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HomeColumnsEX-Check貿易業務におけるインコタームズ2020って何? 初心者向け徹底解説
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貿易業務におけるインコタームズ2020って何? 初心者向け徹底解説

2026-03-07濱本 隆太
インコタームズ貿易実務FOBCIF国際取引EX-Check

インコタームズ2020の基礎知識から全11条件の詳細、2010年版からの変更点、実務での選び方までを初心者向けに徹底解説。FOB、CIF、EXW、DDPの使い分けが分かる。

貿易業務におけるインコタームズ2020って何? 初心者向け徹底解説
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こんにちは、TIMEWELLの濱本です。今日はテック関連のサービスご紹介……ではなく、貿易実務に関わるなら絶対に避けては通れない超重要キーワード「インコタームズ2020」について書きます。

貿易業務に携わり始めたばかりの方にとって、アルファベット3文字が並ぶ専門用語の数々は、まるで暗号のように感じられるかもしれません。FOB、CIF、EXW。日々の業務で耳にするものの、それぞれの正確な意味や違いを自信を持って説明できるでしょうか。私自身、貿易の世界に足を踏み入れた当初は「なんでこんなに略語が多いんだ」と頭を抱えた記憶があります。

この記事では、インコタームズの基礎知識から、最新版であるインコタームズ2020の全11条件の詳細、そして実務での選び方までを初心者の方にもわかりやすく解説します。最後まで読んでいただければ、貿易取引におけるリスクや費用の負担区分が明確になり、自信を持って日々の業務に取り組めるようになるはずです。

インコタームズ(Incoterms)とは

貿易取引の「共通言語」

インコタームズ(Incoterms)は、International Commercial Termsの略称です。パリに本部を置く国際商業会議所(ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則で、1936年に初めて作られました [1]。以来、商慣習の変化に合わせて約10年ごとに改訂が重ねられており、現在の最新版は2020年1月1日に発効したインコタームズ2020です [1]。

なぜこのような国際規則が必要なのか。国内での売買であれば、日本の法律や商慣習に従って取引を進めれば大きな問題は起こりません。ところが国境を越える貿易取引では、売主(輸出者)と買主(輸入者)の国で法律も商慣習もまるで違います。それぞれが自国のルールを主張し合えば、「運送費はどちらが払うのか」「輸送中に貨物が壊れたら誰が責任を取るのか」といった点で認識のズレが生じ、深刻なトラブルに発展しかねません。

そこで、世界中の誰もが共通の認識を持って取引できるよう、あらかじめ定型化されたルールとしてインコタームズが作られました。貿易取引における共通言語、と言ってしまっていいと思います。

インコタームズが定めている3つのポイント

インコタームズでは、売主と買主の間で取り決めるべき条件のうち、主に以下の3つを明確に定めています。

ポイント 具体的な内容
費用の負担区分 運賃、保険料、港湾での荷役費用、輸出入の通関費用などを、どの地点まで売主が負担し、どこから買主が負担するか。
リスク(危険)の移転 輸送中に貨物が紛失したり破損したりした場合の責任が、どの時点で売主から買主へ移るか。業界では「危険負担の移転」と呼びます。
手配の義務 運送会社の手配、海上保険の契約、輸出入の通関手続きなどを、売主と買主のどちらが行うか。

これらの条件をアルファベット3文字の規則としてパッケージ化し、複雑な契約内容をシンプルに表現できるようにしている。ここがインコタームズの最大のメリットです。

インコタームズが定めていないこと

便利なルールではありますが、万能ではありません。

たとえば、商品の所有権がいつ移転するかについてはインコタームズの守備範囲外です [2]。代金の支払い方法(前払いか後払いか、L/C決済かなど)や、契約違反があった場合の損害賠償の取り決めも対象外。これらはインコタームズとは別に、売買契約書の中で当事者同士が個別に合意し、明記しておく必要があります。ここを勘違いしている方が意外と多いので、覚えておいてください。

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インコタームズ2020の特徴と2010年版からの変更点

インコタームズは時代の変化に合わせて定期的にアップデートされています。最新の商慣習を反映したインコタームズ2020が現在のスタンダード。ここでは、前バージョンのインコタームズ2010からの主な変更点を、初心者にも関係するものに絞って解説します。

DATからDPUへの名称変更

インコタームズ2010にあった「DAT(ターミナル持込渡し)」が廃止され、新たに「DPU(荷卸込持込渡し)」が新設されました [1]。

DATは指定されたターミナルでの引渡しを前提としていましたが、実務ではターミナル以外の場所、たとえば買主の倉庫や建設現場などで荷卸しをして引き渡すケースも多く存在しました。引渡し場所がターミナルに限定されないことを明確にするため、名称をDPUに変更し、あらゆる場所を指定できるように整理されたわけです。

CIP条件における保険の補償範囲の拡大

CIP(輸送費保険料込み)は、売主が運送費用と保険料を負担する条件です。2010年版では、売主が手配する保険は最低限の補償内容(ICC(C)条件)で良いとされていました。

2020年版では、CIP条件で売主が手配すべき保険の補償範囲が引き上げられ、原則としてあらゆるリスクをカバーする最も手厚い補償内容(ICC(A)条件)の保険をかけることが義務付けられました [3]。買主側にとっては安心感が増す改訂です。なお、CIF条件の場合は従来通り最低限の補償内容で問題ありません。CIPとCIFで保険のレベルが違う、というのは試験にも出そうなポイントです。

自己の輸送手段を用いた運送の容認

これまでのインコタームズでは、貨物の輸送は第三者の運送業者に委託することが暗黙の前提でした。しかし実際のビジネスでは、売主や買主が自社のトラックで貨物を運ぶケースも珍しくありません。

インコタームズ2020ではこの実態を反映し、FCA、DAP、DPU、DDPの各条件において、売主または買主が自己の輸送手段を用いて運送を行うことが正式に認められました [1]。現場の実態にルールが追いついた、という印象です。

インコタームズ2020の全11条件を解説

ここからが本題です。インコタームズ2020に規定されている全11条件について、それぞれの特徴と費用やリスクの分担を見ていきます。

11条件は、使用できる輸送手段によって大きく2つのグループに分かれています。

1つ目は「いかなる輸送手段にも適した規則」で7条件。コンテナ輸送、航空輸送、鉄道輸送、トラック輸送など、あらゆる輸送手段(複合一貫輸送を含む)で使えます。2つ目は「海上および内陸水路運送のための規則」で4条件。在来船による海上輸送など、水上輸送に限定して使用されます。

グループ1:いかなる輸送手段にも適した規則(7条件)

現代の貿易の主流であるコンテナ輸送や航空便を利用する場合は、原則としてこちらのグループから条件を選びます。

EXW(Ex Works:工場渡し)

売主の負担が最も軽く、買主の負担が最も重い条件。売主は自社の工場や倉庫で貨物を引き渡せる状態にした時点で義務を果たします。そこから先のトラックへの積み込み、輸出通関手続き、海上運賃、輸入通関、目的地までの輸送。すべての費用とリスクは買主持ちです。

FCA(Free Carrier:運送人渡し)

売主が指定された場所(輸出港のコンテナヤードや航空貨物ターミナルなど)で、買主が手配した運送人に貨物を引き渡した時点でリスクが移転します。輸出通関手続きは売主が行いますが、そこから先のメインの運賃や保険料は買主負担。コンテナ輸送において使い勝手が良く、近年はICCもこの条件の使用を推奨しています。

CPT(Carriage Paid To:輸送費込み)

FCAに加えて、売主が指定仕向地(輸入国の目的地)までの運送費用を負担する条件。ここで注意すべきは、費用の負担とリスクの移転のタイミングが異なる点です。費用は輸入国の目的地まで売主が負担しますが、リスクは輸出国の段階で運送人に貨物を引き渡した時点で買主に移転します。この「費用とリスクのズレ」は初心者が混乱しやすいところなので、しっかり押さえておいてください。

CIP(Carriage and Insurance Paid To:輸送費保険料込み)

CPTに加えて、売主が目的地までの貨物保険料も負担する条件。前述の通り、インコタームズ2020からは売主に最も補償範囲の広いICC(A)条件での保険手配が義務付けられています。リスクの移転タイミングはCPTと同じく、輸出国で運送人に引き渡した時点です。

DAP(Delivered at Place:仕向地持込渡し)

売主が指定された目的地まで貨物を運び、到着した輸送手段の上で荷卸しの準備ができた状態で買主に引き渡す条件。目的地までの輸送費用とリスクは売主が負担しますが、荷卸しの作業費用とリスク、輸入通関手続きや関税の支払いは買主の負担です。

DPU(Delivered at Place Unloaded:荷卸込持込渡し)

DAPから一歩進んで、売主が目的地での荷卸し作業まで行い、荷卸しが完了した時点でリスクが移転する条件。11条件の中で唯一、売主に荷卸しの義務が課せられています。輸入通関手続きと関税の支払いは買主が行います。

DDP(Delivered Duty Paid:関税込持込渡し)

EXWとは真逆。売主の負担が最も重く、買主の負担が最も軽い条件です。売主は目的地までの輸送費用やリスクはもちろん、輸入国の通関手続きや関税、消費税の支払いまですべて負担します。買主は自社の倉庫で貨物を受け取るだけ。

グループ2:海上および内陸水路運送のための規則(4条件)

穀物や鉱石などのバルク貨物を在来船で輸送する場合に使われる規則です。コンテナ輸送の場合は、グループ1の規則(FCA、CPT、CIPなど)を使うことが推奨されています。

FAS(Free Alongside Ship:船側渡し)

売主が輸出港において、指定された本船の横(船側)に貨物を置いた時点でリスクが移転します。輸出通関手続きは売主が行いますが、船への積み込み作業費用や海上運賃は買主の負担。

FOB(Free On Board:本船渡し)

売主が輸出港で、指定された本船の甲板に貨物を積み込んだ時点でリスクが移転する条件。日本の貿易実務では最もよく目にする条件のひとつです。輸出通関手続きと船への積み込みまでの費用やリスクを売主が負担し、海上運賃や輸入通関費用は買主が負担します。

CFR(Cost and Freight:運賃込み)

FOBに加えて、売主が輸入港までの海上運賃を負担する条件。かつてはC&F(シーアンドエフ)と呼ばれていました。ベテランの方は今でもC&Fと言うことがあるので、同じものだと知っておくと会話がスムーズです。費用は輸入港まで売主が負担しますが、リスクの移転はFOBと同じく輸出港で本船に積み込んだ時点。

CIF(Cost, Insurance and Freight:運賃保険料込み)

CFRに加えて、売主が輸入港までの海上保険料も負担する条件。FOBと並んで実務でよく使われます。インコタームズ2020でも、CIFの場合は最低限の補償内容(ICC(C)条件)の保険手配で良いとされています。リスクの移転タイミングはFOBやCFRと同じく本船への積み込み時点です。

実務でよく使われる条件と選び方のポイント

11もの条件がありますが、初心者がいきなりすべてを暗記する必要はありません。現場で頻繁に使われる条件はある程度限られています。

まず覚えるべき4つの条件

貿易実務で特によく登場するのは、次の4つです。

条件 特徴 よく使われる場面
FOB(本船渡し) 輸出側は船に積むまで、輸入側はそこから先の責任 最もポピュラー。日本の輸出入で定番
CIF(運賃保険料込み) FOBに加えて輸出側が運賃と保険料を払う FOBと並ぶ定番。輸出者が物流をコントロールしたい場合に
EXW(工場渡し) 輸入側がすべて手配 小口のサンプル輸送、輸出初心者の取引
DDP(関税込持込渡し) 輸出側がすべて手配 EC越境取引、海外支店への社内輸送

輸出者と輸入者、それぞれの視点

輸出者としてEXWを選べば、自社で手配する手間がなく輸送中のリスクも負わないので楽です。ただし、買主側からすると手配の手間がかかるため、商談で不利になる可能性がある。「うちはEXWでしか売りません」と言い切ると、取引先が離れてしまうこともあります。

一方、CIFを選べば自社で運送会社や保険会社を選べるため、懇意にしている業者を使って物流コストをコントロールしやすくなります。ただし手配の手間がかかることと、海上運賃の変動リスクを負うことは覚悟が必要です。

輸入者としてDDPを選べば、商品が届くのを待つだけで通関トラブルのリスクもありません。ただし、売主がすべてのコストを商品価格に上乗せするため、結果的に割高な買い物になるケースが多い。個人的には、ある程度の取引量があるなら輸入者自身がFOBで買い付けて、自社で運送会社を手配するほうがコストメリットは大きいと考えています。複数のフォワーダーから相見積もりを取れば、トータルの輸入コストを安く抑えられる可能性があるからです。

コンテナ輸送でFOBやCIFを使うリスク

余談ですが、日本の貿易実務で根強く残っている問題があります。コンテナ輸送であるにもかかわらず、FOBやCIFといった海上運送用の規則が漫然と使われているケースです。

ICCはコンテナ輸送においてはFCA、CPT、CIPといったグループ1の規則を使うことを強く推奨しています。理由は明快で、コンテナ貨物の場合、売主は港のコンテナヤード(CY)で運送人に貨物を引き渡すのが一般的です。しかしFOB条件ではリスクが移転するのは「本船に積み込んだ時点」。つまり、コンテナヤードに搬入してから本船に積み込まれるまでの間に事故が起きた場合、すでに売主の手を離れているにもかかわらず売主が責任を負わなければならない。この「魔の空白期間」が生じてしまうのです。

コンテナ輸送の際はFOBの代わりにFCA、CFRの代わりにCPT、CIFの代わりにCIPを使う。実務のアップデートとして、ぜひ意識してみてください。

契約書への記載方法と実務上の注意点

契約書への明記が必須

インコタームズは世界共通の法律でも条約でもありません。あくまでも民間団体(ICC)が定めたルールです。貿易取引において自動的に適用されるものではなく、契約当事者双方が合意し、契約書に明記して初めて効力を発揮します。

売買契約書(Sales Contract)やインボイス(Invoice)などの書類に、必ずその旨を記載してください。

正しい記載のフォーマット

契約書に記載する際は、3つの要素をセットにするのが正しいフォーマットです。

1つ目は選択したインコタームズの規則(3文字のアルファベット)。2つ目は指定された場所(港や都市名など、できるだけ具体的に)。3つ目は適用するインコタームズのバージョンです。

記載例を挙げます。

  • FOB Tokyo Incoterms 2020 ……東京港を積み出し港とする本船渡し条件
  • CIP Los Angeles Incoterms 2020 ……ロサンゼルスを指定仕向地とする輸送費保険料込み条件
  • EXW 1-2-3 Minato-ku, Tokyo, Japan Incoterms 2020 ……東京都港区の指定住所を引渡し場所とする工場渡し条件

場所の指定が曖昧だと、「東京のどこで引き渡すのか」で揉める原因になります。バージョンの記載がないと古いルールで解釈されてしまうリスクもあるため、「Incoterms 2020」は必ず明記しましょう。

国内取引でも使える

インコタームズは国際取引専用のルール、というイメージが強いかもしれません。しかし2010年版以降、国内での売買取引にも使用できることが明確化されています [1]。

日本国内の取引であっても、遠隔地との取引で輸送が伴う場合、運送費はどちらが持つか、輸送中の事故リスクはどちらが負うかを明確にするために、契約書にインコタームズの条件を記載するのは有効な手段です。

貿易取引のリスク管理をAIで効率化する

インコタームズの選択は貿易取引の入口にすぎません。輸出管理における該非判定やエンドユーザー審査、関連法令への適合確認まで含めると、実務の負担は膨大です。

TIMEWELLの輸出管理AIエージェントEX-Checkは、これらの業務をAIで効率化し、コンプライアンスリスクを低減します。「貿易管理の業務負荷を減らしたい」「規制対応を効率化したい」。そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

インコタームズは、国境を越えた取引における費用の負担区分、リスクの移転タイミング、手配の義務を明確にするための世界共通の言語です。正しく理解し、自社のビジネスモデルや輸送形態に合った条件を選ぶことが、無用なトラブルを防ぐ第一歩になります。

11種類を一度にすべて覚える必要はありません。まずは自社がよく使う条件から確実にマスターし、実務の中で少しずつ知識を広げていく。それで十分です。契約書には指定場所とIncoterms 2020のバージョンを明記すること、コンテナ輸送ではFOBやCIFよりもFCAやCIPの使用を検討すること。この2つだけでも意識しておけば、取引先からの信頼度は確実に上がります。

貿易の世界は奥が深いですが、インコタームズを理解することでその入り口はぐっと広がります。皆さんのビジネスの一助になれば幸いです。


[1] https://www.jetro.go.jp/world/qa/J-200309.html "インコタームズ2020 - ジェトロ" [2] https://service.shippio.io/glossary/terms-incoterms-ja/ "インコタームズで所有権の移転はされない - Shippio" [3] https://www.mitsui-gl.com/column/article_10253/ "インコタームズ2020とは?2010年版との違いと変更点 - 三井倉庫グループ"

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