していません。

ただ、日付がないことと、何も読めないことは別の話です。再開に向けて各当事者がどんな条件を出しているのか、合意しても船が戻るまでに何が残るのか、そして日本のガソリン代や電気代、企業の調達にいま何が起きているのか。ここは一次情報で確かめられます。7月に前回更新したとき、私は「再封鎖へ逆回転した」と書きました。その後の2か月半で、局面はもう一段変わっています。

自社の輸出管理や取引先確認の体制がこの状況に耐えられるか気になる方は、輸出管理体制の無料診断で現在地を確かめてから読むと、後半の実務の話がつかみやすくなると思います。

要約(2026年10月4日時点): ホルムズ海峡の事実上の封鎖は、米国とイスラエルがイランを攻撃した2026年2月28日に始まり、10月時点でも続いています。IMF PortWatchのAIS(船舶自動識別装置)データで見える通航は、9月1日〜27日の平均で1日3.7隻と、平時(約85隻)の5%に届きません。米政府はAISを切った船を含めて9月23日に約60隻が通ったと説明していますが、独立した確認はされていません。イランは9月25日、米国が凍結資産の解除・石油制裁の解除・港湾封鎖の終了に応じれば7日以内に海峡を開くとする案を示し、トランプ大統領は26日に受け入れられないと述べました。再開の日付を示した政府はなく、米エネルギー情報局(EIA)は年末まで中東からの輸出の制約が続くと想定しています。日本ではガソリン全国平均が170.2円(9月28日)で、10月1日からの補助は1リットル50.7円、補助がなければ221.2円の計算です。

ホルムズ海峡封鎖はいつから?2月28日から10月までの経過

始まりの日付ははっきりしています。2026年2月28日(現地時間)、イスラエル国防相がイランへの攻撃を発表し、米国大統領もイランへの軍事攻撃の開始を発表しました。外務省は同日、海外安全ホームページで注意喚起を出しています1。海峡の通航が崩れたのはその直後でした。IMF(国際通貨基金)とオックスフォード大学が運営するPortWatchの日次データでは、AIS(船舶自動識別装置)の信号から数えた通航が、2月28日の57隻から3月1日に20隻、2日に4隻、4日には0隻まで落ちています2。平時は1日85隻前後が通っていた海峡です。

ここで「封鎖」という言葉の中身を確かめておきます。海峡を法的に閉じる国際的な手続きがあったわけではありません。攻撃の危険が現実になり、船会社や保険会社が通航を避けた結果、商船がほとんど通れなくなった状態を指しています。日本政府も「ホルムズ海峡の通行が事実上困難となった」という言い方をしています3。この記事でも「封鎖」はこの意味で使います。

その後の7か月を、主な出来事に絞って並べます。

時期 出来事
2月28日 米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始1
3月1〜4日 AISで見える通航が20隻、4隻と減り、4日に0隻2
3月11日 IEA(国際エネルギー機関)加盟国が計4億バレルの備蓄放出で合意4。日本政府はガソリンを170円程度に抑える緊急措置を決定し、19日から支給5
3〜5月 日本が国家備蓄原油を2回放出(約850万キロリットルと約580万キロリットル)6
4月13日 米軍がイランの港湾に出入りする船の封鎖を開始7
6月17〜18日 米国とイランが覚書に署名し、18日に米軍が港湾封鎖を解除8
6月20日 イラン革命防衛隊が再び海峡の閉鎖を表明(米軍は否定)9
7月7〜14日 タンカーへの攻撃が相次ぎ、14日に米軍が港湾封鎖を再開10
8月下旬 米中央軍が分離通航帯の機雷除去を発表11
9月13日 サウジアラビアの東西パイプラインがドローン攻撃で停止(22日に再開)12
9月25〜26日 イランが「7日以内の開放」案を提示し、トランプ大統領が拒否13
9月28日 クウェートのタンカーが海峡で被弾14
10月2日 G7が4か月で1億バレルの協調放出を決定15

並べてみると、この7か月は一方向に悪化したわけではありません。6月には覚書が結ばれ、米軍が港湾封鎖を解き、船が動き始めました。ところが通航が戻ったのは数日で、20日にはイラン革命防衛隊(IRGC、イランの軍事組織の一つ)が再び海峡を閉じたと表明しています9。7月にはタンカーへの攻撃が続き、米軍は港湾封鎖を再開しました10。そして9月には、海峡を通らずに原油を出す代表的なルートだったサウジアラビアの東西パイプラインまで止まりました12。「封鎖が長引いている」というより、「迂回路も含めて、エネルギーの出口が一つずつ使えなくなっていった7か月」と見たほうが実態に近い、というのが私の見方です。

7月の前回更新から何が変わったか(当時と現在)

前回この記事を更新した7月19日には、6月の覚書が崩れて再封鎖へ向かう局面を書きました。2か月半たった現在との違いを表にまとめます。

項目 当時(2026年7月19日) 現在(2026年10月4日)
海峡の状態 7日・12日・14日と商船への攻撃が続き、再封鎖へ 封鎖が続く。9月28日にも被弾14
米軍のイラン港湾封鎖 7月14日に再開 継続
外交 6月の覚書が事実上崩れる イランが7日案を提示し米国が拒否。間接的なやり取りは継続1316
ブレント原油(EIAスポット) 7月14日 83.69ドル 9月15日 130.80ドル、29日 113.96ドル17
ガソリン補助の単価 7.50円(7月16〜22日) 50.7円(10月1日〜)18
ガソリン全国平均 169.9円(7月13日) 170.2円(9月28日)19
迂回ルート サウジ東西パイプラインが稼働 9月13日に停止、22日に低い流量で再開12
通航料と米国の制裁 OFAC FAQ 1249(4月28日) 徴収組織の指定(5月・7月)、アラート更新(8月24日)202122
国際協調 ― G7が1億バレルの協調放出(10月2日)15

いちばん大きく動いたのは価格と補助の数字です。7月半ばに80ドル台前半だったブレント原油は9月中旬に130ドルを超え、ガソリン補助の単価は7倍近くに膨らみました。それでも店頭のガソリン価格がほとんど変わっていないのは、補助がその差を吸収しているからです。この点は後半でもう一度取り上げます。

表の「通航料と米国の制裁」の行は、取引先確認の実務に直結します: 米財務省は海運の関係者に対して、取引相手の船が誰と調整して海峡を通ったのか、通航料を払ったのかを確認するよう促しています(詳しくは後半で触れます)。照合先となる5系統(米OFAC・米BIS・EU・英国・国連)と日本の外国ユーザーリストについて、どの公式ソースを・どの頻度で・何と突き合わせるかを記入しながら決められる手順書を配布しています。50%ルール(所有・支配テスト)やRed Flagsも記入項目に含みます(リストへの掲載は各国法令上の区分であり、掲載先の是非を判断するものではありません)。 → 経済制裁リスト5系統 スクリーニング手順書(2026年版)をダウンロード(無料。会社名とお勤め先のメールアドレスのご登録が必要です)

2026年10月のいま、ホルムズ海峡は通れるのか

一言で答えるなら、外から見える通航は平時の5%に届かず、見えない形の通航がどれだけあるかは政府の説明と公開データで食い違っている、というのが現状です。

公開データから見ていきます。PortWatchの日次データで9月1日〜27日の通航を数えると、1日平均3.7隻でした。多い日でも8隻、少ない日は1隻です2。月平均では6月12.9隻、7月10.2隻、8月4.7隻と推移しており、夏にいったん持ち直した通航はむしろ細っています。日次の推移をすべて集計した結果は、ホルムズ海峡の通航を512日分数えた記録にまとめました。

一方で米政府は、もっと多くの船が通っていると説明しています。ロイター通信によると、米当局者は9月23日に約60隻の商船が海峡を通過し、そのうち約40隻が米軍と連絡を取りながら航行して、原油は合計約2,200万バレルが出たと述べました。ロイターはこの数字を独自に確認できていないと付記しています23。食い違いの主な理由として挙げられているのが、攻撃を避けるためにAISを切って航行する船の存在です。PortWatchのようなAISベースのデータには、こうした船は映りません。どちらかが誤っているというより、「公開データで確かめられる通航」と「政府が把握しているとする通航」が別々にあり、企業が自分で確かめられるのは前者だけ、という状況だと理解しています。

LNGでも似た動きがあります。8月にはカタール関連のLNG船の通航が船舶追跡データから見えなくなっていましたが、9月には複数の船が再び海峡を通ったことが確認されたと報じられました24。ただ、通ること自体の危険は変わっていません。9月28日にはクウェートのタンカーがAISを切って海峡を通航中に被弾し、IMO(国際海事機関)の集計では、戦闘が始まってから湾岸で確認された商船の被害は86件、亡くなった船員は24人に上っています14。

迂回ルートにも余裕はありません。サウジアラビアの東西パイプラインは、ペルシャ湾岸から紅海側のヤンブー港へ原油を運び、ホルムズを通らずに輸出できる数少ない出口です。攻撃前は日量約400万バレル、世界供給のおよそ4%を運んでいたと報じられています。9月13日にドローン攻撃で止まり、22日に低い流量で再開しましたが、元の水準に戻るには数週間かかるとされます12。経済産業大臣も9月15日の会見でパイプラインの停止に触れ、復旧状況を見極めていると述べました25。紅海側でも、外務省が9月20日の広域情報で、イエメンのホーシー派とサウジアラビアの間の攻撃が続き、先行きは不透明だとしています26。ホルムズが閉じたまま、その代わりの出口にも負荷がかかっている。10月の状況を一枚で表すなら、そうなります。

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ホルムズ海峡封鎖はいつまで続くのか、再開までの3つの段階

封鎖が終わる日付を示した政府はありません。米エネルギー情報局(EIA)が9月9日に出した短期見通しは、海峡の通航や迂回路の利用が少しずつ増えるとしつつ、中東からの輸出の制約は年末まで続き、域内の原油生産が紛争前の平均に戻るのは2027年4〜6月期以降になると想定しています27。これはサウジのパイプライン停止より前の見立てで、次の見通しは10月6日に出る予定です。公的機関の前提でさえ「年内に元どおり」ではない、という点は押さえておく価値があります。

日付の代わりに、再開までに何が必要かを段階に分けて見ていきます。私は次の3つに整理しています。

1つ目は、政治的な合意です。イランのアラグチ外相は9月25日、国連総会の場で「7日間」の案を示しました。米国が凍結されたイラン資産の解除、石油制裁の解除、イラン港湾の封鎖の終了を4〜5日で進めれば海峡を開き、7日目までに最終合意に向けた交渉を始める、という内容です。トランプ大統領は翌26日、この案は受け入れられないと述べました13。その一方で大統領は27日、イランとの協議が翌週に再開されるとの見通しも口にしています28。外務省によると、10月1日の日・イラン外相電話会談で茂木外務大臣は、先週来米国とイランの間で間接的なやり取りが続いていることを念頭に、イランに最大限の柔軟性を求めました16。交渉の窓は閉じていませんが、条件の溝はまだ埋まっていません。

条件の論点の一つが、通航にかかる「費用」です。高市首相は9月22日の国連総会演説で、「従来どおり、追加的費用のない形で、全ての船舶が自由かつ安全にホルムズ海峡を通過できること」が極めて重要だと述べました29。G7首脳も10月2日の声明で、海峡における航行の権利と原則の即時かつ完全な回復を求めています15。イラン側は通航の許可や費用を扱う組織を設けており、6月の覚書の段階でも、交渉期間の60日間は費用を取らないとしつつ、将来の徴収には含みを残していました8。合意の中身に通航料が入るかどうかは、日本企業の実務に直結する部分です。

2つ目は、合意が守られ続けることです。6月がその難しさを示しました。17日に覚書が署名され、18日に米軍がイラン港湾の封鎖を解いて船が動き出しましたが、20日にはIRGCが再び閉鎖を表明しています89。PortWatchで見ても6月の通航は1日平均12.9隻で、平時の15%程度にとどまりました2。合意の発表から、船会社が「通れる」と判断するまでには、少なくとも数週間の様子見が入ると考えたほうが現実的です。

3つ目は、物理面と商業面の正常化です。米中央軍の司令官は8月下旬、国際的に定められた分離通航帯(船が通る航路)の機雷を除去したと述べましたが、各国の海事当局が情報を共有する合同海事情報センター(JMIC)は、漂流する機雷や確認されていない機雷の危険が残ると注意しています11。そのあとにも、戦争危険の保険の引き受け条件、船員の乗船判断、止まっていた湾岸の油田やLNG設備の再稼働が続きます。EIAが生産の回復を2027年以降と見ているのは、この段階に時間がかかるからです。

では、何を見ていればよいのか。私なら週に一度、次の5つを確かめます。米国からイランへの正式な回答と仲介国の動き、米軍によるイラン港湾封鎖が解かれるかどうか、IMOが集計する商船被害の件数、PortWatchの日次通航が2桁に戻るかどうか、そして戦争危険保険の引受条件です。予測の当たり外れを追うより、この5つが同じ方向に動き始めたかを見るほうが、判断を誤りにくいと考えています。どれか1つが改善しても、6月のように数日で戻ることがあるからです。

日本経済への影響、ガソリン・電気・原油の10月の数字

家計にいちばん見えやすいのはガソリンです。資源エネルギー庁の調査で、9月28日のレギュラーガソリン全国平均は1リットル170.2円でした19。攻撃直後の3月9日は161.8円だったので5、上がってはいるものの、極端な水準には見えません。ただし、これは補助で抑えた価格です。政府は3月11日、全国平均が170円程度を超える部分を全額補助する緊急措置を決め、3月19日から支給を始めました。直前の3月16日には190.8円まで上がっていました518。10月1日から7日までの補助単価は1リットル50.7円で、補助がなければ221.2円になる計算です。軽油・灯油・重油にも同じ50.7円、航空機燃料には40.5円が出ています。この単価には、代替調達で割高になった分を月ごとに反映する「調整単価」(10月分3.7円)も含まれます18。

経済産業大臣は9月18日の会見で、与党の提言も踏まえて支援単価や措置の出口を検討していくと述べています3。店頭価格が落ち着いて見えても、補助の水準が変われば一気に動く構造だということです。ガソリンや軽油を多く使う運輸、建設、農業などでは、補助が縮小された場合に1リットルあたり数十円上がるシナリオも、来期の予算の前提に入れておくべきだと私は考えています。

電気代とガス代は、10月に別の動きを見せています。政府の電気・都市ガス料金の支援は7〜9月使用分で終わりました。9月29日の経済産業大臣会見では、東京電力の10月使用分の標準家庭の料金が過去最高の9,300円台になる見通しが質問に挙がり、大臣は、支援は電気の使用量が増える夏への対応だったと説明したうえで、原油やLNGの価格が電気・ガス料金に与える影響を注視するとしています30。LNGのスポット価格(北東アジア向けのJKM)は、攻撃前の2月に100万Btuあたり11ドル前半だったものが、9月14日には29ドル後半まで上がり、25日時点で25ドル前半です。それでも8月の日本の平均LNG輸入価格は14.16ドルにとどまっており、長期契約がスポット価格の急騰をかなり和らげていると読めます31。

量の面はどうでしょうか。日本の原油は中東依存度が9割を超える一方、LNGは調達先の多角化が進み、中東依存度は約1割です6。石油備蓄は2026年2月時点で約8か月分あり、政府は3月から5月にかけて国家備蓄原油を2回に分けて放出しました6。9月15日の会見で経済産業大臣は、国家備蓄と民間備蓄を合わせて200日程度の備蓄があり、民間備蓄も95日程度まで積み上がっているとして、10月は追加の放出は不要、それ以降はサウジ側の復旧状況などを見て判断すると述べました25。国際的には、G7が10月2日、IEAを通じて4か月で1億バレルを協調放出し、最初の20日間で軽油を重点的に出すことを決めています。声明には国ごとの放出量は書かれていません15。

原油価格も確認しておきます。EIAが公表するブレントのスポット価格は、攻撃前の2月27日に1バレル71.32ドル、4月7日には138.21ドルまで上がり、6月末から7月初めに60ドル台後半まで下げました。9月はサウジのパイプライン停止が重なって15日に130.80ドルをつけ、29日時点で113.96ドルです17。日本の原油輸入価格(全日本平均CIF)も8月に1バレル101.66ドルでした31。

マクロでは、内閣府の9月の月例経済報告が「景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢や自然災害の影響を注視する必要がある」としています。企業収益にも中東情勢の影響を注視する必要があるとし、中東向けの輸出は減少してきた中で下げ止まりの兆しがみられるとしました32。高市首相は国連総会の演説で、燃料や化学製品、医療品の供給不安が人々の生活や企業の活動に大きな影響を与えていると述べています29。

数字を並べると、日本はいま「価格は補助で抑え、量は備蓄と代替調達でつなぐ」状態にあります。どちらも期間に限りのある手当てです。封鎖が年をまたぐかどうかは、企業にとって「この手当てがいつまで続くか」とほぼ同じ問いだと私は受け止めています。

企業がいま見直す備え(調達、契約、制裁照合)

調達から始めます。政府は8月のGX実行会議で「エネルギー需給構造強靱化のための総合パッケージ」(パワーGX)をまとめ、原油の輸送経路を変えることで生じる追加の輸送費などの差額や、パイプラインなど代替輸送ルートの整備を支援する方針を示しました。臨時国会への法案提出に向けた作業も進めているとしています30。エネルギー自立をめぐる政府の制度づくりは、経済安全保障推進会議と国交省の「エネルギー自律」でも整理しています。ただ、9月の東西パイプライン停止が示したように、迂回路そのものも止まりうるという前提が加わりました。部品表(BOM)を見直すときは「中東と取引があるか」ではなく、「ホルムズを通るか」「紅海を通るか」「原料をたどると中東産に行き着くか」の3つで品目を分けるのが実務的です。ナフサ由来の化学品のように、取引先の名前だけでは中東との関係が見えない品目ほど、ここで漏れやすいと感じています。資源エネルギー庁は、燃料油や石油由来の化学品の供給に支障が出た場合の情報提供の窓口も設けています6。

契約と保険も、長期化を前提に読み直す時期です。原料供給、輸送、工事請負の各契約について、不可抗力条項が発動する条件、価格改定条項の引き金、納期遅延の違約金の上限を1件ずつ確かめます。封鎖が7か月を超えたいま、同じ事象を不可抗力として扱い続けられるかは契約と準拠法によって判断が分かれうるので、日本法と英米法の契約を分けて法務に確認しておくことをおすすめします。海上保険も、船舶戦争保険と貨物戦争保険の対象範囲や除外水域が、更新のたびに変わっていないかを見ておきたいところです。

制裁面では、通航料をめぐる米国の措置が、4月のFAQを起点に段階的に具体的になっています。米財務省外国資産管理室(OFAC)は4月28日に公表したFAQ 1249(5月29日更新)で、イラン政府や革命防衛隊に安全な通航の対価を払うことは米国人には認められないとしています20。5月27日には、OFACがイランによる通航料の徴収組織と位置づける「Persian Gulf Strait Authority(PGSA)」を、7月29日には関連する保険会社とサービス組織の2団体を制裁対象に指定しました2122。8月24日に更新したアラートは、米国外の者でも、これらの組織と関わること、たとえば保険の引き受けや安全な通航の保証を求める情報提供に応じることは、支払いがなくても制裁のリスクがあるとし、外国の金融機関への二次制裁にも触れています。そのうえで海運のサービス事業者には、取引相手の船が誰と調整して海峡を通ったのか、通航料を払ったのかを確かめるよう強く促しています22。日本企業でも、米ドル決済、米国の保険会社や再保険会社、米国の子会社が関わる取引は射程に入ります。なお、制裁リストへの掲載は各国の法令上の区分であり、掲載された組織の是非を当社が判断するものではありません。

国連の制裁については、国連安全保障理事会で9月17日、イラン制裁の履行を監視する専門家パネルの任期を延ばす決議案に中国とロシアが拒否権を行使し、10月1日の国連総会で討議が行われました。国連制裁がいま効力を持つかどうかについて、常任理事国の見解は分かれています33。この経緯は国連総会2026一般討論の要旨で整理しました。日本企業としては、日本の外為法に基づく措置を軸にしつつ、米国の原産品や米ドル決済が絡む取引では米国の制裁も確かめる、という二段構えが現実的です。照合すべきリストの種類と手順は経済制裁リスト5系統の整理にまとめています。

中東の外でも、規制は同時に動いています。日本では2025年10月9日に補完的輸出規制(キャッチオール規制)が見直され、2026年2月14日には新しい貨物・技術マトリクスが施行されました3435。中国は1月6日に商務部公告第1号で、日本の軍事関連の需要者や軍事用途に向けたデュアルユース品の輸出を制限しています36。調達の代替先を探すと、その先で別の国の規制にぶつかることは珍しくありません。該非判定や取引先確認を日々どう回すかは、企業の輸出管理実務も参考にしてください。

ここまでの確認を、人手だけで毎週回すのは現実的ではありません。OFACの指定、国連制裁をめぐる議論、日本と中国の制度更新が、それぞれ別の周期で出てきます。私たちが提供するTRAFEEDは、取引相手を米国の統合スクリーニングリストやOFACのSDNリスト、EU・英国・国連・日本などのリストと照合し、日本の該非判定の下調べと判断の記録までを1つの画面で扱える輸出管理AIエージェントです。上で触れたPGSAのように新たに指定された組織が取引の相手方や仲介に入っていないかを、更新されたリストで確かめ直す作業に向いています。最終的な判断は貴社の輸出管理責任者が行う前提の設計です。調達計画の前提そのものを見直したい場合は、WARPのコンサルティングと組み合わせてご支援しています。

まとめ

  • ホルムズ海峡の事実上の封鎖は2026年2月28日に始まり、10月4日時点でも続いています。6月に数日だけ通航が戻りましたが、すぐに再び閉じました
  • 公開データで見える通航は9月平均で1日3.7隻(平時は約85隻)。米政府はAISを切った船を含めて9月23日に約60隻と説明していますが、独立した確認はされていません
  • 終わる日付を示した政府はありません。再開には、米イランの合意、合意が守られ続けること、機雷・保険・設備の正常化という3段階が残ります。EIAは年末まで輸出の制約が続くと想定しています
  • 日本のガソリンは170.2円(9月28日)ですが、補助50.7円で抑えた価格で、補助がなければ221.2円です。備蓄は200日程度あり、G7は1億バレルの協調放出を決めました
  • 企業は、品目を「ホルムズ経由・紅海経由・中東産原料」で分け直し、契約の不可抗力と保険を準拠法ごとに確認し、通航料をめぐる米国の制裁指定を取引先照合に反映させる段階です

「いつまで」に日付で答えられないことは、もどかしく感じると思います。それでも、何が起きれば再開に近づくのかは、ここまで見てきたとおり具体的に書き出せます。日付を待つより、5つの指標を毎週見て、動き始めたら手当てを切り替える。この7か月の振れ幅を見るかぎり、そのほうが現実に合った構え方だと私は考えています。

TRAFEEDの機能概要はTRAFEEDサービスカタログ(PDF)で確認できます。自社の取引先確認や輸出管理の体制をどこから見直すか迷っている場合は、個別相談からお声がけください。

参考文献

Footnotes

  1. 外務省 海外安全ホームページ「イランへの攻撃に伴う注意喚起」 — 2026年2月28日 — https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2026C016.html ↩ ↩2

  2. IMF PortWatch「Daily Chokepoint Transit Calls and Trade Volume Estimates」(Strait of Hormuz、AISを発信している船のみを計上)。日次CSVの配布元 https://straits.live/data/transits.csv から2026年10月4日に取得し、2026年9月27日分までを当社で集計 — https://portwatch.imf.org/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  3. 赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 — 経済産業省 — 2026年9月18日 — https://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2026/20260918001.html ↩ ↩2

  4. Germany and Japan to tap oil reserves as IEA and G7 weigh record release(IEA加盟32か国が4億バレルの放出で合意) — Euronews — 2026年3月11日 — https://euronews.com/2026/03/11/germany-and-japan-to-tap-oil-reserves-as-iea-and-g7-weigh-record-release ↩

  5. イラン情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置について(2026年3月11日 総理指示、3月19日支給開始) — 資源エネルギー庁 資源・燃料部 燃料流通政策室 — 2026年3月11日 — https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/ ↩ ↩2 ↩3

  6. 中東情勢を踏まえた石油及び関連製品等に関する対応(原油の中東依存度9割超・LNG約1割、2026年2月時点で約8か月分の石油備蓄、国家備蓄原油の放出スケジュール、情報提供の受付) — 資源エネルギー庁 — https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/energysecurity/index.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  7. US blockade halts ship traffic to Iranian ports, CENTCOM says — Army Times — 2026年4月14日 — https://www.armytimes.com/news/your-military/2026/04/14/us-blockade-halts-ship-traffic-to-iranian-ports-centcom-says/ ↩

  8. US military says it has lifted naval blockade of Iranian ports(覚書に基づく60日間の費用不徴収を含む) — Al Jazeera — 2026年6月18日 — https://www.aljazeera.com/news/2026/6/18/us-military-says-it-has-lifted-naval-blockade-of-iranian-ports ↩ ↩2 ↩3

  9. Iran says Strait of Hormuz shut as U.S.-Iran talks set for Sunday in Switzerland — Michigan Public(NPR) — 2026年6月20日 — https://www.michiganpublic.org/2026-06-20/iran-says-strait-of-hormuz-shut-as-u-s-iran-talks-set-for-sunday-in-switzerland ↩ ↩2 ↩3

  10. U.S. fires a new wave of strikes on Iran and hits a tanker trying to skirt its blockade — NPR — 2026年7月15日 — https://www.npr.org/2026/07/15/nx-s1-5894582/us-iran-updates 、CENTCOM declares resumption of naval blockade against Iranian ports — The Peninsula — 2026年7月15日 — https://www.thepeninsulaqatar.com/article/15/07/2026/centcom-declares-resumption-of-naval-blockade-against-iranian-ports-additional-round-of-strikes ↩ ↩2

  11. U.S. military says it has cleared Iran's mines from Strait of Hormuz shipping lanes — gCaptain — 2026年8月27日 — https://gcaptain.com/u-s-military-says-it-has-cleared-irans-mines-from-strait-of-hormuz-shipping-lanes/ ↩ ↩2

  12. Saudi pipeline restarts operations, oil exports to resume(9月13日停止、22日再開、日量約400万バレル) — RTÉ(ロイター・AFP配信) — 2026年9月22日 — https://www.rte.ie/news/middle-east/2026/0922/1592449-middle-east/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  13. Trump rejects Iran's seven-day roadmap to end war and reopen Hormuz — Al Jazeera — 2026年9月26日 — https://www.aljazeera.com/news/2026/9/26/trump-rejects-irans-seven-day-roadmap-to-reopen-strait-of-hormuz ↩ ↩2 ↩3

  14. Kuwaiti Tanker Struck in the Strait of Hormuz(IMOの集計で被害86件・船員の死者24人) — The Maritime Executive — 2026年9月29日 — https://maritime-executive.com/article/kuwaiti-tanker-struck-in-the-strait-of-hormuz ↩ ↩2 ↩3

  15. G7 Leaders' statement on global energy security and market stability — Prime Minister of Canada(G7首脳声明) — 2026年10月2日 — https://www.pm.gc.ca/en/news/statements/2026/10/02/g7-leaders-statement-global-energy-security-and-market-stability ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  16. 日・イラン外相電話会談 — 外務省 — 2026年10月1日 — https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_04239.html ↩ ↩2

  17. Europe Brent Spot Price FOB(日次、2026年9月30日公表分) — U.S. Energy Information Administration — https://www.eia.gov/dnav/pet/hist/RBRTED.htm ↩ ↩2

  18. 中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置(2026年10月1日以降の支給単価、ガソリン全国平均価格の推移) — 資源エネルギー庁 — 2026年9月30日更新 — https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/ 、https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/current_graph.pdf ↩ ↩2 ↩3

  19. 石油製品価格調査 調査の結果(2026年9月30日公表、9月28日調査) — 資源エネルギー庁 — https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html ↩ ↩2

  20. FAQ 1249: Are "toll" payments to Iran for safe passage through the Strait of Hormuz authorized?(2026年4月28日公表、5月29日更新) — U.S. Department of the Treasury, OFAC — https://ofac.treasury.gov/faqs/1249 ↩ ↩2

  21. Economic Fury Targets Iranian Maritime Extortion(PGSAの指定) — U.S. Department of the Treasury — 2026年5月27日 — https://home.treasury.gov/news/press-releases/sb0507 ↩ ↩2

  22. OFAC ALERT: Sanctions Risks of Iranian Demands for Strait of Hormuz Passage(更新版。PGMIC・Hormuz Safeの7月29日指定を含む) — U.S. Department of the Treasury, OFAC — 2026年8月24日 — https://ofac.treasury.gov/media/936751/download?inline= ↩ ↩2 ↩3

  23. Some 60 ships passed through Strait of Hormuz on Wednesday, US official says — Reuters(BOE Report転載) — 2026年9月24日 — https://boereport.com/2026/09/24/some-60-ships-passed-through-strait-of-hormuz-on-wednesday-us-official-says/ ↩

  24. Defying conflict, Qatar-linked LNG tankers return to the Strait of Hormuz — Reuters(Baird Maritime転載) — 2026年9月28日 — https://www.bairdmaritime.com/shipping/tankers/defying-conflict-qatar-linked-lng-tankers-return-to-the-strait-of-hormuz ↩

  25. 赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 — 経済産業省 — 2026年9月15日 — https://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2026/20260915001.html ↩ ↩2

  26. 中東情勢を受けた注意喚起(9月20日) — 外務省 海外安全ホームページ — 2026年9月20日 — https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2026C042.html ↩

  27. Short-Term Energy Outlook(2026年9月版) — U.S. Energy Information Administration — 2026年9月9日 — https://www.eia.gov/outlooks/steo/ ↩

  28. Trump expects talks with Iran to resume this week after rejecting proposal — CBS News — 2026年9月27日 — https://www.cbsnews.com/live-updates/iran-war-us-trump-strait-of-hormuz-7-day-proposal/ ↩

  29. 第81回国連総会における高市内閣総理大臣一般討論演説 — 首相官邸 — 2026年9月22日 — https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/0922enzetsu.html ↩ ↩2

  30. 赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 — 経済産業省 — 2026年9月29日 — https://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2026/20260929001.html ↩ ↩2

  31. 2026年9月:天然ガス・LNG関連情報(JKM、日本の平均LNG輸入価格、全日本平均原油輸入CIF価格) — JOGMEC — 2026年9月30日 — https://journal.jogmec.go.jp/oilgas/nglng/monthly-report/202609.html ↩ ↩2

  32. 月例経済報告(令和8年9月) — 内閣府 — 2026年9月29日 — https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2026/0929getsurei/main.pdf ↩

  33. Meetings Coverage GA/12792(安保理での拒否権行使をめぐる総会の討議) — United Nations — 2026年10月1日 — https://press.un.org/en/2026/ga12792.doc.htm ↩

  34. 補完的輸出規制の見直しについて(2025年10月9日施行) — 経済産業省 — https://www.meti.go.jp/policy/anpo/apply-01/20251009_catchminaoshi/20251009catchall.html ↩

  35. 輸出貿易管理令の一部を改正する政令(新貨物・技術マトリクス、2026年2月14日施行) — 経済産業省 — 2025年11月11日 — https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251111001/20251111001.html ↩

  36. China imposes escalated export controls on dual-use items to Japan(中国商務部公告2026年第1号の分析) — Greenberg Traurig — 2026年2月 — https://www.gtlaw.com/en/insights/2026/2/china-imposes-escalated-export-controls-on-dual-use-items-to-japan ↩

本記事は一部にAIを用いて作成し、公開前に人間が一次情報の確認と編集を行っています。

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