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「AIに代替されない力」とは何か。N-E.X.T.ハイスクール構想で高校のAI教育はどう変わる

公開2026-07-18濱本 隆太

文部科学省のN-E.X.T.ハイスクール構想が掲げる「AIに代替されない能力」とは、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力、他者と協働する力です。生成AIを禁止するのではなく使いこなす前提で、高校の学びがどう変わるのか。一次資料と教育現場の実例から解説します。

「AIに代替されない力」とは何か。N-E.X.T.ハイスクール構想で高校のAI教育はどう変わる
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こんにちは、株式会社TIMEWELLの濱本です。

「AIに代替されない力」。N-E.X.T.ハイスクール構想の解説でよく引用される言葉ですが、グランドデザイン本文を読むと、その中身は具体的に列挙されています。言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力、そして他者と協働する力です^1

この記事では、文部科学省が2026年2月13日に公表したグランドデザイン(全体解説はこちら)の視点1「不確実な時代を自立して生きていく主権者として、AIに代替されない能力や個性の伸長」を深掘りします。企業向けのAI導入支援を本業とする立場から見ても、ここに書かれている能力観は、いま企業の採用・育成の現場で起きていることと驚くほど一致しています。

「AI排除」でも「AI万能」でもない。二段構えの設計

グランドデザインのAI観は、二段構えで書かれています^1

1段目は、AIに代替されない基盤的な力の育成です。知識の理解の質を高めて確かな学力を育てることを前提に、言語能力・情報活用能力・問題発見・解決能力・協働する力を「着実に育成する」としています。

2段目が重要で、「AIを活用して新たな価値を生み出す素地を身に付ける」ことが明記されています。つまり生成AIの利用を制限する方向ではなく、使いこなす前提です。そのうえで、情報を受動的に覚える学習から、生徒が学ぶ意義を実感しながら探究的・実践的に学ぶ学習観への転換、グランドデザインの言葉でいう「生徒を主語にした」教育への転換が必要不可欠だとしています。

背景にあるのは評価基準の問いかけです。AIが様々な情報を処理する時代に、覚えた知識の多さや速く正確に答える力が評価基準であり続けるのか。グランドデザインは、多様な個性や能力を生かして「自ら問いを立てる力」「他者とともに価値を創り出す力」こそが評価されるべきではないか、と踏み込んでいます^1

企業の現場からひとつ補足すると、この転換は既に起きています。生成AIの導入が進んだ組織では、「答えを出す作業」はAIに移り、人間の仕事は「良い問いを立てること」と「AIの出力を検証して意思決定すること」に寄っていきます。私たちが企業向けのAI研修で最初に教えるのも、プロンプトの書き方ではなく問いの立て方です。高校段階でこの力を育てるという国の方針は、産業界のニーズを正確に捉えていると思います。

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学びはどう変わるか。3つの具体策

視点1を実現する取組として、グランドデザインと関連施策から3つの具体策が読み取れます。

施策 内容 根拠
単位制の柔軟化 次期学習指導要領で大幅に推進。地域課題探究を中核にした課程編成、学習内容の自己決定など グランドデザイン^1
探究の体制整備 探究型授業研修の体系化、理数担当教師を中心とした探究伴走支援専門チームの構築 交付金対象取組の例示^1
DXラボ整備 理科実験室・DXラボの高度な実験機器・情報機器を授業内外で活用。外部人材による年間を通じた指導・支援 交付金対象取組の例示^1

注目すべきは、どの施策にも「外部人材」「産業界や大学等との連携・協働」が組み込まれていることです。探究のテーマ設定から仮説立案、検証、成果発表までを教師だけで伴走するのは現実的に難しく、グランドデザイン自身が外部との協働を前提に制度を設計しています。

現場の課題は「道具」より「設計」

教育委員会や高校の先生方と話していて感じるのは、生成AIそのものへの抵抗感は既にかなり薄れている一方、「どう学びに組み込むか」の設計で止まっているケースが多いことです。よくある悩みは3つに集約されます。

  1. 生徒がAIに「答え」を出させて終わってしまう。レポートの丸投げ問題です。これは課題設計の問題で、AIが一発で答えられない「地域の一次情報が必要な問い」「自分の意見が必要な問い」を設定できれば、AIは調査と壁打ちの道具に変わります。
  2. 教員間の温度差が大きい。全教員一律の研修より、まず探究担当と情報科にコアチームをつくり、小さな成功事例を校内に展開する方が定着します。グランドデザインの「探究伴走支援専門チーム」はまさにこの発想です。
  3. 評価の物差しがない。問いの質、検証プロセス、協働の記録といったプロセス評価への転換が必要になります。ここは次期学習指導要領の議論とあわせて設計するべき領域で、正直まだ発展途上です。

3つに共通するのは、道具の使い方ではなく学びの設計の問題だということです。だからこそ、AIツールを配って終わりではなく、探究のプロセス全体を設計できる伴走者が要ります。

私たちTIMEWELLは、学校・教育機関向けのWARPプログラムで、生成AIを使った探究学習の設計と生徒への直接指導を行っています。特徴は、AI駆動開発のスキルを教えるだけでなく、生徒が自分の問いからプロダクトやアウトプットを実際に形にするところまで伴走することです。「AIに使われる側」ではなく「AIで何かを生み出す側」の経験を高校段階で持てるかどうかは、その後の進路にも大きく効くというのが私たちの実感です。

まとめ

  • 「AIに代替されない力」の中身は、言語能力・情報活用能力・問題発見・解決能力・協働する力
  • グランドデザインは生成AIを排除せず、「AIを活用して新たな価値を生み出す素地」の育成を明記している
  • 実現の柱は単位制の柔軟化、探究体制の整備、DXラボ。いずれも外部連携が前提
  • 現場の課題は道具ではなく学びの設計。課題設計・コアチーム・プロセス評価の3点から着手する
  • 「自ら問いを立てる力」への評価転換は、企業の採用・育成で既に起きている変化と一致する

構想全体の位置づけはN-E.X.T.ハイスクール構想の解説記事を、探究×生成AIの具体的な進め方は実践編をご覧ください。


参考文献

そのほか、文部科学省「令和7年度 産業イノベーション人材育成等に資する高等学校等教育改革促進事業の公募について」日本成長戦略会議人材育成分科会「高校から大学・大学院等を通した人材育成システム改革ビジョン」(令和8年4月28日)も参照しました。

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